ども、最近の世界情勢に絶望しかけて来ている湯タンポです……。
まぁそんなことはさておき、いつもどうり展開は唐突にやってきます。
という訳で今回からようやくほんへ始まります。
ではどぞ。
第一話 崩れる日常
月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。
そして、それは南雲ハジメも例外ではなかった。
ただし、ハジメの場合、単に面倒というだけでなく、学校の居心地がすこぶる付きで悪いが故の憂鬱さが多分に含まれていたが。
ハジメは、いつものように始業チャイムがなるギリギリに登校し、徹夜でふらつく体でなんとか踏ん張り教室の扉を開けた。
その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。
極力意識しないように自席へ向かうハジメ。しかし、毎度のことながらちょっかいを出してくる者がいる。
「よぉ、キモオタ! また徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。
声を掛けてきたのは檜山大介といい、毎日飽きもせず日課のようにハジメに絡む生徒の筆頭だ。
近くでバカ笑いをしているのは斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の三人で、大体この四人が頻繁にハジメに絡む。
檜山の言う通り、ハジメはオタクだ。と言ってもキモオタと罵られるほど身だしなみや言動が見苦しいという訳ではない。
髪は短めに切り揃えているし寝癖もない。コミュ障という訳でもないから積極性こそないものの受け答えは明瞭だ。
さらに言えば弟の影響で毎日2km程のランニングと筋トレ、更には栄養管理をさせられているため、いわゆる細マッチョと呼ばれる体型であるし、大人しくはあるが陰気さは感じさせない。
単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけの一般人という感じだ。
世間一般ではオタクに対する風当たりは確かに強くはあるが(最近は鬼〇などの影響でかなり弱まって来ているし)、本来なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵愾心を持たれることはない。では、なぜ男子生徒全員が敵意や侮蔑をあらわにするのか。
その答えが彼女だ。
「ハジメくん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとに歩み寄った。このクラス、いや学校でもハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない例外であり、この事態の原因でもある。
名を白崎香織という。学校で"三大女神"と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。
いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため、学年を問わずよく頼られる。
それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。
そんな香織はなぜかよくハジメを構うのだ。徹夜のせいで居眠りの多いハジメは不真面目な生徒と思われており(成績は弟のせいで上から数えた方が早い程度を取っている)、生来の面倒見のよさから香織が気に掛けていると思われている。
これで、ハジメの授業態度が改善したり、あるいはイケメンなら香織が構うのも許容できるのかもしれないが、生憎、ハジメの容姿は極々平凡であり、〝趣味の合間に人生〟と言う中々にとち狂った事を座右の銘としていることから、態度改善も見られない。
そんなハジメが香織と親しくできることが、同じく平凡な男子生徒達には我慢ならないのだ。「なぜあいつだけ!」と。女子生徒は単純に、香織に面倒を掛けていることと、なお改善しようとしないことに不快さを感じているようだ。
「あ、ああ、おはよう白崎さん」
すわっ、これが殺気か!? と言いたくなるような眼光に晒さらされながら、ハジメは頬を引き攣つらせて挨拶を返す。
それに嬉しそうな表情をする香織。「なぜそんな表情をする!」と、ハジメは更に突き刺さる視線に冷や汗を流した。
どうして月曜の朝から、こんな面倒事に巻き込まれているのか、とハジメは心の中で嘆いた。
面倒ごとは身内だけで良いのだ。
そう、例えばハジメの弟が四股しているとか。
……うん、まぁ、それはいい。どうでもいい。
問題は弟の女関係ではなく、そのツケが自分の方に回ってくることだ。
等とアホな事を考えていると、三人の男女が近づいてきた。
嫌な予感がするので帰っていいだろうか。
「ハジメ君。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」
三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫。香織の親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。
172cmという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。
事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で〝お姉さま〟と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。
