アメリカでの2週間の滞在を終えた俺達はJr.を加えた一行で中国へと飛び立った。
「ヨシオキ、中国では何をするんだ?」
「皆には俺の中国拳法の師父……つまり師匠と会ってもらおうと思ってるよ」
「ヨシオキのマスター?興味があるな」
あの日以来Jr.は変わった。負けを恐れなくなったし、強者との戦いを嬉々として望むようになっている。
「俺も興味あるな」
「ボーイにはまだ早いんじゃないか?」
「くそっ、近いうちに絶対名前を覚えさせてやる」
アメリカ滞在の2週間で克巳君はJr.に名前を覚えさせることに成功したけど、刃牙君は失敗してしまった。まぁ、刃牙君はまだまだ成長途上だから仕方ないんだけどね。
長いフライトが終わり中国の空港に下り立つと驚きの人が迎えに来ていた。
「良意、待っていたぞ」
迎えに来ていたのは2年前に知己を得た烈永周(れつ えいしゅう)さんだった。何故彼がと思ったが、前回中国に訪れた時に再戦の機会を待つとか言ってたっけなぁ。
「永周さん、お久し振りです」
「あぁ、久し振りだ」
握手を交わすと彼が前回会った時よりも更に功夫を積んだのがわかる。
「どうやら更に功夫を積んだようだな」
「それは永周さんもでしょう?」
「あぁ、これは擂台賽が楽しみだ」
擂台賽とは中国拳法界で行われる武術の祭典みたいなものなんだけど、この擂台賽に出場するには海王の称号を持つか、海王か中国拳法界重鎮の推薦が必要になる。
永周さんの性格を考えると推薦は断ると思う。……ってことは?
「永周さん、海王になったんですね」
「あぁ、郭老師から許しを得てな」
「師父から?」
永周さんの師父は白林寺の劉海王のはずだけど、何で師父から?
「正式に郭老師の弟子にしていただいたのでな」
「よく劉海王が認めましたね?」
「中国拳法界に郭老師の言に異を唱えられる者はおらんよ」
師父が呆れるほど強いのは知ってるけど、そんなに偉かったんだな。……そう言えば猪狩さんが師父は中国拳法界でもトップクラスのお偉いさんだって言ってたっけ?う~ん……あの師父がねぇ?
「ところで良意、そちらの少年達を紹介してくれないか?君が連れてきたのを考えると、見所のある者達なのだろう?」
そう言われたので刃牙君達を紹介する。刃牙君達も感じるものがあったのか、永周さんと握手をすると驚いた顔をした。
「君達と手合わせをするのが楽しみだ。さぁ、案内しよう。改めて中国にようこそ」
◆
side:愚地独歩
今俺の目の前には中国拳法界伝説の郭海皇がいる。小突けばくたばっちまいそうなご老体だってのに、その身に纏う覇気はオーガと比べても見劣りしない。
「風の噂で聞いておるよ。日本の空手界の武神の異名は」
「いやぁ……」
正直に言って武神ってぇ異名は目の前のご老体にこそ相応しいと思っちまう。とはいえ俺も武の道を生きる者。おいそれと譲るわけにもいかねぇか。
すっと不意に郭海皇が立ち上がる。
「百の言葉よりも一度の手合わせ……儂らはそういう人種であろう?」
「ははっ、違ぇねぇ」
立ち上がって屋敷の外に出るとそれとなく対峙する。
「では、空手四百年の歴史を拝見させてもらおうか?」
……こりゃ出し惜しみする余裕は欠片もねぇや。
「こっちこそ中国拳法四千年の歴史を堪能させてもらうぜ?」
「はっはっはっ、堪能出来るといいのう?」
俺は俺だけの拳……『菩薩の拳』を作ると、郭海皇に向かって踏み込んで行くのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。