「「「お、覚えてろーーー」」」
そう言って、盗賊の三人組は荒野に逃げていった。
「ふぅ、徒手空拳の腕もまだ鈍っていなかったようだな。」
「お兄ちゃんやるー」
「お、お兄ちゃんか…できれば違う呼び方で呼んでもらえなないだろうか?」
「じゃあ....................お父さん?」
「..............お兄ちゃんでお願いする......」
マイペースな彼女との会話を楽しむ。
盗賊達との戦闘時の覇気は全く感じない。というか、今この少女を見ると、可憐で弱く見えてしまう。片手で持っている大斧をを除けば…
戦闘の時は怯えるほどの覇気を放ち、それを今は完全に押さえている。どれほどこの少女は強いのだろう?
そう考えれば考えるほど昔の血が滾るが…今は現状把握が必要だろう。
再び周りを見渡すと周りはやはり荒野所々大きな山が見える。様々な地形を見てきたがこのような地形は初めてか荒れ地になった箇所はわかるが、ここはもとから草木があまり育たない場所なのだろう、少し違うように感じる。ならここはどこだ?
「お兄ちゃん…?」
というか、私は確かあの時に死んだはず.........それから先の記憶は靄がかかったように曖昧だ。マッチョなほぼ裸の男に送られてきたことは認識はしているが.....
あの盗賊達も奇妙だ。なぜ今の時代銃火器で武装せずに刀剣類のみでの武装で.....だが殺気は本物であったし、場数はいくつも踏んでいるのは確かであり逃げる判断もよかった。
「お兄ちゃんってば......」
「おぉ、すまないシャン殿。一人で考えてしまっていた。私も今の現状を理解しきれていないのでね。」
「やっと気づいてくれた。お兄ちゃんって結構強いんだね。せやーーとか、そやーーとか。見ててかっこよかったよー。」
「誉めてくれるとはありがたい。シャン殿のほうこそ、とても良い戦い振りであった。」
「えへへー」
反応は見た目相応だ、あの戦いを見た後だと印象がまるで変わるものだな。私が考えた疑問も彼女に話せば解決まではしなくても情報は得られるだろう。
「シャン殿聞きたいことがあるのだ」
「はぁぁぁぁぁ!」
聞こうとしたとき、上空から声が聞こえてきた。
上を見上げると女性が私に薙刀で斬りかかろうとしていた。
「っ!?」
何とか後ろに飛びかわす。
「シャン殿帰りが遅く心配いたしましたぞ。あの奇妙な服を着ているものが見かけた盗賊ですかな?しかもあやつ香風殿の真名まで呼んでいた様子。この趙子龍加勢いたしますぞ。」
と言い女性はシャン殿を守るように構えている。
当人であるシャン殿は
「???」
後ろで首を傾げていた
もう一方の女性はもう私に斬りかかる準備をすませている。状況を見たところ香風殿の御友人なのであろう。
それで私をあの盗賊と同類のものだと勘違いをして私に斬りかかってきたのか。だがそれ以上に憤慨している。
私から何を言っても聞いてくれそうな雰囲気ではない。また、戦わなければならないのか。いや、これならば逃げたほうが良いのか…と相手を見るが
逃がしてくれそうにはないなならば…
と構える。相手は薙刀こちらは徒手。圧倒的なリーチの差がある。
そうして二人目線が合わさりどちらかともなく飛び込もうとした
「ちょっとまったーーー」
「香風殿?」
シャン殿が私達の間に割ってはいってきた
「あのね、お兄ちゃんはシャンの...シャンの...そう友達。だからね星もお兄ちゃんも喧嘩しないでー。」
「そうなのですか?私の早とちりでしたかな?」
一瞬にして張り詰めていた空気が弛む。少し冗談を言うような軽口で女性はシャン殿に話しかける。
「そうだよー星も焦りすぎーシャンが負けるわけない」
と、胸をはって言うシャン殿
「はははっ。その通りですな。」
と女性と会話を始める。そしてシャン殿と一言二言話した後私のほうに近づいてきて
「いや、すまなかった。盗賊と早とちりしてしまっていたようだ非礼を詫びさせてほしい。」
「いや、私も紛らわしかったのだろう。貴殿のような腕のたつかたが間違われたのだ。こちらこそすまなかった。」
「おや、一目見ただけでわかりますかな?」
「もちろん。こう見えて見る目はあるのでね。」
「貴殿もなかなかやるようではないですか。どうです?ここで一勝負。」
「いや、やめておこう。友がそちらに構いすぎでむくれてしまうのでね。」
沈黙が続く、会話は普通のものだが。この会話の真意はお互いがどういう人物なのか?危害を加える人物か?というのを見極めるというものだ。彼女もなかなかの強者であり、こう話している間でもこちらから目を離さずに、一挙手一投足を見ている。
そして品定めが終わったのかため息をついて、手を伸ばした。
「面白い御方だ。我が名は姓は趙名は雲と申す。香風殿の友人であり旅の仲間だ。」
姓名?日本の文化圏かここは。いや、趙雲か、武士道を学ぶ際兵法書を呼んでいるとき目にした名のようなきがするがどうだっただろうか?
