「もう!姉さんったら怪我でもしたらどうするの!しかも他人を巻き込んで!」
「ぶぅー。怪我しなかったからいいじゃないっすか…グラっちも無事だったっすし。」
「それでもよ!怪我したら皆に迷惑をかけるんだから……
申し訳ありません。貴方は華林お姉様が書簡で書いていた方ですよね。本当に申し訳ありません!姉が危険なことを……」
姉妹喧嘩を区切り華論殿と、華林殿に良く似た少女が頭を下げる。
「ははは、問題ない。この通り怪我もしていないのでな。」
「そうっすよね!グラっち。」
と、私の前にピョンピョンも跳ねるように来る。
まるで子供のようだな。
「もう。姉さんった……それよりも自己紹介がまだでしたね。華林お姉様の従姉妹、曹仁の妹、曹純と申します。」
綺麗な所作で挨拶をする。ふむ姉とは全く違った性格のようだ。だが顔はそっくりだな。華林殿にも瓜二つではないか。
「華論殿の妹ぎみであったか。私の名はグラハム・エーカーである。一将として華林殿の下働くこととなった。よろしく頼む。」
「姉さんも華林お姉様も真名をお許しになったのですね。なら、私のことも柳琳とお呼びください。グラハム様。」
「ならばありがたく受け取らさせてもらおう。柳琳殿よろしく頼む。」
お互いに挨拶を済ます。本当に礼儀正しい子だ。まぁ苦労人なのであろうが。
「よーし、じゃあグラっち行くっすよーー」
華論殿が腕を引っ張ってくる。
「おっと、ど、どこに向かうというのだ。」
なんとか踏み留まる。力が結構強い。さすが一将と言ったところか。
「華林姉が言ってたっすよ。えぇーと…なんだったす?」
頭に?がうかんでいる。
「姉さん。玉座の間に集合というお話だったでしょう。グラハム様もですよね。」
そう言われもう時間かと思いながら頷く。
「じゃあ全速力でいくっすよーーー!」
「うぉ!」
だんだんと速度が上がり私の足が浮く。
「あ、きをつけてくださいね。姉さんはとっても足が速くて私達姉妹の中だと一番力が強いんですよ。
えぇと……が、頑張ってください。」
と、段々と距離が離れていく程に諦めたような口振りになって声が小さくなっていく。
「聞いていないぞ!うをぉ!?本当に!聞いていないぞーーーーー!」
「さぁさぁ!急ぐっすよー!」
華論殿に引きずられて行くのであった。
「何で、貴方はぼろぼろなのかしら…」
上の玉座に座っている華林殿が話しかけて来る。
私は華侖殿に引きずられて玉座の間につれてこられた。
「華林姉グラっちつれてきたっすよ!」
少し苦笑いしながら華林殿は頷く。
「こら!グラハム!玉座の御前だぞしっかりせんか!」
確かにこういったところでは礼は正さねばな。と身だしなみを整え、秋蘭殿の指示された場所に立つ。
周りには春蘭、秋蘭、華侖、柳琳、曹洪殿そしていつの間にか私のとなりにがいるシャン殿。私が見るとニコッと笑顔を返してくる。愛くるしい……いや、私はロリコンではないぞ断じて断じてだ!
「それでは会議を始めましょうか。秋蘭」
「は、前回入った盗賊の件ですが。やはり豫州に逃げ延びたようです。」
「そう。」
「そして豫州の相に早馬をだしましたが、入ることはまかりならんと……」
「まぁ、そうでしょうね。」
やはり他の国に行くのにも一苦労するような場所なのであろう。
「盗まれた物は仕方ないわ。でも、収穫はあったは。二人とも前に出なさい。」
そう言われて、シャン殿が前に出る。それについて行くように私も少し前に出る。
「盗賊を追っている時に偶然見つけた二人よ。自己紹介なさい。」
「性は徐、名は晃、字は公明。都では文官をしておりました。旅の途中曹操様に拾われました。以後お見知りおきを。」
シャン殿そのような挨拶ができたのか。
だがドヤ顔をうかべえっへんと言いそうな顔で私を見てくる。やはり子供のようなところが目立つな。
次は私の番か。
「私の名は、グラハム・エーカーである。曹操殿に一将として仕えることとなった。出身は皆の知らぬ天の国。この世界のことはあまりわからぬ身だがよろしく頼む。」
自己紹介を終え頭を下げる。天の国というのは華林殿が書簡で書いてくれていたのだろう、ざわめきはない。
「この二人には私の真名を許しているわ。まだ真名を許していない者は後で許すように。徐晃には文官の補佐と将として、グラハムには一将として隊を率いてもらうわ。良いわね。」
「「は!」」
と私と、シャン殿は片膝をつく。
「良い返事よ。それではこの会議は終了とするわ。秋蘭とグラハムは残りなさい隊の編成をするわ。」
会議は終了となった。そして私と春蘭以外の皆が部屋から去っていく。私の近くから曹洪殿がシャン殿を引き剥がし
「お、お兄ちゃんーーー」という悲鳴が聞こえてくる。
「他の皆は行ったわね。それじゃあ始めましょう。その前に一つ聞いても良いかしら?」
三人以外誰もいなくなった後華林殿が私に問いかける。
「あなた人を殺めたことは。」
「ある。」
即答した。これはただの確認だということはわかっている。が軍人としてこれは即答しなければならない。私は確かに平和を守るためという大義名分がある。だがその下に屍があってこそ平和だ。力を行使するものがわかっいなければならない。これがわからなければ正義を語り行動することは許されない。
「まぁ、向きになるなグラハム。これからお前の部隊の役割を話すのだ。そう変に殺気だたれてはこちらも叶敵わん。」
秋蘭殿が私の肩に手をおき宥める。そこまで殺気だっていただろうか。
「構わないわ。そこまでの覚悟がある証拠だもの。あなたの部隊だけれど基本は秋蘭の部隊と共に行動してもらうことにするわ。」
