ロズワード聖に転生した件 作:tanaka
今日はリンリンの10歳の誕生日である。一年ぶりにリンリンを連れて帰った羊の家では友達のゲルズやスタンセンなども参加して、ささやかながら賑やかな誕生日パーティーが開かれていた。
とは言え、それも二時間前の9時には終わり、既に殆どの子供達は寝静まっている。
今起きてるのは俺を除けばリンリンとゲルズくらいだった。
ーーージリジリジリ
三人で団欒を楽しんでいると、ロズワードの腕に着けた電伝虫に着信が入る。
ーーーガチャ
『こちらロズワード。』
『こちらファルコン。定期報告に来ました』
『そうか。ご苦労。二階で待ってろ。すぐに行く』
『了解』
本当は最後までいるつもりだったんだが、情報は鮮度が命だ。
ソファーを立つ。
「すまない。大切な話し合いがあるから俺は上がるね」
未だ起きているゲルズとリンリンに言葉を残し、部屋を出る。不満の声が聞こえたが今回はスルーだ。
★
電伝虫は便利だが盗聴の危険があるので、やはり報告は対面に限る。
★
深夜。蝋燭の灯りで、揺れる部屋の中で、俺はファルコンから報告を受けていた。
ファルコンはカルメル、ピエロに並ぶ俺の最も有能な三人の部下の一人。
カルメルが金、ピエロが恐怖で俺に使えているのと対照的に、純粋な忠義により俺の部下となった珍しい個体である。
『個体』と表現したのは彼が人ではなく動物だからだ。
ファルコンは元々はとある闇研究所の実験動物だった。彼との出会いは三年ほど前、リンリンを購入しておよそ一年が過ぎた頃になる。
その頃ロズワードは、ベガパンクを引き抜けたことに味をしめ、海軍の軍事力拡大のため、優秀な研究者の引き抜きを行っていた。その一貫として、ファルコンのいる研究所に海軍を動かした。
その軍の中に入り込ませていた政府の役人に面白い物があったら俺に献上するよう予め頼んでおいた。そこで献上されたのがファルコンである。
ファルコンはテレテレの見を食べテレパシー能力を手に入れた鷹だ。それだけでも十分特殊な個体なのだが、外道な研究により長時間の高速飛行が可能な身体に改造されていた。
その身体を得るために何れだけの苦痛と同族の死があったのかは想像に難くない。
彼にとってあの研究所は正に地獄だったのだろう。
そこから助け出す形になった俺を救世主のように崇め、以後俺のためにせっせと働いている。
まあ、彼を苦しめていた研究員は丸々全て海軍で働いているのだが、わざわざ無情な現実を教える必要はない。俺は有り難くファルコンを通信係りとして使うことにした。
(ヤミヤミの実は手に入ったか?)
(申し訳ありません。それは未だ情報一つ入っていない状況です)
(そうか。他の頼んでいたことについては?)
(悪魔の実についてはそれなりに集まっているようです。内訳はほとんどが動物系で、たまに超人系があるといった所です。自然系は依然見つかってはいません。手に入れたものは全て宝庫へと入れてあります。これがそのリストです)
リストが頭の中に流れ込んでくる。
悪魔の実は総数17。
動物系14、超人系3。
それから幾つかの報告を受ける。
(最後に、探しておいてくれと頼まれていた例の場所についてですが、該当する条件に一致する秘境が一つ見つかりました。)
(例の場所?………)
一瞬何を言われたのか分からなかったが、続く説明により思い出す。
(I.Qやらダフトグリーンやら言う単語だけを手懸かりに見つけるのは大変でしたよ)
(I.Q……?ああ、ストロングワールドか)
(名前はメルヴィユです。「
(ああ、間違えない。そう言えば、そんな名前の島だったよ)
(ホッ,それは良かったです。此方がメルヴィユへのエターナルポースです。お納めください。)
(ご苦労。それじゃあ、行こうか!ストロングワールドへ!)
