ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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敵スタンド公開、どう倒すかやっと煮詰まった。

今回は説明多め、少し長いのでご了承を。


Disc.05~テイラースウィフト

 

 スタンド、その能力の種類は千差万別、多岐にわたる。

 

 スタンドとは人の精神が具現化したモノ、人であるゆえに人形の形状を取るものもあれば、中には様々な動植物、さらには道具等の形をとる。人の数に応じて、スタンドもまた異なる。一人として、同じスタンド能力を持つことは無い。魂の形とはそれだけ唯一無二ともいえるだろう

 

 空条徐倫、彼女のスタンドは糸。糸は精神のエネルギー、そして肉体そのもの、糸というシンプルで応用の効く性質、さらに線は束ねれば肉体となり破壊力を増した化身としても変わる。どこか機械的な容姿をした女性の幽霊、ストーンフリーの姿である

 

 とある世界、そこで得た経験が十分に成長をもたらした空条徐倫のスタンド。優れたスタンド能力であることは言うまでもない。シンプル故に、応用の効く戦い方と幾重もの戦闘経験、それがストーンフリーの強みであり真価、そして進化である

 スタンドの能力は据え置きではない。スタンドはその使い方に応じてさらなる向上も見込める。スタンドの中には、幾重にも成長を重ね更には姿を、名を変えるモノあるのだ

 

 成長性、それもスタンドの持つ特性の一つだ。強靭なパワー、持続時間、射程距離、スタンドにはそれぞれ役割があり優劣はつけられないという意見もあるぐらいだ。

 

 優れたスタンドは数多くあれど、弱いスタンドというのは存在しない。全ては使いよう、そして成長も重要なキーである

 

 空条徐倫のスタンド、ストーンフリーは優れている。それに対し、テイラースウィフト、ベル達を襲ったスタンド攻撃の使用者、彼のスタンドは非常に脆弱だ

 

 スタンドの本体、それは蝶の形と女性の姿が混ざった華美な人型。姿大きさこそ成人した人間と相違ない見た目をしているが、その力は一切の破壊力を有しておらず、俊敏な移動能力も持たない。ただただ脆弱なスタンドだ。

 

 

 テイラースウィフト、このスタンドそのものに戦闘能力は無い。

 

 

 テイラースウィフトは脆く柔らかく、すぐに噛み砕かれる。だが、そうしてスタンドの身を捕食生物に食らわせることでテイラースウィフトは真の能力が開花する

 

 蝶は捕食され、分解されて栄養分になる。そして、その栄養分は体内で結合し、一種の無脊椎動物の形に変わる。つまりは寄生虫の一種だ

 

 寄生虫となったスタンドの肉片は食した生物それぞれの体内でゆっくりと移動をはじめ、捕食した生き物の脳内にたどり着いた時捕食生物には使命が植え付けられる。

 

 

……この栄養を取り続けろ、より大きく成長しろ

 

 

 寄生することで、生物の在り方を変えるのだ。例えば、米粒程度の虫が、捕食と成長を繰り返し人を殺しうる怪物になってしまう程度には

 

 生き物は変化に気づかない。操作を受けるわけでもない。ただ、内なる本能に突き動かされるのみ。

 

 捕食生物は人間の味を覚え、そしてその味と栄養で成長が促される。はるか太古の歴史より築き重ねて来た進化の設計図、その構造をまるごと作り変えられるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルと徐倫、二人が危機を脱して今何をしているか

 

 部屋に忍び入った二匹のクモ、だがそれを倒して今二人に安心は無い。依然、状況はレッドアラートが鳴りやまないままである

 

 

「————ッ」

 

 

「……泣き声は出しちゃダメ。胸の布を噛んで、そう良い子、力強く噛むのよ。泣きたい気持ち、怒りたい気持ち、全部私の中に吐き出しちゃいなさい。いいわ、バストならいくらでも貸してあげる…………だから、良い子よ……良い子、ベル」

 

「…………コク」

 

「いい子ね……本当に、本当にッ」

 

 静かに交わす言葉、二人は息を殺して家屋の中に潜んでいる。空条徐倫、彼女は今ベルの顔を胸に抱いて、まるで赤子をあやすように静かに抱きしめているのだ

 

 安心の言葉をかけて、ただ優しく己の性別と年齢の持つ力を使い、ベルの心の平穏を保とうとしていた

 

 

 

……状況は深刻、依然深刻なまま

 

 

 

「……ひっぐ、どうして……なんで」

 

 

「そうね、こんなこと……決して起きて良い事じゃない。大丈夫よ、あなたが背負う必要なんてない……だから、今は沈黙を保ちなさい」

 

