「グラハムの言っていた通り調査を行いましたが、言っていた通り黄巾の者共が集まっていた近くの邑で件の三人組の旅人を発見しました。」
「そのものたちが今回の黄巾の首魁で間違いなさそうね。桂花」
「はい。上から張角、張宝、張良となります。少し前までは普通の旅芸人をやっていたそうです。」
季衣殿と私が気付いてから秋蘭殿に伝令を出し調査をしてもらったところ案の定すぐに見つかり裏をとれた。
といえば、もう黄巾で定着しているのだな……歴史は繰り返すということか。
「いっぱしの旅芸人がなにを思ってこんなことをやっているのだ?」
春蘭殿が言うとおりだ。旅芸人が急に国をとるという野心を抱えるのはどれだけ国が荒れていると言っても少し疑問が残るな。それよりも一番考えられるのは
「信仰か……」
「信仰?それに何が関係があるのだ?」
「いや、経験談だが。行き過ぎた信仰は争いを生む。例え信仰の対象が争いを拒んでいたとしてもな。」
「???」
どうやら春蘭殿は理解していないようだがそれは秋蘭に任せるとしよう。
「それは厄介ね。そういった者は後始末が大変だもの。野心を持っていれば叩き潰しがいがあったというのに。」
華林殿また出ているぞ……
曹洪殿も頭を抱えているではないか……
「後始末は確かに大変だ。」
「現に苦しんでいる民がいるし、そんなことを気にしている暇はないは。桂花その時は任せたわ。」
「御意。」
「一刻も早く黄巾を退治するわ。朝廷からも書状がきていることですし……」
朝廷か……今は漢だったな。
「それにしても遅すぎるのではないか?黄巾が現れ危険性がしれわたってからそれなりの時間が経っている。統治機関はどうなっている。仕事をしていないわけではあるまい。」
「漢王朝の力はそれほどしかないということですわ……一部な腐敗しているのも理由の一つですが。」
なんと。こうも力がないとは……しかも腐敗もしている。なるほど滅ぶ国の特徴としては当てはまっているな。
「それでは各自いつでも出陣できるよう準備しておくように!かい…」
「た、大変っすーーーーーーーー!!」
「姉さん!?どうしたの!?」
軍議が終わろうとした時玉座の間の扉を勢いよく開け華侖殿が入ってくる。
「どうしたの華侖。」
「報告っす!えぇっと…陳留の隣の郡でまた黄色い布の人達がたくさん出たらしいっす!」
なんとも間の悪い。秋蘭殿と柳琳殿は帰ってきたばかりだ。春蘭殿、香風殿も近場に出ていったばかりである。今準備をして出れるのは兵の数を鑑みて私の隊だけとなる。だが数のことを考えると私の隊と当直の兵では足りないだろう。
「桂花、栄華今から兵の準備をするのにどれぐらいかかるかしら。」
「今から準備をするとなると早夕になるかと思われます。またいつものようなものではなく集団での行動ですので烏合之衆とは違います。入念な準備が必要かと。」
「糧食も、補給が必要ですし桂花さんの言うとおりになるかと」
「遅いわね……」
そうなるのも当たり前だ。こうなっては時間稼ぎしかあるまい。
「ここはわた「僕が行きます!」……季衣殿」
「しかしまだお前も…」
春蘭殿は季衣殿と一緒に行動することが多く過労であるかどうかは彼女が一番良く知っているだろう。だが季衣殿は緩めない。
「こんな時にこそ僕が出るべきだと思います!華林様お願いします!」
華林殿を見つめる目は覚悟が決まった目だった。
「……いいでしょう。ではあなたが一部の隊を連れて即襲われている郡に向かいなさい。」
「華林様。私と柳琳の隊はまだ兵装を解いていません。今からでも出れます。」
「そうね。それじゃあ季衣、秋蘭と柳琳の部隊を率いて行きなさい。兵の運用はあなたに任せるわ。」
「え…僕が秋蘭様と柳琳様の部隊を……?」
「えぇ。今疲れている秋蘭たちに指揮はあまりさせたくはないの。でも秋蘭のほうがあなたより指揮がうまいのは確かよ。助言を聞きなさい。」
