ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない 作:37級建築士
スタンドバトルが終わってもまだ一難、ベル君の試練は続きます。乗り越えて成長せねば
徐倫が激しい戦いを繰り広げる一方で、ベルは一人密かに村を離れていた。
別行動、スタンド使い本体を探す。ベル自身の目撃情報がある上、また土地勘もあるベルには男を探し出せる自信があった
この地に生まれ、人生の大半を今もなお費やしている場所。風のよく吹くところも、道を転がる石の記憶も、何もかもが鮮明に、特に今は過去のすべてがキラキラとまばゆく記憶に新しい
使われなかくなった廃村の地域、大人たちに危ないから行くなと言われても守らず入り探検をした場所、きれい好きな村では見られない、虫や草花が好き勝手に繁殖する絶好の遊び場
幼い、幼いころのあどけない思い出、それらすべてがベルの味方になっている
「————……ッ」
息を殺し、音の立たない地面の歩き方を続ける。子供同士で遊ぶときに得た、鬼から見つからない歩き方
土地のあらゆる記憶、築き上げた経験で裏付けられた実感のある記憶、すべてがベルの味方だ。
それは、背中を後押しする。ベルにとって、経験したことのない初めての体験、それにこの実感のある記憶は味方をしてしまっている
本来であれば、そんなことは夢にも思わない。そう、仮に人を殺すという行為において、人をとどめる二つのストッパーがあるゆえに、人は容易に人を殺せない
一つは感情、そして困難。人には罪を犯したくないという感情の安全装置がある。そして、殺人という自らも殺される可能性のある行為に人は困難を覚える。できない故にあきらめがつく
しかし、今のベルはその二つがない。感情のブレーキ、それはたった今も徐々にヒビが生じている
……殺された、みんな、皆が、だッ
復讐、それもたった一人ではない。村にいたのは大人子供老人含めて33人、腹の中にいたであろう生命も含めれば合わせて36、36人の魂と悪人一人の魂、それは比べるまでもない
重い、重い責任感がベルには感じられた。残された自分に、今復讐の機会があるということ
そして、手段も問題ない。この廃村はベルの実感のある記憶が働く場所。できるのだ、得意であったのだ
音もなく、風のごとく忍び寄り、空気より軽い手の動きが逃げ隠れるものを捕まえる。
困難はストッパーになるもの、だが軽い困難はむしろ挑発だ。できないのか、やれないのか、試すような程度だけでは人をあおり誘導する。
結界、今のベルの前にあるべくしてそろった材料、変わるきっかけはさながら試練のように、ベルという少年に冷静な語り掛けで示すのだ。
今殺すか、見逃すか、因果が定めて作りあげた選択肢、選び決めた先にあるもの、それが運命というものであるというのなら
〇
「…………ァ、がっ」
液体、手のひらに落ちて地面に飛び散った。男は一瞬だけそれが何か理解できなかった
スタンドのダメージ、それは本人にも返ってくるのが常識、故に細分化されたスタンドの一部がやられ消えても、それは軽い、ほんの皮を切る程度の痛みでしかたかった
だが、こと最後の一匹だけにおいては違った。成長を重ね続け、最高に大きくなったがゆえに、スタンドの一部も肥大化した。男は知らなかった、寄生したテイラースウィフトの一部もまた宿主と同じ、成長は比例する。最初の食われた数パーセントが、成長を得て70パーセントほど体積を得てしまった。故に、ダメージはかなり重くのしかかった
致命傷、100であれば当然消沈してもおかしくない。だが、100に至らないのこり30,それが男を生かした
「が、くそ…………やられた、か、だがまだ生きているッ 死んでない、ぞ……ぽ、ポーションを飲む力も残っている」
独り言つる言葉、廃屋の中の家財を椅子にして、男は必死に意識をつなぎとめている。ポーチから取り出したポーション瓶、半ば残るそれを男は一息に飲み干した
傷は癒える。そうなれば、また男の戦力は増やせる。
