「よし、準備は怠るなよ!明日の朝には出発だからな!」
「春蘭様。これはどこおきます?」
「あぁそれはだな……」
「もう姉さん……わからないことがあったら教えてって言ったでしょ。」
「へへへ……ごめんなさいっす……」
場内は朝から騒がしく太陽はもう真上に浮かんでいる。皆明日の出陣の準備で忙しいのであろうな。
昨日捕まえた賊は黄巾の連絡役だったらしく、ここ近辺の部隊を集めている最中だったようだ。そしてそやつが持っていた書状には詳しい本体の位置と集合場所や集合日攻める日等こと細かく書かれていた。それを見て我々曹軍は華琳殿の決定で即座に叩くべく準備を整え相手が準備をする前に叩くことにした。
出陣は曹軍の全部隊。ここで長きにわたっている黄巾の者共との戦いを終わらせるつもりなのだろうな。
ん?それでは私は何をしているのかと?準備はしなくて良いのかだと?それはな少人数の我々の部隊、準備など一瞬にして終わっているのだ!武具防具の確認、糧食の補給、柳琳殿への報告全て済んでいる。よって
「暇である!」
「だからといって私のところに来ないでくださいまし!」
手持ち無沙汰だったため、曹洪殿のもとで仕事の手伝いをしている。流石に私がこの軍の金銭管理を決めるわけにも行かないためやっていることといえば曹洪殿が確認し署名をした資料をまとめたり少し荒れているこの部屋の掃除をしていた。最初は曹洪殿と周りの文官からは迷惑がられていたがいざ仕事を始めるとそれはなくなった。
「隊長さんこっちに未処理の書簡を回してくれます?」
「了解した。」
「隊長さん。これを夏侯惇様に届けてもらえませんか?」
「承知した。だが昼も近い今行けば休憩の時間と被るだろう。それが終わってからでも良いかな?」
「はい。問題ないです。ありがとうございます。」
「隊長さん。ここなんですけど……」
「少し見せてもらおう。」
ふむ。この資料は真桜殿の隊の雑費か……確かあそこは今回いつもとは違う兵器を開発しているのだったな開発費としての費用なのだろうがこれでいいのだろうか?
「曹洪殿。」
「なんですか?」
「ここなんだが……」
といいもらった書簡を渡す。
「また真桜さんですか……」
どうやらこういったことは多々あるようだ。いっそ凪にでも絞って貰うか……
曹洪殿が書簡に目を通した後
「はぁ……これは真桜さんに返しておいてください。雑費が明らかに多いいです。
それともうお昼ですから休憩にしましょう。」
と言って昼の仕事は解散となる。
「グラハムさんもありがとうございました。
というか皆あなたのことは隊長さんというのですね。」
公の場では『グラハム将軍』と言ってくれてはいるが多くの場合は『隊長さん』や『隊長様』などで言われることが多いい。グラハムと言うのは親しいものしか言っていない。『隊長さん』と言っている人物と仲が悪い訳ではない。皆グラハムという発音が少し難しいのだろう。またエーカーの部分は特に言いにくいのだろう。身近なものでもフルネームで言ってくるものなど全くいない。たまに華琳殿が言う程度だ。
「皆言いにくいのだろう。私も許しているから構わぬさ。」
「それならいいですけど……それで私に要件があるのでしょう?」
「要件?なんのことだ?」
「私に何か頼みたいことでもあったのでしょう?手伝いに行く場所なんて多くあるでしょうし。」
「いや、そんなやましいことは考えないさ。というかそもそも曹洪殿の仕事には手をつけてないではないか。」
曹洪殿は自分の仕事は絶対他人に任せることはない。プライドを持っているのだろう。合ったばかりの時手伝おうとしたが強く拒否されたことを良く覚えている。それだけ自分の仕事に真摯に向き合っているということだ。だから手伝う時は決まって周りの人に回した仕事の手伝いや身のまわりの世話などをしている。手伝いをしているのはもちろん下心もある。華琳殿から仲良くするよう言われたところなだからな。
「ではあなたは何の目的もなく手伝っていたと。」
「あぁその通りだと言いたいが目的はあるとも」
「なんですか?」
「曹洪殿と親しくなることだ。」
「はぁ……?」
そんな顔で見ないでもらいたい。
「良く華琳殿から注意されたのだよ。」
「お姉様から?」
