ベルと徐倫の奇妙な冒険、ストーンオーシャンは終わらない   作:37級建築士

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予定通り投稿、ようやく書きたいシーンにたどり着きました。

今回は結構長め、激しい展開もこれにて終局。ジョジョ×ダンまちのクロスオーバー作品としてこの方向でいいやら、お気に召していただけたなら幸い。それではどうぞ


Disc.09~涅槃を見るモノ

 

 

 

 

 ナイフを持つ手、その感覚だけがやけに生々しい

 

 

 

 

「……ッ」

 

 ベルは感じている。壁一枚隔てた先にいる男の息吹を、まだ息のある悪の面影を

 

 手には裁きを下す刃、結果的に自分は執行人になってしまっている。そして、目の前には選択肢がある

 

 執行者になるか、このまま傍観者でいるか

 

 

……できるか、できないかじゃあない

 

 

……下すか、引くかだ。決断の一歩手前、それが僕の立つ場所だ

 

 

 恨み、それは悲しみの感情の中にあるかもしれないもの。人を殺すほど恨んだこともない自分に、果たしてその感情は芽生えているのか、正しいのか

 

 

 

「…………」

 

 

 

 記憶はいまだ新しい。無力なまま、失う体験をしたことは否定しない。現実に起こった事だと、起きればすべて嘘で終わる、夢の中でもないと

 

 

 

……リンダおばさん、僕にパンを売ってくれた

 

 

 

……ロビーナさん、虫を殺して遊んでいた僕を叱ってくれた

 

 

 

……ガディムおじさん、鍬の使い方を教えてくれた

 

 

 

……ロバート、ディム、クレート、リックス、チャック、ベイカー、エイダ、リクソン、ケイリー、バット、ローディス、フィアラー、ネス、イズハ、カーク、アンジェ、ナルビ、ソラン、イグティナ、ロレンツ、ビスティ、ゴートン、オスカー、ランディ、サレイナ、メリード、ウクルス、コルタナ、ヴァイオレット、チャックソン

 

 

……みんな、あの村で一緒に、生きてきたッ

 

 

 

 笑顔も、泣き顔も、怒った顔も、全部が記憶にある

 

 明日の予定だってあった、これから先に続く未来もあった

 

 奪われた未来、そんな結末に正しい理由はない。全ては理不尽に、何もわからないままに

 

 

 

……やるしかない、やるしかないのかッ

 

 

 

 たった二つの岐路、しかしその先にすべてが注がれる。あっちを選んでいれば、もしあそこで踏みとどまれば、進んでいれば、そんな後悔に意味はない

 

 運命を満たす己という存在、注げばすべて零れ落ちていく。受け皿に満たされれば、もうそこで蓋はされるのだ

 

 

 

 

 

……決断、しかないッ

 

 

 

 

 自信を持つ。決断に移るだけの意思を、自信という肯定で背中を押す

 

 自身、それは間違いなくある。決断には至れる

 

 

 

 

……そうだ、僕にはある

 

 

 

 

……くれた、あの人が僕に

 

 

 

 

 

「勇気を…………————————ッ!?」

 

 

 

 

 音、思考の海に落ちた意識が一瞬で浮上した。身構えるベル、右手に持ったナイフを構え

 

 ゆっくりと近づく、先には音のなった場所

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 風が吹く、ごうごうと不穏な気持ちをあおる嫌な風が

 

 光の薄い、わずかに目を凝らしてどうにか、そんな光のない闇の中

 

 遠く、村の炎の光でかすかに見える程度の闇、慎重に音を立てず、ベルは足を踏み出す

 

 ことは慎重に運び出すさなか、だがしかし

 

 

 

 

……カツン

 

 

 

 

「!」

 

 

 音がした。明確な音、何かが落ちた音、少し高い位置に感じた。だが、その音よりも目を疑う光景がベルの前に映った

 

 

「……やぁ」

 

 

「!??」

 

 

 身構えた。ナイフを前に突き出して、不気味さにおびえすくまないように武器を前に突き付けた

 

 光、それは突然として現れた。月の明かり、曇天の空の隙間がいきなり目の前を照らして、そしておぞましい血だらけの男が眼前に現れた

 

