「…アイン」
「……見たくなかった顔だな、何しに来たんだ」
彼が家に帰ろうとするとき、一人の老人が声をかけてきた。その声には張りがあり、猛々しく気高い。
「…入ってくれ、コーヒーは出そう」
「…済まないな」
老人を家にあげ、ソファに座らせるとアインは慣れた手付きでコーヒーを出した。
「熱すぎず、飲みやすいな」
「…人は来るからな」
双方共に言葉がない、方や裏切者、方や英雄、親子の邂逅ではあるがそれは、寂しい物だった。
「…メビウスを攻撃したな」
「……あの戦い方を続けるようなら、俺はメビウスを殺していただろう」
「アイン、仲間だぞ」
「…俺は一人だ!仲間などいない!」
怒気を含んだ瞳で老人、父であるハヤタ・シンを見つめる。
「俺は…俺はあの子達の未来を守りたいから戦ったんだ!」
「…それでいい」
「なんだと」
「お前は、ベリアルとは違う。お前は、お前の正義を信じて戦っている。それがわかった」
ハヤタはアインにそう微笑みを返す。
しかし、アインは何も感じない、怒りも、悲しみも、ただ一つの蟠りが終わっただけだ。
アインは笑うでもなく、ただハヤタを見つめるだけだ。
「…ウルトラマン」
「どうした、アイン」
「私は…私の平和を脅かすなら、同族すら倒す。それだけは、忘れるな」
ハヤタは神妙な顔になると、改めて口を開いた。
「…アイン、私はそれでもメビウスを信じる。彼は変わる、今は若いが、何れは私達と同等になるだろう」
「…ウルトラ……父さん、家まで送る」
「……アイン、お前は私にとって誇りである事は変わらない」
「だが、アンタは俺の強さだけを見ていた。俺は、アンタが教鞭に立ち、教えているあの姿を夢に見た。それが…」
それ以上、言葉を出せなかった。俺は彼を家まで送るとアインは何も言わず車を出した。
翌日から、アインが戦場に出ることはなくなった。必要がない、そう判断したからだ。メビウスは戦い方になれ、問題はない。
はずだった。ボガール、彼の知らない怪獣が現れたからかすべてが変わった。
より怪獣が増え、宇宙人達の地球での活動も活発となっている。ハンターナイトツルギいや、ウルトラマンヒカリは光の国に帰り、残っているのはアイン、そしてメビウス、ウルトラマン。
そして、父ウルトラマンがいた事がアインに只管警戒心を植え付けていた。それが現在起きている。
「……メビウス」
メビウスが囚われ、ガッツ星人、ナックル星人、
「……今回だ、今回だけだ!」
ベータペンシルを掲げたアインはメビウスを救う為に、一人姿を表した。
「なんだと…ウルトラ兄弟以外のウルトラマン?!」
「何者?!」
「シェア!」
八つ裂き光輪がナックル星人の肉体を襲った。
「ウェア!」
避けられるのを吟味した攻撃だ、ナックル星人はアインによるラリアットをその場に受けると地面に沈む。
「デュア!」
「ぐぁぁ」
「早い!」
ガッツ星人よりも早く動き、ナックル星人を的確に仕留めていく。
「何…が」
「シュア!」
腕を十字に組み、アインのスペシウム光線がナックル星人を襲った。
「ギャァァァ」
爆発し、倒れるナックル星人。
「貴様!貴様は!」
「…お前達を地獄に送る者だ」
「君は……あい…、ん」
「メビウス!死ぬんじゃないぞ、必ず生かしてやる!」
アインの姿は真にウルトラマンであった。
彼を知る者たちですら、その姿を信じられない。
「アレが…アインだと」
「アインは…彼奴もウルトラマンだ」
「しかし、兄さん。アインは光の国を裏切り」
「それでも、私の息子だ」
ハヤタ・シンはベータカプセルを掲げた。
「シュワッチ!」
アインに並び立つ様に一人の戦士が現れる。
「やれるな!」
「当たり前だ、ウルトラマン!」
アインは八つ裂き光輪を腕に出すと、そのままガッツ星人に向かいダッシュする。
分身するがアインの隣りにいるのは数多の怪獣達を退け、地球を守った最初のウルトラ族である、
「ヘェア!」
スラッシュ光線が分身に当たる、一発一発の威力は低いが、ウルトラマンには関係ない。
「なに!」
一発があたり、ガッツ星人の居場所が判明した。
「ウルトラシャッター!」
「何だこれは!」
「プラズマスパークの片鱗だ!貴様は逃げることはできんぞ!」
「やめろ!よぜぇぇぇぇ」
「行くぞ!アイン!」
「スペシウム光線!」
「ネオスペシウム光線!」
それはアインが進化させた父との思い出だった。ウルトラマンの放つ光線よりも赤く輝き、稲妻を思わせるそれは1つの意志が力となった物である。
「俺も、結局は力を求めるのか」
「…アイン」
「シャア!」
アインはメビウスの囚われていたクリスタルを破壊すると、自分のカラータイマーからエネルギーを分け与えた。
「……アイン」
