羅破=グラハム
几箋=凪
「本当にするの!?あいつ死ぬ気!?」
詠ちゃんが私の隣でそう叫ぶ。彼女が見つめるのは仮面を付けた謎の将、羅破。そして我等が漢王朝が誇る呂将軍。その両方が互いの武器を持ち今にも仕合おうとしている。その行為は私達は自殺行為だということを知っている。呂将軍、恋さんの実力を私達は知っている。黄巾の兵数万を一人で倒したと噂が広がり恐れられているが、実際にそれは事実。後ろに呂隊の兵が控えてはいたが、ただいただけ。全ては呂将軍がその矛を持って薙ぎ倒した。一騎当千以上の活躍。その将に、彼、謎の天から来たと言われる男は挑もうとしている。なんと無謀なことか。
「そんなことしたらどうなるかわかるでしょ!さっさと止めさせなさい!」
「は、は!」
そう詠ちゃんは告げる。確かにあの人のことを考えるならそうしたほうが良い。仲間内で悪戯に殺し合うなど今の我軍の指揮に関わる。だが
「いえ……続けさせてください。」
「な、何言ってるの…よ……」
私はここで判断しなければならない。私はこの軍のためではなく、この大陸のために。
彼を死駒にするか活駒にするか……
「さぁ!呂布殿!仕合おうか!」
「…?なんでそんなに…興奮してる…?」
私は今恐らくこの大陸において最強となるものと勝負することとなる。こんな状況
「興奮しないほうが無理というもの!」
「何やあいつ?」
「……いつものことです……」
「あんたも苦労してるんやな…うちもうちで…」
「ん?張遼。なぜそこで私を見るのだ?」
「わからんかったらええわ。んじゃやるってことでええな。」
「あぁ、構わん。」
「恋も大丈夫。」
そしてお互い武器を構える。
周りの兵士は野次を飛ばす者、何が起こっているかわからない者、これから起こることは大丈夫なのだろうかと心配している者様々だ。
「んじゃわかった。でも殺しは駄目やからな。それだけは守ってもらうで!」
「相分かった。」
「うん……」
「ええな。ほんじゃ始め!!」
始めの掛け声が響く
その瞬間私の前から呂布が消える。
これは誇張表現ではない。ただそこにあったものが消えたそう急に。何故だ何処に…
そして瞬き
眼前 刃
しゃがむ
目が合う
柄前
直撃
眩む
離れる
倒れる
衝撃
ここで漸く思考と行動が反射から正常に戻る。
「カッハ………!?」
息をするのも精一杯、それぐらいの恐怖。そして遅れてくる痛みと胴の惨状。胴は頑丈に作られて入るが粉々に砕かれている。そして口からは血の味がこみあげる。
そして前を見ると私をこの様にした者は悠然と武器を構えて立っている。
「なるほど……これが……最強か……」
こいつに勝つには何をすれば良いか分からない。そう分からない絶望という言葉が正しい。
しかし、しかしだ……
「ここで高揚してしまうのは悪いところだな……」
あの時のような高揚感を覚えてしまう。
そう言いまた武器を構える。震えを抑え相手を見据える。
ふぅ……このままでは駄目だ。先のように反射で動かなければなるまい。
ならばこの得物は不利、ならば。
得物を二つに分け、双刃から双剣に変える。
これならば対応できる。あとは全て反射と読み次第か。
「さぁ……まだだ呂布奉先!!」
そう自分を猛らせるよう、言う。今までずっとそうしてきたのだ。行けるとも!!
