勇次郎さんに親子喧嘩の日を告げられた翌日、俺はジムである人物と会っていた。
そのある人物とはジャック・ハンマー。勇次郎さんの息子の1人であり、刃牙君のお兄さんにあたる人だ。
「いいのかいジャック?9日後には君も勇次郎さんと喧嘩をするんだろう?」
「……父が言っていた。唯一貴方だけが、本気で喧嘩を出来る友だと」
ジャックのその言葉に笑みが浮かぶ。
「勇次郎さんにそう言ってもらえたなら嬉しいね」
「だからこそ父と喧嘩をする前に貴方と戦っておきたい。少しでも成長し、父に近付くために」
一般的とは言えないけどこれもまた親子愛の形の1つ。無下には出来ないか。
「そっか。それじゃ、やろうか」
そう言うとジャックは即座に構えた。構えから察するにボクシングをベースにした総合格闘技……って感じかな?
いきなり右のクロスが飛んできたので受ける。うん、いいパンチだ。当てるのではなく倒すことを狙うパンチだね。
返しのリードアッパーから右のスイングフック。左のレバーブローから右のオーバーハンドブロー。
思った通りに蹴りが無いな。使えないわけじゃないだろうけど、使わない理由はなんだろうか?
そう思っていたらジャックは沈み込んだ勢いでそのままバックに回って俺の胴をクラッチ。なるほど、いつでも組みに行けるように足を残しているのか。
バックを取ったジャックはそのままブリッジ。見事なジャーマンを決めてきた。
ジャックが離れた気配を察した俺は首を使って跳ね起きる。
「あれだけやってダメージ無しか」
「プロレスラーだからね」
「俺の知るプロレスラーとは違うな……」
きっとその人はまだ未熟なんだろう。
「蹴りを使わないのは意図的かい?」
「あぁ、キックよりもパンチの方が得意なんでな。そちらに特化しつつ、グラップルという選択も取れるスタイルにした」
「なるほど、よく考えているね」
苦手を克服するか得意を伸ばすか。プロレスに限らず多くのことで課題になるけど、ジャックは得意を伸ばすことを選んだみたいだね。
「元より俺には父程の才能は無い。おそらくまだ見ぬ弟よりも下だろう。だからこそ、苦手を克服する時間を得意を伸ばす時間にする必要があると考えた」
「うん、そうか」
「Mr.ミウラ、俺の才能はどうだ?俺の予想通りに父や弟よりも下か?」
「例え答えがどうであろうと君は君の道を変えない……そうだろう?」
そう問うとジャックはニッと笑った。
「なら、そんなことどうでもいいじゃないか」
「あぁ、そうだな。それじゃ、すまないが続きを頼む」
この日、俺はジャックが満足するまで相手を続けた。
ジャック、君は刃牙君よりも才能は無いかもしれない。けどね、心の強さは間違いなく君の方が上だ。
だから勇次郎さんとの親子喧嘩……楽しみにしているよ。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。