ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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ベルのスタンド能力がようやく固まった。早くお披露目したい


Disc.29~ほろ苦い再開

 

 

 

「神さま見かけませんでしたか、えぇ……そうですか」

 

「……ベル、そっちは、かんばしくない感じね」

 

「どこに行ったのかな、神さま」

 

 

 時計の針が二本共に頂点を刺した。約束の待ち合わせにそろそろ顔を出してもいい頃あいなのに

 

 コロシアムの入り口がある少し脇の、日陰に入った草むらに立つ樫の木、周りを見渡しても神さまの姿は見えない。

 

 

「……戻ってこないのかな」

 

「さっき聞いた話、なら来ないかもね」

 

「…………そうなんでしょうか」

 

 

 店の手伝いを抜けて、祭りを見回りながら楽しんでいた最中のことだ。豊穣の女神、そして神さまとも友神関係にあるデメテル様の出店に訪れた際だ。

 

 屋台で売る麦粥と感想果物を焼き上げて作った菓子を買った際、デメテル様は神さまを見たと世間話を持ち掛けた

 

 

……ヘスティアったら、ヘファイストスと随分お酒飲んじゃって、あれじゃあ今頃べろべろではしご酒かしらね

 

 

 デメテル様の言葉を聞いて、もしかすると合流ができないのかもと思っていたけど、この様子だと

 

 

「……で、どうしよっか」

 

「どうするも、神さまを探さないと」

 

「この状況で?」

 

 

 指し示す周囲の光景、それは見世物が始まる時間が近づいて群衆はさらに密度を増していた。

 

 どこにいるかもわからない。むやみに探し回って、万一入れ違いになってはと考えると足は前に進まない

 

 

「……でも、その」

 

 

「大丈夫よ、ヘスっちもさ、間に合わなかったら先に席に着いとけって言ってたし。ま、連れもいるなら大丈夫なんじゃないの」

 

 

「……そう、なんですけど、はぁ」

 

 

 大事な神さま、眷属なのに置いて先に行ってしまう罪悪感はどう正論を立ててもぬぐえない。申し訳ございません神さま、せめてそんな思いを抱き深く頭を下げる。

 

 

「会場入りしましょう。チケットはあるわよね」

 

「……はい、ちゃんと、ぁ」

 

 

 ポケットから出した二枚の紙、一瞬落としそうになるそれをとっさに掴もうと手を伸ばした

 

 すると、その手をさらに上からもう一本の手がまとめて包む。

 

 

「……はぐれないように、ね」

 

 

「ぅ……はぃ」

 

 

 手を握られた、暖かい女性の体温の感覚に、さらに追撃は徐倫お姉さんのあざといスマイル。不意打ちに食らった微熱が冷めない僕は、引っ張られるまま連れて行かれるまま徐倫お姉さんにリードされた

 

 心配を感じさせる暇も与えてくれない。不安を見過ごさないあなたの眼力に、今はただ息を巻くばかりだ

 

 

 

……いいなぁ、この時間

 

 

 

 あわただしい日々、そして祭りの特別なひと時も、そばに寄り添って寂しくさせない人がいる

 

 大層かもしれない。けど、その都度あることに僕は思わざるを得ないのだ。オラリオに来てよかったと、あぁ、だから

 

 今日は、とってもいい日になる、そうに違いないと、心から感じられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~コロシアム~

 

 

 

 

『———————ッ!!!』

 

 

 

 歓声が鳴りやまない。見世物であるモンスターのテイムが成功し、ガネーシャファミリアの冒険者の前にシルバーバックが服従を示している。そんな光景を、日々平穏な暮らしをする町の住民や刺激に飢えた神々が見れば、それはも脳の液体がとめどなく沸騰するような快感に見舞うというものだ

 

 モンスターを知る冒険者の自分たちとは言え、実際こうも上手にテイムを施す光景を見れば息を飲むし、拍手だってする

 

 だけど、そんな中いまいち乗り気でない反応を示している人がいる

 

