ジャックが拳による打撃を繰り出していく。ストレート、フック、アッパーと息をつく暇も無いラッシュだ。
そんなジャックのラッシュを勇次郎さんは受けて堪能していく。
「おいおい……」
思わずといった感じで独歩さんが声を上げるが、他の観戦者達も同様に驚愕している。
「……どうやらおいらはまだオーガを過小評価してたみてぇだぜ」
「喧嘩する前にわかってよかったじゃないですか」
「違ぇねぇ」
そう言って独歩さんは腕を組むと、武者震いする身体を抑える様に己の腕を強く掴む。
「悪くない打撃だ。だが、僅かにズレている」
打撃は脱力も大事だけどそれと同時に打撃フォーム、体重移動のタイミング、力みのタイミング等も大事だ。けどジャックはそれらが微妙にズレている。
ジャックの微妙なズレの修正は至極難しい。感覚やイメージの領域での修正だからだ。
「急激な身体能力の成長に感覚が追い付かなかったか……」
そんな勇次郎さんの言葉にジャックは歯噛みをする。たぶん心当たりがあるんだろう。
勇次郎さんが構えた。今日の喧嘩で初めて。だがその構えはジャックのそれに酷似している。
「ジャブはこう打つ」
一歩踏み込んだ勇次郎さんがジャックにジャブを放つ。辛うじて手を顔と拳の間に挟み込めたジャックだが、勇次郎さんのジャブにより顔を跳ね上げられる。
「フックはこう」
見事な身体操作でフックを放つ勇次郎さん。それを受けてしまったジャックは意識が飛び掛けているが、歯を食い縛って堪えた。
「アッパーはこう」
顎と拳の間に両腕を挟み込めたジャックだが、勇次郎さんのアッパーにより両足が浮く。そして……。
「ストレートはこうだ」
勇次郎さんのストレートをまともに受けたジャックは後ろに一回転して腹這いにダウンした。けどまだ意識があるのかジャックは必死に身体を起こそうとする。
「未熟なれど以前会った時よりは成長した。……よくやった」
そう言って勇次郎さんは上体を起こしたジャックの頭を撫でた。すると涙を流しながらジャックが崩れ落ちたんだけど、そんなジャックを優しく抱き止めた勇次郎さんは、抱き上げてジェーンさんの所にジャックを運ぶ。
「良意」
「はい」
勇次郎さんに呼ばれた俺は上着を脱ぐ。すると勇次郎さんも上着を脱いだ。
まぁ、こうなる気はしてた。
「おいおい、抜け駆けだぜ?」
「向こうからのご指名ですから」
「かぁ~羨ましいねぇ……仕方ねぇ、とっくりと見物させてもらおうか」
観戦者達の注目が集まる中で勇次郎さんの前に進み出る。
「お集まりの諸君、礼を言う。貴様らのおかげで息子達は成長した。礼代わりとして、地上最強の喧嘩をお見せしよう」
吐納法を用いてパンプアップすると、呼応する様に勇次郎さんの背に鬼の貌が現れる。
「刃牙君、ジャック、よく見ておくんだよ。君達が目指す、父親の背中をね」
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。