 

 

 

 

「……降参」

 

 

 

「な、なにを言って」

 

 

 

「抵抗しない、そう言ったんだ……だ、だいじょうぶ、だから」

 

 

 

 

 不気味に笑い、そう語りかける。当然信用性はない、ベルは一定の距離を開けて、ナイフを突きつける

 

 確かに、男には武器はない。傷だらけの体で、降参するというのもうなずける姿

 

 

 

……けど、でもこの人は

 

 

 

 抱いた思い、憤りや悲しみ、混濁とした感情が腑に落ちないと叫んでいる。

 

 

 

「手を、だして……そ、その手、握ったままじゃあないですか」

 

 

 

「…………ぁ」

 

 

 

「て、手を開けろぉおーーッ!!」

 

 

 

 感情のまま、ベルは叫びナイフで脅す。そういう切っ先に意識を向けて、いつでもその先を前に押し出せるように

 

 

……ように、そうすれば

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

 人を殺す、その選択肢が目の前に近づいている。実感は、ベルをあとずさりさせた

 

 

 

「……——ッ」

 

 

 

…………ザッ

 

 

 

 

「!?」

 

 

 瞬間、ベルの見せた隙、男はすぐさに踏み込んできた

 

 下げた両手を前に、ベルにつかみかかろうとして、だがベルも当然あとずさり逃げる。距離を開き、捕まるまいと

 

 二人の間合い、それは逃げれる間合い。奇襲は躱され、何も起こらない

 

 

 はずだった。それは、確かに正常な運命のままであったのなら

 

 

 

 

 

 

…………カラン

 

 

 

 

「「!」」

 

 

 

 それは奇跡的に、男がむやみやたらに投げた短剣と石

 

 屋根に乗り、つい会話の終わる今まで動かず傾斜の中腹でとどまっていたはず、だがそれは落ちて、自然なまでの軌道で男の手のひらに持ち手が触れた

 

 

「……ッ」

 

 逃げる、その選択肢を選ぶ。しかし、ベルの左足、引いた足の着地点、そこに違和感のある感触があった

 

 時を同じくして、男が投げた石、そこにベルはかかとを置いた。まるで吸い込まれるように、そうなるべくしてなったかのように、足は躓き、痛みで逃げの一手が遅れた

 

 

 

「————ッ!?」

 

 

 刃が迫る。すでに間合いは詰まっている

 

 右手のナイフ、持ち手の感覚は生々しい。突き付ける剣に対して、こちらもがら空きの胴が狙える形

 

 決断は、刹那の領域に至った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ザッザ

 

 

 

……ザ、ザザ

 

 

 

 

「……まだ、まだたどり着かない。どこまで行ったの、ベル!!」

 

 

 

 血が滴る。傷はまだ言えておらず、糸で縫い合わせ応急処置のみの体を押して痛々しくも突き進む徐倫、彼女の持つたいまつがその姿を闇夜でも照らしている。

 

 戦いは終えた。そして彼女は予定通り合流を図ろうとしている

 

 先に進んだベルが、敵本体の居場所を探さんとしてくれている

 

 それは必要なこと、村に置けば被害に巻き込まれる故に、そして敵スタンド使いを万一にも逃がさないために、それは必要な処置

 

 だが、そこにある危険、起こりうるリスクも承知。徐倫は悩み、しかしベルの言葉をその時は信じて迷いなく道を分かれた

 

 だが、戦闘が終わった今、今だからこそこの判断に信用がおけなくなってきた。

 

 起こりうる可能性、それは

 

 

 

……復讐、あの子の中にある感情が暴発すること

 

 

 

……もしも、スタンド使いにダメージが入れば、使い手にそもそも戦闘能力が欠如していたなら

 

 

 

 

「もしも、あの子の手で……敵を殺せる状況にあるのならッ!!」

 

 

 

 

 状況は依然進行中、戦いは辛くも勝利に終えたが、結末を仕損じてしまえば

 

 

 

「意味はない、失ってなお失い続けるッ 感情のまま、今決断してはダメだッ!! 私にはわかる、ここで下す復讐の決意は、決して止めないといけないッ!!!」

 

 

 

 

