艦娘進水日シリーズ   作:暁の瑞雲

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可愛い霧島は好きですか?
pixiv投稿作品です。

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霧島の場合

「キリシマー! 次の休みに出かけようぜ!」

「どこがいいですか?」

「水族館がいいな。そのあとの予定は私達に任せてくれ」

「あなたたちが決めてくれるんですか? それは楽しみです」

 あの時の戦いでライバル同士だった霧島、サウスダコタとワシントンは艦娘として顕現してのち、ライバルとして親友として切磋琢磨している。

 休日には3人連れ立って出かけることも珍しくない。

 

 

「司令、次の休みの外出許可を頂きに来たのですが」

 霧島は自分とワシントン、サウスダコタ3人分の外出許可を貰おうと執務室に入室したが、いつもと違う雰囲気に書類を出す手が止まる。

「大淀、君は眼鏡を着けていても美人だが、外すとなんというか目がとても綺麗でより一層美人度が増すなぁ」

「司令、沖波はどうですか?」

「巻雲の素顔もみて欲しいですー」

 執務室を見渡してみると普段眼鏡を常用している艦娘達が、眼鏡を外した素顔を提督に見せているといった様子だ。

 鳥海や、ノーザンプトン、伊8号などはおらず、眼鏡をかけた艦娘全員がいるという訳ではなかったが、初めて見る状況に霧島は訝し気に尋ねる。

「司令、これはどういうことですか?」

 眼鏡の位置をクイッと直しながら、迫ってくる霧島にたじろぐ提督であったが、別にやましい事はないし、強要している訳でもない。

「ああ、霧島か、いや実はな、明石の提案で……」

と、提督は説明を始める。

 

 艦娘は海上で戦う。そのため航行時の波しぶきや、戦闘時の砲弾、魚雷の爆発地点近くでは必然的に海水の飛沫を浴びることとなる。当然海水は塩分を含むため、乾くと白く曇ってしまう。それは、眼鏡を着用している艦娘に付き物の現象だ。

 しかしながら、それが分かっていても戦闘中に眼鏡を拭くのは困難である。

 それを解消するために、眼鏡にワイパーを内蔵させた眼鏡や、F1ドライバーのヘルメットバイザーフィルムのように眼鏡レンズにフィルムを貼っておき、汚れたら剝がして元通りの視界が得られるようにするなど様々な発明、機能を搭載した眼鏡を艦娘達に提供してきたが、そのどれも不評であった。

 そのような経緯から、今回、艦娘専用のコンタクトレンズを開発したというのだ。

「なかなかすごいコンタクトレンズらしいぞ」

 聞くところによると、普通のコンタクトレンズのようでいて、レーダー機能、艤装破損個所のお知らせ機能、お天気レーダーなどなど、7つの秘密機能が搭載された優れものらしい。

「それは興味深いですね」

 霧島の目がキラリと光る。

「お! 興味を持ってくれたのか?」

 霧島の反応を見て、いよいよ、霧島の素顔が見られるのか? というような期待に満ちた目で提督が見つめてくる。

「ええ、でも……」

 霧島は、何故かモジモジしており、普段の知的で冷静な感じは微塵もない

「ほら、霧島」

コンタクトレンズを差し出しているのに、なかなか受け取らない霧島に、提督が受け取るよう促すと、

「コンタクトレンズだけお借りします」

 霧島は、そう言うが早いか、提督の手からコンタクトレンズを奪うと、金剛型姉妹の私室へと走って行ってしまった。

「ちぇ、残念」

 と、霧島が踵を返して執務室へ戻ってくる。

「お! やはり気が変わったのか?」

「違います! 外出許可願いです!」

 ぴしゃりと言い放つと、霧島は外出許可を置いてまた出て行ってしまった。

「あーあ、残念」

「提督があからさまに期待に満ちた目で見つめるからですよ」

 大淀が呆れたように言うと、

「いや、仕方ないじゃないか、霧島の素顔、見てみたいんだから」

「はいはい」

 明石の作成した秘密機能付きコンタクトレンズは、こうして眼鏡艦娘達に行き渡って行くのであった。

 

 

「よし、キリシマ! 行くぞ!」

 予定していた外出の日、天気は快晴。

 12月だというのにそれほど寒くもなくとても心地よい。霧島とサウスダコタ、ワシントンは連れ立って鎮守府を出ていく。

 執務室の窓から、たまたまその様子を見ていた提督は、カチューシャを外した霧島の横顔を見て眼鏡の蔓が見えないことに気付く

「あ! 霧島がコンタクトレンズをしている……?」

 もっとよく見ようと、机から双眼鏡を出して覗くと、

「ブロロロロローー!」

 3人を乗せたタクシーは、出発してしまった。

「あー、行ってしまった」

「提督、遊んでないで、仕事して下さい」

 と、素顔の大淀が笑顔で促してくる。

「はいはい」

「返事は一度で! 駆逐艦達に注意できなくなりますよ!」

「はい!」

 提督は、大淀の指摘に返事をしながら、ポケットの中の小箱にいつものように触れていた。

 

 

「キリシマ、今日はコンタクトレンズで来るっていうのは本当だったんだな」

サウスダコタが霧島の顔をまじまじと見つめながら、話しかける。

「……」

「…………」

「おい、キリシマ?」

 いつもなら即答する霧島だが、今日は少し変だ

「キリシマ?」

 ワシントンも、気になって霧島の顔を覗き込む。

「は、恥ずかしいので、み、見ないで……」

「か、可愛いー!」

 タクシーの中、いつもの快活なアメリカ戦艦2人と、恥ずかし乙女なピュアな日本戦艦が1人。

 そう、霧島は眼鏡を外すと、頭脳明晰なデータ艦娘から、恥ずかし乙女な内気戦艦へと変貌するのだ。

(本当だ!コンゴウ!)

