ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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明けまして投稿、けど書きあがったのは一昨日。年内にストックを立てておいて三が日はゆったり過ごすことができる、かもしれない

元旦からの労働は憎い、おのれポルナレフ




happy new year!!


Disc.24~秘密のディスク

 

 

 

……徐倫、君が身内を大事にする気持ちはとてもわかる。でも、今のオラリオにいて事件と関係ないなんてのはもう無理なんだ。ましてや、それがスタンド使いなら

 

 

……これから、この街の住人たちは皆大きな流れに飲み込まれる。それは止めなければならないことだ、力があるのなら、それはなおさらに

  

 

 

……ベートの件は本当にすまなかった。けど、君に少しだけ嫌なことを言ってしまうが、言わせてほしい

 

 

 

 

……君が本当に『守りたい』を貫くなら、僕らと共にするかどうか以前にだ。あまり、冒険者を舐めない方がいい

 

 

 

 

 

 

 

「——————」

 

 

 

 

 

 暗い夜、降りしきる雨音が騒々しいのに、心に染みついた言葉は消えやしない。

 

 後悔をしているわけではない、ただ叶わなかったという結果、今あるのはそれだけ

 

 決して、自分は冒険者を舐めていたわけではなかった。だが、過信は無かったかと聞かれればそれは否定のしようがない事だ

 

 

 

……フィン・ディムナ

 

 

 

 思い返すのは彼の出で立ち、そして声色、全てにわたって。あれほどにも手ひどい完敗を得た後にもかかわらず心はすさむことは無い

 ただ理解して、彼の築き上げた強さが乗り越えてきた偉業の証だと知って、その上で改めないといけない。そう、結論をつけざるを得ない

 

 スタンド使いとして、自分は多くの戦いを得てきた。だけど、それはあくまで過去の経歴、自分の強さにはまだ先がある

 

 彼の様に、いやこの街に入る冒険者たちと同じ土俵に立ち、自分もまた上を目指さなければ

 

 

……この先、アタシはあの子を

 

 

「……まもれる、かしら?」

 

 

 

 

 雨が降る。深く骨身を冷やす温度で雨が降りしきる。

 

 敗北のくやしさ、それはやはり感情としてまだ残っているようで。頭では現状を理解して大人を装うとも、心は少女の様に地団駄を踏み荒らし金切り声で叫んでいる。

 

 

……あの見せかけイケメン中年、絶対今度は倒すッ

 

 

 少年の姿に見えて、その年齢は自分よりもずっと上、そんな風に徐倫は勝手な解釈している。だがそれは正解だった。

 あの面の良さの裏に隠したどぎつい中身、10年20年で成せるものじゃあない。そうあたりを付けてみる徐倫だが、それはまさしく正解だ。

 

 フィン・ディムナ。顔のいいイケメンには裏の顔がある。卑下する言葉ではなく、あくまで食えない男という意味で、フィン・ディムナの底は容易に計り知れないのであった。

 

 

 

……フィン・ディムナ、あれが冒険者、英雄

 

 

 

 感情はままならず、だが理性では彼のことを認めてしまう。

 この街の事件を解決するという覚悟、その凄みは戦いを通じて嫌というほどに感じたから

 

 彼との関係、それはきっとこの先も続いていく。この街にいる限り、それは絶対というほどに関わりは繰り返される。

 フィン、彼が徐倫に執着した理由。それは徐倫がスタンド使いだから、否。きっと彼は本能的に察していたのだろう。徐倫の存在が特別であると。出会いの先に、進む道がより広く変わっていくことを

 

 親指のうずきから、彼は人知れず確信に近い当たりをつけていた

 

 だが、フィン・ディムナは完璧ではない。ここまで称賛を並べ続けた彼ではあるが、そんな彼にも一つ失念があった。

 

 フィンは、徐倫を特別と見た。あの酒場に置いて見るべきは徐倫だけ、それが彼の唯一の失念だった。

 

 知り得ないこと、この物語の主役は結論ベル・クラネルただ一人。あの場で逃げ出し、恥を被った青い果実、そんな彼こそが誰よりも特別であったことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

 

 