 不思議と、徐倫は自身の言葉に確信を持っていた。それは、かつて見て知って経験してきたような、実感のある裏付けに思えてくる

 

 復讐、最後の最後にある選択肢であるなら、その復讐に進むべき未来があるのなら

 

 

 

……ベルの未来、出会って間もない、知らないことばかりなあの子の未来

 

 

……けど、これだけはわかる。今あの子に、決断をさせてはいけない、それは決して、超えてはいけない困難だッ

 

 

 

 

 

 

 走る。傷が開くのも意に介さず、夜の森を駆け抜ける

 

 人の歩いた痕跡を追って、最短で突っ走り続けて、たどり着く先

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 見えた。何かの名残なのか、無残な形で残った石積みの壁、それに手をかけ一息に上った

 

 松明を上に、闇を照らし出す。暗く、一切の光のない夜、灯が照らし出す廃村の光景

 

 目を凝らし、そして見つけた。

 

 

 

「……ベルッ」

 

 

 

 照らした先、そこにはベルがいた。だが、その姿は、二人

 

 そう、倒れているのだ。ベルの手には火の光を反射しキラリと光る獲物、まるでことを終えたかのように、そこには光景が映ってしまっているのだ

 

 

 

「ベル、やったのか……決断をしてしまったのかッ」

 

 

 

 

 駆け寄る、急ぎ近づき、そして立ち止まった

 

 近く、近距離で照らしてようやく見えた。ベルは、涙を流していた

 

 濡れた刃を持ったまま、ずっとその場で立ちすくんでいた

 

 

 

「ベル、あなたッ」

 

 

 

 

 言葉、名を呼ばれようやくベルは振り向いた。徐倫の顔を見たベル、瞬間ため込んであふれかえっていた目は、決壊をしたかごとく液体を吐き出した

 

 

 

「徐倫、さん、じょりぃんざん…………ぁ、ああぁ、あ”ーーーーッ!???・」

 

「!」

 

 飛びつき、ベルは嗚咽しながら号泣した。とどまるところを知らずあふれかえる感情の放出

 

 14歳、ベルはずっと耐えていた。事件が起きた瞬間より、そこにはもしや祖父を亡くした時の悲しみも込められていたのだろうか

 

 ずっと、ずっとこらえてきた涙が、14のまだ幼く青い心で、深く重い悲劇に飲まれてもずっと立て来たがゆえに、それは当然の帰結

 

 赤子のように泣きじゃくる、そんなベルを、徐倫は否定しない

 

 

「……頑張ったのね、ベル」

 

 

 

「ひぐ、ぐすっ……なんで、なんでみんなが、死ぬなんて嫌だッ!!誰も死んでほしくない、生きていてよぉ……どうして、なんでッ」

 

 

 

 

「そうね、そのとおりよ……こんなこと、起きていいはずがない。あなたは正しい、正しく怒っているわ、悲しんでもいるわ」

 

 

 

 

 胸に抱いて、涙にぬれて熱くなるベルの顔を、徐倫は優しく包み込む。異性として、年上として、自分の持つ母性が少しでも癒しになればと、徐倫は優しくベルを包む

 

 決断した。ベルは確かに、困難を超えて決断を果たした。運命の先を見た

 

 だが、選んだ道は、徐倫の案じた最悪にあらず

 

 故に、今はそれを褒める。優しく慰め、そして肯定する

 

 

 

「よく、決意したわ……殺さなかったのね、ベル」

 

 

 

「……ぅ、グス、はぃ……そう、しました。ぼく、えらばなかった、復讐は、ダメだって、決めたんです」

 

 

 

「そう、そうなのね……」

 

 

 

 手を放し、地に落ちた明かりが照らす先、そこには力なくうずくまる男が一人

 

 

 

 

 

 

 

「……なぜ、どうして、どうして殺せなかったッなんでだああああああッ!!!」

 

 

「殺せるはずだった、その未来を示してくれたッ……なのに、違ったッ!?」

 

 

 

「俺を殺すお前をよぉ、返り討ちにできる運命を……あの手帳は示してくれるはずだったのによぉ……どうして予言は外れたんだよぉおおッ!!?!?」

 