まぁ、まずはこちらも礼を正さねばな。
「そうか。私はグラハム・エーカー。シャン殿の友である。よろしく頼む趙雲殿」
「ぐらはむえぇかぁ?言いにくく長い名だですな。もしや異国ものか?」
「どうやらそうらしい。私はあの空から降ってきたのだからな。」
私が空を指差すと
一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐ笑いだし
「ははははははははっ!いえ、もう冗談はなしでございますよ。私とあなたの仲ではないですか。」
「シャン殿。そうであったよな?」
「うん。お兄ちゃん空からヒューーーって降ってきたの」
「それは誠ですかな?この趙子龍を二人してからかうとは、どうなっても知りませんぞ?」
と、いたずらな笑みをうかべたが
「「..................」」
「ほ、ほんとなのですかな?」
と、二人して圧をかけると少し焦ったような顔をした。
そしてシャンと共に今までの事情を話すのであった。
「本当なのですかな?いや、香風殿が嘘を言わない人であることは百も承知なのですがあまりに話が飛んでいるものですから。」
「うん。シャン嘘つかないよ。」
やはりそう簡単には信じてはくれないようだ。どうしたものかと困っていると
「あの占い師が言っていた人ではないのかなーと風は思うのですよー」
「天の御遣いですか?彼が?」
と、また違う女性の声が二つ聞こえた。
「あ。風、稟。」
と彼女達の名を呼ぶ。というかシャン殿は趙雲殿を呼ぶときに星と言う名で呼んでいた。この地の特有の文化なのであろう。最初から礼儀を失すれば信用は得られまい。
眼鏡をかけた女性と、頭の上に奇妙な人形を乗せた少女にたいして
「そちらのお二方もシャン殿の御友人であろうか?私はグラハム・エーカー。先ほどシャン殿に助けられ友となった。以後お見知りおきを。」
と、地に正座をし頭を下げる。
「これはこれはどうもご丁寧に~私は程立と呼んでください~」
「天界から来ても礼儀は知っているようですね。私は今は戯志才と名乗っています。」
「それにしてもぐらはむえぇかぁって言いづらいですね~本当は名前の一つや二つつけたいところですがいささか時間が悪すぎましたね。」
「風何かありましたかな?」
「何かあったの....?」
「どうやら苑洲の太守の隊がこちらに向かっているようなのです。」
すると皆の顔が面倒事が起きたような顔をしていた。
「ということでおじさんはその人たちを頼ってください」
警備の隊か、まぁ確かにここがどこかもわからん私にとっては身を寄せるには適当なところであろう。
というかおじさんか......私も歳を取ったものだ。
だが、なぜシャン殿を含む皆は嫌がっているのだろうか?