「……い、いた……いっつつ」

 

 

 目を覚まして早々に出てしまったのは悲痛な声、早朝に起きたベルは体を伸ばすもすぐに寝転がってそしてもだえ苦しんだ

 

 生傷も絶えず、むちゃな運動を繰り返したことでの筋肉痛に肉離れ、その他もろもろ。

 

 そう、昨夜のベルは悔しさからくる衝動で無理をした。碌な装備もせずにダンジョンへと潜った中、それはもう激しい戦いを繰り返して、そして今に至る

 

 

 

……無茶をして、怒られるよねきっと

 

 

 

 痛みに慣れ、ようやく体を起こしてベッドのへりに座る。どうやら部屋には一人、出かけているのだろうか

 

 

 

「……今は、ラッキーって思おう」

 

 

 

 身構える、まだお説教の心の準備はできていない。きっと神様も起こるし、徐倫姉さんもここぞとばかり楽し気に怒るだろう。プロレス業か、強制的なおしゃれか、いずれにせよ折檻は避けられないだろう

 

 

 

……カチ

 

 

 

「!」

 

 

 ほら来た、と言いたくなるようなタイミングで扉の開く音がした。あれ、でも変だ

 

 扉、階段を上ったうえにある教会の扉の音はもっとこう、ギシギシしていた。はずだ、そんなはずなのに

 

 

 

 

……カチ……カチ、カチ

 

 

 

「?」

 

 

 

 音が、音が近い、いったいどこから、あたりを見渡してもそこに変わった様子はない。疑わしいのは、ベッドの下

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 ベッドの下、部屋に一人で変な空気、そうなると身構えてしまうのは、うん、その手の話。本や人聞きの話で聞く怖い話の鉄板、考えないようにするほどにそれは明確に

 

 

「……い、いや、何もないよね。ベッドの下、なんて、ハハ」

 

 

 このベッドの下にあるものなんて、それは収納のボックスぐらい、あとはせいぜい

 

 僕が、私的な理由で隠しているもの、ぐらい。好きな英雄譚の本の中で、俗にいうちょっとそういうシーンがある恥ずかしい本を数冊、ばれないように隠しているだけだ

 

 

「な、ないよね……でも」

 

 

 

……カチ、カチ、カチ

 

 

 

「————ッ」

 

 

 聞こえてくる、なんだか等間隔の音だ。置時計の針の音、それが近いかも

 

 

「……でも、やっぱり何もない」

 

 

 手探り、は少し怖い。僕は思い切ってベッドを降りて、ある場所を目視。衣装をしまったボックスが二つ並んでいて、見るのはその右側、その右箱とベッドの隙間。無い様で、実は隙間がある

 

 少し持ち上げてみれば、ボックスの上面は少しくぼみになっていて、そこに雑誌程度の入る隙間はある。秘蔵の本を見つけた

 

 そして、その隣には

 

 

「……あれ」

 

 

 だが、モノがあらわになった瞬間に音は消え去った。さっきまで鮮明に聞こえていたのに、どうしてか消えてしまった

 

 結局気のせい、ただの耳鳴り、そう思うには鮮明が過ぎる。痛みで起き上がった好みに、まどろむ余裕なんてない。だから、勘違いはあり得ない

 

 まさかこの本に、いやそんなわけがない。あるとすれば

 

 もう一つの隠しているモノ

 

 

 

 

 

「……これ、じゃないよね」

 

 

 

 

 

 手で触れた、鏡のような面を見せた円盤、中心に穴が開いたそれを僕は数度見かけてきた。そして、これはその一枚目

 あの岩の塊から零れ落ちたディスクだ

 

 

 

 

「いつか、言わないといけないよね……これ」

 

 

 

 手に持ち、その裏面矢面面に光を当ててみる。この中にスタンドがあればその中身がかすかに見えるけど、これはただ鏡のように反射をするだけ

 

 当然、頭に入れることもできやしない

 

 

 

「……」

 

 

 

 意味のないディスク、そんなものがあるのならそれでもいい。けど、どうしてかこれを打ち明けるのが、なぜか憚れる

 

