「凪、偵察ご苦労。敵の拠点につくまでは陣の中程で休憩を取りなさい。」
「は!」
許緒殿が隊に加わった後すぐに私の隊を引き連れ凪は戻ってきた。偵察は成功し、敵の拠点を見つけたということだった。
どうやらこの先に廃棄された砦があり、それを再利用し拠点としているらしい。
そして敵の数は三千。賊にしては多いいな……
「三人が三百にそして今は三千か……いくら賊といっても多いいな。」
「一人一人の実力は低いでしょうけど、籠城されると面倒ね。桂花、良い策はないかしら?」
「は!今のところ……」
華林殿、夏侯淵殿、荀彧殿の中心陣はこれからの作戦を考えている。一応春蘭殿も近くにはいるが理解はできていないようだ。
私達も準備をしなければな。と両脇に挿している剣に手を当てる。私の鎧と2振りの剣は町の鍛冶士に私用にカスタムして貰った鎧は二着つくって貰ったが基本は曹操殿の軍の象徴である骸骨の装飾を両手にあしらったもの。もう一着は私の趣味で作らせたものだ。着ることは一生ないであろうがな。
剣は日本刀に近づけるため刃を薄くし片方の刃は潰して貰った。まだ試作の段階だがいずれ日本刀を振るいたいものだ。
そして私の部隊は私と凪を含めて三十人。皆剣も弓も使える。使えないのは私と凪だけ。訓練すれば使えるだろうが私と凪はそもそも役割が違う。最初、集められた兵は士気は高くなかった。少数部隊だが私と凪の鍛練や一人一人面接することによって士気を高く保っている。ここ1ヶ月の鍛練で皆優秀な兵となった。少しきつめの鍛練になったのは許してほしい。これ以上部下を失うわけにはいかないからな。
「集合!」
「は!」
そう叫ぶと凪を先頭に全ての隊員が集まる。
「凪、尾行ご苦労である。貴殿の活躍でこれからの戦有利に進む。大義である。」
凪は無言のまま頷く。
「だが我等の隊の初の戦であることには違いない。
まだどのような策を行うかはわからない。しかし、臆することはない!今までの私と凪との鍛練を思いだせ!さすれば勝利を必ずや掴めるだろう!健闘を祈る!」
敬礼を取る。
すると隊の皆も敬礼を返す。
昔を思い出すな……
「「「了解!!」」」
「いつでも出撃できるよう準備しておけ。解散!」
各々の準備をするため散る。
「隊長、良き激でした。」
凪が二人になると話しかけてくる。
「そうでもないさ。良くあるものだろう?」
「そんなことはありません。その証拠に皆の士気は上がっていますよ。」
「そうか……なら受け取っておこう。
それよりも尾行はうまくできたか?」
「もちろんです。初めての尾行でしたがうまくいきました。隠密もむいているのかもしれませんね。隊の皆にも隠密や尾行の鍛練をしてみてはいかがでしょうか?」
少数の部隊ならではの隠密か……確かに私の隊ならそういったことをするかもしれぬな
「そうだな……帰ってから鍛練を練り直すか。
凪も少し休憩をしておけ。これからが本番であるからな。」
「いえ。私は大丈夫です。隊長こそ大丈夫ですか?戦闘があったと聞きましたが?」
「あの人数に送れはとらぬよ。春蘭殿とシャン殿もいたのでな敵の方がかわいそうだったよ。ははは」
「確かにそれはかわいそうですね……」
このような笑い話ができるのならば大丈夫だろう。私に気を使っているわけでもなさそうだ。
「では華林殿達の軍議が終わるまで鍛練を練り直すとするか。付き合ってくれるかね?」
「もちろんです!隊長!」
年相応の笑顔を浮かべる。
本当に良い副官をもったものだな。
「ねぇ、金髪の男の人。」
「私か?おぉ許緒殿ではないか。私になにかようかな?」
金髪の男はこの軍に私しかいない。恐らく私のことを呼んでいるのだろう。そう思い振り返ると春蘭殿相手に大立ち回りを演じていた許緒殿がいた。
