ロズワード聖に転生した件 作:tanaka
聖地マリージョア
「
天竜人の居城は、元々はそれほど大きい家ではなかったらしい。しかし、「下々の暮らす城よりも小さい家などあり得ない!」と言う実に下らない理由によって増築が始まり、世界一と呼べるほどの大きさになった現在も、天竜人同士の下らない見栄の張り合いにより増改築が繰り返されている。
ロズワード邸も例に漏れず、不必要なほどの大きさを誇る。東西450m、南北120m、長さ570m、平均幅130m、、敷地面積は6万6761㎡。五階建てで500以上の部屋が存在する。
内部には目が飛び出るほどの豪華な美術品が多数存在し、無駄にでかい作りをした我が家を支えるために数多のメイドや執事、護衛騎士が日夜身を粉にして働いている。
俺達、天竜人の寝室があるのは最上階、神の間と呼ばれる場所。そこの一室、一際大きな扉の先にあるのがロズワード家の現当主の寝室であり、現在病に臥せている我が父が一日を過ごす場所であった。
現在は使用人含めて殆どの者が入る事を許されていない。この処置には理由があるのだが、その理由については後述する。
ロズワードは扉の前で一度衣服を正すと、ノックをする。
「開いてるえ~」
弱々しい声で許可が降りる。
部屋へ入ると、天幕付きの巨大なベッドの上で横になっている男が目に入る。
頬が痩せこけ、手足はガリガリで、今にも死にそうな男だった。
「只今戻りました、父上」
「おお!心配してたえ~」
父は俺を見るとホッとしたような顔をした。
「怪我はしなかったかえ~」
「見ての通り無傷ですよ。父上は心配性ですね」
「でも、巨人は野蛮だえ~。何があるかわからないえ~」
「そのために、海軍大将を護衛に連れていったんですよ」
「それもそうだえ~」
「此方の方はどうでしたか?」
「何時もと変わらないえ~」
「それは良かった」
母は既に他界しているので、ロズワード家の家族は父と俺の二人だけである。
一応言っておくが、母の死は完全なる事故である。階段を下りようとしてる母に後ろから話しかけたら、驚いて足を滑らせ死んでしまったのだ。
声をかけたのに大した理由はない。
今ではもう何を話そうとしたのか思い出せないくらい下らない内容だった。
それがまさかあんなことになるとは……………。
当時3歳だった俺には実の母の死は結構なショックで、しばらく食べ物が喉を通らず、部屋に引きこもった。
父は、そんな息子を元気づけようと、ピエロと呼ばれる奴隷を見せてきた。
マネマネの実を食べた元海賊船の船長らしい。
俺はそれを聞いて死んだ目になった。マネマネの実は俺が探そうとしていた悪魔の実の1つなのだ。
あれが手に入れば仮に天竜人の地位が失墜しても第二の人生を謳歌できたのだ。父は俺を喜ばそうとしてやったんだろうが、止め刺してるからな!
もちろん、父が見てる前では無邪気に喜んでおいた。心配してくれる相手に無意味に唾を吐きかけるほど落ちぶれてはいない。まあ、背を向けた瞬間顔が死んだけどな。
「もうそろそろ剥製にしようかと思ってたけど、役に立ってよかったえ~。その奴隷はロズワードにあげるえ~」
父はそんな言葉を言い残して、部屋を出た。
そして、その四日後、父が死んだ。
つまり目の前にいる男はマネマネの実で父に変化したピエロである。これが入室制限をかけてる理由である。
一応言っておくが、父の死も完全なる事故である。
ピエロは独白する
俺ほど数奇な人生を歩んだ者も少ないだろう。
俺は元々、ノースブルーの四大ギャングのボスの息子として生まれた。そこには金、部下、女、全てが揃っていたが、さらなる刺激を求めて旗揚げし、グランドラインに入った。
生活は以前と比べればひもじくなったものの、気の置ける仲間と騒いだり、懸賞金が上がった事に一喜一憂したりと、人生最良の時間であった。
しかし、俺が22の時、俺の懸賞金が億を越えたと騒いでた翌日だ。
とある街で海軍に捕捉され、戦うはめになる。それ自体は珍しいことではなかったが、追ってきた海兵の中に異常に強い男がいた。確かガープとか言ったか?中佐のくせして、恐ろしい程の強さだった。しかも、強いだけでなくしつこい。どこに逃げても、俺は親の仇かってくらいに追ってくる。
結果逃げ切ることも叶わず、俺達はあえなく全滅し、インペルダウンに入獄するはめになる。そこは正に地獄と呼ぶに相応しい場所だった。しかし、そこで終わっていたら俺の人生はただ不幸なだけで終わっていただろう。数奇なんて表現はしない。しかし、そうはならなかった。
一体どこで聞き付けたのか俺の能力を面白がった天竜人に買い取られたのだ。そこから地獄が天国と思えるほどの地獄が始まった。
★
天竜人の奴隷になって二年が経った頃、俺は今の主人であるロズワードの前に連れてこられた。
ロズワードは当時三歳で、今の俺と同じく床に臥せ(る演技をし)ていた。
どうも目の前で母が死に傷心らしく、俺の能力で喜ばせろと言うことらしい。
ロズワードは俺の能力を知ると無邪気に喜んだ。
俺の体にある切傷や火傷は見えていないかの様に笑う姿を見て、こいつも同じかと確信した。
しかし、ロズワード父が背を向けた瞬間、ロズワードの顔が一変する。まるで全ての感情の抜け落ちたかのような無に。
(何だあの顔は?み、見間違えか?)
