プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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第21話『アメリカ旅行とプロレスラー その6』

「どうしても理解出来なかった。パパの言うスピリットが」

 

 朝食を共にした後、不意にJr.がそう言った。

 

「教えてくれヨシオキ。スピリットとは何だ?」

「難しい質問だねぇ。そうだな……強いて言うなら道標かな」

「道標?」

「そう、一番カッコいいと思う自分に辿り着く、あるいは一番カッコいい自分で在り続けるための道標……というのが俺なりの解釈だね」

 

 俺がそう答えるとMr.が頷く。

 

「なるほど、そういう解釈もありだね」

「Mr.は違うんですか?」

「私もほとんど似たようなものだよ。ただ私の場合はこういう自分で在り続けるための道標……といった感じかな」

「なるほど、確かに似ていますね」

 

 理想の自分を思い描くというのは一緒だ。けど俺とMr.では決定的に違うところがある。それは俺は理想像が不明確なのに対しMr.は明確にあるということだ。流石はMr.だね。

 

「ちょっといいかい?突然だけど刃牙君はどうなりたいとかはあるかな?」

「俺?俺は親父より強くなりたい」

「単純明快でいいね。至極困難ではあるけれども」

「うん、わかってるよ」

 

 勇次郎さんよりも強くなる。強いの定義は色々あるけど、刃牙君の場合は勇次郎さんとの喧嘩で勝つことだろうから、最も困難な理想像と言えるね。

 

「じゃあ克巳君はどうかな?」

「俺っすか?そうですね……これといって考えたことないですけど……強いて言うなら、空手の歴史に新たな一歩を刻みたいかな?」

「これまた困難なものだね」

「でも、やりがいはある……でしょ?」

 

 世界に数多ある武術、武道の開祖や継承者。その人達と同様……或いはそれ以上の創造の苦しみを味わうだろうね。けどそれ以上の楽しさも味わえるかもしれない。そう考えると克巳君の言う通りにやりがいはあるね。

 

「さて、ここまで聞いた上でJr.はどうかな?」

「……わからない」

「そっか、じゃあそれを探すのを当面の目標とすればいいんじゃないかな?」

「探す?」

 

 Jr.の言葉に頷いて言葉を続ける。

 

「そう、探す。理想の自分、成りたい自分を探すために強くなる。色々なことを経験する。そういうのも楽しいと思うよ?ほら、自分探しなんて物語の主人公みたいだろ?」

 

 そう言うとJr.はポカンとした後に笑い出した。

 

「はっはっはっ!サブカルチャーの主人公か!うん、悪くない。なにせ僕のパパはサブカルチャーの主人公以上に偉大だ。なら僕もサブカルチャーの主人公みたいに自分探しをしてみようかな?」

 

 コップの水をグッと飲み干したJr.は席を立つ。

 

「すまないがそこの2人、僕とスパーをしてもらえないかな?」

「いいぜ、今日こそ名前を覚えさせてやる」

「まった克巳さん、最初は俺がやる」

「いいや俺だ」

 

 そんな風に和気藹々と話しながらJr.達は出ていった。さて、俺も行こうかな。

 

「ところでヨシオキ、君はどうなのかな?」

「う~ん……俺も探している最中なんですよね。最高のプロレスラーってのを」

「最高?最強ではなくか?」

「えぇ、最強は退屈ですから」

 

 そう答えるとMr.は肩を竦める。

 

「多くのファイターを敵に回しそうな発言だ」

「一向に構いませんよ。いつ何時、誰の挑戦でも受けますから」

「流石は猪狩の愛弟子といったところかな」

 

 お互いに顔を見合わせて笑った俺達はJr.達の元にゆっくりと歩いていったのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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