 嘆き慟哭に狂う男、理解が及ばない徐倫

 

 ベルを抱きかかえたまま距離を置く。胸にうつむいたベルが、ゆっくりと顔を見せた

 

「……この男、何を言っている?」

 

「わかりません、でも……この人、明らかに不可解な行動をしてました。スタンド能力、じゃないですか?」

 

「そんな、そんなこと……お前、他にも仲間がいるのかッ!!」

 

「ぅぐぅうぅ……ぁ、ああぁあッ!!???」

 

「……駄目ね、話にならない」

 

 警戒をしつつ、男から目を離さない。しかし、勘の域だが徐倫にはこの男に味方はいないと感じた

 

 この男の嘆き叫ぶ姿に、誰かが助けてくれるという可能性は見いだせなかった。矮小な男、ここで何も達成せず、ただ凡庸なままに終わる、そんな末路が相応しい男だと、そう判断できてしまう

 

 

 

 

「スタンド、予言をもたらすスタンドがいるのね……それに、いま言った言葉」

 

 

 叫んだ言葉には確かに、示すなどと、ベルを返り討ちにできる未来を知ったと男は言った。

 

 すでに、もう証拠はないが、男の持っていた手帳には二節文章が記されていた

 

 

 

……路傍の石、錆びた短剣、二つを手に、そして天高く捨て去る

 

 

 

……戦意を捨て、無抵抗を示せ

 

 

 

 男は信じ、その言葉の通りに従った。結果、男はベルの不意を突き刃を打ち立てる未来を得た。はずだった

 

 

 

 

 

「……予言、あなたの言う言葉を僕は、信じます」

 

 

「!」

 

 

 理解ができない、何故を繰り返し悶える男にそっとベルは語り掛けた。一瞬、徐倫は前に踏み出るベルを止めようとしたが、その手は出さず納めた。ベルの目に、強い覚悟を感じた。危惧するようなことは無いと悟ったのか

 

 

 

 

「……きっと、あのまま僕が間違った決断をしていたら、結末は違った……でも、でもそうならなかった、だって、僕は……左手を、使ったから

 

 

「右手に、護身用のナイフを持ってた……考えた、復讐で殺すこと……でも、選ばなかったッ だって、そうしたら、何もわからないッ 納得できないまま、終わってしまうからッ」

 

 

「……だから、殺さなかったッ」

 

 

 強く、拳を握る。平常心を保とうとするが、やはり感情は御しきれない。ベルの声に熱がこもる

 

 

 

「ぼく、選んだッ……この男を殺さないで、法で裁くことをッ 正しくない行いをした相手だからこそ、僕は正しく罰を与えたいッ……決断を下す勇気、それは徐倫さんがくれたから」

 

 

 

 赤くはらした目で、ベルは男に強く言葉を放つ

 

 覚悟を心に抱いて、真に選んだ道の正しさを、この場で証明せんとした

 

 

 

「……違うと、思ったんだ。徐倫さんがくれた勇気、それは困難を超えるための……けど、何もかもをあきらめて、感情のままに復讐の道を選ぶために、その勇気を使ってはいけないッ」

 

 

「勇気は、たった二つの道を選ぶためじゃあなく、より困難な三つ目の道へと突き進むためにあるべきなんだッ!!!」

 

 

「納得は、何事よりも優先されるッ! お前の罰はそれから、だから今じゃあない……」

 

 

 

 まくしたてる言葉、男はゆっくりと面を上げる。耳に届いるだろう言葉、しかし男は道理を得ないといった感じだ。

 

 男の中で、それは確定した未来だったはず。だが、覆ってしまった、それが理解できなかった

 

 

 

「もし、あのまま右手のナイフを使ってたら……ナイフであなたを殺すことにこだわってたら、僕は死んでいた、かもしれない……これは、間違いないことだ」

 

 

 

「な、なら……どうして」

 

 

 

「……これです」

 

 

 おもむろに、ベルは懐から取り出したものを見せた。それは、表面がデコボコとしていて、しかし一部分だけが欠けていて光沢のある中身が見えていた

 

 手荷物は一枚の円盤、そして取り出したことでか表面のヒビが増えてぼろぼろと石がはがれていく。その手に持つもの、見た瞬間に二人の目が見開いた

 