次に、些か臭いセリフで香織に声を掛けたのが天之河光輝。いかにも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。
サラサラの茶髪と優しげな瞳、180cm近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい)。
小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、雫と同じく全国クラスの猛者だ。雫とは幼馴染である。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。
最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎といい、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、190cmの長身に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである。
龍太郎は努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間なので、ハジメのように学校に来ても寝てばかりのやる気がなさそうな人間は嫌いなタイプらしい。現に今も、ハジメを一瞥した後フンッと鼻で笑い興味ないとばかりに無視している。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」
雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。「てめぇ、なに勝手に八重樫さんと話してんだ? アァ!?」という言葉より明瞭な視線がグサグサ刺さる。雫も香織に負けないくらい人気が高い。
「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」
光輝がハジメに忠告する。
『お前は一体何を言っているんだ』と言いたくなるがぐっと我慢する。
光輝の目にはやはり、ハジメは香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。
ハジメとしては「甘えたことなんてないよ! むしろ放っておいてくれ!」と声を大にして反論したいのだが、そんなことをすれば強制連れションが実行されるだろう。
光輝自身、思い込みが激しいところがあるので反論しても無駄であろうことも口を閉じさせる原因だ。
そして〝直せ〟と言われても、ハジメは趣味を人生の中心に置くことに躊躇いがない。なにせ、父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家であり、将来に備えて父親の会社や母親の作業現場でバイトしているくらいなのだ。
既にその技量は即戦力扱いを受けており、趣味中心の将来設計はばっちりである。ハジメとしては真面目に人生しているので誰になんと言われようと今の生活スタイルを変える必要性を感じなかった。香織がハジメを構わなければ、そもそも物静かな目立たない一生徒で終わるハズだったのである。
「いや~、あはは……」(帰っていいかな……)
ハジメの愛想笑いにイラっとしたのか、光輝はさらに言葉を続けようとするが……
「……朝から何を騒いでいるのですか、もうHRが始まりますよ。」
そこに登校してきた少女の呆れたような声で遮られた。
セミロングの銀髪を揺らしながら、氷河期のような凍てつく眼差しで睨むように見ているのは天城兼定。
この学校の三大女神と呼ばれるうちの一人だ。
その外見は人形のように整っており、冷たい表情も彼女の美しさを損なうことはない。
身長は170cmと女性にしては高身長で、スレンダーな体型だが、出るとこはかなり出ている。
特に胸の自己主張は激しかった。制服を内から押し上げる双丘は、彼女が動くたびに揺れ、男子生徒の視線を独り占めにしている。
……そして、彼女は、我が弟の彼女?なので、つまり義理の妹とも言える関係である。
そう、弟の四股相手の一人でもあるのだ。
弟曰く、従順な犬らしい(?)
「おはよう、兼定ちゃん。今日もギリギリだよ?」
「おはようございます、香織。これでも急いだ方ですよ。朝は少し忙しいもので。」
香織が挨拶すると、兼定も冷たさを感じさせる態度ながら律儀に応じる。
相変わらずの美貌と巨乳に魅惑される男子生徒が続出するが、本人はどこ吹く風だ。
ちなみに、三人の中では兼定が一番大きい。
ハジメと光輝、龍太郎の三人は、兼定が自分達の方を見た瞬間に思わず背筋を伸ばし、姿勢を正した。
「おはようございます、雫、天之河、坂上。あと、徹夜で寝坊したお兄さん。」
「えぇ、おはよう。」
「ああ、おはよう。」
「おう、おはよーさん。」
「……うん、おはよ。」
一応返事はしておく。いつも通りといえばいつも通りのやり取りだ。
兼定は、ハジメに対しては周りより若干雰囲気が柔らかくなる気がする。
しかし、だからといって別にハジメに気があるとかではなく、あくまで身内の情のようなものだ。
まぁ、一応兄であるハジメには普通に接してくれるので問題はない。
問題があるとすれば……
「はい、今日のお兄さんのお弁当です。栄養ゼリーなんかじゃダメですよ。」
無意識のうちに爆弾を落としていくところだろうか。
「……ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。……では、私は席へ帰ります。」
ハジメに弁当を手渡すと、自分の席へと戻っていく兼定。
それを見て、光輝がまたも騒ぎ出す。
「おい南雲、お前まだ天城さんに作ってもらってるのか? 恥ずかしくないのか?」
「いや、うん、まぁ、そうだね。」(まあ、一応家族?なので?)
