「成る程ここが洛陽……都と言われるだけ栄えている。」
「そうだぞ。いくら天の国でもここに敵う都市はないだろう!」
そんなことはないのだが何も言わないのが正解だろう。ということで私は華琳殿の任命式の護衛として同行している。陳留には荀彧殿と柳琳殿華侖殿グラハム隊の凪、桜居そして季衣が留守を任されている。実際には都の見学が主な内容だ。式には私は参加できない。どうやら異国のものは禁中に入ることは許されないという話だ。時代が時代なのだろう、仕方がないさ。
少し忘れていた視線が私を見る。そして皇帝陛下のいる城にたどり着くと一人の男が私達を出迎えた。一瞬私を悪意ある視点で見たが華琳殿が目の前にいるとわかるとすぐに頭を下げ下からの態度となる。このような者にはなりたくないものだ。
「グラハム、悪いけど先程話した通りよ。」
「了解した。定刻にこちらに向かう。」
「えぇ。それまでは楽にしてなさい。」
というと皆をつれて城の中に入っていく。
ふぅここからは自由時間か……取り敢えず町を回るとするか。
町は確かに陳留よりも大きく品揃えは様々だ。流石は都と言いたいところだが……
「人通りは昼の町にしては少ないな……」
人はいないわけではなく多くの人がいる。陳留よりは多いだろう。だが大通りにしては少ない悠々と歩く場所が確保されている。陳留の昼はこうはいかない。
そして居心地が少し悪いな。見てくる視点もそうだが活発とは言い難い。暮らしにくそうだな。
そして後ろには四人か……
最初からおってきていることには気づいていたがここまで露骨だとは思わなかった。正直に言えばただの素人。あの中の唯一の男ということで拐えば脅しの材料になるとでも思っているやも知れんな。軍としての統一がとれていないか……これは本当に滅びるのは早そうだ。
取り敢えず撒かなければな何か良い道はないかと考えるが曲がり角などで撒くことは出来ないだろう。地理的な不利がある。人ごみに紛れるには人が足りない。どうしたものか……
「おーい!こっちや!こっち!」
とどこかしらか声が聞こえる。声のするほうを見ると紫色の髪、そしてサラシを巻いている女性が茶屋の前で私に向かって手を振っている。会うのはこれで三度目だな
「張遼殿待たせたな。」
「えぇよえぇよ。洛陽は初めてやろ?しゃあないしゃあない!ほなじゃあ茶でも飲もか?」
「そうだな。」
そういうと後ろをつけていた四人の気配が消えていく。
ふぅ助けられたな……
「あんたも洛陽についていきなり大変やったな。」
茶屋に入り席に座ると張遼殿から話しかけてくる。
「あぁ助かった。正直対処が良く分からなかったからな。」
恐らく負傷でもさせれば私は反逆罪で逮捕されていただろうな。
「えぇよー助けって貰ってたわけやし。その借り返しちゅうことで。」
「それは酒を貰っただろう。」
「あれは目的が違うわ。そやあそこの董卓の手紙見てくれた?」
どうにかその話に持ち込もうとおもっていたが、あちらから振ってくるとは。こんなところで話していいのだろうか?