 

 悲壮な心情を宿した言葉。慰めの言葉をかけながら、徐倫もまたやるせない思いで胸が締め付けられている

 

 一瞬、一瞬の判断であった。危機が去ったと思えば、すでに外では先に倒した二匹よりもずっと巨大なクモが跋扈して、そして村人たちは無残な目に合い、亡骸の一片たりとも残らず奴らは捕食した

 

 クモの出現、それは村全体を襲う一大事であった。村には低く見積もっても三十程度は人がいることは徐倫も気づいていたが。問題は気づいた瞬間、助けに行くかどうか

 

 刹那、そこで悩み足踏みすることは許されなかった。ベルの判断は当然助けるではあったが、徐倫は反対、彼女の持つ洗練された予測と経験がベルを止めることを選んだ。

 

 徐倫自身、己の行動を良くは思わない。奥歯を噛みしめ血の味を嚥下した。だが、結果として、その判断は英断であった。

 敵スタンドの能力は不明、うかつに飛び込んでしまえば、今頃はどうなっていたことか

 

 

 

……仮に飛び出していれば、数人は救えた?

 

 

「いや、これは楽観的な考えだ……ストーンフリーは完ぺきじゃない。それこそ、時間を止めるぐらいの能力でもなければ、そんな決断はするべきではないッ 甘くない、状況はかなりまずい」

 

 

 

 

……ギシ、ギシシ

 

 

 

『……キシャァ』

 

 

 

 

「……(息を止めなさい、ベル)」

 

「————ッ」

 

 

 音が聞こえる。今、二人は家屋の中にはいるが、位置する場所は天井の上、三角屋根の吹き抜けな天井、柱の上で息をひそめ、体が安定するようにストーンフリーで固定している状態だ。

 

 その豊かな胸で窒息させるようにベルを抱きかかえて、徐倫は静かに息を殺している。視線の先、見下ろした先には壁を壊して入ってきた猛獣の大きさのクモがいる。血生臭い、人を食らった痕跡が全体に色濃く残る、そんな捕食者の姿にベルは当然恐怖を感じている。

 

 突然の惨劇、耳を塞ぐ前に聞き届けた隣人の断末魔、徐倫の抱擁が無ければ今自分は奴らの餌になっていることはベルにも理解できている。

 

 理解は得た。しかし、それで14の平凡に生きて来た少年の感情は落ち着きやしない。

 

 

 

「……————ッ」

 

 

 

「……(もう少し、あと少しだけ頑張って……ベル、あと少しだから)」

 

 

 

 獲物を求め視野を広げるクモ、いよいよ諦めると思えば、今度はこうべをあげた。

 

 

 

……ストーンフリー

 

 

 

 糸が流れ出でる。次第に肉体の一部に欠損が生じていく。そうして大量に出した糸は束ねて布となり、まるで天上の板の様にクモの視界を覆い隠す。

 

 クモの視界、そこには天井が見えるだけ。壁に足をかけ、ゆっくりと昇る。あと少し、数センチ、いぶかしげに見るようにも見えるその挙動、偽の布天井に触れるか触れないか

 

 

「――――ッ」

 

 

 固唾をのみ、沈黙を保つ徐倫とベル。わずかに開けた隙間から見るクモは、いよいよ諦めてか何もせずそのまま床に降り立った

 

 安堵の息は吐かない。固唾は飲み続けたまま、そこから一分近い待機は続く。

 

 

 

 

 

……出た、姿を消した

 

 

 

 

 何もいない。壁布を解除し、柱にベルを待たせ徐倫は静かに降り立った。四方の窓、底から周囲を観察する。

 

 視界に映るのは、一部倒壊した家屋に、そして食い散らかされた痕跡、そして現在進行形で食事を続けているスプラッター

 

 状況は変わらず。依然、周囲はバイオハザード状態である。生きたまま食らわれるか、それとも飢えて死ぬか、そんなフィクションの極限状況が今を言い表すにふさわしい。

 

 

 

「……クモ、これ全てがスタンド?いえ、にしてはあまりにも生っぽさが過ぎる」

 

 

 糸に触れた体液、そして殴った感触も含めてすべて、精神で生み出したにしてはあまりにも異常。

 

 外には目算で5~6mはあるクモもいた。それほどの数、いくら遠隔自動操縦だったとしても度が過ぎる

 

 

 

「死体、さっき倒したクモは……」

 

 

 糸を飛ばす。網にした形ですくいあげたそれ、裂かれた傷面をよく見てみた

 