「春蘭様と香風様から軍の人に挨拶してきなさいって言われて……後はここだけなんだけど、何かしてるみたいだったから声かけづらくて…」
少し怯えたような様子だ。やはり小さい。このような子供までと思ってしまうが取り払う。彼女は自分の守るべきもののため立ち上がったのだ。その覚悟を受け入れなければ。子供でも大人でも戦場に立てば一人の兵なのだから。
「そうか。ならば名乗らせていただこう!我が名はグラハム・エーカー!これからよろしく頼む。」
「ぐら…は…む?変な名前……あぁ!ごめんなさい。失礼なこと言っちゃって…!」
「構わんよ。珍しい名であることは代わりがないからな。言いやすいように呼べばいい。
あっちを見てみろ。」
「?曹仁様と曹純様のほう?」
柳琳殿と話している華侖殿の方を指差す。
すると気配を察したのかこっちをばっと振り返り
「グラッちーーーー!どうしたっすかーーーー!」
と、手をぶんぶんと振りながら大声で語りかけてくる。
「この遠征が終わったら飯でも食いにいかないかー!」
私も大声で返す。
「ほんとっすかーー!柳琳も誘っていいっすかーーー!」
「もちろん!誰でも誘っていいぞー!」
「やったっすーー!約束っすよーーーー!」
と言うと柳琳殿に笑顔でまた話し始める。柳琳殿もこちらに苦笑いしながら頭を下げる。
「というように、私をグラッちと呼ぶものもいるし、呼びづらく隊長と呼ぶものもいる。」
「隊長!私はそういうわけでは……」
「はははは。問題ないさ。だから許緒殿も好きなように呼んで構わん。」
「う~んじゃあ兄ちゃん!」
「兄ちゃん?それまた何故?」
「やっぱりだめ?」
まぁ、おじちゃんとか言われるよりかましか。
「いや、構わん。今日から私は兄ちゃんだな。」
「うん!兄ちゃん!」
満面の笑みで私を見てくる。
「で兄ちゃん、隣のお姉さんは?」
「私は性は楽、名は進字は文謙といいます。グラハム隊の副官をつとめております。春蘭様や香風も真名を許しているようですし凪で結構です。よろしくお願いします。」
凪よ子供相手には固すぎるぞ。
「う、うん。よろしくお願いします……凪様……
二人ともボクは季衣でいいよ。」
少し萎縮してしまっているではないか。
「よろしく頼む季衣殿。」
「季衣殿、よろしく頼みますよ。」
その後季衣殿はいつの間にか軍議から離れた春蘭殿を見つけ駆けていく。凪には顔を会わせないように……
「私は何か悪いことをしたでしょうか?」
「まぁ、気にするなよ」
と肩を叩いたが凪は不思議そうな顔で私を見ているのだった。
「ほう、あれが敵の砦かなかなか大きいものだな……」
廃棄された砦と言ってもなかなか壮観なものだ。また、砦からは大人数の叫び声も聞こえる。三千といった数も納得するほどの声量だ。
「隊長気をつけてください。そろそろ華林様と栄華様、荀彧様が前方に上がり銅鑼をならします。それで賊がつれたら私達の部隊と一部の兵が華林様と入れ替わり下がりながら受け止めます。その後は両脇から山に隠れている春蘭様、秋蘭様、華侖様、香風が挟み込み我等の部隊も反転いたします。重要な役割ですよ。」
確かに相手に気取られないよう全力で逃げてはならない、全力で攻めてもいけない。なかなか難しい作戦を組むものだな我が軍の軍師候補様は。
籠城されないよう逃がさないようにするにはこの作戦が良いだろうが。
ゴーーーーン
ゴーーーーン
銅鑼がなったか。
「そろそろくるぞ皆いつでも戦えるよう準備しておけ!」
さぁ、初の生身での戦だ……心が踊ってしまう
が抑えなければな
我々は戦のない平和な世を作るために戦うのだ。そんなことは考えてはいけない。
考えていると前から華林殿が、兵を率いてこちらに駆けてくる。
