ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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恒例のあのネタに突入です。


Disc.19~豊穣の女主人

 

 

 

 

 

 

【憧憬一途】

 

 

「「……」」

 

 

 テーブルに置かれた羊皮紙、そこにはベル・クラネルの冒険者として発言した能力の数値等が記されている。

 今朝がた、ベルが冒険に出る前にステイタスの更新を終えて、そして今徐倫とヘスティア二人はなんとも言えない表情でそのステイタスとにらめっこ中である

 というのも、二人の頭を悩ませる問題、それはこのスキルが中々に異質であることからだろう。

 

 

 スキルの内容、それは早熟、条件は恋心と来た

 

 主審の方も助けられた際ベルにちょっとしたお熱、片や姉代わりの不良風レディは非常に複雑な心境

 

 それぞれ思い寄せる共通の仲間。故にこの事実は

 

 

  

「……ヘスティアっち、どんまい」

 

 

「うぅ、ぼくというものがありながら……ぐぬぬ」

 

 

「そうね、ほんとそれ……あたしというものがいながら」

 

 

 溜息、二人同時に吐いた。身近にいたベルが見知らぬところで成長していたのだが、どうもその成長はそのまま飲み干せるものではく。感情というのはひどく扱いがたいものであったのだとこの場をもって再認識する。

 

 ヘスティアも落胆、徐倫も平静を保とうするも妙に落ち着かない。可愛がっていた弟に彼女が出来て嫉妬して、まさしくブラコン冥利に尽きる姉の極み、しかしそれではベルのためにならないことも理解。ジレンマである

 

 

……別に、独占するつもりなんて無いし、喜んであげるべきなのよね

 

 

「……で、ヘスティアさま」

 

「なんだいかしこまって」

 

「率直に聞いて、あの子の初恋は実るのかしら?」

 

「……ま、そこだよね問題なのは」

 

 胸の下で腕を組み、ヘスティアは悩ましそうに口を開く。聞く話、それはなんともハードルが高い事、徐倫は今日初めてこのオラリオで最も有名ともいえる女性冒険者、剣姫のことを知るのだった

 

 そして同時に

 

 

 

「……ハードル高すぎ、あの子大丈夫かしら?」

 

 

 

 姉として、しっかりと弟の恋路の難儀さに頭を悩ましくし、そして心配の念を送るのだった

 

 

 

 

 

……あれ?

 

 

 

……どうしたの、ベルくん

 

 

 

……いま、誰かに応援されたような

 

 

 

……気のせいです。ほら、今は授業の時間です

 

 

 

……は、はい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夕方

 

 

 

 

……お腹、減ったな

 

 

 空腹の警報が騒がしい。朝からダンジョンに潜って、その後はエイナさんの講義も受けて、すっかり日も暮れてしまった。昼時も逃して、すっかりお腹はすきっ腹

 

 夕飯はホームで当番制、けど今日はたまの贅沢の日

 

 

「ベル、こっちよ」

 

 

 

「……はい!」

 

 

 手を振り、呼びかける方へと駆け寄る。徐倫お姉さん、そしてもう一人

 

 

「あ、ベルさん……ごきげんよう」

 

「……シルさん」

 

 ぺこりと、お辞儀よく振舞う姿。薄鈍色の髪、綺麗な言い方をするなら星色の髪のあなた

 

 みているこっちはどぎまぎしてしまい、けど一方でこっちが予想していない距離の詰め方をしてくる、なんとも小悪魔なお人

 

 出会いはつい最近、でも徐倫お姉さんはもっと前から

 

 

「徐倫さん、ベルさん……ご予約承っています、どうぞ席へ」

 

 

「……」

 

 

 徐倫さん、その呼び方からすでに慣れ親しんだ関係が見える。なんでも、徐倫お姉さんが考えたデザインの服のファンらしくて、でもあの服を着こなす姿は容易に想像できない。可憐で華やかな、そんなシルさんが徐倫姉さんのセンス爆発な衣装なんて

 

 

「シル、この前またアタシの服買ったでしょ……あれ、ここでは着ないの?」

 

「ここでは仕事着ですよ。プライベートでしか着ません。あ、でもあれ着るの同僚から止められているんですよね。破廉恥だって」

 

「そう、動きやすくてかっこいいじゃない」

 

「……ですよね、ほんと」

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

「「ベル(さん)……今、想像したでしょ(想像しましたよね?)」」

 

 

 

「……ノーコメント、で」

 

