ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

18 / 34
やっとこさ原作突入、ここまで長かった


Disc.18~三人の日々 ※原作一話目突入

 

 

 

 

 

 

 朝が来る。ベッドの真ん中で、アタシはまず両手の温もりを振りほどき体を起こした。

 

 一緒のベッド、狭い部屋で寝る場所も限られるためだから仕方のないこと、けど半月近い期間が流れれば添い寝と川の字ぐらい慣れてしまうし、むしろこの温もりが無ければ落ち着かなくもなってくる。

 新しい新居、少なからず経験してきたあの時あの場所でのことを想えば何も問題は無い

 

 

……覚えている、記憶

 

 

……刑務所の中、顔の見えない誰か、戦っていた

 

 

…………それだけ、けど覚えているのは、私が冤罪で刑務所暮らしをしていた。これは、確定だ

 

 

 遠い記憶、過ぎ去った過去、もっとひどいねぐらに慣れていたアタシにはこのベッドは極上のスウィートルームのキングサイズよりも優れている

 

 冷たいコンクリ―トの部屋にパイプベッド、湿って匂うマットとシーツ、横を向けば謎のキノコに黒光りする害虫、そんな事は一切ない。そうならないように部屋の掃除は欠かさずしている。それだけで、狭い我が家も上等、いやそれ以上にもなりうる

 ボロいなら直せばいい。日々の掃除を欠かさず行えば清潔感は演出できる。女性だから、日々の家事をこなすわけじゃない。自分の為に、この水準を維持するために家事は行う。アメリカ人の母も出来る限り掃除は自らしていたし、こうしていると改めてエレメンタリーの頃から掃除を行う父方の故郷の文化は称賛に値するものだと痛感する。

 

 狭くも住み良いアタシ達のホーム、そんなホームでの日が今日も始まる。

 

 

「……」

 

 

 朝が来た。日付のカレンダーを今日に変える。ちょうど今日という日で二週間と少し、思い返すように、現状を俯瞰で見て、そして再認識して飲み干した

 

 ルーティンになるほど仕上がった朝の挙動、変わらない日々を実感させる。しいて変化をあげるなら、節約して捻出した湯沸かし器で浴びる温水シャワーは一昨日から取り付けた。我ながら良い買い物をしたと実感する。

 

 お金を稼ぐのも安定してきている。オラリオで始めた服飾関係の仕事、朝食を終えれば家事を済まして、そののち借りている工房へ行く。納期が近づいている服があるのだ

 そんな今日一日の予定を頭で整理しながら、ひとまずはじめに行うのは

 

 

 

 

「ん……ぁ、気持ち良いわね。湯船があればもっといいのに、お金が足りないわ」

 

 

 

 

 

 少しでも生活水準を挙げればあれもこれもとキリがない。増していく欲の衝動を鎮めるためにも、今はこのちょっとした贅沢で悦に浸らなければ

 

 香油を泡立て、解いた髪が肌に張り付きその上から泡が肌を伝う。寝ている間に纏った体の汚れを洗い流し、手の平でその滑らかさを知る。ヒップからバストまで、徹底してリンパを流して揉み解す手つきも交えて

 

 声が出る。血の巡りが良くなって気分が良くなる故に

 

 聞く者もいない、まだ夜が明けて間もない早朝。

 

 

 

「……ぅ、はあぁ…………油断、してたわ」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 しかし、今日は珍しくというか、それとも偶然か、もう一人こんな朝から目を覚ましたモノがいたようだ。

 

 

「徐倫、姉さん」

 

 

「……」

 

 

 きゅっと、シャワーの栓を閉じた。湯の雫が肌を滴る。火照った肌、だが隙間風は絶えないこのボロ教会の部屋、裸の濡れ肌が冷えついていくから両腕は体を隠すように閉じて、少しの身震いを一つ

 

 

「あ、ごめんなさい……寒いですよね、そのまま浴びていてください」

 

 

「……」

 