 それは誰か、何を隠そう僕のお姉さん、実のお姉さんの様に面倒を見てくれる姉貴分というべきお人、空条徐倫その人だ

 

 

 

「……なんか、思ったほどじゃないわね」

 

 

「ちょ、徐倫姉さん……し―、しーッ」

 

 

 歓声が大きくて助かった。肩肘ついて、ドリンクを飲みながら死んだ目を向ける徐倫お姉さんの声は、間違ってもこの場の総意に混ぜてはいけない。

 

 何を言っている、楽しみに水を差すな、そんな目で見られて気まずい思いはしたくない

 

 

「姉さん、徐倫姉さん……ッ」

 

「ベル、暇だから膝枕してあげるわ……ほら、こっちおいで」

 

「興味を失わないでッ」

 

 ひそひそ越え、耳元に語り掛けるが態度を改める様子はない。

 

 いったい、どうして退屈に思うのか。迫力あるモンスターのテイムのどこに不満があるのか

 

「……気づかないのね」

 

「へ?」

 

 含みのある言い方、だけどその意図は読めない。端正な顔は、ただこの大きなショウを退屈そうに眺めているだけ

 

 理由があるのか、そう思い改めて会場眺める

 

 

 

……別に、変なことは

 

 

 

 闘技場の平坦な中央、そこでは今もなおモンスターのテイムが行われている。先ほど手なずけたシルバーバックと同様に、今度はミノタウロスのテイムだ。少し、いやなことを思い出してしまう

 

 ショウの流れは劇場的だ。まず、軽い戦闘が始まり、テイマーの冒険者は怒り狂うモンスターの突撃を間一髪で交わし、持っている鞭を使ってわざと怒らせるように痛みを与える。

 心臓を悪くさせるギリギリの攻防、命がけの回避に観客の声は悲鳴と歓声が入り混じる

 

 

……なにもおかしくない、別に

 

 

「……茶番ね、アタシが変わってやろうかしら」

 

「!」

 

 

 堂々と言ってのけた。ベンチの周囲には都合よく隣り合う人がいないのをいいことに、徐倫お姉さんは退屈を吐き散らす

 

 どうか、誰も聞いていませんように、そんな淡い願いを抱くも

 

 

 

 

 

「無理よ、あんたにはできない」

 

 

 

 

 

「!?」

 

 願いは届かず、口を塞ぐ決断をする前に声はよりにもよって、因縁が未だ極々最近の相手とは、なんと奇妙な巡り合わせか

 

「……ロキファミリア」

 

 ベルの顔色が悪くなる。無理もない、あの日のことは未だ尾を引き夢でうなされることもしばしば

 

 当事者ではないとはいえ、あの場にいた人物であることに変わりない。アイズヴァレンシュタインこそいないが、今いる二人は二人で、ベルではなく徐倫の方と因縁は強くある

 

 すでに聞かされた話。徐倫とフィンの戦いの夜を知る、目撃者の当人。

 

「よ、ヨルムンガンドの……ティオネ・ヒリュテ」

 

「アタシもいるよ~……妹の大切断(アマゾン)、ティオナって呼んでね!」

 

「え、えっと……あの、お二人には、その」

 

 

 戸惑うベル、言うべき言葉は何か模索しては違うと組みなおしている結果あわあわと狼狽するばかり

 

 

 

……謝るべきかな、徐倫お姉さんから聞く感じだと、結構もめごとみたいだし

 

 

 

「……あなたたちの団長が癇癪を起した、あの夜以来」

 

「そうね、あなたが愚かにも団長に挑んで、そして敗北した夜のことね」

 

 

 

 

「「あ”ッ!?」」

 

 

 

 

 凄みを感じる声、大歓声に紛れていてもその声は重く鼓膜を叩いた。

 

 一触即発、気の強い者同士相反しているような気配を感じtけど、こうも早々に

 

 

「あはは、二人ともバチバチで面白いね」

 

「と、止めないとッ」

 

「もう、背中に隠れて可愛いなぁ君……大丈夫だって、いざとなったら加勢するし」

 

