「おぉ、良意。よぉ来た!」
俺は猪狩さんと共にとある高級料亭に足を運ぶと、そこには既に徳川家の末裔とかいう徳川の爺様が待っていた。
「御老公、私はオマケですかな?」
「おっとすまんすまん、猪狩も座ってくれい。さぁ、先ずは腹拵えじゃ」
徳川の爺様がパンパンと手を叩くと次々と料理が運ばれてくるので、俺はそれらを次々と腹に収めていく。
「い~い食いっぷりじゃのう」
「私も若い頃はそれなりに健啖家でしたが、ここまでではありませんでしたな」
「ほっほっほっ!流石はかの相模三浦氏の子孫じゃな!さぁ、遠慮せんとじゃんじゃん食えい」
言われずともタダ飯なら幾らでも食わせてもらうよ。しっかし旨いなぁここの飯は。
というか徳川の爺様はうちの家系の事を知ってるのか?まぁ、いいか。今は飯だ飯。
1時間程の時間を掛けてたっぷりと食った俺は、膨れた腹を擦りご満悦だ。
「……試合後じゃというのにようもこんなに食えたもんじゃな」
「台本有りとはいえ大した相手ではありませんでしたからなぁ」
「それにしてもじゃ。しっかり相手の技を受けたんじゃろ?それでこれだけ食えるのは、外だけじゃなく内まで強い証拠じゃ」
猪狩さんの言う通りに今日の相手は大した相手じゃなかった。むしろ気疲れしたから食わなきゃやってられないよ。
「ふむ、退屈な相手だったと言うんじゃな?」
「飾らずに言えばそうですね」
俺がそう答えると徳川の爺様はニンマリと笑みを浮かべる。あぁ……この流れは。
「良意、地下闘技場でやらんか?」
「猪狩さんがいいと言えば」
チラリと猪狩さんに目を向ければニコニコといい笑顔で笑っている。
……なるほど、もう話はついてたわけか。
「いつ出来る?」
「今すぐでも」
「よしっ!決まったら伝えるぞ!」
俺は手の平を上に向けて親指と人差し指で輪っかを作りながら猪狩さんに目を向ける。すると猪狩さんは指を1本立てた。
ファイトマネーは1億かぁ……。徳川の爺様が太っ腹なのは大歓迎だけど、金銭感覚が狂いそうだなぁ。
◆
side:徳川光成
よしっ!良意の奴の言質を取ったぞ!早速ファイターを見繕わねばな!
ルンルン気分で料亭を後にして車に乗り込むと猪狩の奴も乗り込んでくる。
「オーケーをしておいてなんですが、先月組んだばかりだというのにまたですか?」
「試合というには随分と一方的じゃったからなぁ。あれじゃむしろ良意はフラストレーションが溜まってしまったじゃろ」
良意の奴は1年程前から地下闘技場で幾度も試合をしておるが、その試合のどれもが苦戦することなく楽勝の二文字で終わってしまっておる。むしろ相手を壊さぬ様に気遣いをさせてしまっておるのは儂の失態じゃ。
「柔よく剛を制すが日本の武術、格闘技の御家芸と言いたいが、それらを許さず圧倒的な膂力で捩じ伏せてしまう。流石は相模三浦氏の子孫よ」
八十五人力の勇士の異名を持つ相模三浦氏最後の当主、その当主の血を継ぐ子孫の良意もまた類い希な身体の持ち主じゃった。
儂が良意と会ったのはちょうど一年前か。猪狩が武者修行として中国拳法の雄に弟子入りをさせて、その出先から帰ってきた時じゃった。
驚いたわい。僅か1年功夫を積んだだけで『海王』を名乗る事を許されちまったというんじゃからな。
その話が本当か確かめたくて地下のファイターと試合を組んだが……結果は技を使わせることも出来ず、ただただ良意に気を使わせただけじゃった。
それ以来儂は詫び代わりに何度も良意の試合を組んだが、結果はどの試合も気を使わせ続けるのみ……本気も全力も出させてやる事が出来ずにおる。なんとも情けないことじゃ。
「あ~……あまり気に病まずとも大丈夫かと。良意は腹一杯に飯が食えればそれでいいという奴なんで」
猪狩はそう言うがあれほどの猛者じゃ。力を振るう機会に飢えておるじゃろう。ならばその機会を与えてやるのが儂の使命!
「フッフッフッ、待っておれよ良意。儂がとびっきりのファイターを用意してやるからのう」
そう言葉を溢すと猪狩は何故か頭を抱えながら大きくため息を吐きおった。
社長業で疲れておるのかもしれんな。
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