「袁紹と袁術、陶謙に公孫賛。西涼の馬騰まで……良くもまぁ有名どころを並べたものね。」
あの後の騒ぎの後偶然町に出ていた華琳殿と夏侯姉妹に出会い城に戻り彼女達が言っていた通りの謁見が行われている。
集まっている面々は文字通り凪を含む、今の曹軍の上層部全員ときたものだ。燈殿もこちらに報告に来ていたらしく荀彧殿の隣にいる。立場としては助言役か、政の軍師といったところか。私と目が合うと意味深な瞳で此方を少し見る。
何かを伝えたいらしいがそちらばかりを見ているわけにはいかない。目の前ではこの大陸を揺るがす策が華琳殿に告げられている。
「董卓が朝廷を思うがまま支配し圧政をしき、都の民は怯えている。加えて天子様を監禁し政務の断りすらいれておらず独裁をとっている。これでは董卓が天子様に成り代わっているようなものではないか。そのようなことはあってはならない。よって袁紹はここに漢の大将軍の名の元に朝敵董卓を打つべく連合を設立することとする。今まで朝廷に受けてきた恩を返す時である。」
ということらしい。
「まぁ、真ではあるな。」
と一言呟く。荀彧殿がこちらを睨むが顔良殿と文醜殿の話は進んでいる。それを私達、華琳殿は静かに話を聞いている。そのどれもが全て筋が通っている。
華琳殿もうんうんと頷いている。そして彼女らは語り終えると
「我等の主、袁紹様からの言伝は全てになります。場をもうけてくださりありがとうございました。お見送りは不要ですので。それでは私共は失礼します。」
「失礼します!」
と、二人揃って出ていく。顔良殿は恭しく頭を下げるが文醜殿は慌てたように勢い良く頭を下げて部屋から出ていく。
「さて……」
と華琳殿があの二人が去るのを待ち口を開く。
これから即軍議が開かれることが決定した。華琳殿は顔良殿が残した書簡を荀彧殿に渡す。
「それでは軍議をはじめる。まず最初に……グラハム、あなたの意見を聞くわ」
「な!」
荀彧殿の驚いた声が響くがそのまま軍議は進む。通常は軍師か、ここで言うならば燈殿のように知識をもっている者から意見を聞くのが通例である。が聞かれたからには答えなければならない。
「全て筋は通っている。恐らく董卓が都で行っていることも噂も含めて真である可能性が高い。しかしそれが虚偽である可能性もある。そして筋が通りすぎていることも確か、無信用に信じるのも愚かだ。」
「ではどうするの?」
「連合というものに参加した方が良いだろうな。私は華琳殿が最初に言っていた名のある将は知らないがそのもの達が参加するというのに我等が参加しないわけにいかない。」
「らしいけれど。桂花と燈はどうかしら。」
「は!参加しない方がよろしいかと。グラハムの言う通り情報は不鮮明。今は静観でよろしいかと。」
と荀彧殿
「私はグラハム様の言う通り参加した方が良いかと。理由もグラハム様の言う通りです。」
と燈殿は言う。
お互い違う意見ではあるが言っていることは策として打倒なもの。安定か、変化か。
華琳殿が選ぶ方は決まったも当然だろうな。
全ての話を聞き終わり華琳殿が頭を上げ
「我々はこの連合に参加する!各自準備を進めるように!」
と宣言されるのだった。
「グラハムは残りなさい」
と一言加えて。
「あぁもうなんなのよ!あいつ!先に全部言っちゃって!しかも私達よりも先に意見するのよ!」
「まぁ桂花様。隊長も悪気はなかったですし……」
「桂花さん少しみっともないですわ。」
軍議が終わり外に出て暫くたつと私の隣にいた桂花様が何か言い始めたが周りの彼との距離が近い凪様と栄華様がそれをいさめている。
流石に女性にたいしては何も言えないのか機嫌が悪そうだ。
「落ち着いてください桂花様。これから私達は大まかな策を考えなければならないのですから。」
と私もいさめるがそれが逆効果だったらしく
「あんたもあんたよ何勝手に聞いたと思ったら軍議に参加して軍師面してるわけ!」