「将程の地位の中で私が真名を呼んでいないものが二人いることを先日言われてな。」
「確かに私や桂花さんのことを真名で呼んでいませんね。」
「私としては無理に呼んで不快にさせるのは進まないのでな。」
「………」
何を言っているのこの人は?という顔で見られる。
私は何かおかしなことでも言っただろうか。
「私はあなたに真名を許していますよね。」
「そうだな。初対面の時に許してもらった。だがあの時は半ば強制で曹洪殿も嫌々だっただろう?」
「まぁそうでしたけど……」
「よって再び真名を呼ぶのを許してもらえるまで私は真名を呼ばぬと決めているのだよ。今は確かにあの頃より格段に信頼関係を築けているとは思うがな」
「………はぁ……」
明らかに呆れたようなため息をつかれる。
「それは先に言わなければ伝わりませんわ……
私はあなたにもう真名を許しているつもりです。その認識を持っているのに再び真名を許してもらうために関わりにきているなんて気付くわけありません。」
「うっ……それはそうだな……」
あまりそこを考えてはいなかった。今まで以上に親しくなりさえすれば察してくれると思っていたが確かに最初から真名を預けたと認識していたのであれば私の行動の真意には気付かない。
「しかも、あなたは日頃から仕事を手伝ってくれるのですからもっと良くわかりませんわ。」
「す、すまない……」
「まぁいいですわ。」
そういい曹洪殿は立ち上がって。
「私の真名は栄華。あなたにこの名を預けますわ。今度は正しく受け取ってくれますわね?」
「あぁ……預かった名に恥じぬよう、その信頼に答えよう。」
「えぇ勿論です。私の真名は安くはありませんから。」
私は栄華殿との信頼関係を再認識する。
グラハムさんから真名のことについて聞いたときは本当に呆れた。そして同時にグラハムさんは私との信頼関係を築けていないと思っているのではと思った。私の真名を呼ばないのはただの気づかいであると思っていたし実際そうだった。だがそれが本当に信頼がないから真名で呼ばなかったのでは?そういった不安がよぎった。
グラハムさんは少し言動が気持ち悪いことがありますがそれ以外は信頼に足る人物。私の仕事も必要以上に手伝わずに私の意思を尊重してくれる。そして一将としても良い成果を残してきている。これまであってきたような言葉だけの男とは違うのだろう。なので他の、あくまで他の男よりは信頼しています。それが私の一方的なものなのではないかとそう思ってしまった。
こちらが信頼しているのにあちらはなにも思っていないなど、これほど虚しいことはない。まぁグラハムさんの話を聞くとそんなことはなかった。ただ分かりにくいだけだった。誰が許した真名を再び許せということに気付けといいますか。無理な話ですわ……
どうにか私が思っていることは伝わったようで良かった。そして今はグラハムさんと外に昼食を食べに行っている。
城の食堂にいったところ、少し早い時間から休憩にしたというのに多くの兵が食事をとっていた。ある程度男の人は大丈夫といってもここまでいると少し私にはきつかった。桂花さんなら卒倒しそうですわね。
そうしたらグラハムさんが良い店があると言われて外に出た。
「ここだな。」
「なかなか歩きましたね。
といってもここですか……」
連れてこられたのは町の外れ。見た目は少し古い。ここが本当に店なのだろうか?という程他の民家と見た目が変わらない。
グラハムさんに言われるがまま入ると外見とは違い綺麗な内装が広がっている。
「いらっしゃいませ。あら、隊長さん。」
「二人だが大丈夫かな?」
「えぇ勿論ですよ。あなた!隊長さんがいらしたからいつものを二人ぶん宜しくね。」
「了解。」
奥から出迎えてくれた人の旦那さんの声が聞こえる。
「ささお席に案内いたします。」
そういって席に案内される。どうやら私達以外に客はいないようですね。
私達は対面の席にそれぞれ腰かける。
しばらく無言の時間が続く。何か気が利く言葉でもかけれないのでしょうか。待っているとお茶が運ばれてくる。
注いでいる茶器を見るとわりと本格なもののようだ。
器とり口に運ぶ
「美味しい……」
