プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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第13話『空手界の最終兵器とプロレスラー』

 飛騨で山登りをした翌週の週末、愚地さんに呼ばれて神心会本部に足を運んだ。

 

「どうも愚地さん、お久し振りです」

「愚地さんたぁ水臭ぇじゃねぇか三浦。独歩でいいぜ」

「じゃあ独歩さんで。俺も良意でいいですよ」

 

 神心会本部の応接室でそんな挨拶をすると愚地さんと対面になって座る。

 

「それで、俺にどんな用ですか?」

「わりぃがちょいと待ってくんな。お前さんに会ってもらいてぇ奴が来るんでな。それまではゆっくり茶でも飲んでくれ」

 

 そういうわけでゆっくりと独歩さんと茶を飲んでいく。うん、いいお茶だなぁ。世界最大の空手団体の総帥ともなれば、普段からこういういいお茶を飲んでるのかもね。

 

「ところで良意、お前さん休業だって話だがどうしたんだい?」

 

 そう言いながら独歩さんはスポーツ雑誌を目の前の机にポンッと置いた。

 

「あぁそれですか。ちょっと喧嘩をしてケガをしたんですが、それを猪狩さんに報告したらいい機会だから休んじまえって事で休業する事になったんですよ。あっ、喧嘩をしてケガをした事はオフレコでお願いしますね」

「おう、オフレコにしてやるからお前さんと喧嘩した相手の事を教えろや。お前程の奴をケガさせるなんて並みの奴じゃねぇからな」

 

 そう言いながら独歩さんはニヤニヤと笑っている。楽しそうだねぇ。

 

「範馬勇次郎さんって言うんですけど、知ってます?」

「……範馬勇次郎?」

 

 さっきまでほんわかとした雰囲気だった独歩さんの気配が、勇次郎さんの名前を聞いた瞬間にピリッと引き締まる。

 

「その感じだとどうやら知っているみたいですね」

「……知ってるもなにも、この傷とこの傷は昔に奴にやられたもんだ」

 

 そう言って独歩さんは顔の傷を指し示す。あぁ、その頃の勇次郎さんは鬱憤が溜まってたんだろうなぁ……。

 

「……で?どっちが勝ったんだい?」

「勇次郎さんですね。俺は胸骨を折られちゃいましたし」

 

 そう言うと独歩さんの雰囲気が和らぐ。

 

「まったく……あっさりと負けたって言いやがって」

「俺はプロレスラーですからね。勝ち負けは二の次なんですよ」

「……そうかい。ところで胸骨はもう大丈夫なのか?」

「はい、もう治りましたよ」

 

 そこで話が途切れたのでお茶のお代わりをお願いする。しかし待ち人が来ないなぁ?どうしたんだろ?

 

 

 

 

side:愚地独歩

 

 

(まさか良意の奴がオーガと戦っていたなんてなぁ)

 

 そう考えた俺は良意との地下での試合を思い返す。

 

(俺の打撃じゃ良意の骨を折ることは出来なかった。とすると今の俺じゃオーガとやるにゃちと足りねぇか?例の拳もまだ完成とは言えねぇしよ)

 

 こりゃ鍛え直さにゃと考えていると不意に応接室のドアがノックされた。

 

「押忍!失礼します館長。克己さんが来られました」

「おう、通してくれ」

 

 まったく、やっと来やがったか。

 

「来たぜ、親父。いきなりなんだよ?ガールフレンドとデートでもしようかと思ってたのによぉ」

 

 そう言い放つ私服姿にバッグを担いだ義息子の克己にニヤニヤと笑いそうになる。

 

 おいおい克己よぉ、俺ぁ知ってるんだぜ?あの日、良意の試合を見てからお前がガムシャラに鍛え始めている事をよぉ。

 

「お前に会わせたい客がいてな」

「会わせたい客って誰……っ!?」

 

 応接室のソファーに座ってゆっくりと茶を啜っている良意に気付いた克己が驚き目を見開く。

 

「……三浦、良意?」

「おう、そうだぜ?」

「……休業中じゃねぇのかよ」

「そこは俺のコネでちょいとな」

 

 俺達の話が途切れたところで湯飲みを置いた良意が立ち上がる。相変わらず……いや、よく見りゃ前に戦った時よりデカくなってねぇか?

 

「初めまして、三浦良意です」

「愚地克己……です」

「克己君って呼んでいいのかな?よろしく」

 

 差し出された良意の手を取り握手をした克己だがよく見りゃ克己の奴、空いている手に鳥肌が立ってやがる。

 

 怖れ?武者震い?まぁ、どっちにしろ鼻っ柱が伸びてたこいつにとっては良い傾向だな。

 

「それで親父……今日はどうしようってんだ?」

「そんなのおめぇ、組手に決まってんだろう?」

「……誰と誰が?」

「おめぇと良意だよ」

 

 そう告げると克己は強く拳を握り締める。

 

「……わかったよ。それじゃ、ガールフレンドに断りを入れてくるから先に道場に行くぜ」

 

 そう言って克己は応接室を去っていった。くっくっくっ、わかりやすい嘘だな克己。心を落ち着けるなり集中する時間が欲しいんだろう?いつでもやれる準備が出来てねぇのはまだまだ未熟だな。

 

「それで独歩さん、どの程度やったらいいんです?」

「察しがいいな」

「道場破りやらなんやらで慣れてますからね」

 

 道場をやってると血気盛んな若い兄ちゃんが時折来ることもあるんだがなるほど、プロレスのジムも似た様なもんなのか。

 

「取り敢えずあいつの伸びた鼻っ柱をへし折ってくれたらいい。あぁそうだ。プロレスラーとして身体能力面で圧倒するのもいいが、技術面でもあいつを圧倒してくれや」

「技術面は独歩さんが見たいだけじゃ?」

「おいおいバカ言っちゃいけねぇよ。俺は息子のためを思ってだなぁ」

 

 図星をつかれたが気にする必要もねぇだろ。こいつはもったいぶったりするタマじゃねぇからな。

 

「仕方ないですねぇ。夕飯で手を打ちますよ」

「そう言うだろうと思ってもう料亭を予約してあるぜ」

 

 御老公のツケがきく料亭だけどな♪

 

「準備がいい事で。それじゃ俺達も行きますか」

「おう、楽しみだ。たっぷりと見学させてもらうぜ」

 

 克己、お膳立ては整えた。一皮剥けるかはおめぇ次第だぜ。




これで本日の投稿は終わりです。

それと早いですが今年の投稿を終わりにいたします。

また来年お会いしましょう。
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