プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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第31話『中国旅行とプロレスラー その10』

 Jr.との準決勝が始まった。彼のステップワークを見るに克巳君との試合の影響はほとんど無さそうだね。

 

 ジャブ、ダブルジャブ、ストレートからショートフック、ショートフックからショートアッパーと連打が飛んでくるが、それら全てを受けていく。

 

「うん、いいパンチだね。ちゃんと勝負をしている人の重みを感じるよ」

「……以前は打撃のテイスティングをすることを理解が出来なかったが、今なら少し理解が出来るよ」

 

 武道や武術では先ず受けることから始まる。その前段階として受身を習得するんだけど、それが出来なければ上達しないと言われるほどだ。

 

 受けることで視覚的な情報や効果、身体的なダメージの具合等を感じ取り、それらを自身の技術へと昇華する。これは昔から変わらない武道や武術の上達方法だ。

 

 人は経験の無いことはイメージがしにくい生き物だ。まぁ世の中にはそういった一般的な常識を超える天才もいるけど、大半が経験を元にイメージを固める。だからこそ経験を増やすために、イメージをより良いものにするためには受けなければならない。

 

 そうやって積み重ねてより良いものに更新し受け継がれてきたのが武道や武術なんだ。

 

「シッ!」

 

 Jr.はリーチを目一杯使ってパンチを繰り出してくる。そして直ぐに離れると、フェイクを交えてまた踏み込みパンチを放つ。理想的なアウトボクシングだね。

 

 けどそれじゃあ足りない。師父の打撃を、勇次郎さんの打撃を知る俺を打倒したかったらもっと踏み込まなきゃ。

 

 それにJr.も気付いているのか、一度離れて動きを止めると大きなため息を吐いた。

 

「呆れるほどのタフネスだよ、ヨシオキ。イガリでもそれほどは耐えられないんじゃないか?」

「うん?いや、今の猪狩さんなら普通に耐えると思うよ」

 

 ジムで俺のスパーリングパートナーをやってくれているのは主に猪狩さんだ。理由は現役真っ只中の選手がケガをしたら興業に支障が出るから。

 

 それで何年も俺のスパーリングパートナーをしていたからか1年ぐらい前に……『全盛期を超えちまったなぁ……現役復帰するか?』って言ってたからね。

 

 まぁ社長業が忙しいから結局現役復帰は出来ていないんだけど、俺のスパーリングパートナー以外にもたまに元気な若手の指導をしたりする様になったなぁ。

 

「さて、それじゃそろそろ俺も攻めようかな」

 

 そう言って踏み込むとJr.はステップワークを駆使して間合いを取ろうとしてくるけど、こちらも歩法を使ってJr.についていく。

 

「そのサイズで速すぎる!」

「鍛えているからね。……はい、捕まえたっと」

 

 Jr.の左腕を取るとそのまま手繰り寄せてバックに回りクラッチ。

 

「受身しっかり」

「くそっ!」

 

 悪態をつきながらも後頭部を保護したのを確認してからブリッジ。ジャーマンスープレックスを決めるとJr.の意識は落ちた。

 

「良意、休憩はいるかい?」

「いいえ、いつ何時誰の挑戦でも受けますよ」

「いいね♪そんじゃ、始めるか」

 

 Jr.が担架で運ばれると、そのまま独歩さんとの決勝戦が始まるのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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