 息途絶えたそれは、どうみてもやはりクモ。精神で産み出したとも思えない

 

 

「……な、ナガアシ」

 

「!」

 

「図鑑で見たこと、ある……ナガアシクログモ、特に珍しくもない、この辺りでよく見るクモ、のはず」

 

「……そう、知ってるのね」

 

「でも、あんなに狂暴だなんて聞いたことない……ありえない。あれは、ほんの一センチの大きさのクモだから」

 

「そう、やっぱりね。それが、この今起きている異常の答え……敵のスタンド能力、少し見えて来たわ」

 

 推測は立った。となれば、あとは攻略方法

 

 

「さて、どうしたものやら」

 

 

 

「……ですか」

 

 

 

「?」

 

 

 

「……ぜん、いん……もう、ダメなんですか? ひ、ひとりも?」

 

 

 胸の中で、ベルがえづく声で尋ねた。

 

 

 

「そうね、そう捉えるしかないわね……残念だけど、もう」

 

「……そう、ですか……ぁ、くッ」

 

 

 感極まって、そしてまたベルは徐倫の服を噛んだ。感情を押し殺して、必死に必死に噛み続けた

 

 震える背中、然しそれも無理なき事。同情し、徐倫はただ背中を撫で続けることしかできなかった。

 

 ベルにとって、生まれ育って幼いころから接してきた村人は皆家族も同然。それがたった今、家屋にこもるベルにも聞こえる音量で皆断末魔をあげた。死の声を叫び狂いながら皆食われた

 

 無論、この状況で救出に出ればどうなっていたか、それはベルも理解してる。力をもってなお、その現実を受け入れ自分だけはと救った徐倫の抱いたやり場のない気持ちも、優しいベルは察して、何も言いはしない。 

 互いに、両者ともに今が最善とわかって身をひそめるべきと理解している。せざるを得ないのだ

 

 

 

……キシ、キシシ

 

 

 

……ぐしゃ、ぐしゅがしゅ、ぶちゃしゃぁあッ!?

 

 

 

……ズシンッ!バキキィッ!!

 

 

 

「……でかい、本当に大きいわね」

 

 

 

 家屋の外、目算だけでクモの数はそこまで多くは無い。大小合わせて七匹、もしくは先ほど自分が倒した小さい物を含めればまだ多くいるかもしれない

 

 今、この場で見定めるべきは戦力。徐倫は思考を続ける、この暗闇の荒野ともいえる危機から脱する術、それを見つけるために

 

 

「地響きもすごい、大型トラックはあるわね。デカい二匹……あれ、ストーンフリーで倒せるかしら?」

 

 

 クモの体、虫であればつぶすのも容易ではあるが、あれほど成長しきった殻に拳が通るかどうか

 

 

「俊敏な動きは感じない。成長はしたとはいえ、物理の法則ここから逸脱するのは容易じゃない。大きくなればなるほど重さは増す。速度じゃない、あのクモの脅威はパワーとディフェンス。そう判断するのが賢明」

 

 思考を回す。徐倫には記憶こそないが、何故か信じるに足る本能的な確信があった。この異常がスタンドの納涼と見て、そのスタンドの実態を推測するうちにある程度の答えは見える

 

 すでに二匹、家屋の中で倒した二匹。そこから得た推測

 

 

「クモは食らうことで成長したとみるべき。クモの多くは肉食で獰猛だけど、その気性には臆病さがあるはず。それが網を張り敵を封殺してから食らうという、熟練された狩人のごとき戦いを身に着けた。けど、あの獰猛さに本来のクモの本能を感じなかった。そこから察するに、敵は生き物の生態、何らかの方法でその構造を組み替える能力だと推測できる」

 

「……」

 

「怖いのね、でもそれが解答なの。敵は、生き物に成長を促す劇薬を投じられる。成長のために必要なのは捕食、人間という食材の栄養を取ることで無限に成長し強くなる……外の異様に大きいキモグモもその成果ってわけ」

 

 

「…………ッ」

 

 

 徐倫の腕の中、ベルは体を振るえさせている。それは憤りか、静かに状況を整理するほどに、気づけなかった内の感情が漏れ出ているのか

 

 

「……ぼく、今日のお昼に、あった……怪しい人、きっとあの人、あいつがッ」

 

 

 思い出す記憶、そしてつながる。推測だが、現状怪しいという点ではあの男しかいない

 

 だが、顔も知らない男に命を狙われる理由、そんなものベルには思いつかない。理解ができない、当然ではあるがこれはベル自身も知らない隠された秘密に関係していること。知りようは無い

