艦隊これくしょんプリンツオイゲンと提督の純愛物語です。
pixiv投稿作品を若干手直しして、掲載しました。

admiral〜プリンツと提督の物語〜 | 暁の瑞雲 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16906981

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admiral〜プリンツと提督の物語〜

 いつも明るい彼女を迎えたのはいつだったか。

 提督の肩書が外れてからどれだけの時が経ったのだろう。

 

 今、その命の灯火が消えつつある彼の記憶に走馬灯のように蘇る。

 

- 彼女との日々

 

 それは明るい太陽のような彼女の笑顔から始まった。

 

 第三次渾作戦を戦い抜き、勝利した海域で彼女は顕現した。

 

「私は重巡、プリンツオイゲン!よろしくね!」

 

「あ、ああ、よろしく頼む」

 

 日本の艦娘達にもハツラツした娘はいるが、こんなにも明るい娘は初めてだ。

 

 提督は、初対面で彼女の笑顔に釘付けになった。

 

「おわっ!びっくりした!」

 何かに驚くと両手をフリフリのリアクション。

 

「ふぉいや、ふぉいやぁー!」

 演習でも、人一倍ハツラツとした声を出しながら皆を牽引してくれる。

 

 私が深夜まで執務をしていると……。

「疲れたら少し休まないとだめだよぉ。きっと!だからねっ!」

 休憩を促す気遣いもある。

 

 いつしか、私の目は彼女を追うようになっていた。

 

 いつも一緒にいたいが為に、表向きは日本に慣れてもらう事を理由に秘書艦にしたのはいつだろう。

 

 とにかく私は彼女が好きになっていた。

 

「プリンツ、これはどうだ?」

「似合いますねー!いいと思いますよ!admiralさん!あ!こっちも似合います!」

 

 時間が合えば、よく買い物にも行った。

 とても楽しかった。

 

 提督としての執務は順調で、艦隊も所帯が大きくなり、練度最大の艦娘も増えた頃だった。

 

 

- ケッコンカッコカリ

 

 艦娘と強い絆を結ぶ指輪の配給

 

 たったひとつしかない指輪が誰に贈られるのか、鎮守府内はその話題で持ちきりだった。

 

 私の心はすでに決まっていたが、この頃からプリンツの態度がよそよそしくなる。

 

 以前からビスマルクを慕っていたが、何かあるとビスマルクと約束がある、ビスマルクに呼ばれていると、執務が終われば執務室から退出するようになった。

 

 何かしてしまったのだろうか?

 

 ケッコンカッコカリの指輪、彼女が望まないなら誰にも渡さずに机の奥に仕舞っておこう。

 

 そう思った矢先の出来事だった。

 

「プリンツオイゲン大破です!」

 作戦指揮中に緊急無線が入る。

 

「撤退!撤退だ!」

 すぐさま作戦中止、瀕死のプリンツは何とか鎮守府に帰投し、一命を取り留めた。

 

 ビスマルクに尋ねると、撤退しつつあった敵艦隊を深追いし、潜水艦の雷撃をまともに受けたらしい。

 

「頼む、無茶はするな、頼むから。」見舞いの病室で彼女に声をかける。

 

「無茶は、admiralでしょ!昨日だって深夜3時まで仕事して!休まないとダメだって、あれほど……。」

 プリンツの目から大粒の涙がポロポロ溢れる。

 

「提督だからな。人の生活を、艦隊の皆を守らないといけない。多少の無理も必要なんだよ。」

 

「聞きたくない!」

「だって人は寿命があるんでしょ!限られた命は無茶したら短くなるって知ってる!」プリンツが泣きながら叫ぶ。

 

「だから、だから早く戦いを終わらせてadmiralにはゆっくりしてもらいたいの。」

 

 プリンツがまっすぐに私を見る。その青い目にはまだ涙が溜まっていた。

 

「プリンツ……」

 まだ触れたことのない、彼女の身体を優しく抱きしめる。

「ありがとう。これからは無理な執務はしない。だから君にも無茶して欲しくない。」

 

「約束っ、だからねっ!」

 寂しげにプリンツが笑う。

 

 その時の私は雰囲気に流されたのもあったろう。

 以前の太陽のような笑顔が見たい。ずっと一緒にいたい。

 そう思った瞬間、思わず口に出していた。

 

「プリンツ、私とケッコンカッコカリしてくれないか?」

 

「ダメ……」

 

「え?」

 

「admiralさん、疲れたから一人にしてくれる?」

 

 プリンツにカッコカリを断られた瞬間、目の前が真っ暗になったのを今でも克明に覚えている。

 

 しかし、それとこれとは関係ない。約束どおり、プリンツが無茶をしないように執務は定刻で切り上げ、きちんと休むようにした。

 

 そして、プリンツの体調が良くなるまでしばらく秘書艦を外れるように指示をした。

 

---

 ---

  ---

 

「貴方、プリンツに何したの?」

 

 執務室で仕事をしているとビスマルクに詰めよられた。

「あの大破した日、貴方が見舞いに行ってから、プリンツが笑わないのよ。貴方、何かした?」

 

 プリンツは言っていないのか?