 

 衣装、それはきっと直近で作ったあれのことだろう。

 

 徐倫お姉さんの作る服はなんというか、独創的でそして挑戦的で、時にそれは露出という形で現れる。胸元がハート型で大胆に開かれた服や、水玉模様に切り抜かれた服

 

 最近作った奴は、そもそれは下着かと疑うような女性服だったりするし、あの服上着がブラと同じぐらいの布面積で、下もパレオっていう腰布だけど生足が露出してるし

 

「服の名前、スパイスガール……シルにも似合うわ。髪とかピンクに染めてもっと派手にしちゃってもグッドね」

 

「あぁ、それもいいですね……あ、ダメみたいです。リューが睨んでる」

 

 そう言って、視線を置くの厨房の方へ。よく見てみるとエルフの緑髪の綺麗な人がこっちを見ている。見ているというよりは監視している、というべきか

 

 視線の先は徐倫お姉さん、エルフの女性からすれば徐倫お姉さんの知るファッションは拒絶反応が出るのだろう、かもしれない

 

 

「嫌われちゃったかしら」

 

「まさか、リューにだってきっと似合います。先生の服、私本当にファンです」

 

「あの、シルさんそれぐらいで……なんだか、お店の空気が重い」

 

 リューさん、とおっしゃるのかあのお姉さんは。とにかくあの人の怒りを買うと店の中の空気が尋常じゃなく沈みかえる。他のお客さんも何事かときょろきょろしだしているし

 

「くす……あぁ、ミアお母さんがカンカンになってます。すみません、そろそろお仕事に戻らないと」

 

「あの、そう言えば注文は」

 

「あ、うっかり」

 

「ほんとうっかりね」

 

 

 

「……」

 

 楽しげに笑いあう二人、また話が逸れる前に注文をしなければ。姦しい女子の会話は止めどころを見失うと時間なんて簡単に溶けてしまう、ホームではよく体験する事柄である

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 日は完全に落ちきった頃、宴が程よく盛り上がっていく時間帯。店の中も大層賑やかで、時折罵声もいかにもな酒場の空気だ。端のテーブル席で、大人しく僕は大盛りのパスタに格闘している。ご飯は美味しい、けどこの酒場の空気というのはまだ慣れるものではない。

 

 お酒のおいしさ、それがわかるまではまだ当分僕には難しい問題だ

 

 一方で、徐倫お姉さんも飲んでいるかと思えば、意外と控えめ、一杯目をちょうど今飲み干しきったところだ

 

 

「……どうしたの、あなたも飲みたいのかしら?」

 

「あ、いや……今日は少なめだなって」

 

 そう、いつもホームで神さまと宅飲みする際はもっとピッチが速い。酔って真っ赤になって、なんどか服をひん剥かれたり女物の服を着させられたり、理性が飛ぶほど楽しむのが何度かあった

 

 だから、今のように軽く嗜む程度に飲む姿は、微かに染まる頬の徐倫お姉さんはとっても蠱惑的だ。酒場という状況も相まってよくない魅力を感じる

 

「……ベル、あなた」

 

「?」

 

「言ってたでしょ、好きな子のこと。進捗はどうかしら」

 

「……それは、聞くまでも無いでしょうに」

 

「あら、意地悪な質問だったかしら」

 

「…………はい」

 

「拗ねた?」

 

「拗ねてません」

 

「……くす、ふふふ」

 

「…………ッ」

 

 

 不意に、その手が頭を撫でてきた。嫌ではないから、抵抗はしない。されるがままに、撫でられるままに

 

 急に変わる話、お酒の空気だからこういう突飛な話題転換も珍しくないだろう。

 

 

……進捗、そんなのはまだ

 

 

 一方的に知って、ただそれで数日。アイズ・ヴァレンシュタインさんがロキファミリアのお人で、だからただでさえ他派閥で関係を持ちにくいのに

 

 皆からの人気者で、そしてなにより同じ冒険者としてもずっと大きく開きがある。そんな相手に、どうやって、道はあったとしても遠い道のりだ

 

 

「想い人の顔ね、相手はまだ遠くかしら?」

 

「……はい、遠いです」

 

 

 レベル1、確かに最近は調子も良いけど、でもまだまだずっと遠い先のこと。ミノタウロスで死にかけた僕には到底、まだまだ及ばないことばかり

 

 強くなりたい、そんな願いを抱くと真っ先に浮かぶこと

 

 