 

「「!?」」

 

 

「これが何かは知らない、でも何はともあれ僕は助けられた。あの時、ナイフを使わずに、利き手じゃない左手で殴ろうとしたから、あなたの剣がこれに当たって命を逃れた。右のナイフを持ったまま突っ込んでいれば、僕はきっと生きていなかった。左腕を使ったから、腕をあげたことでこれがずり落ちて、剣を、剣の刺さる場所に偶然ぶつかることなんて無かったッ!!」

 

「な、なな……なんだよその理屈、それに、どと、どうして、それを」

 

「知らないと言ったッ とにかく、僕は選んだから助かったッ お前を殺さないで捕まえる、より困難な道を選んだからッ 正しい道に、徐倫お姉さんの勇気を使ったからッ だから僕は生きているッ!!」

 

「————ッ!?」

 

 告げた言葉、それがとどめになったのか男はついに敵意を消した

 

 感情の色を感じさせない顔、何度も消え入る声で否定の自問自答を繰り返す。もはや脅威はなく、これでようやく終わったのだと徐倫とベルは察したのか

 

 

 

「……ベル、本当にお疲れ様。いいわ、あとは任しなさい」

 

「徐倫お姉さん…………ぁ、うっ……ぐ、あれ、また涙が、まだ、止まらないッ」

 

 ぶわっと、溢れかえる涙を何度もぬぐう。そんな姿に、徐輪はほっと笑みをこぼした

  

「いいんじゃないの、今は泣いていいわ」

 

「……うぅ、でも、情けない」

 

「情けなくなんかない。かっこよかったわ、ベル。あなた、すっっっごく……男の子って感じだったわ。だから、本当の本当にお疲れ様……後でいっぱい褒めてあげるから、さあ後は任してちょうだい」

 

 

 ベルを後ろに、徐倫は男のもとへ近づく。もはや逃げる意思もないのか、男はうつむいてぼそぼそと言葉を並べるのみ

 

 

 

「三度目、だめだった……助からない、もう終わりだ、平凡に終わる、嫌だぁ、ああぁ」

 

 

 

 

「……重症ね、まあいいわ。とにかく、拘束してそれから」 

 

 

 

 

 ストーンフリーを出す。男はスタンドが出たことで面を上げた。ひどくおびえた顔、声にならない悲鳴を上げて、男は何度も命を乞い願った

 

 

「殺しはしない、そうあの子が言ったわ……癪に障るけど、あんたは殺さない。再起不能になって、あとはあればだけど……刑務所にぶち込むだけ、それがあんたの待つ運命よ」

 

 

 

「ぁ、ああぁあああああッ!!!?!?」

 

 

 

「……しつこいわね、嘘はついてないってのに。あんた、ほんといいかげん「えじゃないおまえじゃないおまえジャナインダァアアッ!!??!!?!?」

 

 

「…………なに、誰に」

 

 

 

 さえぎる声、気でも狂ったと思いたいがその叫びは確かな怯え、明確な対象のある怯えだ

 

 

 

 徐倫は気づかなかった。だが、ベルはすでに気づいていた

 

 

 

 声に出さなかった。出したくても遅れた、それは、異様なまでに音もなく予兆もなく

 

 

 

 まるで、最初からそこにいたかのように、ベルと男の視界に映りこんでいた

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

 

 そして、今それが三人に

 

 

 

 

 

「「————ッ!??」」

 

 

 とっさに、距離をとって徐倫はベルを抱き男と、その突然に表れたナニカから距離を開けた。

 

 

 

 

「ひ、ひぁ……やめろ、やめてくれッ!!!」

 

 

『………………』

 

 

 

 しゃべっている、それは確かな言葉で、目線こそ合わせていないが男のほうに言葉を並べている。だが、それはベルたちには聞こえない

 

 姿は、人のようで人にあらざる姿。一見成人男性と相違ない体躯、しかしその腹部だけは生まれたての赤子のようにぼてっと膨らんで、だらりと下がる手足は病人のごとくか細い。しかして、その不気味さにはどこか神聖さが醸されている。

 