「ん?あぁ別にここでは言うてええよ。元から人払いは済ませてんねん。」
「誰かと約束でも?」
「華雄って知っとる?うちの同僚やけど、まぁ、そいつがくんねん。」
華雄殿か恐らく張遼殿の旗と一緒に立っていた華の旗印のところの将だろう。
「大切なようではないのか?」
「んや。ただ疲れたから昼から飲もうかぁ?って話してたんよ。そして華雄遅いなーって待ってたらあんたが困ってたちゅうことや。まぁええやんええやん。それであの手紙見てどうやった?」
「どうもなにも……丁寧な言葉と字体から見て優しい人なのだろうと予想はあるが、実際に会ってみなければわからんな。」
丁寧でいてこちらへの誠意も感じられた。良く都の官僚は腐っていると噂で、そして燈殿から聞くが、彼女は恐らく違うのだろうと感じた。
「ならええ。賄賂と勘違いされたら迷惑かけてまうわ。」
そう笑顔でいいながら今きたばかりの饅頭を口にいれてそれを酒で流し込んでいる。
曹操殿の近くにはあまりいないタイプだな。
「ぷはぁーーーうまい。大将もう一杯!あんたも飲み!うちが奢ったるで。」
「残念だが一応仕事中だばれては始末書ではすまないのでな。遠慮しておこう。」
「なんやのりの悪いやっちゃな……っておぉ華雄!遅いねん!もう始まっとるで!」
まだ酔っていないはずだが酔った人のように絡んでくるが、途中私の後ろを指差し言う。
振り向くと気の強そうな女性が立っていた。
「そんなことを言うな。久々に呂布と手合わせが出来たのだ。」
「んでぼこられて。今の今までのびてたんやろ?」
「……」
張遼殿が煽るとどうやら図星だったようで沈黙する。
ただ呂布との戦いか面白そうではあるな……
「そんなことはどうでもいい!というかこの男は誰だ?」
「名乗らせて貰おう私の名はグラハム・エーカー曹軍の一将を務めている。」
「あぁ張遼と董卓様が言っていた……異国の将か。固い言葉遣いは不要だ。あの時は世話になった。私の名前は華雄。董卓様に遣えている。立場は将だ。」
と言い合いお互い手を取る。
「早速だが一戦どうだ?」
「憂さ晴らしかな?」
「貴様も戦いが好きなのではないかと思っただけだ。」
「確かにそうだが初対面の者、しかも立場の上の者に楯突くほど愚かではないつもりだ。
というのは建前だ。是非戦いたいがここで暴れてしまっては始末書いや、打ち首でもすまないだろう。私の上司は恐ろしいのだよ。」
「む…ならば仕方ないか……張遼私にも酒をくれ。あと食事を多めに追加だ。」
「なんや、あいつらも来るんかい。なら多めも多めやな。」
誰か追加で来るようだな。少し焦りながら店主に注文をしている。
頼んでいくがその量は大人数の宴を催すのではないかというほどの量だった。いったい誰が来るのだ……
はっ!!後ろから足技がくる!私も足技で対応しなければ!
「ち~ん~きゅ~う~」
「ぐ~ら~は~む~」
「「キックーーーーーー!」」
私が後ろ回し蹴りをし振り替えると、こちらに飛び蹴りをする小さな少女が目にはいる。
そしてお互いの足がぶつかり拮抗する。
こともなく
「いっ~~~!」
と踞る帽子をかぶった少女。帽子にある模様はパンダだろうか?
だいぶ痛がっているようだ。
「あーあ。誰にでも突っかかるからや。」
と呆れたように言う張遼殿。
華雄殿は何もないように酒を飲んでいる。
「うっ~~~っう……!」
と踞る少女を三者三様の反応をしていると。
「ちんきゅ……?」
と入ってくる女性。それは陳留に来て私に恐怖を植え付けた。呂布殿だった。
「恋殿~~!」
と泣きながら呂布殿の後ろへ隠れる。そして
「あいつが酷いことを……!」
と私を指差してくる。
おっとこれは少し厄介だな。ここで襲われては構ったものではない。
呂布殿は少女の頭を撫でて落ち着かせながら話をしているが
「仲間傷ついたら……しあも、かゆうも黙ってない……なにもしてないってことはちんきゅうが……最近よくやってる……きく?…しちゃった?」
どうやらその必要はないようだ。
「呂布殿。」
「なっ!軽々しく名前を呼ぶな!はぅ!」
「ちんきゅ……だめ。」
「恋殿~~……」
「たぶんちんきゅが悪いことした……ごめんなさい……」
恐怖を感じた者に頭を下げられるとは奇妙な感覚だな。
「いや、私も急だったとはいえすまなかった。怪我がないといいのだが……」
「あそこまで動けてるんなら大丈夫やろ?」
と張遼殿がちゃちゃをいれる。
「私はグラハム・エーカーだ。」
「うん……知ってる……月から聞いた……たぶん良い人だって……私は……呂布奉先」
「あぁよろしく頼む呂布殿。」
と挨拶をする。
「恋殿~~……」
泣きながら呂布殿の服の裾をつかむ少女をおいて