「ありゃ恋殺る気やったな……」
「えぇ、明らかに殺意がありましたね。」
「やけどあの感じやと真ん中ちゅうところか。な、華雄?」
「うむ、そうだな。いつもよりは本気を出しているといったところか。」
「華雄は下のところでやり合ってもボコボコやもんな。」
「な!?そんなことはないぞ!私は善戦するとも!張遼こそ前は派手にやられていたではないか!」
「いやーあん時は本間ビビったわ。流石に死ぬかと思たわ。」
そう言いながら談笑の方に話を変えている。
しかしあの速さは尋常ではなかった。目で捉えるのも精一杯。羅破様もあれは反射で避けられたのでしょうが、二段目は反射もまにあわなかったのでしょう。それにしても強い。今の一撃だけでそれは分かりました。ですが反対に羅破様の実力も示すことができた。隣にいる張遼殿と、華雄殿の目は雑談を挟みながらも逸らされておらず、興味深げな視線をむけている。周りにいる兵も少し離れたところで見ている董卓殿や軍師殿も同じ。物珍しいものを見る目とは、明らかに違う目で彼を見ている。隊長はこれが狙いだったので………
「はぁぁぁ……」
「うわ!急にどうしたん?」
「あ、いえ気になさらず。」
いやえっと……分かっていましたよ。分かっていましたとも。隊長のことですから。狙っていたことは確かでしょう。ですがあの顔は…子供が浮かべそうな笑みは
ただ楽しんでるだけじゃないですか!!
しかも相手は呂布ですよ?あの呂布ですよ!それに対して楽しむなんて正気の沙汰じゃないですよ!?
はぁ…
まぁ、いいでしょう。しかしこれからどう戦うか見ものですね……
ってその武器そうなるんですか!?
というか身分を隠そうと武器を変えたのにそれでは元も子もないではないですか!!
まぁ!やると思いましたけど!予測していましたけど!?
構えてから数秒もしないうちに次撃が来る。
今度は腹部を狙ってくる。なかなか読みやすい大振りの一撃。しかし速さは桁違い。何処に来るか分かっていたとしても反射に頼るしかない。両手の刃で流す。しかし流しきれることはなく弾かれる。反撃を繰り出そうとするが相手の方が体制を立て直すのが速い。
今度は重い一撃ではなく連撃。
しかしそのどれもが洗練されている。いや、されすぎている。
速さは勿論、力も常人のそれとは比べ物にならない。
何度もぶつかる刃。こちらは二つの得物だというのにそれを凌駕する数の斬撃で攻めてくる。
なんとかその打ち合いについていく。これも読みだけでは効かない。いや読みにくい何の決まりもなく連撃が繰り出され続ける。これも反射でどうにかしなければならない。
それ以降も連撃戦を繰り返していると限界が近づいてくる。勿論それは私の方だ。これは一度離し
下段!
「成る程こちらが考える暇も無いということか!」
何とか無理やり距離を剥がすがまだ張り付かれ鍔迫り合いになる。
「力だけではなく技術や読みも相当なものだな!」
「お前……戦闘中なのに……うるさい……」
そう言われ離される。
「ははは、釣れないな呂布!
ならばこちらに引き込むまで!」
今度はこちらから攻める。力も速さも私の最高の一撃。しかしそれはどちらも呂布よりは低い。
軽々受け流される。
「まだまだ!!」
今度はこちらから連撃を仕掛ける。
二刀による連撃。圧倒的な手数のはずが、それは軽々しくあしらわれ続ける。
何度も振るうが同じこと。
「く…!身持ちが硬いな!」
「ん……しつこい……」
もう一度振るった刃は見事に躱される。
そして下段の足払い。
わかっていても避けられない速さ。反射でも間に合わないだろう。
「なんのこれしき!!」
気合いを入れ地面に手をつき受け身を取る
逆さの視点
こちらに向かってくる呂布
咄嗟に手元に向け蹴りをいれる。防御させることに成功するが打ち返される速度もただではすまない。
「ぐっ………!?」
結構な距離吹き飛ばされるが。即座に立ち上がる。
いつ斬られてもおかしくない。そう感じた。
また眼前。
避け……れない。
刃は既に首元。後退しようと伸びてくる。
「ここで終わる私ではない!!」
手の籠手を使い相手の偃月刀をかちあげる。
否かちあげることはできなかったが。それは必然。力で負け速さでも負けている。しかしそんな私でも反らすことはできた。当然受け流せなかった衝撃は手に響く。この戦闘中では恐らく右手は使い物になるまい。武器が右手から落ちる。
まだ相手は軽症もなしか…
しかし!
「まだだ呂布!さぁ全身全霊の一撃を!さぁ!」
そう煽ればこちらに正面から突っ込んでくる。
こちらも手を出すがその手は弾かれ空へ伸びる。
なんという僥倖……!!
そこで漸く決着がついた。