刃牙君が左のジャブから対角線となる右のローキック、左のレバーブローから跳び後ろ回し蹴りと淀みない連撃で勇次郎さんを攻撃するが、勇次郎さんは堪能する様に全ての攻撃を受けていく。
「動揺はないか」
「三浦さんで慣れてるんでね」
時折会話を挟むから動きは止まるけど、それ以外は一般的な親子喧嘩の範疇を超える威力の打撃を刃牙君は繰り出し続ける。
それを受ける勇次郎さんはなんとも嬉しそうだ。
「いったい誰の影響かねぇ?」
「勇次郎さんは元からあんな感じでしたよ?」
そう言うと独歩さんは訝しげな目を向けてくるけどこれは本当のことだ。
ただ当時の勇次郎さんは鬱憤が溜まり過ぎて感情を上手くコントロール出来なかっただけで、本来の勇次郎さんはああしてちゃんと受け入れてくれる度量を持った優しい人なんだ。
「それにしてもタフだな。もしかしたらお前さんよりもか?」
「あくまで俺の感覚ですけど、耐久力を含めた身体能力なら若干俺の方が上ですね。けど、身体操作能力や戦いのセンスは勇次郎さんの方がずっと上です」
例えるなら俺に最大で100の力があるとしたら、その力を95までしか使いこなせない。
対して勇次郎さんは99の力があれば、その99の力を不足なく十全に使いこなせるんだ。
そんな感じに話すと独歩さんは頷く。
「なるほどねぇ……ちなみにおいらはどんなもんだい?」
「さっきも言いましたけどあくまで俺の感覚ですよ?」
「おう、それでいいから教えろよい」
俺の感覚だと俺の力を100とした場合は独歩さんは88ぐらいだと思う。けど使えているのは86程って感じかな。
ちなみに師父は99でそれを十全に使いこなせる。つまり俺の見立てでは師父と勇次郎さんは互角だ。
「ふ~ん……そうかい」
「不満……ではなさそうですね」
「あぁ、妙に納得してる自分がいやがる。こりゃいっそう稽古に励まにゃならんな」
今の独歩さんじゃ勇次郎さんに勝てないって言ったのと同じようなものだけど、それで喜ぶんだから独歩さんはやっぱり武道家なんだなぁ。
「よくぞそこまで鍛えた」
不意に勇次郎さんはそう言うと、デコピンで顎を弾いて刃牙君に脳震盪を起こさせた。
崩れ落ちる刃牙君を抱き止めた勇次郎さんは、優しく抱き上げて江珠さんの所に運ぶ。
「親父……俺はまだ……」
「今日はここまでだ。また遊んでやる。だからお前の兄の喧嘩を見ていろ」
「……兄?」
突然の勇次郎さんのサプライズに刃牙君だけでなく克巳君達も混乱したのかざわつく。
「ジャック……こいつがお前の腹違いの兄だ」
勇次郎さんに紹介されてジャックが前に進み出ると、刃牙君は目を見開いて驚きを露にする。
「バキ……いい戦いだった。次は俺の番だ」
そう言うとジャックは優しく刃牙君の頭を撫でる。まだ刃牙君は混乱しているけど、あの様子だとちゃんと兄弟としてやっていけそうだね。
シャツを脱いでジャックが上半身をさらけ出すと、ギャラリーから感嘆の声が上がる。
「なるほど……確かにオーガの息子だわな」
そんな独歩さんの囁きを皮切りに、勇次郎さんとジャックの喧嘩が始まった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。