 

 

 

……でも、消去法で、スタンド使いっていう人が犯人だとするなら、あの男が一番

 

 

「……スタンド使いがやられれば、この騒ぎは終わるのですか?」

 

 

「ベル、わかるの?」

 

 

「はい、おそらく……村とは違う方向に行って、確かあの方向には廃村があったはず」

 

 

「いいわ、それがわかれば十分よ」

 

 

「なら、あとは脱出方法を」

 

 

「……そうね、そうすれば」

 

 

 

 ベルの声に生気が戻っていく。しかし、徐倫の表情は硬いまま

 

 何故か、そう思っていると徐倫は真横を指さし示す。そこには屋根の壁の割れ目、隙間が覗ける穴があった。

 窓から覗く先、そこには真っ赤な眼球が恐ろしい光を放っている。月明かりを醜く変える赤い血の血の色。

 

「……脱出、できますか?」

 

 下げる頭、窓を見るベルの頭を胸に引き寄せ低く陰に隠れた。徐倫の鎖骨に額を当てるベル

 

 近づけた口元、耳の近くで息を殺した声をささやく

 

 

「クモは周囲を囲んでいる。それに、村の外にだって危険な生き物もいるかもしれない。うかつな判断は危険ね」

 

 

「……ぁ、じゃあもう本当に」

 

 

「ええ、だけど諦めるには早いようね……ベル、少しいいかしら」

 

 

「?」

 

 

 

 諦めかけたベルの顔、しかし徐倫の顔にそんな色は映らない。感情の色はただ静かに、今はただ静のまま、クールな頭を維持して状況を俯瞰で考え続けている

 

 

「あなた、さっき図鑑がどうのって言ってたわね……知っているのかしら、生き物のこと」

 

 

「それは……その、まあ読んだ程度なら」

 

 

「そう、ならまずはそこからね……きかせてくれないかしら?」

 

 

「??」

 

 

 戸惑うベル、しかし徐倫は真剣そのものだ

 

 

「一つ、確かなことはある。あれは、実際に存在する生き物、あくまで生物の範囲内で異常な成長を遂げている。クモのことを知れば、何か突破口のヒントが得られる……だから、ベル」

 

 

「……ッ」

 

 

 向かい合う距離、頭をあげたベルの額にそっと徐倫は指先を置いた。前髪を掻き分け、瞳を見て、柔和に笑みを浮かべてみせる

 

 

「大丈夫、この言葉は気休めじゃない。あなたは、まだ絶望する状況にない……私が付いている、私があなたを守る」

 

 

「!」 

 

 

「希望はあるわ。まだ暗闇なんかじゃあない……道はかすかでもいい、それでうまくいく。どうしてかしら、こうやって励ましたのは一度だけじゃない。そんな気がするわ」

 

 

 

「……」

 

 語り掛ける言葉がベルを包む。少なくとも、徐倫は未だ暗闇を見ていないとベルは知った

 

 わずかでもいい、考えがあるなら吐き出してしまえと

 

 

 

……そうだ、そうだよね

 

 

 

 状況は依然未定、ここからさきどうなるか、神さまでもなければまして預言者ですらないのだからわかるはずがない。だが、希望を持つというのなら、ほんの少しだが状況は変わる。変えられるのだ

 

 

「……励まされてばっかりだ。本当に、情けない」

 

「いいのよ、情けなくて。最後に勝てばいい、ルーレットだって倍々にかけ続ければいつかは大勝、負けた分も取り戻せる。でも、どうせなら一発でジャックポッドよ。大当たりでケツを蹴り上げてやりなさいッ」

 

「……はいッ」

 

 

 

 鋭気は十分、希望をもって暗闇を這い出る準備は整った。

 

 

 曇天の空、月明かりがクモに飲まれ、深き闇の中怪物たちは牙を砥ぐ。光の無い、しかし二人ははるか上を見る

 

 

 暗闇の荒野をさまよいながらも、二人は希望の光を見失わない。

 

 

 空条徐倫、ベル・クラネル、二人は星を見続けている。

 

 

 

 

>>to be continued

 

 

 




以上、今回は説明多めで少し退屈でしたかな?そのせいかベルと徐倫の描写が妙に濃くなってしまった。趣味で書いてしまった、おねショタにするつもりはそこまでなかったんです信じてください、エンポリオ×徐倫大好き


次回、オリジナルスタンドをストーンフリーでブッ倒します。早めに投稿できたらいいなぁ

 
感想・評価等あればよろしくお願いします。それでは、また次回で

 
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