ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない 作:37級建築士
※ 読者ニキの報告で間違いに気づき訂正を致しました。フィンの姓はマックールじゃなくてディムナでした。お恥ずかしい限り、自分を戒めるべく鈴美さんのいる通り道でシャトルランしてきます。目標100回
ドッペルゲンガー、それは都市伝説上のみ存在する存在のはず。だが、今自分が見ているモノを説明するにはまさしくそれだと言う他ない
いつか、どこかの記憶で似た体験をしたことがある。空想上、俗にいうUMAを使役する能力と対峙したときのこと。その時は、確かロッズだったはず。いや、間違いない、スカイフィッシュとも称されるあのロッズが実在して、そして能力はそれらを使役するというもの
故に、今この相手の周りにいる存在もつまりはそうなのだろう。スタンドとは関係ない、実際には存在する概念。ドッペルゲンガーは本当であったと証明されたのだ
ドッペルゲンガー、彼がキラーズと呼ぶそれらは実態を持っているし、本人同様の戦闘能力も持ち合わせている。多対一、実に厄介な系統の能力ではあるが、やはり恐ろしいのは能力そのものよりも本人
この能力を最大に高める決定的な要因、つまりはステイタス。神の恩恵というこの世界独自の強さの法則。
この世界に降りてきて、そしてこの街に来て、アタシは今ようやく自分の中の勘違いに気づいた。
スタンド能力は最強じゃない。この世界には、スタンドにも匹敵する強さの概念があったという事。スタンド使いは非スタンド使いに負けない、そんな常識は通じない。
気づいて、そして想いを巡らしてみればそれは驚くほどに簡単な答えだ。なぜって、ここはアタシのいた世界じゃない、彼らが住まい、彼らが生きて、そして彼らが主役を飾る大舞台がこの世界なのだから
× × ×
……厄介、本当に厄介
スタンド同士の戦い、だが実際は能力を使った駆け引きと読み合い。心理戦に近いものがある
けど、今行っているのはかなり闘争という概念に近しい。それもより純粋な、素手同士のラフファイトになってしまっている。
フィンを相手に、さながら懐へ飛び込むインファイトのボクサーのごとく攻め入らんとするが、変わって相手はアウトボクサーのように軽やかなステップワーク、時に跳躍を交えましらがごとく軽やかに舞ってくれるのだ。詰めることは叶わない距離、しかし攻撃は一方的に徐倫を襲ってくる
腰だめに構えた両腕、動きを察して防御姿勢を取る。姿を現したフィンの影たちが拳と蹴りを放ってきた。裁き、防ぎ、後ろへ飛んだフィンへ糸を飛ばす。捕まえて引き寄せるため、しかし
「その糸は厄介だ、けれど」
「!」
飛ばした糸、しかし糸はフィンを捉えず、別のフィンに絡みついた。いや、糸の射線に飛び込んで身代わりになったのが正しいか。
とらえて殴る。フィンの影、彼がキラーズと呼んでいたこのドッペルゲンガーは強くはあるが脆い。頭部を殴って黒い血がほとばしりその場で溶け落ちた。
一体は倒した、だがそれまでだ
「そうだね、この位置取りでの攻防ならきっとこうなると読んだ。キラーズが一人盾になったみたいだね」
「!」
距離を詰めることは叶わず。またアウトレンジに逃げられてしまった。余裕で振舞っているフィンに息切れの様子はないが、一方で徐倫の側は肩で息をしている。
ここまで、模擬戦が始まって10分が経過した。この戦闘中、徐倫が与えたダメージ、それは今しがた仕留めたキラーズ一体のみ
対して、すでに徐倫の身はキラーズたちの攻撃を受け止め、躱す際にかすめて負った傷などが幾重にも重なり痛々しく映っている
ワンサイドゲーム、その言葉が徐倫の頭ではよぎってしまった。
