ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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重い展開好き


Disc.30~つかの間の

 

 

 ロキファミリアのヒリュテ姉妹、二人のことは知っている。アイズヴァレンシュタインさんのことを調べる最中、僕は二人のこともエイナさんから教えられた。

 二人ともロキファミリアの幹部で、この街の有名な冒険者の上位に位置する。強さも美しさも並んでトップ、有名なアマゾネスといえばまず二人の名前があげられるぐらいである。

 遅かれ早かれ、この街にいればいずれ知るであろう二人。出会えて話しかけられたのはきっと幸運なこと。たはだ、それは因縁がなかった場合に限る話だ

 

 そして、今の僕はというとだ。

 

 そんな有名な姉妹の妹の方、ティオナ・ヒリュテさんと一緒に、互いの姉の姿を横目に見ていた。

 

 

「……ッ」

 

「バチバチだね、お肉でも焼けそう……駆け出し君もそう思うよね」

 

「冗談になりませんよティオナさん。あと、その呼び方は」

 

「あはは、君ほっぺやわらかいねぇ。髪の毛もふわふわで兎みたい」

 

「……マイペース」

 

 

 敵意は無い、怒りもない、あの夜のことで僕自身は特に遺恨は無いけど、それでも徐倫姉さんの関係者ということから色眼鏡を覚悟していた。けど、これがこの人の素なのか、とりあえず優しい人で安心した。けど、距離感が近い、肌色も多いし、ちょっと困る

 

 突然の相席、もともとチケットの番号が隣だから仕方ないことなんだけど、でも

 

 

……この二人、大丈夫かな

 

 

 日が浅い僕でも、目の前の女性ティオネ・ヒリュテが勇者にお熱であることは嫌でも耳に届く。そして、徐倫姉さんはそんな人の思い人に喧嘩を吹っ掛けた相手だ

 

 何も起きないわけがない、そう身構えて、今はかたずをのむしかない

 

 周りはモンスターと人間の過激なショーに熱中だけど、僕にはすぐ横の二人の方がずっと過激で危険だ。何も起きなきゃいいけど

 

 

「……あんた、あのイケメンといい関係なのかしら」

 

「あたしは団長の女よ、聞かれるまでも無いわ」

 

「へえ、そう……じゃあ、突っかかるのは嫉妬心からかしら」

 

「そうかもね、けどあたしたちは疑い深いのよ……あんたが、この街の敵だから、猜疑心を持っているのでしょうね。なんて」

 

 

 牽制で投げ合うとげのある言葉、二人が並ぶ席だけ周りの空気と断絶している。

 

 手こそ出るとは思わない。だけど、どうにも馴染む気配は感じられない。

 

 

 

「団長の女って、勝手に……むごッ」

 

 

 何かをしゃべろうとしたティオナさんが急に悶絶しティオネさんの手から何かが放たれた。固く焼き上げた蜜入りのパンだ。さっき出店で徐倫姉さんが食べてたからすぐわかった

 

 

「……うぅ、おでこがジンジンする」

 

 

 涙目で足を支えるティオナさん、どうしたらいいかあわあわする中二人は会話を再開する

 

 

 

「……はぁ、もう充分よ。あんたの男に喧嘩を売ったってことはもう十分わかったわ。すごいじゃない、そんなに思い合ってる仲だなんて」

 

「そ、そうよ……アタシと団長はのっぴきならない仲なのよ。だから」

 

「だから? わざわざこんな休みの催しにも、監視役みたいなことをするのかしら」

 

「……別に、あんた達を見張っているわけじゃ」

 

「さ、どうだか」

 

 互いに探り合うような会話。けど、二人は本当に監視役というのか、普通にチケット買って、たまたま近くになっただけではないか

 

 ちなみに、ティオナさんは神さまが座る予定の席に座っている。だから、結果間に入る人は無くてティオネさんと徐倫姉さんが隣り合って、だから余計にややこしくなっている

 

 空気を変えたい。そんな願いが聞き届けられたのか、救いの手はわりとすぐに訪れた

 

 

「……ティオネ、別に言っちゃえばいいじゃん」

 

「ティオナッ」

 

「だって、何も説明しないとぎすぎすして……や~だ、もう言っちゃうから」

 

「……好きになさい」

 

 しぶしぶ了承、姉妹仲が良いのが垣間見える。

 

「えっと、妹ちゃんだっけ……で、あんたたちはいったい何しに来たのかしら」

 

 名前は呼ばず、少しそっけない態度で返す。ティオナさんは特に気にせず、変わらぬ調子で続けて返す

 

 

 

「プライベートだよ。でも、いざという時の警備でもあるよ」

 