私が城で毎日飲んでいるお茶より美味しい。深みがあり飲みやすい。城で飲んでいる茶葉も安くないものなはず。それと比べてもこちらのほうが美味しいと感じるほどの差があった。
「そうか気に入ってくれたようで何より。」
グラハムさんは私の表情で察したのか笑顔で語りかけてくる。
「グラハムさんは良くここにこられるんですか?」
「あぁ。仕事終わりや休日には来ることが多いいな。失礼だが人が少ないところもいい。そして茶も上手いときた。一人で落ち着くにはとても良い場所だ。」
「本当に失礼ですわね……まぁ落ち着くには良い場所というのは同意します。それにしてもこのお茶……何の茶葉何でしょうか?」
「あら内の茶葉気に入ってくれたのお嬢さん?でもねそれは秘密にしてるの面白くないじゃない。」
私のことをお嬢さんと呼ぶのだから私のことを曹軍の金庫番ということを知らないのでしょう。ここにきてあまり時間がたっていないのでしょうね。このお茶だけでも話題になってもおかしくないでしょうに。
「はい、お待たせ。」
運んできた器を机の上にのせる。餃子、小籠包、焼売などの点心と先程の茶を入れる茶器と茶葉が置かれる。
「ここは飲茶のお店なのですか?」
「う~ん。少し違うわね。ここはどちらかというと点心を主たに置いているの。少し珍しいけどね。」
「はぁ……」
点心が主役なのはあまり聞いたことがない。点心とは主食が来るまでの繋ぎの料理や、軽食をさす。
それほど自信を持っているということでしょう。
「いただきます。」
グラハムさんはそう言って手を合わせる。彼のいた世界の礼儀といっていたが……そう考えてる私を見ずに彼は食べ始める。
私も食べるとしましょうか。でも少し早いのもあってあまり食べれないのですよね……結構量がありますしどうしましょうか?
「食べきってしまった……」
机に広がっていた点心はもうすでになくなり。甘味の胡麻団子ももはやなくなっている。
だって仕方ないじゃありませんの点心は全体的にあっさりとしていて少しある油もお茶で流してくれるのですから。まぁ明日から遠征な訳ですし大丈夫でしょうかど……
「どうだ?美味しかっただろう?」
「はい……食べすぎてしまうぐらいには……」
「ははは、ならば連れてきたかいがあったというもの。それでは帰るとするか。」
そしてお互いに立ち上がりお金を払いに行く。
「今回は私が払おう。」
「いえ私の分は私が払いますわ。」
「問題ないさ。私は給料はほとんど使っていないのでな。」
「それは関係ありません。お金の話は後で尾を引くんです。」
お金は決して勢いで無駄遣いしていいものではありません。それにここで払ってもらったとなれば下手に借りを作ってしまう。男相手に借りを作るのは進みませんわ!
と言い争っていると
「もうそんな言い争って。親子喧嘩は外でしなさいな。」
「だ、誰が親子ですか!」
親子と言われ真っ先に反応した。確かにグラハムさんは私よりも一回り歳をとっていて金髪で碧色の目をしていますが……って思ったより一致はしてますのね……
「いや、彼女は私の仕事仲間だ。少し城のほうが混んでいてなちょうど良いから連れてきた次第だ申し訳ない。これが代金だ。」
「あら、すみません。結構似てらしたものですから。お嬢さんもすみません。またいらしてくださいね。」
とグラハムさんはもうお金を払ってしまい。私も背中を押され外にでてしまった。もうこうなってはなにも言えませんわね……
「ありがとうございます。」
「こちらこそすまない親子と間違われては少し思うところもあるだろう。まぁこれ以上この話を広げないほうが良いだろうな。」
「はいできればそうしてください。それにしても良いところでしたね。」
「そうだろう。また空いてる時にどうだ?」
「その時は一人で行かせていただきますわ。また勘違いされたくありませんもの。」
「振られたな……」
「さてあちらに帰って仕事を済まさなくては行けませんね。グラハムさんは……「私も手伝おう」そう言うと思いましたわ。では昼前に言っていた真桜さんと春蘭さんの所に行ってから来てください。その後は手伝うものがあれば手伝ってもらいますわ」
「了解した。」
そして珍しく男性と過ごした昼は過ぎていったのだった。
やはり運動は少ししましょう……