「……徐倫お姉さん。ぼくは、強くなりたい……でも、まだ」

 

「考えていること、当ててあげましょうか?」

 

「え?」

 

「スタンド能力のこと、でしょ……素質はあると思うけど、こればっかしはね」

 

「……ですか」

 

 そう、スタンド能力。僕にあって徐倫お姉さんにはある力、でも僕はスタンド能力が見えるし、きっと何かの縁で僕にもきっと、可能性はあるんじゃないかと思い続けて、そうしてまだ何もない

 

 

……強くなりたい、なのに

 

 

 旅のさなか、徐倫お姉さんのトレーニングで対人戦闘の技術、戦いの身のこなしや体つくりは怠らず続けてきた。けど、それも冒険者となってはあまり意味を成さない。一から身につけた怪物退治の積み重ね、結局変わらずゼロからのスタート

 丸っきり駄目だとはおもっていない。けど、憧れを想えばもっと、もっともっと上を目指さないといけない

 

 

……スタンド能力、僕にもあれば

 

 

「……言っておくけど、ダメよ。回収したディスクのこと」

 

「うっ……ですよね、はい、薄々わかってます」

 

「素直に待っていなさい。回収した三枚、碌な能力じゃないんだし……」

 

「……三枚、ですよね。はい」

 

 そう、三枚のディスク。回収した能力はまともな力とは言えない。どれも犯罪行為に使えるものばかり

 

 強くなるため、憧れに近づくための足掛かりと見るには不相応なことは承知。けど

 

 

……あれは、まだ

 

 

 この場では指摘していない。徐倫お姉さんも、あの時目にしたはずなのに、どうしてか指摘しない。

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 あれは、徐倫お姉さんと出会った故郷の時のこと

 

 

 懐に入れていた、徐倫お姉さんが入っていた石隗の一部、あの時ナイフで刺されそうになった際にその表面の岩が砕けて、その中身は完全に露わになっている

 砕けた石の表面に隠されていたのは、一枚のディスクだ

 

 

「……」

 

 

 三枚目を合わせれば僕たちが持つのは四枚目。言うなればゼロのディスク

 

 今も、お守り代わりにバッグの中にしまっている。徐倫お姉さんに見せることなく、未だに隠し持ってしまっている。

 あの時、村を襲った男と同じく、ディスクを目にしたのなら、いつかは指摘されると思って、けどそれでも徐倫お姉さんは何も言わない

 だから、僕は後ろめたさを感じながら、今もずっと抱えたままだ

 

 何か、話題にあげるのもはばかれるようなディスクなのか

 

 何もわからない。だから、ひっそりと一人でに調べることもしてみた。だけど

 

 

 

……使えないのかな、何も反応しないから正直望みは薄いけど

 

 

 試しに額に当てても何も起こらない、もしかしたら空っぽのディスク、なんて話があるかもしれない

 

 ずっと隠して、後ろめたさを感じているぐらいなら、正直そんなオチのほうが気も楽なのに

 

 

 

 

 

 

「……ベル、どうかしたの?」

 

「…………」

 

 どうして、スタンドの話をしている今も、あなたは知らぬふりをするのか、僕にはわからない

 

「悩んでる顔してたらねぇ、見ているアタシが心配になるでしょ。言いなさい、頼りにしていいんだから」

 

 

「……うん、大丈夫ですよ。はい、なんでもない」

 

 

 

……言えない、今更どう切り出せばいいんだろう

 

 

 

 苦笑い、誤魔化そうと流して食事に戻ろうとする。でも、大盛のパスタはもうほんの少し、話を逸らし続けるにはもう

 

 

「食べ終わったわね、じゃあ相談をしましょうか」

 

「……いや、ほんと大丈夫で」

 

「しなさいよ、どうせ恋の悩みでしょ。お目当ての剣姫のこと」

 

「ディスクのことは……て、え?」

 

 想定していた返しとは違った。反応に困りあたふたしていたら

 

「やっぱり、当たってるでしょ。恋の悩み、そりゃ抱えるわよね」

 

「え、あぁ…………その、えっと」

 

 想定ををずれた。しかし、それはそれで困る。しれっと流して終わりにしたつもりだったのに。また、掘り下げられてしまった

 

 

「姉として、初恋を応援しないとね」

 

「うぅ、やめてください……言われると、恥ずかしい」

 

「なによそれ、あなた自分から嬉々として叫んでたじゃない」

 

「ううぅ」

 