 僧のごとき袈裟を身に着け、露出した肌にはいくつもの蓮華の花が刻まれている

 

 音もなく表れた。それは紛れもなくスタンドだと、放つ異様なエネルギーで徐倫達は察した

 

 

「な、何者だッ スタンド、なのか!!」

 

 

 

『————————』

 

 

 反応を示した。焦点のない、作り物の眼球がいびつに視線を合わせ、ただそのまま止まった

 

 

 

 

「な、何者だッ! こ、答えろお――――ッ!!!??」

 

 

 

 

 構えを取った。ストーンフリーの射程圏内、徐倫の拳が、ストーンフリーのフルパワーの右ストレートと重なって振り切られる。

 

 衝突、だがその瞬間、頭部に触れただけで拳は糸に、元のバラバラな糸へとほどけていく

 

 

「な、なにいーーーーッ!!??」

 

 

 しかも、変化はそれだけにあらず。

 

 殴った拳は糸に、そして糸は緑の蔓になり、最後には

 

 

 

「!?……徐倫お姉さんッ」

 

 

 

「な、これはッ!??」

 

 

 スタンドの右腕が植物になった。そして、それは徐倫の身にも反映されていた。右腕、二の腕より先が植物のつたに、葉が生い茂り蕾が萌えて花が咲いた

 

 咲いた花は蓮華の花、二輪、三輪、数を咲かせてそこで成長は止まった

 

 

 

「な、人が植物になるなんて……け、ケガは」

 

 

「……無い、痛みも何も……なってしまった、あたしの右腕が、植物に!?」

 

 

 

 引く、ベルは徐倫の服を掴み、ナニカから距離を取る。

 

 スタンド、そう思うナニカは興味を失ったのか、また男の方を向いた。二人に背を向けた

 

 

 

『涅槃には、至らず……嘆かわしや』

 

 

 

「ひ、ひぃぁああぁあああああああッ!!?!?!?!?!?」

 

 

 

 

 叫ぶ、男は二足歩行も忘れて必死にその場を離れようとして、地に手を突きながら走らんとした。静かに、ただ見つめるだけの存在に対し異様なまでの恐れを見せる

 

 男は逃げた、逃げる男をナニカは追わず。ただ、その手を掲げた

 

 たったそれだけ、その所作だけで

 

 

 

 

 

 

「…………また、また花が」

 

 

「な、なんなの……いったい、これは、悪夢なの」

 

 

 

 

 

 花が咲いた。たくさんの綺麗な薄紅色が闇を照らす。

 

 男の姿はとうになく、咲き誇る蓮華が風に揺られて花弁を散らす。夜の闇に、淡い光を放って、レンゲは黒に溶け落ちる。

 

 消えていく。全て、夜の闇に

 

 

 

>> to be continued

 




 今回はここまで、やっと出せた黒幕的サムシング。ホワイトスネイクを出すべきかとも思ったのですが、悩み悩んで結界オリジナル路線で行くことにしました。お気に召したのなら幸い、ついでにお気に入り登録していただけるとハッピー。パンティもらったぐらいハッピーになれます。エルメェスは出すべきか、キッスが好きなんですよね個人的に

 
 
 次回、徐倫とベルとの会話パート、ようやく一話冒頭の旅立ちが近くなってきました。スティールボールラン風に言えば、ゼロがイチになる、今はその物語で、そしてゴールまであと少し。ストーンオーシャンも好きだけどねぇ、七部も好きだから随所にそのネタを入れてしまいたい。タグを変えるべきか

 長々と喋りました。失礼

 感想、評価などあればよろしくお願いします。予定では、明日にまた最新話を投稿しますので、それではまた



 



【情報提示】


スタンド名-「テイラースウィフト

<能力>

 他の生物を成長させる。蝶を模した女性型のスタンドを捕食させることで生物に寄生、生物はスタンドのパワーと異様な成長能力を得る。


スタンド名-「ニルヴァーナロータス」

<能力>

 願った運命にたどり着く道を示す。示した道に至らず刻限を過ぎたモノには罰が下る。

 たどり着く道は三度まで得られる。ただし、三度目を示した時点で残る刻限は大きく加速する。


 
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