……やめ、アタシらしくないこと考えて、バカみたい
けど、すぐにかぶりを振ってそんな考えは捨て去る。勝機はいまだ見えていないが、それでもまだ敗北も見えていない
スタンド使いの戦いは腹の読み合い、ならば頭を使うことを止めてしまえばそこで勝機は潰えてしまう。だから、とにかく今は考え続けろと、そう徐倫は自身に言い聞かせる
構えた拳は、倒すという覚悟を相手だけじゃなく自分にも示すのだ
……シン・リジィ、強い能力ね。ほんと、関心すら覚える
ただでさえ身体能力でずば抜けた性能がある冒険者、その力を限りなく等しいままに分裂をする。つまりはそういう能力だ。拳がめり込めば潰すのも容易いが、その攻撃はまともに貰えば並みの体では耐えられないだろう。
そのことはここまでの攻防で理解している。蹴りや正拳、クロスした腕でガードしようものなら二本ごと腕はへし折れる。あの小さな体躯にそれだけの重みがあることは重々理解している
……能力の弱点、あいつは見えていないと言っていた。なのに
ドッペルゲンガー、見たらその本人は死ぬ、そんな逸話があるぐらいだから影と光は交わらない鉄則が彼の能力にはあるのだろう。きっと、それが本人の言う見えない
なのに、どうして
「……あんた、見えてないんじゃなかったのッ」
問いかける。仕掛けておいてフィンの行動は受けと守りばかり、どうせ攻めてこないならと徐倫は会話を始めてしまった
「おや、疑っているのかい。自己紹介ついでに、軽く説明はしたはずだよ」
「ドッペルゲンガーを招集して使役する能力、けど本当に」
「見えていないさ。言っただろう、見えてしまって、僕が認識してしまえば能力は減衰する……けど、予測は立てられる。
「ナルシスト、いけ好かないわね……顔が良いだけ余計にムカつくッ」
青筋を立たせて苛立ちを隠しきれていない、そんな徐倫を見てフィンはただ品の良い笑みを見せるだけ。
本人としては悪意のないことだが、徐倫には煽る行為にしか見えないのだった。
……むかつく、やっぱり顔殴るわ。見た目がキュートなイケメンだろうとしったことかッ
しかし、感情のままにやるにしても現状は数の差をひっくり返せない。ドッペルゲンガーを、キラーズの動きを制しなければ直撃は届かない
見えないキラーズは基本的に本体の周囲を夢遊病の様に立ち歩いたり、中には立ち止まってこっちを見たりと反応は色々だ。けど、明確にわかっている点は二つ
キラーズは本体の一定距離に必ず存在しなければならない
そして、キラーズは近づくものに衝動的に攻撃を行う。なお、その際キラーズたちでは同士討ちは無いが、きっと本体が干渉すれば、間違いなくそれは認識するに他ならない
アウトレンジの戦い、きっと能力を展開したフィンは積極的なインファイトをしづらいのだろうか、そこは考えようによっては攻略のカギになるのではないだろうか
……考えろ、道は必ずある、勝利の道はッ
徐倫が持つ手札は糸の能力、その用途は応用が利く。束ねれば力、広げれば罠、使うなら後者
「……攻めないのかい、なら」
「!」
問題は、この強敵を相手にどうやって罠を敷くか。月明かり、薄暗いこの闘技場、砂に紛れて糸を張り巡らせるのがベスト、けどそれだけじゃ足りない
知恵を巡らせろ、強敵を前に希望を見いだせ。なに、やることは変わらない。
……近づいて来た、能力を活かすスタイルを捨てるつもりか
……いや、それすらもブラフ、彼もまた聡く考えて戦うことができる人種、スタンド同士の戦いに向いているッ
……策は読まれるか? けど、だとしてもその上を行くだけッ……アタシは、アタシだけの勝機を見つけてみせるッ!!
「来い、フィン・ディムナッ!!」
>> to be continued
次回で決着、結果はどうなるやら