すぐに普通の顔に戻ったのでその時見間違えかと思ったが、見間違えではないことは直ぐに分かった。
四日後、ロズワード父が死んだのだ。
完璧なる事故死である。
その場にいたのは俺とロズワードとロズワード父の三人だけだったが、仮に他の誰かがいたとしても殺人を疑うものはいなかっただろう。それくらい自然な事故死であった。
しかし、四日前見たあの表情が脳裏にこべりついて離れない。
これは事故死ではなく、殺人なのではないのか?
いや、それどころか母の死すら事故ではなかったのではないか?
有り得ないと頭を振る。
そんなことあるわけがない。
ロズワードはまだ三歳の子供なのだ。
そんな子供が事故に見せかけ、父を殺し、母を殺し、不幸な事故に悲しむ演技をしていたとでも言うのか?
もし、本当に全てが仕組まれたことで、今までの全てが演技だとするなら、それはもう……化け物ではないか。その思考に辿り着き、戦慄していると、唐突にロズワードの首がグリンと後ろに向けられ、目が合う。
「ヒィアアアアアア!!!」
恐怖のあまり首が180°曲がったかのように錯覚して見えた。いや、それは本当に錯覚だったのだが、それくらい恐ろしかった。
「今日からお前は我が父として振る舞え。バレたら、分かっているな?」
★
父が事故死した。
あまりにも突然で予想外なことで衝撃を禁じ得ない。
俺は取り敢えず落ち着くべく、当事者の一人でもあるピエロに助けを求め、後ろを向くが、何故かピエロは悲鳴を上げながら尻餅をついた。
え?なに?どうしたの?
いきなり人が死んだんだから驚くのは分かるが、元海賊だろ?一億の賞金首だろ?
いくらなんでも驚きすぎだろ。
そのあまりの慌てぶりに、逆に俺は冷静になる。
冷静になった頭で状況を把握し、考えると、一つの結論に達する。
(え?もしかしてこいつ俺が殺したとか思ってる?)
いやいやいや、まてまてまて!何でそうなった?
これは、どこからどう見ても完全なる事故死だろ?どう考えても俺は只の被害者だろ?不幸にも親を目の前で亡くした子供だろ?
しかし、そう弁明したところで信じてくれそうにない。
(ど、どうする?俺が殺したとかデマが広がったら流石にヤバイぞ。いや、父だけならホラで済まされただろうが、母も死んでるからな。しかも、俺の目の前で。ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイヤバイ!原作始まるまでもなく処刑フラグが立ってしまった!)
何とか誤解を解くべく思考を巡らすが、すぐに身の潔白を証明できるような都合の良い弁論は浮かんでこない。
どうする?どうする?どうする?どうする?
「死にたいか?死にたくないか?選べ」
俺は恐怖を助長することにした。
弁論できないなら、この状況を利用し、恐怖で口を塞げば良い。ついでに協力者に仕立て上げ後戻り出来なくしよう。
「し、にたく、ない…」
「そうか。だったら今日からお前は我が父として振る舞え。バレたら、分かっているな?」
「ひゃ、ひゃい」
こうして俺とピエロの奇妙な協力関係が成立した。