「季衣、よろしく頼むぞ。」
「季衣さんよろしくお願いしますね。」
「は、はい……」
「それでは各隊は明日には出れるよう準備を進めなさい。解散!」
さて私も準備するとするか
そう思い玉座の間から出ようとした時
『くっ!このままでは耐えられんぞ!』
『夏侯淵様!西門も破られましたなのーーー』
『東門もあかん!もう限界や!』
『城壁内にも敵がはいりこん』
『許褚様ここは私が……』
『駄目だよ楽進さん。もうすぐ兄ちゃん達が来てくれるんだ。それまで持ちこたえるよ。』
「何だ……今のは……」
突如頭の中に叩き込まれたイメージ。
これから起こることのイメージか?いや、凪が季衣殿のことを許褚と呼んでいた。季衣も楽進さんと……
「あら。あなたはまだいかないの?」
華林殿が頭を抱える私に声をかけてくる。
「いや、問題はない。少し季衣の事が心配でな。」
「そしたらあなたの部下でもつければいいじゃない。よい副官がいるのでしょう?」
「その手があったな。凪を行かせるとしよう。」
「そう。なら早く準備なさい間に合わなくなるわよ。」
「了解した。」
今はあのイメージを考える暇はないか……まずは凪に準備を指示しなければな。
そして……
「さぁ!皆のもの急げ!秋蘭の元にいち早く向かうぞ!」
春蘭殿の指示のもと一部の兵を除き曹軍全軍の強行軍だ。
「いやー圧巻圧巻」
「ここまで並ぶと確かに圧巻ではあるなだが桜居よ。流石に油断しすぎではないか?今日は我が隊の副将なのだぞ。」
我々は今回春蘭殿の隊列に参加している。凪は予定どおり季衣殿の隊の中に十名をつれて同行している。そこで空いた副将の枠に桜居をおいたのだ。
「それ、本当に俺でよかったのか?稜の旦那とか、慊の旦那もいたし……俺この隊で一番新参ものなのに。」
我が弟子だが自信のないことだ。
桜居は黄巾が暴れている間も私と凪で鍛練は欠かさずやっていた。新兵の鍛練もあるので教えていた時間は凪のほうが多いいが凪からは氣を、私からは剣の指南をしている。実力は新兵の頃から大幅に向上し、氣にかんしてはもう私を越えてしまっている。総合的な強さはまだまだだが確実に一般兵よりは明らかに強い。
「昨日も話し合いで話したが、桜居は皆の同意のもと副将となっている。司馬郎の存在はもう我が隊にかかせないものなのだよ。それを自覚しなければ一人前にはなれぬよ。」
「そこまで言われると照れるな……
わかった胸をはって副将を努めるよ。」
「その意気だ。」
これで将としての立場を分かってくれればいいのだがな。稜も、慊も優秀な兵であるが将になれるかと言われれば否だ。幾度も関わったことによって将になれる才覚を秘めていることはわかった。依怙贔屓かもしれんがな。
それを腐らせるのも開花させるのも私だ。まずは経験を積まさなければな。
「グラハム将軍!」
考えていると春蘭殿の部隊の一人が私を呼ぶ。
「どうした!」
「本陣にて秋蘭様の隊より敵が想定よりも多く苦戦しているとの伝令あり。行軍を早める前に軍議を行うと言うことであり至急本陣までいらしてください。」
あの秋蘭殿が苦戦するとはな。凪を行かせて正解だったようだ。だがここに伝令が来るということは私達が到着する頃には門は破られている可能性が高いか……
「了解した。
桜居これからの隊の指示は任せる。稜、慊援護は任せる。」
「りょ、了解!」
「「了解!」」
よしそれでは私なりに始めるとするか。
久方ぶりのワンマンアーミーだ。
「真桜!沙和!」
「分かっとるちゅうねん!ひっさしぶりにあった親友に注文が多すぎるわ!」
「そうなのー!少しぐらい手加減してなのー」
「そんなこと言っている場合か!もう西門も破られかけているのだぞ!秋蘭様お願いします!」
「弓隊!構え!放て!