 徐倫お姉さんは石の中から現れた。その理由も背景も分かったものじゃないけど、一つだけわかるのはあの人はこの世界の住人ではないということ

 記憶がない、そんな状態で、このディスクはおそらく手掛かりになるかもだ、そう判断はできる。もしかすると、これはスタンドじゃなくて、徐倫お姉さんの記憶に関係したディスクなのかもしれない

 

 かもしれない、想像の域だけど予想はいくらでも膨らむ。確かめるためにも、渡して調べてみるぐらいするべきだ

 

 それが、正しいことだ。そう、僕だって理解している

 

 ただ

 

 

「……おねえ、さん」

 

 

 もし、もしもだ

 

 この記憶に、徐倫お姉さんの大事なものが詰まっていて、そしてそれを機に人が変わってしまったら

 

 僕のそばにいて、僕を支える徐倫お姉さんで在り続けられるのは、記憶が消えてしまっているから。

 

 だから、もし記憶が戻ってしまうことがあるのなら

 

 

 

「……ッ」

 

 

 徐倫お姉さんが無意識に避けるのも、少しは納得できてしまう

 

 

……駄目だ、こんな考えは

 

 

……押し付けるなんて、駄目だ

 

 

……僕の家族はいない、徐倫お姉さんしかいない、だからいなくなって欲しくないッ!

 

 

「!?……ち、違う、それはダメなんだッ そんなこと、考えちゃあだめなんだッ」

 

 

 認めたくない、けどこれは独占欲だ。

 

 傷を負ったからと言って、善意を踏みにじるような欲を抱いちゃあいけない。

 

 こんな感情は忘れないといけない。せっかく前を向いて、今は夢へとめがけて走っているのに

 

 振り返って、こんな悪感情に浸ってはいけない。いけないんだ

 

 

 

「……ッ」

 

 

 手に掴んだそのディスク、ぎらつく鏡面は自分の顔を映す。見たくない顔を、今僕はしている。

 

 衣装箱の中に隠す、そうしたい欲求と抗ってしまった。息が荒く、乱れた動機が体の痛みを再起させる

 

 

……隠すのはダメ、でも、だからって

 

 

 迷い、挙句考えたのは場所を変えること。僕はディスクを

 

 

「……どうしよう、でも」

 

 

 やっていることは繰り返し、バッグの中にしまって、また隠して、そのループだ。決断しきれない自分が嫌になる。子供みたいで、大人になり切れない自分が本当に嫌になる

 

 

 欲しい、今僕が欲しいのは成長だ。それは肉体的にも精神的にも

 

 過去のしがらみ、子供みたいなわがまま、そんなものを飲み干して消してしまえるそんな大人になりたい

 

 力が欲しい。大人になったと認められるような力が、例えばそれは

 

 

 

……スタンド、僕にだってきっと

 

 

 

 

 

 

……いつか、スタンド能力に芽生える日はきっと

 

 

 

 

 

 

……あぁ、きっと、そんな日が来たら、それは

 

 

 最高最善の瞬間、僕の生きてきた物語の中で忘れられない日になる。そう、もっとも偉大な日と数えてしまえる

 

 

 そんな日が来ることを、僕は、望んでしまって、いる

 

 

 いつか、いつか

 

 

 

 

 

 

 

>> to be continue

 

 

 

 

 

 

 

 

…………カチ

 

 

 

 

……カチ、カチ

 

 

 

 

 

 時計の針は回り続ける。今は聞こえずとも、その針の轍は刻まれていく。

 

 今はまだ、彼の望むいつかはこない

 

 それ、が満たされるまで、日、は来ない

 

 

 

 

 

 

 

 

…………day

 

 

 

 

……Please……look...look

 

 

 

 

......call...name......please...call

 

 

 

 

……remember...want...want! want!

 

 

 

 

....l'm...y......I...am……......f……s……ay

 

 

 

 

.........Day......Don'...ever...forget

 

 

 

 

 




 今回はここまで、読了お疲れ様です。前回の敗北回よりは後味のいい終わり方かな?とりあえず次回より怪物祭へ進行していきます。

 感想・評価等あると幸い。モチベ上がって執筆が捗ります。

 
 
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