 思い返す記憶でずっと顔が熱いまま。酔っていないのにまるで酔っているような、いやいっそ酔ってしまった方が楽なんだろうか

 

 声高に叫んだことはちょっと後悔している。神さまはどうしてかそっけない態度を取って、それで徐倫お姉さんはこうして指摘してからかって遊んでくるし

 

「……あ、あの時は有頂天で……その、恋なんて言うのもおこがましい相手で」

 

「じゃあどうしたい?手でも繋ぎたい? それとも同じカフェにでも誘うの?カラオケ?」

 

 そう、こんな感じで僕の顔は終止熱くなって容易には冷めない。徐倫お姉さんは楽し気に、こんな僕の恥ずかし顔を肴にまたお酒を飲んでいる

 

「……とにかく、お礼を言うだけです。今は、ただそれだけ」

 

「あらそう? なら簡単じゃない、適当に会ってそれで感謝の言葉言って、そっから誘っちゃえばいいのに」

 

「か、簡単に言わないでください……そんな、そもそもどうやって会うかすら」

 

 わざわざ門戸を叩く勇気はない。またあの門番に合えばどうなることやら、もしかしたら恨み言も抱えて厄介な事態になるかもだし

 

 

「……」

 

「あの、聞いてます。とにかく、そんな簡単なことじゃないんです……アイズ・ヴァレンシュタインさんはそう簡単に会っていいお人じゃない、から」

 

「………………」

 

「あの、徐倫姉さん……そんな急に」

 

 

 黙って一体どうしたのか、問うてみてると

 

 

「……ベル」

 

 

「?」

 

 

 徐倫お姉さんは、ただ指をそっと指し示す。奥から見て、入口の方角を指さしている

 

 そいうえば、やけにさっきから賑やかになっていてる。でも、一方で静かになっている席も

 

 

「……ッ」

 

 

「で、簡単に会えないんだったっけ……じゃあ、どうする?」

 

 

 

 

……打ち上げやーー! 今日はいっぱい盛り上がっていくでーー!!

 

 

 

……ロキ、アタシお肉!お肉山盛り!! 

 

 

 

……団長♡ 席、ここにどうぞ♡わたしのひざのうえです♡

 

 

 

……ティオネ、せめて隣で勘弁してほしいな、人の目もあるんだ。

 

 

 

 

 

「…………ッ」

 

 どうする、再度徐倫お姉さんがこっそりつぶやく。返答は、何もない。ハイともイイエとも言えない

 

 予想外が過ぎる。どうして、どうしてこんなタイミングで

 

「……綺麗な娘ね」

 

「えぇ、ですよね……知ってます。二度目、ですから」

 

 横目に、覗き見るようにこっそり見てみる。こっちには気づいていない、大勢で席に集まって、あっという間に酒宴が開かれてしまった

 

 あの人は、その中でちょこんと座って。嬉しいとも退屈とも取れない表情で、ちびちびとお酒のコップを口に付けている

 

 ただそれだけ、でも見てしまう。惹かれてしまう

 

「……」

 

「なるほど、ありゃ惚れるわ」

 

「……はい」

 

「あら、素直ね」

 

 

 徐倫お姉さんの声掛けにも振り向かず、僕はずっと夢中で見てしまう。すると、視線を察したのか

 

 

「!」

 

 

 振り向いて、視線が合った。咄嗟に、顔を逸らしたけどあれは

 

 

「……告る?」

 

「し、しませんッ」

 

 

 

 

 

……ジー

 

 

 

 

 

「……(見られてる?)」

 

 

 視線の感覚、うかつにのぞき見してしまった僕の失態だ。もしかして怪しい人物か何かとも思われたかもしれない

 

 

「ベル、がんばってね」

 

「なんで今応援なんですか?こんな状況、どうしたら」

 

 黙って席を立つか、それともこの場で空気を徹するか。

 

 わからない。正しいのは何か、無い頭で絞ってみても何も自体は動かない

 

 動くきっかけが欲しい。そんな受け身で天に願ってしまっている。そんな都合の良いこと、あるはずがないのに

 

 

 

 

 

……なあ、そろそろあの話でもしようぜ 

 

 

 

 

 

 

 

……なぁ、アイズ。そろそろ聞かせてやれよ!あのミノタウロスの話をよぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

 

 

 

>> to be continued




次回ひと悶着、ベートはどうなるやら

ツンデレ狼はわからせ案件なのか、次回をお楽しみに
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