(メルヴィユです)
2月16日 AM0:00
報告会が終わり、部屋から出ると、ゲルズとリンリンが仁王立ちしていた。
「あ、ロズワード様!秘密のお話は終わりましたか?」秘密にされたことにむくれるゲルズ。
「ああ、終わったよ」
「何の話してたの?」パーティーが終わったとは言え、主役の自分を除け者にして部屋に籠った事に怒るリンリン。
ロズワードは困ったように苦笑いする。
「今日はリンリンの誕生日だろ?プレゼントに旅行に連れてってあげようと思ってね。その話をしてたんだ。まださっきまでは実行できるか分からなかったから、ぬか喜びさせちゃぁ悪いと思って黙ってたんだけど……………………。リンリン、冒険は好きか?」
「うん!」途端に機嫌を直すリンリン。
「どこ連れてってくれるの?」
「メルヴィユと言う天高く延びる塔のような島だ。そこに住む人間は腕に羽が生えていて、空を飛ぶことができるらしい。しかも、独自の生態系を築き、地上にはない特殊で強力な動植物が生息しているらしい。」
「すげえー!」「ずこい!」
「丁度さっきエターナルポースを手に入れたんだ。これで旅行の目処が立った」
「私も連れてって!」ゲルズがビシッと手を上げる。
「危険な場所だからな。両親に話して許可が降りたらね」
「すぐ取ってくる!」
「今日はもう夜遅いから明日に……て聞いてないか」
2月16日 PM2:00
「何だお前?どっか行くのか?」
巨大なリュックを背負い、嬉しそうに家を出るゲルズを不思議そうに見るハイルディンとスタンセン。
ハイルディンは何時ものように剣を振り修行をし、スタンセンがのんびりそれを眺めているところだった。
ゲルズは二人を見て自慢げに胸を張る。
「ふふん、メルヴィユって所に旅行に行くの!ハイルディンも行く?この私がロズワード様に頼んで上げても良いわよ?」
「ふん、俺はそんなことよりも修行があるからな」
「むー。スタンセンは?」思った反応が貰えずむくれるゲルズ。
「俺もハイルディンが行かないなら今回は見送るよ」
「ちぇ~、二人とも乗り悪いな~」
「許可は降りたみたいだね、ゲルズ」
「ロズワード様!リンリンも!」
「ハイルディンとスタンセンは欠席かい」
「二人ともビビったのか?」
リンリンのあんまりもな問に、ハイルディンは顔を真っ赤にさせて怒り、俺は吹き出しそうになる。なんとか耐えた。
ゲルズは面白がって便乗した。
「そうそう、二人ともビビっちゃったのよ!情けないわ。新巨兵海賊団船長(笑)ぷぷー」
「な、なんだと!」
わなわなと怒りに震えるハイルディン。
挑発するゲルズ。
のんびりと眺めるスタンセン。
「まあ、落ち着きなよ二人とも。実際、危険な場所てのは確かだ。無理強いするものじゃないよ、ゲルズ」
「はーい。」
「そんなに危険な場所なんですか?」スタンセンの問にコクりと首肯く。
「そうだね。リンリンは兎も角、今の三人じゃ勝てないような動物がざっと100種以上はいる。」
「待て!俺も行く!ビビってるなんて言われて黙ってたら男の恥だ!それにそんな強い奴がいるなら戦ってみたいしな!」
「スタンセンは?」
「うん、ハイルディンが行くなら俺も行くよ」
楽しげに初めての旅行に胸を高鳴らせる四人を見ながらニコニコしていると、カルメルがやってきた。
「まんまと、三人を口車に乗せたみたいね」
「人聞きの悪いな。俺は行きたいっていうから連れてくだけだぞ?」
「そう?私にはリンリンだけじゃ飽きたらず巨人にまで手を出そうとしてるみたいに見えるけど」
「………………。出来たら良いなとは思っていたが。手に入りそうな大器には唾を付けときたくなるだろ?」
「確かに彼ら三人は才能ありそうだからねぇ。でも、ゲルズやスタンセンは兎も角、ハイルディンは扱いずらいと思うけど。」
カルメルは顔を赤くしながらゲルズと取っ組み合いをしてるハイルディンを見て、呆れながら言う。
あんな短気さで「巨人族の王」などになれるわけないと。
俺は苦笑いをしながら答えた。
「いや、アイツは意外と義理堅い奴だ」
少なくとも原作ではそうだった。
全ての巨人族を束ねる王になると言う大望を持ちながら、ゴッド・ウソップに救われた事を理由にウソップの船長であるルフィに絶対の忠誠を誓う程の義理堅さを見せた。
「そんな風には見えないけど」
「アイツがでかすぎる野望を持ってるのは確かだ。幼さゆえに視界が狭くなっているのもな。だが、一度受けた恩義は忘れず、命を懸けてでもそれに報いるべく行動しようとする心を持っている」
「まるで見てきたかのように言うのね」
「俺には分かるのさ」
「そう……ま、私は儲けれるなら何でも良いけどね」
「お前のそう言う分かりやすい所は好きだぜ。」
「私も貴方の金払いが良いところは好きだわ」
「「ふふふふ」」
欲にまみれた本心を隠して、今日も二人は優しく笑う。