「若造、俺の仕事は終わったからな」
そう言って消えようとしたアインの背を何かが貫いた。
「ぐっ……」
光の粒子が流れ出る、地に伏してまるで死体の様に動かない。
「アイン!」
「エース!ウルトラマン!貴様らは!貴様らはぁぁぁ!!!」
それは異次元人ヤプールの怨念であり、真に恐るべき存在たるUキラーザウルスであった。
「使えるぞ、この身体はなぁぁ」
倒れたアインの肉体がUキラーザウルスに捕食される。
「ヤプール!貴様、蘇っていたのか!」
現れたウルトラマンエースがUキラーザウルスの前に立つ。
「エース、貴様に敗れ、ウルトラ兄弟に敗れた。しかし、メビウス!ウルトラマン!貴様らの弱点は手にした!」
「アヤさん!アイン!」
Uキラーザウルスが変化する。
ウルトラマンサイズに変わり、何処となくかつてエースがウルトラ兄弟の力を借り倒したエースキラーを模した存在。
「目覚めのときだ、ウルトラキラー」
それはベリアルのようであった。ヤプールの怨念がアインを完璧に支配した、肉体は黒と赤にそまり、怒りを感じる。
「シェア」
「まて!アイン!!」
「ウェア?!」
ウルトラマンの静止を振り切り、手に出現させた八つ裂き光輪がジャックの肉体を裂いた。
「ダァ!」
セブンがアイスラッガーで受け止める。
「アイン…お前は…所詮その程度なのか!お前は…ベリアルと違い……選ばれたのではなかったのか!」
「フン!シェア!」
ウルトラセブンを吹き飛ばし、ウルトラキラーはスペシウム光線を放つ。ウルトラセブンはウルトラバリアーを展開したが遅かった。
「何が!」
ウルトラバリアーを破ったのはアインの拳だった。
「セブン兄さん!」
「よせ!エース!!」
「ヤプール、良くも仲間を!!」
「来い…エース!!!」
動かないセブンを投げ捨て、ウルトラキラーはエースと対峙する。
「ハァ!」
八つ裂き光輪が何発を投げられるが、エースはそれを避ける。
「バーチカルギロチン!」
ウルトラキラーは避けきれずバーチカルギロチンを肉体に食らう。
「何が…」
しかし、そこから流れ出るのは光だった。
「ふっ…フハハハ…エース!ウルトラ兄弟!貴様等が攻撃をすればするほどこのウルトラマンの命は削れていく!」
ウルトラマン達は最後まで諦めず戦った。しかし、ウルトラキラーの戦闘力には敵わない。
「マン兄さん、僕は……アインとは」
「……私がやる、この罪は私の背負う物だ」
「ほぉ…良いだろう、殺せ!ウルトラマン、私は避けもしないぞ?」
ヤプールの挑発、だがウルトラマンは静かに話す。
「アイン、すまない。お前の心を…私は父親でありながら理解しなかった。お前の生活を、じっと見ていた。お前は、80と同じように教師として、誰かの笑顔の為に生きていたのだな。私は、最後までお前の力をしか、お前の一側面しか見なかった」
「よせ、止めろぉぉぉウルトラマン!!!」
ヤプールが焦り、ウルトラキラーが駆け出した。
「お前は、私の誇りだ。愛しているぞ、アイン」
ウルトラキラーの拳がウルトラマンのカラータイマーを砕いた。
「何だと……よぜぇぇぇぇ」
砕かれたカラータイマーから光が溢れ、アインの身体を包んだ。闇が消え、藻掻くウルトラキラー。
「あぁぁぁぁぁ!!!」
ウルトラキラーが消えた、そこには確かにウルトラマンと等しい見た目をし、確かな光を持った戦士がいた。
「……貴方を憎んでいた。だが、それでも……」
「……アイン」
「メビウス、俺は力になれない。後は頼むぞ」
アインの肉体から今度はウルトラマン全員に向かい暖かな光が送られる。砕かれた筈のカラータイマーすら修復し、ウルトラマンが立ち上がる。
「アイン」
「……父さんも………」
アインが消える、力を使い果たしたのだ。人間態となりウルトラマン達を見上げた。
「勝てよ、皆」
アインは最後まで見届けた。
「倒したか」
Uキラーザウルスがより進化したUキラーザウルスネオ。それもゾフィーとタロウが現れ、ウルトラ6兄弟がメビウスと合体した姿には勝てなかった。
「アイン先輩」
「タロウ、元気だったか?トレギアはどうしている」
「アイン先輩、帰りませんか?光の国へ」
「……タロウ、私は戻れんさ」
タロウに別れを告げると静かに自身の学校へと向かう。
「……何のようだ、メフィラス」
「何、これから起こる事に関わらないで頂きたいのですよ。叛逆のウルトラマンであるアイン。貴方にはね」
「……メビウスを狙えばウルトラ兄弟が出張る。負けるぞ」
「我が皇帝が負けると?」
「……エンペラ星人か。判った、俺はお前の言うゲームに手を出さん。その代わり、この地区は守れ。メフィラス」
「では、感謝しますよ。アイン」
そう言って消えたメフィラス星人。
アインは誰にも伝えなかった。