プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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第19話『アメリカ旅行とプロレスラー その4』

「……パパ、ジョークは止めてくれ」

「ジョークじゃない。本気さ」

「ノー、僕はもうパパを超えている。スパーの必要性がない」

 

 そんなJr.の言葉にMr.がニッと笑う。

 

「なら早々に私をKOしてヨシオキとやればいい」

「……オーケー」

 

 2人の会話を聞いていた克己君と刃牙君はどこか気まずそうだ。

 

「三浦さん……大丈夫なんすか?」

「大丈夫大丈夫、ただの親子喧嘩だよ」

 

 俺がそう言うと刃牙君は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「どうしたんだい、刃牙君?」

「いや、その……親子喧嘩って外から見るとこうなんだなって……」

 

 あぁ、いずれやる勇次郎さんとの親子喧嘩を想像して、周囲からどう見られるかを考えちゃったのか。

 

「まぁ、家庭の在り方はそれぞれだから、そう気にしなくてもいいと思うよ?」

「そうかな?」

「勇次郎さんの期待に応えたいんだろう?」

 

 そう問うと刃牙君は頷く。

 

「なら周囲の目を気にせず思いっきり勇次郎さんと遊んだらいいさ。大丈夫。なにかあっても江珠さんがなんとかしてくれるから。母は強しってね」

 

 ウインクしながらそう言うと刃牙君は笑みを浮かべる。うんうん、子供は笑顔が一番だね。

 

「さぁ、2人共しっかり見ておくんだよ。そうそう見られるレベルのものじゃないからね」

 

 Jr.とMr.の準備が整ったのを確認すると、俺はデコピンでゴングを鳴らしたのだった。

 

 

 

 

side:アライJr.

 

 

 ナンセンス。その一言に尽きる。僕とパパの格付けはもう済んだというのに、何故パパはまたリングに上がる?

 

 振り向くとパパがガウンを脱いでいた。そしてガウンを脱いだパパの身体を見て驚く。見事にシェイプアップされていたからだ。

 

「……だから何だというんだ」

 

 僕の呟きが聞こえたのかパパは不敵に微笑む。……オーケー、その笑みを直ぐに消してあげるよ。

 

 カーンッとゴングが鳴ると同時に僕は飛び出しジャブを放つ。だがナックルに感触が無い。避けられた。

 

 続け様にジャブをダブル、トリプルで放ってみるがどれもナックルに感触が無い。全て避けられている。

 

 ……おかしい、何故避けられる?以前のパパならば確実にくらっていたはずだ。

 

「何を不思議がっているんだ、Jr.?」

(……マグレだ!)

 

 肩を入れて距離を伸ばすメキシカンジャブにフック、右ストレートにアッパー、更にはボディーへもパンチを放つがどれもこれも避けられてしまう。

 

(何故だ?僕の調子が悪いのか?)

 

 そう自問自答するが今日のヨシオキとのスパーに備えてコンディションは完璧に整えてきた。調子が悪いのはありえない。

 

(ならばまさか……パパが強くなった?既に全盛期を過ぎたパパが?ありえない)

「Jr.」

 

 混乱する思考を中断する様にパパが話し掛けてくる。

 

「私が持つ技術はお前に全て教えた。だが1つだけ教えていないものがある。それは……ここだ」

 

 そう言ってパパは右のグローブで左胸を叩く。

 

「ハート、プライド、表現の仕方は色々とあるが……ここはスピリットにしておこうか」

「スピリット……」

「そうスピリットだ。例え何人だろうと、例え国家だろうと揺るがすことが出来ないスピリット。それが私をマホメド・アライ足らしめるものだ」

 

 大きい……パパはこんなに大きかったのか?何故か僕には今のパパがヨシオキよりも巨大に見える。

 

 不意にカーンッとゴングが鳴った。1ラウンド目が終わったんだ。僕はコーナーに戻りながら安堵の息を吐き出す。

 

「Jr.」

 

 声から感じる圧力に振り向けない。顔を上げることが出来ない。

 

「以前の私はお前とのスパーでは父親として相手をしてきた。だが次のラウンドからは1人の戦士として相手をする」

「ぐうの音も出ないように叩きのめしてやろう。楽しみにしておけ、ボーイ」

 

 冷や汗が全身を包む。震えが止まらない。リングの上から逃げ出したい。

 

 だがここで逃げたら僕の中で何かが終わってしまう。そんな根拠の無い確信が、僕の身体をリングの上に縛り付けたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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