 

「ケッコンカッコカリを申し込んで振られた」

 

「そうなの?プリンツは勿論受けたのよね?って振られた?」 

 

 ……。

 

「おかしいわね。」

 

「何がだ?」

 

「あの子、部屋ではadmiral、admiralってうるさい程いつも貴方の話ばかりしていたのよ」

 

「だから、てっきり貴方がプリンツに愛想を尽かしたか、何かを理由に秘書艦を外したのが原因で塞ぎ込んでいると思ったのよ」

 

「いや、ケッコンカッコカリを申し込んだだけだ」

 

「そう……」

 ビスマルクは立ち姿のまま、何やら考えている。

 

「私はここにいるから、プリンツと話をしてきなさい」

 

 ビスマルクに促されてプリンツの部屋に行く。

 

「プリンツ、、、。調子はどうだ?」

 

「admiralさん、まぁまぁね……」

 

「なあ、プリンツ、何か悩んでいるなら話してくれないか?」

 

 すると、少し間をおき、プリンツがポツリと話し出す。

「admiralさん、人って寿命があるでしょ?」

 

「ああ、生き物には寿命があるんだよ。それが自然の摂理だ」

 

「なら!なら、私達は何?戦闘で被弾しても、大怪我しても鎮守府にたどり着けたなら死なない」

 

「いつか、admiralさんは私を置いて逝ってしまう。考えるのが怖い。ケッコンカッコカリ、申し込んでくれて本当は嬉しかった……」

 

「でも!それ以上に怖い。これ以上好きになって貴方を失う事になったら、考えるだけでおかしくなりそう。今だって、そばにいたいのに!」

 拳を握り締めながら、振り絞るようにプリンツが叫ぶ。

 

「プリンツ、それが人の感情なんだよ。君たちは少なくとも心は人と同じだ。機械にそんな感情はない」

 プリンツの頭を撫でながら優しく問う。

 

「プリンツ、改めて申し込む。いつか死が二人を別つとしても、その瞬間まで君を愛し抜くと誓おう。そして、それまで二人一緒にいて良かったと、心から思えるように生き抜く事を誓おう。いつ来るか分からない別れに怯えるより、二人で楽しい思い出を沢山作ろう」

 

「プリンツ」

 

 彼女の目を真っ直ぐに見つめながらはっきりと言う。

 

「結婚してくれないか?」

 

 ポロポロ、ポロポロとプリンツの目から大粒の涙が溢れる。

 

 次の瞬間

「admiralさん、好き!大好き!」

 私の胸にプリンツが飛び込んでくる。

 

 強く抱きしめながら、プリンツの涙を優しく拭う。

 それは以前流した涙とは違い、優しい暖かさに満ちていた。

 

- それから、時が経ち

 

 私は老いた。

 いつまでも美しく、明るい彼女を残して逝く事に悔いがない訳ではない。

 

 ただ、愛して愛し抜いた彼女の今後に、幸があり続けるといいなと思う。

 

---

 --- そして静寂が訪れる。

 

 プリンツは、もう聴こえてはいないだろう彼の耳元で囁く。

「貴方……。ありがとう」

 

「プリンツは幸せでした」

 

 彼が息を引き取ってまもなく、その手を握っていたプリンツの機関も停止した。

 

 静かに俯く彼女は、まるで太陽のような微笑みを浮かべていたという。

 

- ケッコンカッコカリ

 

 その儀式は人と艦娘の心の絆

 

  - 命の絆

 

 深い絆を結んだ二人の魂は同じ時を生きた。

 

 艦娘の命の理は、まだ解明されてはいないが、ただ、彼と共にいたいと願ったプリンツの想いが叶ったのだ。

 

 きっとそうなのだと思う。

 

「プリンツ、幸せにね」

 

 暖かな一陣の風が二人のいる部屋の窓から吹き込む。

 

 ビスマルクは軍帽を深く被り直しながら部屋を出て歩き出す。

 

 その頬には涙が一筋輝いていた。

 

  fin

 

 


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