「なかなかすぐに見つかったな」
あれから荀彧殿の指示の通り調査を行った。するとすぐに敵の本拠地を見つけることができた。
なぜ見つかったかは簡単なことだ。兵が多ければ多いいほどそれを養うための物資が必要となる。例えば糧食のような。それをたどれば自然と見つかる。それを我等は気付いたということだ。
「廃棄された砦ですか……」
「へぇなかなか大きいですね。大将、華林様が言ってたやつ参加すんですか?」
「いや、我等の隊は参加しない。悪戯に部下を死地にさらすことはしないさ。」
桜居が言っているのは華林殿が言った『一番高いところに旗を建てた者に褒美を与える。』と言うものだ。偵察の情報では黄巾の連中は漢軍と戦っている。桂花が言うに王朝にこの砦を落としたのを大々的に見せることによって名を広めるということだ。そのため一番目立つ場所に旗を立てる。皆はそれぞれ意欲はまちまちだがそれぞれ砦に攻め行っている。春蘭殿や季衣はすごいやる気を出していた。恐らくこの二人が旗を立てることになるだろうな。
功ばかりを得ようとした動きかただ。この世では必要である。華林殿の先には必要になってくるだろう。だが
「いささか興が乗らん。」
そう言った理由で我々の隊は周辺の偵察に回されている。
これも重要な任務だ。最初真桜殿や沙和殿が我々の隊にこの戦闘の間入ることとなっていたが戦わない隊にいても仕方ないということもあり秋蘭殿の隊へ参入する流れとなった。
「興が乗らないって……大将……そんな理由で大丈夫何ですか。俺達怒られないですよね。」
「桜居。そんなことを言っても隊長は聞かない。この隊では当たり前のことだ。」
「ははは、よく分かっているではないか。それでは行くとするか」
砦に掲げる曹の旗を一本手に取り凪に声をかける。
「はぁ……一人で行かせるわけには行きませんよ……おともいたします。」
「え、どこかいくんです?」
流石私の片腕よく分かっている。もう片方の腕はよく分かっていないようだがな。
「それでは桜居。私達は別のところに向かう後は任せる。」
「え?」
「しっかりするんだぞ。我隊の信頼を落とさないように。」
「え?」
本当によく分かっていないようだが。まぁ、構わんだろう。上手くやるさ。何せ桜居であるからな。
呆然としているが本当に大丈夫だろう。
「それでは行くとしようか。」
「はい。隊長。」
それでは見せてもらうとするか。
「華林様!」
「何よ桂花。」
私の可愛い軍師が何かあったのか報告にやってくる。表情を見るに重要な要件のようだ。
「砦に侵入する隊にグラハム隊の名がありませんがよろしいのでしょうか。」
「あぁ、その事。彼なら今は砦周辺の偵察をしてもらっているわ。どうやら今回の策には気が乗らないらしいわ。」
「気が乗らないってそんな理由で!しかもあいつはまだ……」
「大丈夫よ桂花。彼なら心配することはないわ。今は砦の攻略に集中なさい。」
「ですがまだあいつは素性が分からぬ身。自由にさせるのはまだ早いかと。」
どうやら彼が裏切ると思っているらしい。確かに彼は未だ素性も掴めない怪しさは他の占いと同じようなものだけれど……でも確かにそうね。彼なら自分の納得いかないことがあれば裏切りもするでしょうね。でも
「大丈夫よ。彼は裏切るなら私に直接言ってくるわよ。彼も言ってたじゃない曲がったことが嫌いだと。」
「ですが任務を果たすためには何でもするということを先の戦いで示しています。反乱を起こした場合どうなるか……」
「ふふ……それも面白いわね。」
「華林様?」
聞かれたでしょうけどまぁいいわ。でも彼と戦うのも悪くないわね。彼が軍を持って私の前に立つ。そして私がそれを打ち砕く。とても楽しいものになるでしょうね。
「いえ何でもないわ。でも本当に気にしなくてもいいわ。二度も言わせないで頂戴。」