「よし。全方の隊と交代した後戦闘に移る!皆励めよ!」
「「「了解!」」」
「グラハム・エーカー、出撃する!」
と入れ替わる時に荀彧殿と目が合う。それは挑戦的な目
「実力を見せてみなさい」とそういっている。
一方隣にいる華林殿は前を向き私と目は合わせないが微笑を浮かべている。華林殿らしいな
敵はもう眼前に迫っている少ない人数で先頭の敵と肉薄する。勢いはあるが武の腕は高くない。これなら我が隊でも受けきれるだろう。
「総員!下がりなら受け止めろ!凪と稜と傔は突出した敵を叩け!」
「「「了解!」」」
まだ引き付けなければ。敵の勢いを抑えすぎないためまだ倒してはいけない。もどかしい時間だ。
それから後退しながらの戦闘を続行。
だんだんと押されている。だが
もう作戦は成功か
そう思った時に大量の矢が敵を襲う。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「く、どこから!?」
「おい俺らいつの間にか囲まれてるぞ!」
「なに!は、早く逃げるぞ!」
「逃げるってどこへ!?」
敵はうまいこと混乱している
「でりゃぁぁぁぁぁ!」
いつもの掛け声と共に賊が何人かが宙を舞う。
「さぁ、攻めるっすよーー!」
「おー」
華侖殿、シャン殿も敵に突撃する。
敵は総崩れか
「凪!」
「お供します!」
「稜!隊を率いてついてこい!道は私達が切り開く!」
「は!反転!反転!」
後ろに引くのをやめ反転し混乱している敵先頭に凪と二人で突撃する。
手には肉を引き裂く感覚が剣をつたい伝わる。熱い返り血が顔にかかる。
それでも私は両手の剣を振るい道を開く。この者達は生きるために他人の死を厭わなくなったもの。その歪みは破壊しなければならない。
凪は私の隣で、拳で殴り時には氣を放ち敵を飛ばす。本当にでたらめな技だ。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「ひぃぃぃぃぃ!」
「逃げるものは追うな!向かってくるもののみ対処せよ!」
さて、敵は総崩れ。後は時間の問題か。だがまだ向かってくる者はいる。血眼で私達を見て叫び剣を振り上げる。それを私は振りおえる前に首を斬る。血渋きが舞う。
また、血で汚れてしまったか。
あぁなってはもう救えないな……
周りの敵は部下が倒していてもう手の届く範囲に敵はいない。
「隊長、楽進様。周囲殲滅完了いたしました。隊の損害は皆無です。」
「わかった。今から逃亡者を追う。ついてこれるものはついてこい。投降者は武装解除し後方の部隊に預けろ。」
こうして私の初の戦は終わった。
十人を斬ることによって。
「あの二人、やはり突撃していましたね。お姉様」
「そうね。グラハムと凪は春蘭には勝てないけれど高い武を持つものよ。これぐらいして貰わなきゃ困るわ。」
曹操様はそう言っているが顔は面白いものを見るような表情をしている。
正直この策で最も重要で難しい役を与えた。さすがに負けるような策は組まない。だが、そこで少し苦戦でもしてくれれば可愛げがあったのに。
彼は策を成功させた上賊を圧倒する実力を見せた。
「これじゃ認めないわけには……
そうよ。曹操様の駒が強いに越したことはないわ。あいつは強いけど男は男。認めるわけにはいかないわ。」
そんなことより私は曹操様のために知を振るうの。あの男なんて気にする時間なんてないのよ。
「桂花。」
「は、はい!曹操様!」
「良き策ね。誉めてあげる。」
「ありがたきお言葉。」
「もう一度言うわ。その知、私の覇道のため役立てなさい。」
「あぁ!曹操様!」
嬉しさのあまり頭の中からグラハムのことが抜け落ち、扱いが変わらないのは仕方のないことなのだろうか?