私が曹操殿と一日を過ごしてから3日がたった。準備は佳境を迎えている。今日で最後の軍議そして明日の明朝出立ということになるだろう。
「グラハムどうしたのだ?いつものお前らしくないな。」
「姉者の言う通りだグラハム。明日が予定なのだから今日は休んではどうだ?倒れてしまってはもともこもないだろう。
」
そう話しかけてきたのは春蘭殿であった。相変わらずこの忙しいときでも元気なようだ。そして後ろには秋蘭もいる。今日も仲の良い姉妹だ。
「なに問題はないいつもどおりだ。しかも、今日は数え役満姉妹にようがあるのでな。他の者には任せられないのだよ。あの3人はなかなかに骨が折れる。」
「そうか?まぁ貴様なら大丈夫だろう!ではな!」
といい去っていった。
大分信頼を得れているのだろう。あれから良くこうなったものだ。まだあの痛みは覚えている。
「そうだな覚えているとも。」
そう言い私は数え役満姉妹のいる場所へ向かう。
その時の私は華琳殿に直面したような覇気は一切なかった。
「あ、あの凪さん。」
少し覇気のない隊長を送り出した後栄華様に話しかけられた。
「栄華様どうかなされましたか?」
「いえ、グラハムさんの元気がなさそうだったので……何かあったのかと……」
やはり隊長関係のことだとは思っていましたがやはり気付かれましたか。春蘭様も気付いていたようですし日頃から良く見てれば見極められるものなのだろう。
「そうですね。確かにいつもの隊長ではなかったかもしれませんね。」
「やはりそうですよね。何があったかご存じですか?」
確かに私たちは今離反する準備をしているが、流石にそれを話すことは出来ない。しかも理由はそれではない。明らかに華琳殿と一日出掛けた後にあの様子。何かあったのは間違いない。正直心配であるが、私が声をかけたときも「大丈夫だこれは私のことなのだ」と話を遮ってきた。私が関われることではないのだろうと思っている。
「いえ心当たりはありませんね。」
だから私はこう言った。
「そうですか。では夜にでも食事でも持っていきましょうか……流流さんもやっと城内で働けるようですしね。」
だから、私は、私と同じ思いを抱いていて私より器用な人に機会を譲ろうと思います。これが裏切ることの贖罪の一つになると信じて。
「凪さんもご一緒にいかがですか?」
栄華様も私の気持ちには気付いているのに……お優しい。私はやはり不器用すぎますでしょうか。大分眩しく感じるのです。
「いえ、ご遠慮致します。今日の夜は桜居と予定があるので。」
「あら、そうでしたの……それは残念です。」
「なのでお二人で楽しんできてください。では私も仕事があるので失礼します。」
と、足早に去るのだった。
「凪さんどうされたのかしら?」
ここ数日グラハムさんと凪さんの様子がおかしい。何か浮わついたものではなくもっと違うもの。それがなんなのかわからないから聞きに行くのです。何か重大な気がしてならない。
「栄華様ーーー」
「あら、季衣さん。流流さん。丁度良かった。」
後ろから声をかけてきたのは可愛らしいお二人こと季衣さんと、流流さんであった。恐らくいつも健気にしている挨拶だろう。
あれ程喧嘩をしていたのにもう仲直りしているようでなんと微笑ましいことでしょう……
「私に何か用でしたか?」
「えぇ。今日の夜食事を二人分作ってほしいのですけれど、お願いできますか?」
「えぇ構いませんけど…一人は栄華様としてもう一人は……」
「グラハムさんですわ。」
「あぁ、お兄様ですね。わかりました。」
「お兄様?」
「はい。季衣が兄ちゃんと呼んでいましたし香風様も同じように呼んでいましたのでそう呼ばせてもらっています。」
「あぁそうなのですね。」
少し驚きましたわ。もしかしてグラハムさんは小さい子が好みなのでわ!いえいえそんなことありませんわ。それに私には何も関係ないのですもの!