「私達を、盗賊か何かと勘違いしておられますな。失礼な」
「星....人のこと言えない.....」
「お、そうでしたな。でも心配なさるな。私達は流浪の身今はどこにも仕官することは望んでおりませぬ。だが、私達を知っている人が腕の立つ我等四人を見つけたらどうなると思います?」
優秀な人材であれば取り入れたいと思うのは当たり前の心情であるが、それをこの四人は今のところ望んでいない。
なるほど
「そういうわけか」
「そういうわけなのです。ならば私達は早くこの場を去るとしましょう。行きますよ風。」
「は~い。ではおじさんおさらばです~」
「では私も。よき縁を願っておりますよ。行きましょう香風。」
「あ.....」
といって四人は荒野の向こうに去っていった。
うーむ、何も情報を聞き出せなかった。
分かるのは武器を帯刀していると言うことはそれなりに危険がつきまとう場所であると言うこと。仕官と言っていて口振り的に仕官先が複数あるのだろう。ということは
「戦が公にある世界ということか....」
この結論は私の仮説と勘でいたった結論ではあるが最低でも戦はある地域なのだろうだが内戦と言う程切迫してはいないようにも感じる。あの四人が仕官先を迷える時間があるのだから。
ただ天の御遣いと言っていたが、なんなのだろうか占いがどうとか言っていたが....
と考えている間に逆の方向から歩いてきている人がいる。うむ人数は表立って立っているのは三人。長い黒髪の女性、青色の髪の女性、そしてその女性達の少し後方に綺麗な金髪を左右で結んだ女性がいた。
「華林さまこやつが例の賊でしょうか?」
近づく長い黒髪の女性が私を見て言う。
「いや、おそらく違うわね。もっと年かさの中年の男たちだと聞いたわ。見たところ歳は30ほどでしょう。それ以前に顔立ちが私達とは違うじゃない。異国のものなのではないかしら。ならば皆、妙な顔をしていたと言うはずよ。」
「ですが、どういたしましょう。連中の仲間であるかもしれませんし、引っ立てましょうか?」
おっとまったここで捕まってしまっては元もこもない。
「苑洲の太守というのはどなたか。」
「あら、異国の者なのに言葉が上手じゃない。でも名乗るならあなたが先ではなくて?」
「失礼した。我が名はグラハム・エーカー。つい先ほど空から墜ちてきたばかりの者です。」
そう言うと訝しげな顔をする女性達
「空から?あなた、私に冗談を言うつもり?」
「冗談ではありません。右往左往も分からぬ状態であり。一時保護していただけるとありがたい。」
「空から?そんな冗談華林様の前で通じるか!こやつ、やはり嘘をついてます!何か隠さねばならぬことがあるのでしょう。引っ捕らえましょう華林様。」
黒髪の女性はそう華林と呼ばれる少女に言い私に大きな剣を持ちながら近づいてくる。青髪の女性は私を敵を見るような目で見て見定めている。ここで下手なことをすればすぐに殺すという殺気が伝わってくるほどだ。
「待ちなさい春蘭。」
金髪の少女が、黒髪の女性を退けて近づいてくる。
そして私の首に鎌のような刃を持つ武器を突き立てる。
そして私の目を見ている。
「..............」
「..............」
今日で二回目の嫌な沈黙が続く。だが、この沈黙はさらに重圧が乗る。首に得物を突き立てていると言うのもあるが、少女の覇気が私にそうさせる。恐怖が私の感情を支配する。逃げなければ、立ち向かわなければ殺される。私の中で私が警鐘をならす。
だが、ここで目を逸らしてはいけない見続けなければならないそうでなければ私は少女の持つ得物によって首をはねられる。少女は私の覚悟を示せと言っている。ならば私も覚悟を示すまで。
「........」
「.........」
「良い眼をしているわね。歴戦の武人の眼を。」
「貴殿こそ、良い眼をしている。まるで研ぎ澄まされた刃のようだ。」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
そう言って得物を私の首から遠ざける。
「えぇ。信用してあげるわ。あなたは嘘はついていない。春蘭、秋蘭武器を下げなさい。」
「しかし....」
「下げなさい。」
再び凄むと大人しく二人は武器を下げた。
「試すような真似をして悪かったわね。確かぐらはむと言ったかしら。」
「あぁ、グラハム・エーカーだ。」
「そう。ならば私を名乗らなくてはね。」
少女は胸をはりこう言うのだ。
「苑洲の太守、名は曹孟徳。そして後ろにいるのは夏侯惇と夏侯淵よ。」
そして私は知るのだ。よく知っている彼女の名を。
「魏の曹孟徳......」
私はこの時やっとのことで理解した。彼女の名を知り、覇気をこの身で受けたのだ。もう否定しようもない。ただ一つ疑問なのが
なぜ美しき少女になっているのかだけであった。