「天之河くん、そんな言い方失礼だよ!ハジメくんは料理ができないんだから仕方ないよ!」
「香織、それは何のフォローにもなってないわよ……」
香織の言葉に雫がツッコミを入れる。
まぁ、ハジメが料理できないのは事実だが。
そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。
教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、いつものようにハジメが夢の世界に旅立ち、当然のように授業が開始される。
そんなハジメを見て香織が微笑み、雫はある意味大物ねと苦笑いし、男子達は舌打ちを、女子達は軽蔑の視線を向け、兼定はそれらに気付かずにノートを取り出す。
……と、言うのがいつもの流れだった。
そう、ドーナツの入った紙袋を持ったハジメの弟、南雲龍驤が遅刻して、普通に教室の後ろ側のドアから入ってこなければ。
「いふもどうりおふれまひたー」(いつも通り遅れました)
「「「…………」」」
クラス全員がポカンとした顔で突如現れた弟を見る。
その間にも、龍驤は手に持った紙袋からドーナツを手に取り、喰らっている。
「……あ、あ~、今日は珍しく早いな。何かあったのか?」
我に返った担任の教師(30代半ば独身男性)が引き攣った笑顔を浮かべながら質問をする。
その問いに、口いっぱいに頬張っていたドーナツを飲み込んでこう答えた。
「んぐっ……いや、今日は用事があって早く起きたんで、ついでに学校に来ました。」
「そ、そうか……よし、出席を取るぞ(現実逃避)」
教師はそれ以上聞く元気が出なかったようで、すぐに生徒の点呼を始めた。
「ああ、そういえばだが、今日は重要な連絡がある。」
そして、点呼が終わると、担任(三十代独身彼女なし)は続けてそう言った。
「実は、今日から1ヶ月間、この学校にとある調査でやって来ている自衛隊の人がいる為、今日は授業が免除になる……筈だったのだが、このクラスはあまりに酷い授業態度の奴が何名かいる為、四時間目だけは社会科が入っている。
あと、今日はその四時間目を除いて、一日自衛隊の人との交流授業となる、まぁ要は自衛隊の人達に慣れとけって話だな。
以上だ。」
「「「「「ええええええええええええ!?」」
突然のことにクラスメイト達が一斉に驚きの声を上げる。
しかし、それに構わず、話は終わったとばかりに教師は退室してしまった。
代わりに入ってきたのは7人の男女だった。
彼らは教壇に立つと、それぞれ自己紹介を始める。
「戦略自衛隊から来ました、後藤誠司と言います、階級は中将です、君達とは少し年が離れているので、話題が噛み合わないかもしれませんが、しばらくここで過ごすので仲良くしてくれると嬉しいです。
この人たちの中で私が一番まともなので、何かあれば私に言ってください。」
そう自己紹介したのは、二十代半ばくらいの男性自衛官で、いかにも真面目で優しそうな印象を受ける人だった。
「同じく戦自から来ました、佐藤裕也少将です、よろしくお願いします。」
次に挨拶したのは、二十代前半の眼鏡をかけた理知的な印象を受ける男性だ。
「同じく戦自の中村雄介っす、階級は准将、宜しく!」
次に挨拶したのは、二十歳くらいのいかにも体育会系と言った感じの男性だった。
「同じく戦自から来ました、アイギス・シルフィードです。階級は少将、皆さん、よろしくお願いしますね。」
次は金髪碧眼の女性だった。
「同じく、俺は九条大輝、階級は准将、宜しくなっ!」
次は全体的にチャラチャラした男だった。
「僕はね〜、西園寺勇儀〜、階級は少将だよ〜、よろしくね〜。」
次は間延びした喋り方をする、ハジメ達とそう変わらない年齢の男だった。
「私は自衛隊の方では有りませんが、スカーレット財閥から調査員として来ました、十六夜咲夜と申します。」
最後に挨拶をしたのが、メイド服を着た女性だった。
こうして、七人は順番に自己紹介をしていった。
その後は交流授業と言う名の通り、彼等との交流が始まった。
主に雑談がメインだが、中には勉強を見てもらってる者もいる。
「後藤さんって年収は幾ら位なんですか?」とか、
「佐藤さんって防衛大首席卒なんですか!?」とか、
「え!?中村さんって既婚者なの!?」とか、
「シルフィさんってやっぱり東欧系の人なんですか?」とか、
「九条さんと西園寺くんって彼女とかいないんですか?」など、それぞれの個性が際立つ質問をしている。
ちなみに回答は上から、
「うーん、月給だと2500万位ですよ。」
「まぁ、一応そうですが。」
「嫁の写真あるけど見るか?」
「Yes。」
「募集中。」
である。
まぁ彼らが人気になるのは時間がかからなかった。
ちなみにハジメはその間に夢の世界へ旅立ち、龍驤は未だドーナツを食っていた。
ーーーー
教室のざわめきに、ハジメは意識が覚醒していくのを感じた。居眠り常習犯なので起きるべきタイミングは体が覚えている。その感覚から言えば、どうやら昼休憩に入ったようだ。
ハジメは、突っ伏していた体を起こし、朝兼定から受け取った弁当をゴソゴソと取り出す。