「ん?それならば皆の前で言っても……」
「まぁ待ちなさい。それであなたには50人程の兵をつけるわ。ただ外面は秋蘭の部隊を取り入れ何百人程度に見せかけるつもりよ。そしてここからが重要な部分。」
「今我らの軍に足りないのはなんだと思う?」
と、秋蘭が隣で聞いてくる。
全く見ていないが唯一わかることはある。
「戦える将が少ない。」
「正解だ。良くこの短期間だけで気づいたな。」
「秋蘭殿は獲物が弓であろうし、華侖殿も実力はあるだろうが春蘭には遠く及ばない。柳琳殿は良くわからぬが…」
「まぁ、おおむね正解よ。柳琳のことは後々わかるわ。だからあなたには将の相手をしてほしいの。」
「それは当たり前のことではないのか?」
将を削り勝利に近づく。戦の基本ではないか。これで大将を取りに行けならば奇襲部隊としてわかるのだが。
「春蘭の負担を減らしてほしいのよ。今敵将を相手取るのはほとんど春蘭がしているの。あなたのいう通り春蘭並みの将はいなくてね。でもあなたがいるなら話しは別。これからおそらく世は荒れることでしょう。戦も多くなるわ。その中でいくら強くても春蘭を酷使するわけには行かないの。」
「姉者ならば喜んで受けるだろうがな。」
秋蘭はあきれたようにいう。
あぁ、なるほどだから皆を下がらせたのか。
春蘭も愛に生きるものなのか。やはりこの軍の関係は良い。好意を抱くよ。
だがあまりにも深すぎるのではないかとも思う。これがいきすぎなければと思うのだが。
「了解した。引き受けよう。だが人数の少なさには他の理由もあるのだろう。」
「やはりあなた、戦なれしているわね。偵察の部隊もかねているのよ。少数精鋭で最前線に向かってもらいたいの。あなた隠密の経験は?」
「さすがにないな。訓練程度なら受けているが……」
モビルスーツでの隠密戦などほぼ無意味だ。いくらジャマーがあろうと結局ばれてしまい、あの大きな機体を隠す場所などないのだから。
「経験がないよりましよ。これももちろん引き受けてくれるわよね?」
確実に危険な任務を受けることになるだろう。だがこれからの仲間のためとならば良いだろう。これ以上身近な者を失いたくはないがな。
「もちろん。」
また覚悟を決めそう言うのだった。
「良い返事よ。それではあなたには早速仕事を与えるわ……」
そういって着任早々に仕事を受けるのである。
「あやつうまくやるでしょうか?」
「春蘭が実力を見ためたものならばと言っていたのはあなたでしょう。」
グラハムの配備は秋蘭からの提案であった。確かに春蘭ばかりに負担をかけてしまっていることは自覚していた。
そこで偵察隊を秋蘭の部隊に取り入れることそして、グラハムという良き才をもつ武人を加えることによって秋蘭の部隊も寄り前にでて戦うことができる。
「確かにあやつの武は姉者に匹敵するほどのものですが……何か少し歪んだように見えるのです。その歪みが良くわからぬのです。」
歪み…ね。彼は確かにどこか違う。それは天から来たという理由ではない。もっと根本的なものそれが歪んでいる。人としては不快感を与えぬ普通の人物だといえよう。少し感情的な部分はあるが…
「わからなくても。私はそれを利用しきってみせるわ。秋蘭もそのようなことは気にしないで部隊の再編成をなさい。これからはあなたもより全線に立つことになるわ。」
「は!」
秋蘭は返事をし玉座の間から出ていく。
「さて、グラハム。その才で私を楽しませてくれるのかしら?」
一人玉座の間で、歪んだ笑顔をうかべるのだった。
私は今陳留の町で一人彷徨っている。一応十分なお金はもらってはいるのだが。
この肉まん中々いけるではないか。
町をある程度回って感じたことは結構賑やかであるということだ。このような戦ばかりの世なのだ。民の不安があっても仕方ないとは思う。だがこの町はよくそれを隠せている。良き政治を行っている証拠であろう。
ただ、やはり目線が刺さるな。周りとは異様な雰囲気を纏った物がいるのだ。
服だけでも変えておけば良かったか…
いや、それよりも任務である。内容は
『部隊としてあなただけでは不安でしょう。でも今はそれにさける人員がいないの。あなたの判断でいいわ。誰か一人、町又は周辺邑から良き才を持つものを一人探してきなさい。』
ということであった。
昔の私なら
乙女座の私ならばと意気揚々と町に繰り出し。いざ会えたならば、乙女座の私にはセンチメンタリズムの運命を感じずにはいられない。
と言っていただろうがそのような自信はもうない。といってもそれは少年と私の出会いのみの運命だったはずだ。そんな誰にでも運命といっているわけではないのだよ。このグラハム・エーカー運命を軽んずることはない。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
後ろから女性の叫び声が町中に響く
「盗っ人よーーー」
盗みかそれは看過できないな。
どうやら盗人は通りを横切り私のほうに走ってくる。
初の仕事とするか。
と構えるが。
「でぇやぁぁぁぁ!」
「グッフカッスタッム…!」
盗人は何かの衝撃を受け吹き飛ばされる。
衝撃波だと!
盗人は壁に頭から刺さっている。
「大丈夫ですか。」
「えぇ…」
「良かった。これが盗まれたものですね。それでは。」
と言いながら女性は去っていく。
「乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないな。」
と感慨にふけり。彼女の後をついていくのであった。