「それは華琳様から許可を得ていたこと出し今回は私が都や他方に知り合いが多くいるからということで情報収集と、策の立案を桂花様のお手伝いをと申し遣ったのですから。」
桂花様は華琳様にはやはり弱く、名前を出すと弱々しくこちらを睨んでくるだけですみ。一人足早に去っていった。
「桂花様も少しはグラハム様を認めても言いと思うのだけれどね。」
「そうですわね。桂花さんも実力は認めていますけど……お姉様が関係してくると……」
「にしても私が見ない間にグラハム様と栄華様は何かあったのかしら?」
「何かとは?」
「いえあれだけ男性を毛嫌いしていた貴方がグラハム様を庇うだなんて……何か事情があったのかと思いまして。」
そう聞くと少し赤面して
「あ、いえ!そんなことないですわ!」
と強めに否定する。すると後ろにいる凪様が少し下を向く。なんというかこの二人は対照的だと思っていたけれど
どうやら似た者同士らしい。あの人が言っていた通りグラハム様もすみに置けないお人ね。こんな可愛い子達を弄ぶなんて。
「あら、ではやはり凪様が?」
「わ、私は隊長とはそのような仲では……」
と、凪様が今度は赤面する。今度は栄華様が凪様のほうをじっと見ている。もういじらしいわね。私にもこんな時期があったわね。
「あらてっきり貴女方二人か桜居さんが関係はもっているかと思ったのだけれど。」
そうからかうと
「と、燈さん!失礼でしてよ!」
「そ、そうです!」
と反応を返してくるので余計からかいたくなるもの。
「あら折角何か助言が出きると思ったのだけれど……」
「そ、そんなの必要ありませんわ!」
「わ、私もこれから隊の編成があるので失礼します!」
といって焦ったように彼女達は持ち場に戻っていく。
「あら、残念。」
そう、呟いた。
私も準備をすることがある。桂花様の案件だけではなく違うものまで手広くしなければ……
「本当に罪作りな人……」
これから起こることを予想し、あの人を思い出しながら再び呟くのであった。
「それでグラハム貴方はどうするの?」
「どうするとは?」
華琳殿に残るよう言われ広い部屋に我等二人が残される。
華琳殿はいつも通り喋ている。
「この連合に参加する理はわかったわ。でも私はあなた個人の意見を聞いているのよ。」
「董卓殿につくべきだ。」
「理由は?」
「正義は袁紹にはない。」
「それは何故?」
「筋が通りすぎている。しかもここで大将軍が一方的に武を示す必要はないだろう。普通漢を思うならば董卓殿を罷免する準備し、天子様を奪還すべく陰ながらやるのが正策。しかし今回はそれを公にし連合の主として腰を下ろそうとしている。私はこれをただの欲であると考える。」
「まぁそうね、袁紹……麗羽ならしかねないわね。なら董卓に正義があると?」
「正しくはないが義はある。今回の大粛清も今までの漢を掃除するというならば手段は手荒いが頷ける。しかも都の民は怯えていないことは華琳殿も知っているだろう。」
私に董卓殿からの密書が届くのは、誰にも知られずに送られてきているわけではない。私と華琳殿宛に別々の書状で送られてくる。それを軍師殿らは華琳殿の言伝で華琳殿に回し、私は華琳殿から許しを経て密書を受け取り返事を書いている。なので昨日届いた密書も互いに共有している。
「そうね。」
「よって私は今回董卓殿につく。」
そう、言いはなつ。
聞き方によっては裏切りの宣言である。
「ならグラハム隊はどうするの?」
「隊は凪か桜居が引き継ぐ。引き継げるよう準備はしている。」
「準備がいいこと。でも私を一度裏切るんだもの。それなりの対価を払ってもらうわいいわね。それと名前と青の御遣いも置いていきなさい、私が預かっておくわ。」
「もとよりそのつもりだ。」
「それと明日は空けておきなさい。」
華琳殿はそう言うと跪いている私の隣を通り部屋を出てくる。
そして出ていったことを確認し。
私は体全体の力を抜いた。
「流石曹孟徳殿。この圧は私では耐えられないか。」
立ち上がるのにある程度の時間を有した。