プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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第11話『山篭りする少年とプロレスラー』

「三浦さん、俺……親父に撫でられた」

 

 勇次郎さんと喧嘩をした翌日、学校に行こうと準備をしていたら突如大荷物を背負った刃牙君が訪ねてきてそう言った。

 

「もしもし、葉瀬先生?三浦です。すみません、今日はちょっと遅れます。はい、失礼しま~す」

 

 担任の先生に連絡を入れると刃牙君を家の中に招き入れる。

 

「朝、突然親父と母さんが一緒に家に来て……」

 

 話を聞いてみると勇次郎さんと刃牙君のお母さんが、刃牙君が1人で住んでいる家に突如2人でやって来たそうだ。

 

 2人は刃牙君が見たことないぐらい上機嫌な様子で、それで何の前触れもなく勇次郎さんに頭を撫でられて驚いたんだとか。

 

「俺、嬉しいというか恥ずかしいというか、なんか頭の中がグチャグチャになっちゃって……」

「それで走って逃げて来ちゃったと?」

 

 俯き加減で頷く刃牙君に俺は苦笑いする。

 

「勇次郎さんらしいというかなんというか」

「三浦さん、親父を知ってるの?」

「知ってるよ。というか昨日喧嘩したからね」

 

 昨日の事を刃牙君に話す。話を聞いた刃牙君は納得した様に頷いた後、不機嫌な顔になる。

 

「三浦さん、俺、三浦さんのことスゴイと思ってるし尊敬してる」

「ありがとう」

「でも、その、俺今……親父の話でなんかその……嫌な気持ちになってる」

 

 俯いて拳を握る刃牙君に俺は微笑む。

 

「それは自然な感情だと思うよ」

「えっ?」

「刃牙君はお父さんを取られたと思ったんじゃないかな?なら、嫌な気持ちになるのも当然だよ」

 

 自分の気持ちに気付いたのか刃牙君は顔を真っ赤に染める。そんな刃牙君の頭をポンポンと軽く叩く。

 

「焦らなくていい。勇次郎さんは待っててくれるからさ」

「うん……」

 

 色々と感極まったのか涙を流し始めた刃牙君。そんな彼が落ち着くまでゆっくりと待つ。

 

「グシッ、ありがとう三浦さん。なんか色々とスッキリした」

「そっか、それはよかった。ところで刃牙君、そんな大荷物でどこに行くんだい?」

「飛騨に山登り」

 

 話を聞くと先日、ボクシングジムにいわゆる道場破りに行ったらユリー・チャコフスキーというボクサーにボコボコにされたらしい。

 

 それで一から鍛え直すために山篭りをするんだとか。

 

「1人で大丈夫かい?」

「大丈夫だよ。山小屋まで行けば安藤さんって知り合いもいるから」

「そうか、いってらっしゃい」

 

 大荷物を背負った刃牙君を手を振って見送る。そして改めて準備をして玄関を出るとふと思い立つ。

 

「もしかしたら刃牙君に弟か妹が……って、それを言うのは野暮か。いってきまーす!」

「は~い、いってらっしゃい」

 

 やたらと若々しい母さんの見送りに手を振ると、俺は学校に向かって歩き出す。

 

 そしてしばらく歩いているとリムジンが俺の横に止まった。なんかデジャヴ?

 

「朱沢江珠です。夫と息子がお世話になりました」

 

 リムジンから降りてきたのは勇次郎さんの奥さんで、刃牙君のお母さんの朱沢江珠さんだった。

 

 江珠さんが俺に丁寧に頭を下げると、側に控えていた栗谷川さんがアタッシュケースを差し出してくる。

 

 それを受け取ると江珠さんはまた丁寧に頭を下げてからリムジンに乗り込んだ。あっ、勇次郎さんもいたのか。江珠さんが勇次郎さんに寄り添う光景は仲の良い夫婦そのものだ。

 

 こうして刃牙君から聞いていたのと違う様子を見ると、色々と拗れていた家族間の関係も少しは良くなったのかなと思い笑みが浮かんでくる。

 

 ゆっくりと走り出したリムジンを手を振り見送ると電話を手に取った。

 

「金蔵(かねぐら)頭取、三浦です。いつもお世話になってます。すみません、また預かって貰いたいんですが……はい、それじゃお伺いしますね。はい、失礼しま~す」

 

 今都内で1、2を争うメガバンクの頭取に連絡を取ったんだが、これはまだ未成年の俺がこんな大金を銀行に持っていっても面倒が起こるだけなので、その面倒を回避するために連絡をしたのだ。

 

「そうだ、週末にでも刃牙君の様子を見に行ってみようかな。山登りなら足腰を鍛えるのにちょうどいいし」

 

 

 

 

side:範馬刃牙

 

 

「刃牙!逃げろー!!!」

 

 飛騨の山に登って数日、安藤さんが言っていた夜叉猿と遭遇してしまった。

 

 安藤さんが声を上げる前に不意をついて鉈で一撃見舞ったけど、それを受けた夜叉猿は平然としている。

 

 それを目にした俺は恐怖で足が震え逃げることが出来なくなっていた。

 

 安藤さんはファイティングポーズを取って夜叉猿と戦う気だ。けど安藤さんも冷や汗を流して緊張している。

 

 俺が上まで来た震えで歯をガチガチと鳴らし始めたその時……。

 

「ホキャァーーー!!!」

 

 不意に夜叉猿が振り向いて咆哮を上げた。

 

 夜叉猿の視線の先を追うと、何か大きな物を背負った大きな何かが走って来ているのがわかった。

 

「……三浦さん?」

「よっ、刃牙君。元気にしてるかい?」

 

 毛を逆立てて威嚇する夜叉猿を気にもせず、三浦さんは笑顔で俺に声を掛けてきたのだった。

 

 

 

 

side:とある自衛官

 

 

 端的に言って驚きました。まさか三浦氏があれほどの身体能力を有しているとは想像もしませんでしたから。

 

 あれほどの重量を背負って山道を時速20kmで走行する。しかも鼻歌を歌いながら。私も装備を背負って行軍訓練をするのでその凄さを良く理解出来るのですが、正直に言って理解し難い光景でした。

 

 声を掛けたのかですか?えぇ、もちろん声を掛けました。あれほどの重量を背負った状態で転んだら危険ですから。

 

 そうしたら三浦氏は『ご指導ありがとうございます!自衛官の皆さん、訓練頑張ってください!』と逆に激励を貰ってしまいましたよ。はははっ。

 

 惜しむらくは三浦氏と出会ったのが訓練中だった事ですね。彼のサインを貰いそびれてしまいました。

 

 ……もし三浦氏と戦闘になるとしたらですか?フル装備でもごめんですね。私では勝ちの目が見えませんから。

 

 何よりも我々自衛官は日本国民を守る為に存在します。彼の様な好青年とは戦う理由がありません。

 

 それに……私は三浦氏のファンですから。いえ、正確にはあの時にファンになったと言うべきですね。プロレスに興味がなかった私ですが、あの一時でプロレスラーというものに魅せられてしまいましたよ。

 

 それでは失礼します。彼の激励に応えるべく、より訓練に励まねばいけませんから。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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