「……警備、それって」

 

「そう、徐倫ちゃんも知ってるでしょ。今のオラリオには変な輩が多いって」

 

「そう、そうなのね……ごめん、ちゃん付けはやめてくれないかしら。背中がかゆくなるわ」

 

「じゃああたしもティオナで、よろしくね徐倫」

 

「……なんか調子狂うわね、けどよろしく」

 

 

 クールな調子に対して爛漫なティオナさんの反応が妙に噛み合わない。そんな様子を見てティオネさんは思わず吹き出していた

 

 

「……うん、じゃあまあ、変な誤解は取り合えずここまで。あたし達も祭りを見に来ただけ、でそのついでに警備の一環も兼ねてるんだ。何かあればすぐに動けるように、ね」

 

「そのいいから、何かが起こるみたいな言いぶりね」

 

「その時はすぐ動くよ。大きな祭りだもん、悪いことをする奴は現れるかもって、すっごく疑ってかかった方が良い」

 

「……」

 

「一緒に楽しもうよ、せっかくのお祭りなんだし……ね~駆け出し君」

 

 

 同意を求めるように肩を抱く。突然のスキンシップに戸惑う僕、ふわりといい匂いがして、思わず変な声が上がってしまった。

 

 

「初心なんだ、かわいい~」

 

「……ッ」

 

 過度なスキンシップ、助けを求めるべく徐倫姉さんを見るけど、どうもその目は面白がっているという意思しかくみ取れない

 

 場の空気は和んでいる。ティオナさんのおかげで、ということだろう

 

 

「……ふん、楽しむねぇ」

 

「ティオネも肩ひじ張らないでさ……いいじゃん、せっかくだし仲良くなろうよ。この子可愛いし、徐倫も面白いし。ベートのいたずらすっごく笑えたし」

 

「最後、がっつり問題じゃない。あいつ、まだ引きずってるんだから……徐倫だっけ、あんたも気をつけなさいよね。あいつ、バカだから女も平気で蹴るわよ」

 

「……なにそれ、やばい奴じゃん」

 

「「人のこと言えないじゃん」」

 

「確かに」

 

 

 

 笑った、息の合うツッコミに皆失笑。耐え切れず笑いが噴き出てしまった。

 

 あれ、なんだかまとまってる。そう感心してしまうと、それがこのティオナさんのおかげだと理解した。

 

 

……大丈夫かな、もう

 

 

 とがった二人、けど間に柔らかいティオナさんが混じって会話はようやく平穏な色を示す

 

 やっと、居心地が良くなって安堵のため息も吐ける。

 

 

 

……それにしても、徐倫姉さん、いったい何をしたんだろう

 

 

 

 さらっと言った悪戯の話、徐倫姉さんはフィン・ディムナと一戦交えたのは知っているけど、その過程で何があったかは聞かされていないし、訪ねても答えてくれない

 

 ベートさん、僕の話を酒の場で盛大に疲労していた狼人のことだ。なにか、良くないことをしたと

 

 

…………今度、謝罪に菓子折り持って行った方が良いかな

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

『———————ッ!!!』

 

 

 

 ざわつく会場、今度は大型のモンスターを相手に複数人で囲み、リーダーで在ろう調教師の冒険者がモンスターに鞭を振るう。

 

 僕のまだ知らないもっと下の層のモンスター相手に、冒険者たちの奮戦に観客たちは声を荒げてエールを送る。

 ショウは盛り上がる。だけど、そんな様子の中僕たちだけは浮いた空気だ

 

 

 

「……あはは、ていうかあたし達全然テイム見てないじゃん」

 

 

 

 皆が思っていたことを、ティオナさんがぶっちゃけで言い切ってしまう。わざわざそれなりのお金を払ったのに、結局しているのは互いのことを紹介して、打ち解け合うお話だ。正直、わざわざここでしなくてもいいことだ

 

 

「いいんじゃないの、このまま会場を出てご飯でも食べましょうか……ねえ、ベル」

 

「……それは」

 

「ヘスっちも来ないし、今頃飲み明かしてるかもね……ほんと、暇があればお酒ばっかりよね」

 

「お金が潤ってますからね、服のおかげで……や、それより、まだ催しは残ってますよ。だから」

 

「そうね、まあいいんじゃない。なんだかんだ毎年見てるし……それに、今年ははずれだし」

 

「そ、はずれ。あんた気づかないのね」

 

「……ッ」

 

 三人を見る。見てみると、みんなティオネさんの意見にうなずき合っている。

 

 周囲の声は、依然大きく、耳をつんざくほどに響きわく最中なのに

 

 

 