「はい……」
やはり納得していないようだけれど兵に指示をするため私から離れていく。
桂花には少し教育が必要かしらね。陳留に返ってからが楽しみだわ。
一方戦場では
「はぁぁぁぁぁ!」
「ていやぁぁぁぁぁ!」
黄巾の者共をもっている大剣で切り伏せる鬼と、とても大きな刺付きの鉄球を用いて叩き潰す鬼。そうこの2人こそ曹軍の夏侯惇と許褚本人である。
「季衣勝負だぞ!どれだけ上にに旗を立てれるかだ!」
「はい!春蘭様!負けませんよ!」
「はぁ!言っていろ!というかグラハムはどこに行ったのだ。」
「兄ちゃん?見てないです。」
「なんだ?早々に諦めたか。張り合いのないな!」
喋りながら迫ってくる敵を倒している。いくら数が多くても夏侯惇と許褚には敵わない。圧倒的な力でねじ伏せられている。
「ちっ!それにしても!うざったらしい!まずは掃除からだ!」
「はい!春蘭様!」
そしてそれを少し離れたところに
「姉者は気合いが入っているな。」
「秋蘭様はいかなくていいの?」
暴れている二人を見ている夏侯淵と徐晃。
「香風のほうこそいかなくていいのか?」
「お兄ちゃんどっか行っちゃったからいい。」
「ならついていけばよかっただろうに。」
「シャン流石に働く。」
と徐晃は体躯にそぐわない斧を片手に黄巾に攻めていく。
その姿は怒っているよりも拗ねている子供のようだ。
「それでは私も援護するとしようか。」
「なかなか壮観なものだな。」
私と凪は砦より少し離れた所にある高台に昇り下を見下ろす。その下では黄巾と軍が戦っている。その軍とは
「やはり数は多いいですね。流石王朝の軍ですね。」
そう今の王朝であり最高戦力であるはずの漢の軍。だが……
「押しているようだがいささか勢いが無いな。」
数では漢軍が上であり、もう砦が攻められていることも黄巾には伝わっているだろう。その証拠に後方ら大混乱だ。逃げるものまでいる。そういった者と戦っているがこれが最高峰の軍とは言えない。士気が弱すぎるのか攻めるに攻めきれていない。流石に混乱がなくても勝てるだろうが苦戦を強いられるだろう。
「隊長、2つの部隊が前に出ようとしています。」
凪の声で再び前線に目を写す。言う通り2つの部隊が黄巾に突貫している。1つは騎馬を中心にした隊もう1つは歩兵が中心か。旗印は張と華。
そして部隊が黄巾とぶつかると
「ほう……」
ものともぜず前進する。あの隊は士気が高いようだな。だがこうも士気に差があるとなると軍隊としては危うい。というか内戦の危機と言ってもいいだろう。こういったことは歴史上良くあることだ。
それにしても強いな。あの隊ならば我等曹軍と仕合ったとしても良い戦ができるだろうな。特に最前線で戦っている将であろうか。ここからははっきり見えないが尋常ではない力をもっていることがわかる。
「凪よ。将らしき者はわかるか?」
「はい。恐らく最前線の2名かと。ですがここまで強いとは思ってみませんでした。官軍は一部を除き頼りにならないと聞いておりましたので。」
「そこまで民に言わせるとは……華林殿の言う通りになりそうだな。」
「恐らくは。隊長、そろそろ引きましょう。黄巾もで逃げ初めております。官軍にばれては厄介なことになりますので。」
「確かにそうだが……もうそれは心配いらない。」
「?何故です?」
「もう見つかっているからさ。」
戦場より馬上にいる彼女は確実に目線を私に合わせている。いや、睨んでいるが正しいか。ここからでもわかるこの覇気……やはりただ者ではないか。
だが私は睨み返す。武人としての礼儀であろう。そして手に持つ旗を広げ私達が曹軍であることを示す。
すると纏っていた覇気を急に納め。黄巾に再び突貫する。
「気付かれていたのですか。あの戦場の中で……」
「経験による勘や気配といった類いだろう。良き武人がいるようだな。それでは帰るとしよう。」
