プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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幕間2『老拳法家の回想』

side:郭海皇

 

 

 日本に渡りプロレスラーになった甥の孫の縁を頼りに、猪狩が紹介してきたのが良意との出会いの始まりじゃった。

 

 当時は貰う物を貰ったし暇だったのもあって数日は鍛練を見てやろうぐらいの気持ちじゃった。だが、良意の鍛練を見た初日で儂は驚愕した。

 

 なんと、良意の奴は一度見せた儂の動きを即座に模倣してみせたのだ。それも上辺だけのものではなく身体操作そのものを模倣してみせたのだ。

 

 その時に儂は思い出した。若き日に言われた先達の言葉を。世の中には人の皮を越えて肉や骨まで見える者がいると……。

 

 良意に問うてみたがあやつは集中すれば実際に見えるわけではないが、なんとなく感じ取れるそうじゃ。人体に詳しくなかった当時はぼんやりとしか分からなかったそうじゃが、今ではハッキリと人体模型でも見るように見えていても不思議ではない。

 

 それからは早かったな。猪狩に弟子に取ると一報を入れ、良意を鍛える日々を送った。そして僅か1年で儂の百年の武を身に付けおったのじゃ。

 

 嫉妬した。世の中には己の想像を上回る天才がいるのだと分かり嫉妬した。だが、儂の百年の研鑽の日々は間違いではなかったと同時にわかり満たされもした。

 

 何故満たされたか?答えは簡単じゃ。良意との手合わせで儂もまた成長をしていったからじゃ。

 

 武に果ては無し。これを実感出来た今は、この命が尽きるその時まで武の道から退くことはあるまい。なんと幸せなことか。

 

 口惜しいのは良意を身内に引き込めなかったことよ。1年が経ち良意が帰国して直ぐに、猪狩の奴め自分の娘と良意を婚約させおった。

 

 その時に初めて後悔したな。武の道に傾倒し身内と疎遠になっておったことを。そうでなければ良意が帰国する前に囲い込めたというに……。

 

 まぁ、それも今となっては仕方なかろう。それに良意は新たな縁を運んできてくれた。それが烈との出会いじゃ。

 

 昨今の中国拳法界は粗製の海王が乱立するばかりで、真の海王は減る一方じゃった。そろそろ灸の一つも据えるかと思っておったところに才あり勤勉な烈との出会いは嬉しいものじゃったのう。

 

 それからは烈を鍛え、半年に一度我が元に訪れる良意と試合をさせ、二人の成長を見守る日々。そして二人の成長を己の武に還元し自身もまた成長する日々はなんとも言えぬ幸福に満たされた日々よ。

 

 齢百を越えて久しい今こそが全盛期……そう言えることのなんと幸せなことか。武との出会いに感謝を。

 

 良意よ、お前と出会わなければ儂はかつての若き日のようにまた、井の中の蛙でおったままだったよ。お前との出会いに感謝を。

 

 まぁ、それはそれとしてじゃ。烈と良意の成長を糧に儂もまた成長をせねばな。こればかりは師の特権。誰にも譲らんよ。

 

 さぁ励め若人達よ。お前達が励めば励むほど儂もまた成長していく。それが武。汲めども尽きぬ飽くなき探究の道よ。存分に楽しむがよい。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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