『—————————ッ————ッッ!!!?!?』

 

 

 

「……うッ」

 

 

 歓声、悲鳴、入り混じる複雑な音でとっさに耳を塞ぐ。見ると、冒険者がテイムするモンスターの反撃にあって変え際に吹き飛ばされている。

 

 ショウの流れ、というよりは想定外のハプニングなのか。見ていると、演者の冒険者たちは必死に訂正しようとしていて、それは臨場感あるシーンとも受け取れそうだけど、少し引いてみれば拙さが目立つ悪いシーンにも見える

 

 

「えっと、はずれって、つまり」

 

 ティオネさんを見て、恐る恐る訪ねてみる。クールな顔立ちがこっちを捉えて、硬い表情はくすりと笑みをこぼした。

 

「……身構えなくていいわ。いじめたりしないわよ」

 

 優しい言葉をかけてくれた。ティオネさんは続けて語り続ける。

 

 怖い人鴨と思ったけど、二人とも、根は優しくて思いやりのある女性なのだろう。

 

 

「……ベル、あとでお仕置き」

 

「り、理不尽」

 

「あはは、仲良しじゃんお二人」

 

 

 

『——————————————————ッ!!????!?』

 

 

 

「!」

 

 

 ふとした時にわいてくる大歓声、ショウは依然熱気の最中だというのに

 

 

「ベル、よく見なさい」

 

「……ぁ」

 

 肩をつかみ、よく見るようにと、徐倫お姉さんの手が会場の中央を指し示す。

 

 そこには、あまり見ていいものか判断に迷う光景が見える

 

 

「うわ、血が出ちゃった……もう、放送事故って奴じゃん。ロキが言ってた、こういうのを言うらしいよ」

 

「何があったか知らないけど、キャストの急変でしょうね。明らかに未熟、大衆のガネーシャファミリアが、情けないわね」

 

 

 会場が沸き上がる。だけど、歓声よりも悲鳴が大半だ。下では慌ただしく動き出すガネーシャファミリアの関係者がせわしない

 

 はずれ、その言葉がしみじみと理解できた

 

 

「アハハ、徐倫姉さんの言った通りでしたね……でも、トラブルなら仕方ないですよ」

 

 

 仕方ない、そう言葉を口にして疑問を捨て去る

 

 疑問を、捨てる

 

 

……あれ

 

 

 

 疑問を浮かべた。それはいったい何に対してだ

 

 ショウの歪さ、そこに疑問を浮かべたのなら今しがた解消した。

 熟れうことはなにもない

 

 

「…………」

 

 

 

 なにもない、はずなのに

 

 

 

 

 

 

 

 

……なにか、おかしい

 

 

 

 

 声色が変わる。徐倫姉さんは何かを見ている。

 

 視線の先、それは中央の闘技場の、外れと称されたテイマーの彼

 

 ではなく、その相対しているモンスターに対して

 

 

「違う、何かおかしい

 

 

 

 

 

 

『——————ッ!?!?!!?』

 

 

 

「!?」

 

 またも声が上がる。悲鳴の方がずっと多い、血を見て叫ぶのは当然の反応だ。でも、なんだか皆動揺している

 

 その理由はわりかしすぐに知ってしまえた。今まさに視線の集まる中心点、そこで起きている異様な現象に

 

「…………モンスターが」

 

 

 獣の叫び声が会場をとどろかす。手に余る様子だった大型モンスターはテイマーに攻撃をしない

 いや、それどころではなくなっている

 

 モンスターは血を流していた。たが、あの会場には誰も刃物を有した武器を構えていない。

 

 なのに苦しんでいる

 

 

 

……切られた?いや違うッ

 

 

 

『グルァアアアッ!!!?!!?』

 

 

 

 雄叫びをあげる。まともに受け止めれば身もすくむ恐ろしさに観客も泣き叫ぶことだろう

 

 だけど、今度はうって変わって皆静かになる。ただ、固唾を飲んで

 

 その、天まで轟く悲痛な断末魔に言葉を失した

 

 

「…………いる、あそこに」

 

 

 食われる体、モンスターの全身から吹き出る傷は何かに切られたり撃ち抜かれてできるものじゃない。

 

 僕は見覚えがある。あのように肉から血や臓物が飛び散る光景を

 

 以前に、故郷の村で目撃していた。あの傷付き方は、あのときの記憶を呼び起こす

 

 

「……なにか、いる……あそこぇ、ナニかが食っているッ モンスターが食われてるッ!!」

 

 

 

 

 

 

>>to be continued




次回からいろんなキャラが動きます。透明なナニカで街が大パニック、楽しくなってきた


次回もお楽しみに
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