艦娘進水日シリーズ   作:暁の瑞雲

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ゴトランド進水記念に投稿した作品です。
pixiv投稿の再掲です。

ゴトランドの場合 | 暁の瑞雲 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18351179


ゴトランドの場合

「提督、もうすぐゴトの進水日ですよ!」

 まもなく迎える9月14日を前に、ゴトランドは何度も催促をしてくる。

 

 彼女は、鎮守府に着任してから常にフランクに接してくれるので、秘書艦の時に気を遣う必要がなく、とても居心地が良い。

 だからだろうか、他の鎮守府では幼馴染だと言い張る提督もいるのだ。

 聡明な提督諸氏は、そんなわけないだろうと思うだろう。しかしわざわざ初期艦リストを改竄してまで幼馴染アピールをする提督もいるほど、彼女が親しみやすいということなのだろうな。

 

「ゴト、何度も言わなくても君の誕生日を忘れたことなどないよ。安心してくれ」

「だって、何か準備してる様子とか、ゴトに欲しいものないか聞くとか、何もないじゃない! だから催促するの!」

 そう答えるゴトは、一見むくれているようだが、目は笑っている。

 

 彼女の左目の下にはチャームポイントの泣きぼくろがある。

 以前、気になって調べたことがあるのだが、泣きぼくろは、性別、位置によって意味が異なるそうだ。性格分析によると、左目の下に泣きぼくろがある女性は自分に魅力があることを認識し、かつ愛情表現に長けていることから、誰からも好かれる性格らしい。

 でも、ゴトはそんな性格分析には当てはまらないと思う。私が思うに、彼女の性格は素直でまっすぐ。

 それにちょっと天然だ。自分の魅力を武器に迫るような事は一切ないと断言する。

 

「まぁ、そんなにむくれるな。可愛い顔が台無しだ」

「むうー。すぐそうやってごまかすんだから!」

 と、瞬時に満面の笑顔を浮かべるゴト。彼女は表情がくるくる変わるので話していて本当に心地良い。

 

 進水日のプレゼントはサプライズにしても良いが、ゴトの準備もあるだろう。かねてから計画していた新婚旅行計画について、そろそろ伝えておくか。

 

「ゴト、指輪を渡してから、どこかに出かけたことなどなかったろう。だからな、進水日に合わせて君の故郷、ゴットランド島へ行かないか?」

 

- ゴットランド島、冗談のような名前だがスウェーデンにある実在の島だ。ゴトの名前の由来の島で、彼女が船だった頃の時鐘が保存されているゴトランド島防衛博物館もある。

 

「本当に!?」

「ああ、本当だ。私が不在期間中の提督代理もすでに決めているから、のんびりできるぞ」

「新婚旅行になるね! 嬉しい! じゃあー、せっかく祖国に帰るんだから、ストックホルムも観光したい!」

「もちろん! せっかくの旅だしゆっくりしたいからな。日程は7泊8日で計画した。すでに航空券も手配してある。服や荷物もそろそろ準備が必要だからな。忙しくなるぞ」

「ふふ、そんな忙しさならいつでも歓迎よ。準備も込みで楽しみましょ!」

 そう言うと、嬉しかったのだろう、ゴトは、私の腕に自分の腕を絡ませる。

 

「えへへ、提督、本物のゴットランドシープも見られるね!」

「ああ、君が持っているぬいぐるみや、まくらのモチーフだろう? 顔が黒いゴットランド島の固有種で毛皮とかも人気らしいな」

「うん、可愛いんだよー」

 

 旅行までの幾日かは、楽しみで眠れない夜があるかもしれない。そんな夜は、ゴットランドシープを数えて指折り待とう。

 1匹、2匹、3匹、と……。

 

 ソファに並んで座り、そんな話をしていると眠くなったのだろう、いつしかゴトの返事は夢うつつになり、そのうち私の肩にもたれて寝息を立てだした。

 無防備なゴトを見ていると、信頼されているのだなと嬉しくなる。

 

 残暑が残る執務室では、まだ冷房を使用中だ。

 私は、ゴトを起こさないように静かにソファに横たえてからベッド型に展張し、風邪を引かないよう薄手の毛布をかける。

 

「おやすみ、ゴト、良い夢を」

 

 -その夜。

 ゴトランドは、牧草が香る草原で、提督と一緒にゴットランドシープ達と戯れる幸せな夢を見た。

 

 その夢が現実となる日も近い。

 

 fin

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