 ごめんなさい、シャワーを止めさせてしまったことへの謝罪、気遣いからすぐそうやって謝ってしまう子、今日もベルは通常運転。けど、そう何度も繰り返していく言葉からベルが如何に頭を下げているか容易に想像できてしまって、その腰の低さはいささか心配になってしまう。これもある意味通常運転だ

 

「……気にしないで、怒ってないわ」

 

 シャワーはもう一度捻り、湯を浴びて肌の火照りを取り戻す。

 

 人一人分のシャワールーム、タイル床の足元では湯が流れていく音が響いていく。カーテンの向こうで、ベルは今何をしているのか

 

「ねえ、今何しているの?」

 

「え、それは……」

 

「当ててあげるわ、部屋を出ようとしたんでしょ」

 

「……なんで」

 

「わかるわよ。どうせ気を使って席を外した方がいいとかでしょ……いいわよ、アタシは気にしないわ」

 

「でも服は、脱衣所もないんですよ……じゃあ、上がる時には言って、ください。その時は席を外します」

 

「気にし過ぎよ、ほんとベルったら初心なのね」

 

「……姉さん、もう」

 

 

 顔を赤くするベル、想像は容易にできる。

 

 毎度のこと、本当によくできた弟だと思う。とくに、からかいがいのあるこの無垢な所は本当に垂涎物だ。

 姉代わりになってよかったと、心から思える。別に願ってもらったわけじゃないけど、でも自然にこうなってしまった。いや、なるべくしてなったのか

 

 とにかく、この関係は本当に心地の良いモノだ。母性的な本能が起因しているのか、なんにせよこの感情が沸き起こる時はいつも心地よい。胸の奥が満たされるのだ

 シャワーで温まる肌よりも、会話で弾む胸の奥の温度の方が暖かさに満たされてる。数値がじゃない、数値では測れないもっといいものだ

 

 

 

「からかってますね、朝からあなたって人は」

 

「ごめんなさいね、でもこれがないとやってられないわ……ねえ、いっそあなたもどう?」

 

「……断ります、ます」

 

「声に自信が無いわよ。あなた、もう何回か見ているでしょうに。いつだったか旅の野宿で、川で水浴び中にばったりとかテントで着替えている時とか……もう、そんなのでヌーディストビーチなんか行けるのかしら」

 

「い、行きませんそんな変な所……それに、見てるって言うのは、偶然で」

 

「その割には釘付けだったわ。ほんと、ジロジロと……真っ赤な顔して」

 

「……ッ!!」

 

 

……タタ

 

 

 

「あら……ベル?」

 

 カーテンを少し開けて、半身を出して部屋を見渡すがベルは既にいない。さすがにからかい過ぎたのか

 

「……少し、遊び過ぎたようね」

 

 少しだけ悔やむ。が、また顔を合わす時にはすっきりしていることだろう。

 

 部屋にはもうベルはいない。よく見ると、ベルの荷物が壁のハンガーラックから抜けている。まだ朝早く、朝食も抜いて出かけてしまったのだろう

 

 刑務所でさえ朝食はぬかりないものであったのに、少し小言をもたらさなければ 

 

 

 

「ほんと、君たち二人はいい関係だよ」

 

 

 

「……あら」

 

 ふとベッドから聞こえた声に振り向く。脱衣所の無い部屋で、片足を挙げてショーツを通しただけの出で立ち

 女同士、タオルを首にかけて辛うじての隠しだけの姿、ベルがいない今は別に問題ないと疑問は浮かんですぐ地に落ちた

 

「君、裸族の趣味でもあるのかい?」

 

「別に、ただ話の方が先ならと思って」

 

 ベッドに腰掛ける。バストは首からかけたタオルで隠れている、ならば問題ない。タオルで拭って水気を取った肌、火照りが外気でゆっくりと抜けていくのが心地いい

 

「このままでいいわ、で……主神様は何かおっしゃりたいことが?」

 

「……いいよ、別に……ただ見ていただけさ、ベルくんと君のやり取りをね。うんうん、この仲良しこよしめ」

 