「はぁ……それにしても何故官軍が見たかったのですか?」
「いや、この国の正規の兵はどれ程かと気になったのだよ。」
「それでわざわざ見てどうだったのですか?」
「少々問題はあるがあれ程の武将が何人かいるのだからまだいいだろう。士気の差を見ると恐らくその上の上司が出来ているのだろうな。その者がいる限り大きな問題になることは少ないだろうが、その者が動いても変わることはないだろうな。国とはそういうものだ。」
「まるで見てきたようにいいますね。」
「なに、ただの勘だよ。さて帰るとしようか。そろそろ我等の軍が砦を落としたころだろう。確か一番高いところに旗を立てた者には褒美を与えるだったか」
「やはり春蘭様でしょうか?」
「やはりそうか?だが季衣殿も捨てがたいな。大穴で華侖殿もあり得るな。」
「というか話してる場合ではないですよ。終わってからだと桂花様にどれだけ怒られるか。」
「そうだな。それは避けたい。」
「それであんたはどこに行ってたわけ?」
「華林殿から聞いていなかったか砦周辺の偵察を行っていた。」
「それで伝令を送ったらあなたがいなかったと聞いたんだけど?」
「少し離れた所に偵察に行っていたのだよ砦周辺も中々広くてな。」
「あぁもう!あぁ言えばこう言う!大々……」
というように案の定だが荀彧殿に少し怒られているが気にしない。実際偵察をしていたのは確かではあるからな。
それよりも
「秋蘭~……」
「はぁ。いじけている姉者も可愛いな。」
「やったーー!勝ったーーー!」
「流石です。季衣さん。」
「やったすね!」
「流石ですわ!」
どうやら勝負は季衣が勝ったようだ。
「あら、グラハム遅かったじゃない。どうだったかしら?」
「見ていて正解だった。感謝する。」
「なら結構。見てきたものを私の元で生かしなさい。」
「了解した。して、これからどう……」
「あんたまだ私の話が終わってないでしょ!あんたのせいでどんだけ迷惑被ったと思ってるのよ!」
「いいじゃない桂花。それよりも早く帰還の準備をなさい少し開けすぎたわ。それと季衣。」
「は、はい!」
「褒美の内容は決まったかしら?」
「それがまだ……」
「そう。なら帰るまでに決めておきなさい。なら帰りましょうか」
ようやく少し長い遠征が終わるか。浮遊艦船や、モビルスーツがないのがこのときばかりは不自由に思うな。
「曹操様!ご報告です!」
そして帰る支度を整えるために陣から出ようとしたところ慌てたようすで中にはいってくる。
「早く言いなさい。」
と荀彧殿が急かす。
「は!豫州沛の国の陳珪殿より伝令が来ています。」
「陳珪から……いいわ通しなさい」
「は!」
と言い今度はまた違った兵が入ってくる。外装は大分汚れている。ただの使者ならばこう言った格好では来ないはず。なにか悪いことが起こっているのだと皆勘づいている。一部を除いて……
「謁見ありがとうございます。」
「礼はいいわ。要件を伝えなさい」
雰囲気を悟り華林殿が答える
「はい。黄色の布を巻いた集団が大群を率いて、我等が沛国の都を襲っています。」
「なんですって!?」
流石にここまでは華林殿も予想はしていなかったようだ。後ろにいる荀彧も驚いた表情を一瞬浮かべるが即顔を戻し思案にふける。
「包囲が完了するまでのわずかな時間で陳珪様の命を受けこの地に出陣している曹孟徳殿に助けを求めるようにと……」
確かに誰も予想はしていなかった。ここの黄巾も少なくない数だった。治めればある程度安定するだろうと考えていたが浅はかだったか。相手は賊の集まり。軍とは違いいつでも集まることが出来戦力の補給は用意。
「分かったわ。あなたは控えていなさい。向こうに食事と寝床を用意させるわ。」
「感謝いたします。」
華林殿の言葉に礼をしふらつく足取りで陣を出ていく。よほどつかれていたのだろうな……