(これがコンゴウの言っていた乙女霧島!)

 実は二人は金剛に聞いていたのだ。霧島は眼鏡が本体だと。

 いや、違う。眼鏡を外すと自信を失くしたように内気な乙女になってしまう事を。

 なるほど、これで合点がいった。何故、鎮守府の皆が提督にこぞって素顔を見せているのに、霧島だけが同じように提督に見せにいかないのか。

 こんなに性格が変わるなんて思いもしないだろう。そりゃ恥ずかしくもなる。

「ワシントン……」

「なあに、ダコタ?」

「今日は水族館、楽しみだな……」

「そうね」

 二人が何を期待しているのかは知らないが、霧島は霧島で、明石特製7つの秘密機能付きコンタクトレンズの試着を必死の覚悟で試していたのだった。

 

 

- 水族館

「この魚、綺麗です……」

 円柱型の水槽の魚を見て、うっとりとしている霧島を見て、サウスダコタとワシントンは思った。

「キリシマの方が、綺麗だ」と。

 

 そうこうしつつ館内をひととおり見て疲れてきた3人は、喫茶コーナーで休憩しながら女子トークに花を咲かせることにした。

「キリシマ、コンタクトレンズの具合はどうだ?」

 サウスダコタが、霧島に確認すると、

「ええ、着け心地に違和感はないわ。とりあえず、天気図やレーダー機能、艤装はないから破損個所警報は鳴っていないのですが、ひとつだけ分からない機能があるの」

「そうですか。明石さんは教えてくれてないのですか?」

「はい。緊急時のみ作動するらしくって」

 ショートカットの髪をかき上げて耳にかけた霧島の横顔は、とても綺麗でサウスダコタとワシントンは、なんだかむず痒くなってくる。

「あー、キリシマがいつもと違うので、なんだか妙な気持だ」とサウスダコタが照れながら言うと、

「私もです」とワシントン

「す、すみません」

 しょぼーんと肩を落とす霧島を見て、

「か、可愛い」と再び呟くアメリ艦2人

 今日、何度目の可愛いだろう、と思ったとき、

「よーよー! 姉ちゃんたち、遊ばない?」

 ヤンキー風の男2人組が声をかけてくる。

 もう12月だというのにタンクトップで刺青を見せびらかしてくるのは、彼らの常套手段なのだろう。

「ふう。手加減はせんぞ」

 サウスダコタが、席を立ち日本で習った正拳突きの構えをした時、霧島が叫ぶ。

「司令っ! 助けて!」

 瞬間、霧島の目が光ると同時に、目から機械音声が聞こえてきた。

「緊急コード! 『助けて提督』が作動しました」

 フイーン!

 その光は、渦を巻くようにらせん状に広がり、そして……。

「提督の転送が完了しました」

 まるで映画のターミ〇―ターのように、男が1人出現した。

 映画と違うのは全裸でないことだけだ。

「……?」

 ここはどこだと言わんばかりにキョロキョロしているのは……。

「ん? 提督? 提督か?」

 見間違えようもない。自分たちが所属している鎮守府の提督がそこにいた。

「おや、サウスダコタにワシントン。そして、そこの美女は……」

「嫌ーっ!! 見ないで! 恥ずかしいっ!」

 羞恥心で一杯の霧島は、思わず提督を突き飛ばす。

 突き飛ばされたその先には、先ほどのヤンキー2人組。

「ぐえっ」「ぐふっ」

「な、何故だ、霧島……」

 かくして男3人は気を失ったのだった。

 

 

「う、うーん」

「司令、お目覚めになりましたか?」

 気が付くと、そこは鎮守府の医務室。

 制服の提督がいたおかげで、自分たちが艦娘と証明出来、そして男達に非があると理解して貰えたので、比較的早く水族館の警備室から解放されたのだ。

「き、霧島?」

「はい、霧島です」

 明石特製コンタクトレンズの着用テストが終わった霧島は、いつもと同じように眼鏡だ。

「そうか、そんな機能があったとは」

「はい、でもこれでは危なくて使えませんね」

「何故?」

 提督が霧島に尋ねる。

「何故って、戦闘海域で司令に助けてって思ったら司令が転送されるのですよ。死んでしまいます」

「そ、それもそうだな」

「でも……」

「でも?」

「普段の外出の時でしたら、使ってみてもいいかしら」

 霧島はいたずらっぽく笑う。

 そして、ゆっくりと眼鏡を外した。

「司令、霧島は眼鏡を外すと素顔と一緒に心までさらけ出してしまうようで、とても恥ずかしいの。でも、これも私です。こんな私でも秘書艦でいさせてくれますか?」

 赤くなりながら、消え入りそうな声で恥ずかしそうに吐露する霧島。

そんな霧島に提督は応える。

「何をいう。君は君じゃないか。それに、そのコンタクトレンズはもう必要ない。何故なら……」

 そう言いながら、常にポケットに入れていた小箱を出して、ゆっくりと開ける。

「コンタクトで呼ばれなくたって、いつもそばにいて守れる距離にいたいんだ」

 霧島は、小箱の中を見て、思わず両手で口を塞ぐ。

「霧島、君の進水日に合わせて渡したかったんだ。受け取ってくれるね」

 そう、今日は12月1日、戦艦霧島の進水日。

「……。はい」

 外は寒空だが、微かな日差しで優しい暖かさに満ちる部屋。

 誰もいない部屋で、2人は唇を重ね合わせた。

 

  完

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