 悪態を吐くように、といっても顔は終止にまついている。きっと、寝ている振りして赤くなるベルの反応を逐一確認して楽しんでいたのだろう。口にはしない、だが共犯といってもいい関係であるのは確定だ

 

「はいはい……主神様にあられましては、今日も変わらず麗しゅう」

 

「事実だからね、女神は皆麗しゅうだ……で、今日のご飯は」

 

「……残り物のジャガ丸」

 

「うん、知ってた……湯沸かし器、高い買い物だったね」

 

「工事込みで6万バリス……一括で払ったわ」

 

「すごいね、服のデザイナーのお仕事は儲かるのかい?」

 

「冒険者よりは安定しているわ」

 

「そうかい……そうだね、君はそうだったね」

 

 少し、間を置いた返事。含みのある返し

 

「……」

 

 視線を感じる。背を向けて話していたから当然と言っても良いが、しかし今は明確に

 

 この、一面真っ白なキャンバスを思わせる背中。ヘスティアファミリアの証であるステイタスのタトゥーが入っていない、ただの無地の背中  

 

「……いいのかい?」

 

「?」

 

「君はいいのかい?ベル君についていてやらなくても」

 

「また、その話」

 

 ヘスティアの言う話、それはここ数日、いやファミリア結成間もないころから続けていた話

 

 そう、アタシにはステイタスはない。ベルはあるけど、アタシは持っていない。必要がないから

 

 

 

「いいわ、あたしが付いて行ったらベルの為にならないもの」

 

「……」

 

「意外、って顔ね……知らなかったかしら?アタシ、結構ブラコンみたい」

 

 

 

 大事に思っている、ベルのことは本当に、大事に

 

 

 

「…………大事よ。だから、あたしが行くとあの子を守ってしまう」

 

「だろうね、君はきっとそうするだろうさ」

 

「……見え見えかしら?」

 

「うん、君の正義はベルくんのためにある……嫌いじゃないよ。だから、無理強いは僕もしない」

 

「そう」

 

「ステイタスは必要になってからで良いさ。徐倫くんは服のデザイナーの仕事を始めたし、ベル君のことは僕に任せてよ。冒険者の指導や管理のマニュアル程度、主神としてみっちり勉強済みさ」

 

「そう、ならあたしも楽にできるわ。そうだ、ついでに恋愛方面も教えてあげてくれない?あの子、そういうのウトそうだし」

 

「恋愛……それは、うん、願ってもないけど。いいの?」

 

「変な虫より身近な神様の方がずっといいわ。あの子、優しいから騙されやすそうだし、ほんと心配なのよね」

 

「だね、ぼくも同感だ」

 

「ヘスティアっちなら歓迎よ。あの子の姉代わりとして推薦文だって書いてあげるわ」

 

「それは上々、でもベル君に恋愛ごとはまだ早そうかな」

 

「そうね、あの子年上の異性に可愛がられるから距離感近くて考え至らず……て感じ?」

 

「ちょっと、それじゃあぼくも望み薄じゃないかい!?」

 

「ははは! でもそうね、どこぞで高嶺の花の絶世美女にでも出会えば」

 

「そんな都合良い出会い」

 

「そうね、無いわよね」

 

 

 

「「あははははは!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夕方~

 

 

 

……タタタ、ガタンッ

 

 

 

 

「ぼく、初恋の相手を見つけました!!」

 

 

 

「「…………は?」」

 

 

 

「ぼく!アイズ・ヴァレンシュタインさんとお近づきになりたいです!!」

 

 

 

「「はぁあああああッ!!?!?」」

 

 

 

>> to be continued




しばらく空くかもとか言いましたがやっぱりもう少しだけ書くことにしました。ダンまちキャラのスタンドを考えるのが楽しくて仕方ない

原作の流れは円滑に進むよう簡潔になる部分あり。次回で酒場のくだりに進めれば良いなぁ、そんな予定


感想、評価等いただき嬉しく思います。モチベ上がって執筆に励めます。

次回の投稿は明日にでもまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。