「それにしても困ったことになったわね。」
本当にそうだ確か陳登は今沛国に帰っているのだったな。
「どうなさいます?」
秋蘭殿が華林殿に聞く。
「もちろん。助けにいくわ。陳珪には借りも多いし、陳登はこれからの陳留に欠かすことの出来ない人材よ。」
「反対です。」
華林殿が下した決断に反論する人物荀彧殿だ。
「我が軍は連戦に連戦を重ね疲弊しきっています。そして何より糧食が足りていません。」
「わたくしも桂花さんの意見に賛成ですわ。救出に向かうにせよ、いちど陳留まで戻り、準備を整えるべきかと」
意見に賛同した栄華殿に押され荀彧殿はさらに言う。
「陳珪は朝廷との癒着の証拠も多く見つかりました。こちらを潰すための罠の可能性も否定できません。官軍と結託している可能性すらあります。なので事実を確認し救援に向かうのがよろしいかと。」
「……くだらんな」
途中で抑えようとしたがつい言葉が出てしまった。私の悪い癖だ。陣の中は静まり返り私にのみ視線が集まる。
「何がくだらないのよ!」
流石に怒った荀彧殿が声を荒げる。
「いや、良き策だと思っただけだ荀彧殿。確かにそうだな。兵を疲労困憊、糧食も尽きている確かにそうだ。事実に違いない。こちらを潰すための罠、官軍と繋がっている。ふむ、確かにそうかもしれない。それをかんがみていちど引き事実確認をしてから出陣。良い策ではないか。」
「な!?……なら何よくだらないって」
何故誉められているのかわからないと言った感じなのだろう。戸惑いながらも反論を返す。流石我が軍師。
「それでこの良い策をとって陳珪殿と陳登殿を救援できる可能性はいかほどか聞かせてもらってもいいかな。」
「………一割」
「なるほどそうか。ならば九割見捨てる策を取るということで間違いないな。」
「そうよ。確かに見捨ててしまうかもしれない。でもあんたも言った通りの状態なの。こちらも不可能なことはできないそれだけよ。」
なるほどあぁも裏切りを掲示したのはこの策が一番と華林殿に説明するためか。今の荀彧殿の表情は悔しそうな顔をしている。それを知り得ただけでも私の悪い癖が出た意味があったな。ならばこれからは私の出番だ。
「申し訳ない荀彧殿。くだらないと言った言葉訂正しよう。その策でいこうではないか。」
「何よ急に!しかもあんたが決めることじゃないでしょ!」
「栄華殿糧食のあまりはどれ程だ?」
「は、はい。もう1日もつかどうかだと思います。」
「軍ではない。30人ならばどうだ。どれぐらいもつ。」
「貴方まさか!」
「あぁ、グラハム隊が先行して向かう。」
そう言うとまた陣が静まり返る。
そして口を開くのは私ではなく華林殿
「グラハム何故そう考えたのか聞かせてもらっていいかしら?」
「私の隊の役目は有用な将を生け捕り仲間に加えることだ。陳珪殿も陳登殿を有用な人物これをなくすのはおしい。二人程度なら隠密に優れた隊である私の隊ならば可能性はあるだろう。」
そしてしばし沈黙が続く。私の目と華林殿の目が重なる。流石のプレシャーだ。足がすくみそうになるが抑える。
「それで本音は?」
「私の矜持に反する。仲間が死にそうになっているのだ。それを助けずして何が仲間か。」
華林殿はやはりなんでも見通してくるものだ。私でも口では勝てないな。
私の言葉に最初皆黙っていたが
「へへっ兄ちゃんらしいや。華林様僕も着いていっていいですか?」
季衣が笑いながら私の側に立つ。
「僕も困っている人たちを助けたいんです。今回のご褒美を僕のわがままに使わせてください。」
季衣殿……やはり成長したようだな。
「………はぁ」
ため息をつく華林殿。そして顔を上げる
「二人とも早とちりしないで頂戴。誰が見捨てると言ったかしら?」
人を試しておきながら良き顔をするものだ。我等が王は。