なんとなしに教室を見渡すと購買組は既に飛び出していったのか人数が減っている。それでもハジメの所属するクラスは弁当組が多いので三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時間目の社会科教師である畑山愛子先生(二十五歳)や後藤さん達が教壇で数人の生徒と談笑していた。
(あの人達も人気になるの早いな〜)
等と考えながら弁当を拡げていると、ハジメにとっての悪魔がニコニコしながらやってきた。
「ハジメくん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
再び不穏な空気が教室を満たし始める中、ハジメは心の裡で悲鳴を上げる。
いや、もう本当になしてわっちに構うんですか? と意味不明な方言が思わず飛び出しそうになった。
「あ〜、誘ってくれてありがとう、でも僕なんかより、八重樫さんや天乃河君達と食べたら良いんじゃないかな。」
そう言って何とか断ろうとするのだが……
「雫ちゃんや天乃河君とは何時でも食べれるから良いの!だから一緒に食べよ?ね?ね?」
駄目みたいですね。
(もう勘弁して下さい! 気づいて! 周りの空気に気づいて!)
刻一刻と増していく圧力に、ハジメが冷や汗を流していると救世主が現れた。光輝達だ。
「香織、こっちで皆でご飯を食べよう。寝ぼけたまま香織と食事するなんて、俺が許せない。」
そう言って爽やかな笑顔を浮かべるイケメンスマイルは今日も健在だ。
しかし、今日に限ってはその笑顔に心から感謝したい気持ちのハジメだった。
だが、少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
素で聞き返す香織に思わず雫が「ブフッ」と吹き出した。光輝は困ったように笑いながらあれこれ話しているが、結局、ハジメの席に学校一有名な四人組が集まっている事実に変わりはなく視線の圧力は弱まらない。
深い溜息を吐きながらハジメは内心で愚痴った。
(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな? どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~~)
現実逃避のため異世界に電波を飛ばすハジメ。いつも通り苦笑いでお茶を濁して退散するかと腰を上げかけたところで……
凍りついた。
ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。
そこに居た大半が金縛りにでもあったかのように、輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを凝視していた。
だが、やはりプロは違ったようで、後藤達はそんな異常事態であっても焦ることは無く、持ってきている全ての装備を手早く装着し始めた。
「全員、戦闘体勢!」
後藤の鋭い号令が飛ぶ。
その瞬間、一瞬の乱れもなく一斉に銃を構える戦自隊員達。
生徒達の大半が、何が起こっているのか理解できず呆然としている。
そんな中、いち早く正気に返った光輝が叫んだ。
「みんな! 教室から出てくれ! 急ぐんだ!」
未だ状況を理解していない生徒達を尻目に、戦自隊員は安全装置を解除していた。
しけし、その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。
未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 早く教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。
数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、ドーナツの入った紙袋、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。
勉強しよ(唐突)
と言うかこんな学校あったら通いたかったわ。
ちなみに後藤さん達が持っている装備一覧(全員同じ装備)がこちら。
持ち歩くもの
・コンバットナイフ(腰裏と利き手の膝の方に一本ずつ常備している)
・SFP9-M(装弾数20発)(コンバットナイフとは逆の膝に装備)
・20式5.56mm小銃(装弾数30発)
・22式7.62mm小銃(装弾数50発)
バックパックに詰めるもの
・ドットサイト
・ホロサイト
・M26手榴弾(20個)
・M84スタングレネード(10個)
・スモークグレネード(10個)
・予備弾倉(各10個)
・ナイトビジョン
・サバイバルキット(サバイバルナイフ、ライター、ロープ等が入っている)
・二週間分のレーション(戦闘糧食II型)
以上。総重量は多分40キロくらい。
ちなみに22式7.62mm小銃とは、この世界の日本が20式5.56mm小銃を作った時に、「あれ?5.56じゃ少し弱くね?うん弱い!7.62mm作ったろ!」と脳筋化した結果生まれた最新の小銃である。
でも、多分最後の方に構えてたのは20式の方。
まぁこっちの方が取り回し良いから……