こうも数が多いいと私でも流石に捌ききれんぞ!」
「皆!もう少しで兄ちゃん達が来てくれるよーそれまでなんとしても守りきるよーー!」
「「「おぉぉぉぉぉ!」」」
本当に私達だけでは少し厳しかったな。義勇軍がいてくれて助かった。しかもそれが凪の友人ときたものだ。凪を連れてきて正解だったようだな。
さて、だがもう限界も近い。兵の士気は持っているが敵との数の差は多きいい。華林様が間に合うかが重要だな。
弓の数も残り少ないか。
「てやぁぁぁぁ!
くっ数が多すぎる!季衣様」
「わかった!えぇぇぇい!
あっ門が!」
くっ門が破られたか!さぁここが正念場だ。
「チッきりがない!あぁもうしゃあないわ!夏侯淵様!許褚様!」
「どうした李典!」
「軍の人達下げてください!ここからは義勇軍が引き継ぎます。」
「さぁくそったれの蛆虫共!びびらず前に出るのー!」
「お前達!?」
確かにこの局面、時間稼ぎをするならば二手にわけたほうがよいだろうが、まだ犠牲を出すような局面ではない。しかも私達は民を守るのが役目だ。これを受けるわけには……
「駄目だよ!!」
「季衣……」
「季衣様……」
「そんなことばっかり考えてちゃ誰も救えないよ!自分を救えない人が他の人を救えるわけない!私達が戦っていれば絶対助けは来る!だからそんなこと言っちゃ駄目!」
季衣がこのようなことを言うとは意外だった。華林様の言葉をしっかりと生かせたようだ。だが少し違うような……
「よく言った!」
やはり貴様か。勝手に次期親衛隊の者を教育するのはやめてほしいのだがな。
黄巾の軍勢の中から聞こえた声。その声の持ち主は巻いていた黄色の布を引きちぎり、我々の元に一目散に駆けてくる。
「なんなんやあの人!」
「うわ~なんか気持ち悪いの……」
「兄ちゃん!」
「隊長!」
「隊長って……凪が文に書いとったあの!?」
「兄ちゃんっていう歳ではないのー……」
「え!一人でここまでいらしたんですか!?」
「ふっ……さんざんな言われようではないか。」
そして我等の軍勢の前にくると
「皆のものよく頑張った!その働きに敬意を表する!ここからはこの私!グラハム・エーカーと」
破られた門のほうを指差すと
「あ、あの旗印は!」
翻る旗は曹、そして夏
「お姉様達です!」
「ほら!来てくれるって言ったでしょ!」
「我等曹軍がお相手しよう!」
黄巾の者共はいつの間にか背後に現れた敵と目の前に突然現れたグラハムを見て動揺している。目の前で味方だと思った人物が味方を殺して寝返ったように見えるだろう。疑心暗鬼にもなる。
「大分派手な登場だな。」
「秋蘭殿か。これ程しなければ私ではあるまい。
季衣殿!」
「は、はい!」
「ここまでよくやった!さぁ将としての最後の仕事だ指示を!」
「うん……うん!皆味方が来てくれたよ!ここから反撃だ!突撃ーーー!」
「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」
「あいつ一人で突貫しおったな!」
「いいじゃない春蘭。混乱させることには成功しているのだし。」
「あの策を聞いた時には肝が冷えましたわ。」
「あんなのただの無茶よ。」
「最後に指示を出したのは私よ。彼はそれを一人でやりとげたの。実際には二、三人は部下を連れていけとは言ったけれどね。内情を知るのが当初の策だったけれどこれはこれで悪くないわ。それじゃあ私達も行くとしましょう。グラハム一人に任せるわけにはいかないもの。」