「まだ、だ……まだ、俺は終わってないッ……だが、もう後はない、二度目だッ 俺はいま、二度目なんだッ」
「……あの、お方に頂いたッ 運命を克服する、三つの機会!! 二つ、もう二つ使ってしまったッ!? だから、俺は引き返せないんだよぉおおおッ!!!!」
月明かりを灯さない曇天の夜、男の言葉が不気味に響き渡る。夜の風が並木をゆすり、ぞうぞうと人ならぬ不気味な音が精神を逆なでする
男の感じている不安、追い詰められた現状、それが幸いしたのだ。
「はぁ、はあぁ……くそ、くそったれ」
荒く息を繰り返す、膝に手を置き体を起こした。
窓から入る風、夜の不気味さの音を乗せた黒い風、それが今男の体に吹きかけられた
…………………————————ッ————
「!??」
男の目が見開いた。風に運ばれたにおい、それは嗅いだことのあるにおい
男は知っていた。過去に何度も自ら嗅いだが故に、人にあらざる外道の道を突き進んだがゆえに、気づいてしまった
……人の焼けた臭いに混じっているが、これは子供の匂い、それも生きているッ
……感じる、感じるぞ
冷えつく肌、不安の汗がさぁっと引いて、そして冷酷な己を深く自覚した
「……ッ」
……勘違い、ではない。この感覚、こいつは信用できる
……実感のある記憶、それが証明してくれたッ
気配、家屋の外にベルがいることを男は悟った。そして、男は窮地を覚えた
男は冒険者、武器もある。だが、背中のステータスに効果はない。男の恩恵は、7年前より失われたままであった
力を持たない、故に手に入れたスタンド能力。だが、そのスタンドもこの状況下では意味をなさない
「……————ッ!???!?」
……やるしかない、のか……や、やれるのか、俺にッ!!
短剣を持つ、しかし体にはダメージも残ったまま、その上前提としてまともな戦いもできない老いた体でもある。故に、沸き起こる自信はどこにもない。男は、凡人であった
逆境をはねのける意思もなく、天運もなく、故にまっすぐな道をあきらめた。男の実感のある記憶が、さらに裏付けしている。
この剣は、果たして若い少年を前に使えるのか
闇討ち、だまし、まっとうな殺し合いをしていない自分に、果たして正面で人を殺せるか
「…………ァ————ッ」
困難、それがストッパーになる。越えられないと判断した困難に対し、自分は逃げてきた。男は困難を避けた
仕方ないと、頭で割り切った。だから、故に使わざるを得なかった
……くそったれ、やるしかないのかッ!!??
状況を打開するすべ、困難を軽減させる外の手段
二度目、男が自ら言った言葉。それはオラリオにてとある人物より言い聞かされた重要な言葉。その人物よりもらい受けたモノ
スタンド能力を封じ込めたディスク、そして手帳
忠告を受けて開くまいとここに誓った三度目
……や、やる、やるしかないッ……か、覚悟を
困難から逃げる、困難を避ける、避けた道を進み続けたが故の、暗くおぞましい覚悟の闇、男は手帳を開いた。
……道は、見えたッ 三度目、やってしまった
「やるしかないッ あぁ、やるしかないんだッ」
声に出して奮起、するとすぐに家屋の外で音が響く
すかさず、男は動いた。決して軽やかではない足取り、だが男は確信をもって踏み出したのだ
投げ捨てた手帳、男が開くことを躊躇したそれは開いたまま、床に落ちている。不気味に、あるだけでそこに異様な気配を生む一冊の手帳
記された文字、それは二節
文字は淡く光を持っている。今にも消え入りそうな淡い光、瞬くこと数回
手帳は何かの意思に従ってか、そのページを、存在そのものを、かすかな粒子となして消えていく
霞のごとく、消え去っていく手帳、ただそこに一切れ、手帳が消えた代わりに花弁が一枚ぽつんとあった
蓮華の花、涅槃のかなたに咲き誇る花、その花びらが一枚、風に揺られ、宙を舞った
>> to be continued
天国に至る道、ただし今作では少し違った解釈。だけどもストーンオーシャンのクロスオーバーらしい原作改編を目指したい。
次回、泣き虫ベルくんの成長が見られるかも。
投稿はまた明日の夜に、お楽しみに