 だから大丈夫と、そういう意味での大丈夫は全くこちらの不利益でしかない。とっさに背後に隠れて様子をうかがうも、この妹さんはあまり止めるつもりもないみたいだ

 

「君、名前は? あたしはティオナ、さっき言ったね……えへへ、ベートの件はごめんねぇ、でもよろしくよろしく。ねえ、君も団長と同じ不思議な能力使いだったりするのかな?」

 

「いや、あの……今は、それより」

 

 

 けんかを止めるべき、のんきでおおらかなティオナさんを相手にしているうちに、横目に見ている二人は今にもその手を、あわわ

 

 

 

「団長の命令が無ければあなたたちも拘束しているところなのよ。ねえ、不思議な能力者さん」

 

「へえ、拘束できるから言っているみたいな口ぶりね。あの男は途方もなく強かったけど、あんたはどうなのかしらね……スタンド、あるの?」

 

「ノーコメントよ。それに第一、奇抜な能力なんてなくても、戦いはできるのよ。冒険者を舐めないでもらえるかしら」

 

「あら、その冒険者なら私も……奇遇ね、最近始めたのよ。良かったら教えてくれないかしら、先輩さん」

 

 

 

……ゴゴゴゴッ

 

 

 

「あ、あわわわ……ッ」

 

 

 

「あちゃぁ、そろそろ止めないとまずい感じ」

 

 

 のんきにそう言ってのけるティオナさんだが、事態はより重く見える

 

 何も持たない無防備な二人ではあるが、今にもその鍛え上げられた肉体から放たれる拳が血を迸らせるか、のっぴきならない緊張感が駆け巡る

 

 どうなるのか、いや、ほんとう、喧嘩っ早いのはどうにかしてくださいと、ベルは内心何度も叫び続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~某所~

 

 

 

 

 地下に眠る遺体の数はすさまじい。カタコンペが張り巡らされているどこかの国のごとく、この街にも多くの死体、かつて生きていた者たちの痕跡は眠っている。

 

 ダンジョンを封するこの年の歴史は様々な騒乱と動乱の繰り返しだ。その中でもトップで極悪な事例は暗黒期、闇派閥との大規模対立が起こったかの時代、犠牲者の亡骸は果たしてどれほど安置することができたか

 

 街の修繕の過程で、そうした事件で埋もれた悪党たちの亡骸を墓に収める、もしくは焼却することを当時のギルドは徹底していたか、そう聞かれると回答はイエスで在り、そして裏が生まれる

 

 街の下、ダンジョンと人の住む領域の境目に、多くの死体が埋まっている。憎まれ、さげすまれ、侮蔑を浴びた悪人たちの亡骸は、未だ足元の下に

 

 気づかれることなく、暴かれることなく

 

 

 骨は、皆の足元に在り続けてきた。日の目を見ず、闇の中で眠り続けて、魂の痕跡も枯れ果てるまで

 

 

 

 

 遺体は眠る。死は覆らず

 

 

 

 

 

 ただし、理を外す者が正体を明かした際には、その甲斐にあらず

 

 

 

 

 

 

 

 

【スタンド名、リンプ・ビズキット・ロータス】

 

 

 

 

 

 

 

 かつて、大国の刑務所にて悪意の限りを尽くした男の奇跡は、今再び

 

 異邦の地、ここオラリオによって、また繰り返されるのであった。ただし、事を起こす動機だけは、明確に違う

 

 サイモン・オヴァディア、指名手配の殺人鬼はドブの詰まる地下下水道より生還した。

 

 彼もまた、多くの信奉者に倣い件のスタンド、ニルヴァーナロータスの洗礼を受け、その崇高な願いのためにおのが能力を行使する。目的はたった一つ

 

 幸福な人生を得るために、故に、彼は今日もまた、大勢の市民に手をかけるのだった

 

 

 

>> to be continued




原作ではこの後モンスターが逃げ出す騒動、そしてヘスティアを助けるために活躍、そうなるのが原作通り、でもそうならない。だってクロスオーバーだもの


次回より不穏な動きいっぱい、ベル君は無事生き残れるのか、お楽しみに

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