「それではお願いしますね。」
「はい。お任せください!」
「じゃあねー栄華様ーー」
と二人が去ったのを確認してから私は仕事に戻るのですが……
「栄華。」
また声がかかる。それは
「お姉さま……」
「…………」
「…………」
春蘭殿たちと別れた後私は三姉妹のまつ場所に向かっていたのだが予想できない人物に邪魔をされた。
「お兄ちゃん……何か隠してる……それは言えないこと?」
そうシャン殿である。彼女は情報には疎い筈だが、野生の感で私が何か隠していることを悟ったのだろう。だが、その目は責めるというよりも、心配するような目だった。私も不甲斐ないものだ。
「ずっとお兄ちゃん、難しい顔してた。だからシャン話聞こうと思って一人になるの待ってたけどなかなか一人になってなかったから今日になった。ごめんね。」
「いや構わないさ。だが残念だがそれは言えないのだ悪いな。」
「シャンにも?」
「あぁ。」
「でもどっか行くことはわかってる。」
「それは感かな?」
「うん。でも仕方ない。シャンも遣えてたところ攻めるわけだし。」
「かなわないな」
「えっへん……」
やはり戦場にずっと立っているこの時代に住んでいる人は一味も二味も違うようだ。まぁシャン殿だからということもあるだろうが。
「でも、お兄ちゃんもっと違うとこで悩んでる。何かあった?」
「あぁ色々あったが話すまでもないさ。こう気遣ってくれるものがいるだけで安心したとも。感謝するシャン殿。」
といい頭を撫でてやる。すると嬉しそうに顔を寄せてくる。まるで猫のようだな。
だが私の心はまだ少し曇ったままだ。こうも心配してくれる仲間がいても払拭しきれない。
話し合いが終わりグラハムさんは帰っていった。話し合いの内容は補佐役をつけるということであった。グラハムさんも将なのだから仕方ない。
「ねぇ、なんか今日のグラハムいつもと違わなかった?」
「そう?あんまり変わらなかった……確かになんかいつもの仰々しい言葉遣いは少なかったわね。」
「そう。私はいつもより静かで良かったのだけれど。」
そう私たち三姉妹は少しの違和感には気付いていた。でも私だけ、人和だけ少しの違和感の仲に生じた少しの歪みを捉えていた。だってそれは私達の専門分野だったから。でもそれは他人には言えないものだから。それは自分で解決しないと行けないものだから。だから私は待つの。貴方が帰ってくるその日まで。あの話は華琳様から直接聞いた多分何人か関係性の深い人に話しているのだろう。姉さんたちには話していない。これは私の胸の中にしまっておかないと。
「よし!それじゃあ作戦会議をしよう!」
「えぇーーまた?」
「そうね。」
「人和ちゃんも乗り気だねーー」
「地和姉さんはほおっておいて始めましょうか。」
「ちょっと私を置いてかないでよ!」
「じゃあ始めよう。
グラハム籠絡作戦!!今回の議題は……」
だってこんなことするぐらい貴方を慕っているのだから。
三姉妹の話し合いを終え自室に帰ってきた。正直今日はやることがない。準備は終わっている。夜が更けた頃に後は出るだけだ。そしてふと机の上を見ると一つの竹簡が置かれていた。何かの指示だろうか?と思い読むと栄華殿からの夕食のお誘いだった。どうやら私の部屋で一緒に食べようという話らしい。流石に栄華殿にも気付かれてしまったか……気を遣わせてしまったな。これは受けよう。それが終わった後でも離反は間に合うか。
そう考えその竹簡を机の引き出しにしまおうとするが。
「そうかこれを貰っていたな。」
その引き出しの中には喜雨殿から貰った書簡があった。
「確か燈殿から貰っていた。」
確か時が来るまでは空けるなだったな。
いつもは絶対に開けない。そう言い切れる。それだけの人間だった。だが今の私は自分の思ったより不安定だったのだろう。どうにも気になってしまった。その書簡が見たくて仕方がなかった。そして手を伸ばして開いてしまった。そしてそこには
「なっ!?」
私はまず驚いたのは全てが英語で書かれていたこと。そして最後に書かれていた名前は
Howard Mason
と書かれていた。
「ハワード……!」
昔の死んだ筈の部下を見て焦ったが、まずは手紙の内容を見なければ始まらない。
『これを読んでいるということは隊長もこの世界にいらしたのでしょう。私はガンダムと戦い敗れ死んだ後その後隊長の顛末を走馬灯のように見ることができ目覚めたらこの世界にいました。そして私は陳挂さんと出会いどうにかここまで生きてきました。ですが私もどうやら時間のようなのです。これを書いている間にも私の存在は消えているように感じています。ですが私には後悔はありません。私はこの世界で愛を知り、その結晶である子を残せたのですから。ですので隊長も好きなことをしてください。自分の好きことを好きなように。私に残された時間は多くはなかったように、隊長もいずれ消えていく運命かもしれません。なので悔いのないよう生きていください。まぁ隊長なら大丈夫でしょうが。
では最後に、隊長がやるべきことが終わったらでいいのですが。私の妻、陳挂と娘である、陳登に私の話しでもしてやってください。
それでは御武運を祈っております。
ハワード・メイスン 』
「ははははは……成る程ハワードらしい気遣いだ。」
少し目が覚めた。華琳殿から言われた言葉に動揺しすぎていた。そうだ私は過去のように追い求め続ければいいので決してそれが変わらないように。
「ハワード、貴殿が愛を知ったこの世界で私も愛に出会えるだろうか……」
そう私は華琳殿から言われた、愛を求めていると。私は愛を知らず、遠ざけているのだとそう言われた。そんな筈はないと否定したが私の頭はその否定を許さなかった。その愛は憎しみに変わりそして宿命となる。それが私が生きてきた人生で得たものだ。ではどうなる?愛したものを憎むことが、宿命として果たし合いをすることが正しいのだろうか。いや正しくはない。ならば愛など今のままの概念で固定し遠ざければいい。そう頭の中で何回もの思考の末たどり着いてしまった。
だが、考えを改めよう。ここでも消える運命ならば、私は愛というものを知りたい!私が追い求めていたものを知りたい。それが憎しみになろうと、宿命になろうとも!
そうだともグラハム・エーカーはそんな男だとも自己中心的で我慢弱く、落ち着きのない、曲がったことが大嫌いな人に嫌われやすいタイプだ。
ならばこの人生私の道を貫き通すまで!
ここまで考えようやく体に渇が入った。もう大丈夫だ。だがしなければならないことが増えたな。
「まずは栄華殿に了承を伝えに行くか。」
といい勢い良く部屋を出るのであった。