プロレスこそが最強の格闘技?   作:ネコガミ

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本日も1話の投稿です。


第6話『空手家とプロレスラー その1』

 本部さんとの試合後も徳川の爺様に何度も試合を組まれ、気が付けば2年の月日が経ち俺は18歳になっていた。

 

 学生生活も今年で終わりとあって、俺は本業のプロレスの興行以外は悠々自適な学生生活を送りたいと思っていたのだが、今日も今日とて徳川の爺様からのお呼び出しだ。

 

「お~、チャンピオン。よう来たよう来た」

 

 ご機嫌な徳川の爺様が言う通りに今の俺はチャンピオンなのだが、徳川の爺様が言うのは俺が所属するプロレス団体のチャンピオンの事ではなく、地下闘技場のチャンピオンの事だ。

 

 俺は知らなかったのだが、数々の地下闘技場での試合の中でどうも相手に現役の地下闘技場チャンピオンもいたらしい。知らぬ間に地下闘技場の現役チャンピオンに勝ってしまっていたわけだな。

 

 俺に負けた地下闘技場のチャンピオンなんだが……『たとえエキシビションといえど負けたからには最強とは言えぬ』って徳川の爺様に言われてチャンピオンの座から下ろされたらしい。

 

 それで俺が地下闘技場の暫定チャンピオンに指名されて、知らぬ間に地下闘技場チャンピオンの座が欲しい人達と次々と戦っていたわけだ。

 

 そして今現在、地下闘技場のAランクのファイターを総ナメしちゃった俺は正式に地下闘技場のチャンピオンとなってしまったというわけだ。

 

 ちなみに本業の興行の方はともかく地下の方では負けなしだ。

 

「徳川の爺様、何度も言ってるけど俺はファイトマネー無しじゃやらないよ」

「わかっとるわかっとる」

 

 そういえば基本的に地下闘技場のファイターはファイトマネーが無いらしい。

 

 それじゃなんで地下闘技場で戦うのかというと、本当の意味で最強の称号が欲しいらしいのだ。

 

 けどそれじゃ生活してけないだろうと思ったんだが、ファイトマネー以外のところで色々と優遇しているそうだ。

 

 例えば医療機関やトレーニング施設なんだが、徳川の爺様の息がかかった所なら実質無料で利用出来るらしいし、日々の食費も援助や後援という名目である程度出しているらしい。

 

 そこまでするならファイトマネーを出したらと思ったんだが徳川の爺様は、『小金を持つとファイター達の最強になりたいという想い……その純度が薄れる』のが嫌でファイトマネーは出さないんだとか。

 

 まぁ地下闘技場のファイターが引退したら、そのファイターの実績や功績を称えてそれなりにまとまった金を渡すらしいけどね。

 

「それで……次の相手は?」

「おっ?知りたいか?う~んでもな~……」

 

 うわぁ……。こうなると適当に徳川の爺様に合わせるしかないんだけど、それがまた面倒くさいのだ。

 

 しばらく適当に話を合わせていると不意に徳川の爺様が笑みを浮かべる。

 

 すると……。

 

「この者が御主の次の対戦相手、虎殺しにして生ける武神……愚地独歩(おろち どっぽ)じゃ」

 

 どこかで話を聞いていたのかスキンヘッドのゴツイ人が現れたのだった。

 

 

 

 

side:徳川光成

 

 

 良意が去ると独歩と二人茶を飲んでゆるりと過ごす。うむ、こういう時間も良いものじゃ。

 

「独歩、どうじゃった?」

「デカイですな」

 

 良意を見た者達の第一声は揃ってデカイになる事が多い。まぁ、そりゃそうなるじゃろうな。なんせ今の良意は2年前より更に大きくなっておる。身長217cm、体重140kgは日本人はおろか世界的に見ても規格外の大きさじゃ。

 

「それにしてもいきなり連絡があって驚いたぞ。しかも良意を名指しで指名するなど」

「……少し思うところがありましてな」

 

 付き合いが長いからこそわかるが、どうも何かを腹に抱えておる様子。あるいは顔の傷に関わる……いや、良意の歳を考えればそれはないか。

 

 であれば……はて?

 

 疑問に答えが出ぬままに独歩は去っていった。

 

「まぁ、二人の試合を見ればわかるやもしれんな。さぁて良意が地下に来てから最高のカードじゃ。楽しまんとのう」

 

 

 

 

side:愚地独歩

 

 

 いつからだったっけなぁ?正拳がこうじゃねぇと思う様になったのは。

 

 地下闘技場でチャンピオンになってからか?オーガに不覚を取ってからか?とんと思い出せねぇが、俺の中で何かが確かに言ってきやがるんだ。正拳はこうじゃねぇってな。

 

 三浦との試合を明日に控え床に就く前に拳を握ってみるが、感じるのはこうじゃねぇという違和感のみ。

 

 日々の鍛練で答えに近付いている感覚はある。されど未だに辿り着けず。正拳は完成しない。

 

 俺も既に齢51……いつまで現役でいられるか……。そんな思いを抱く俺が見付けたのが三浦良意だった。

 

 キッカケは神心会会員の一人の言葉だった。若いのにすげぇプロレスラーがいる。けどそいつはチケットを取ったはいいが仕事で見に行けねぇときて俺にチケットを譲った。

 

 家族三人で見に行ってみて一見……三浦良意を目にした俺は全身に鳥肌が立った。

 

 範馬勇一郎……あのオーガの父親であるかの御仁を初めて目にした時と同じ衝撃を三浦に感じたんだ。

 

 三浦の試合は台本有りのもんだったが……奴の身体を見りゃ納得。そりゃ台本が無きゃ相手がぶっ壊れるってな。

 

 試合を見終わり家に帰った俺は直ぐ御老公に連絡を取った。幸いにもまだ俺は地下のファイターとして登録されていたらしく、三浦との試合を組むのに支障は無かった。そうして今日に至る。

 

 気が付けば拳を握ったまま武者震いをしていた。

 

(こんなに気持ちが昂るのはいつ以来だろうな?)

 

 武者震いを止める為にギュッと拳を握り込むと、布団に潜り目を閉じたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。
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