ディアブロスプリキュア!   作:重要大事

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お待たせしました、イフリート回の後編です。
凶悪な力を持ったイフリートに立ち向かうリリス達、そして神林春人。
そして洗脳された人々はどういう対応をとるのか?!
そしてラストには、衝撃的な事実が明かされます!!


第25話:最後の審判!プリキュアVS炎の魔人!

第25話:最後の審判!プリキュアVS炎の魔人!

 

 

 

クリーチャー。

 

 それは、太古より続く人と天使、悪魔、堕天使の関わりの中で、その狭間より生まれた者達。

 何故それが生まれたのか、その真実を知るものは少ない。

 クリーチャーは天使、悪魔、堕天使との直接的な関わりを持たず、人間との関わりですら自ら関与するという事は稀有な話だった。

 輪廻の「理」から逸脱した彼らは、長い時の中で自らの出自とともに己自身という存在そのものを世界から秘匿し続けていた。

 多くの謎に包まれたクリーチャーだが、長い歴史の中で、天界の上層機関の調査で判明した事実が幾ばくかある。

 まず、クリーチャーという存在を形作る物質について。彼らを構成するのは、いずれも「負の質量」であり、既知の物理法則に捕らわれないその物質は、「エキゾチック物質」と呼ばれている。

 クリーチャーは、悪魔や天使、堕天使ですら持ちえないエキゾチック物質を大量に保有し、そこから生まれる未知の力を行使する事が出来る。

 また、クリーチャーにはもう一つ重要な共通点がある。彼らは生まれた直後より身体のどこかに〝666〟という数字が刻印される。この数字こそ、クリーチャーであるというアイデンティそのものだ。

 ヨハネの黙示録によると、この世界を四十二ヶ月もの間支配するとされる、巨大な獣が人々に刻む数字――それこそが〝666〟という数字であるとしている。

 ゆえに、人間達はこの数字の意味とともにクリーチャーを忌避し、同時に畏敬の念を強く抱くのである。

 

           ≡

 

天界 第七天 見えざる神の手・居城

 

「どうにも様相がおかしい」

「当初の計画には無い事象が起こっておるが……どういう事だね?」

「地上世界に天使を降臨させ、人間どもに天使、神への信仰心を取り戻させる事が計画の味噌だったが……」

「しかし今、予期せぬイレギュラーが発生している……我々の偉大なる実験に干渉する不確定要素は何か!?」

 見えざる神の手の上級天使たちは揃って困惑していた。

 地上世界に天使を降臨させたのは他ならぬ彼らだ。決して邪なる目的の為ではなく、純然たる布教活動の一種。『聖書の神』が不在の今、最早純粋な天使は増える事もままならなくなった。そして、地上世界で高度に発達した物質文明は人間たちの神への畏怖、存在そのものを忘却させた。

 ニーチェ曰く「神は死んだ」とあるが、まさに彼が言っていた事は正しかった。

 聖と魔のバランスが危ぶまれる状況で、見えざる神の手は大胆な手に打って出た。それが今回の『天使降臨作戦』だ。

 地上に強力な磁場を発生させ疑似的な天使を降臨させる事で、人類に天使を通じて神への尊い信仰心を取り戻す。そうする事によって聖なるものの力を高め、これから起こり得る邪悪なる者との戦いに備えようとしていた。

 しかしそんな折、イレギュラーが生じた。〝イフリート〟と称する謎の存在が天使降臨にかこつけて地上世界に干渉を始めたのだ。

 当初の計算には含まれていなかった、不確定要素によってもたらされた不測の事態。幹部たちが苦虫を踏み潰したような顔を浮かべていたそのとき――ひとりの来訪者がやってきた。

「アンタらの言う偉大な実験とやらは、まんまと奴らに利用されたって事だよ」

 城門が開かれると、おもむろに入場する人影に幹部の視線が集まる。

 カーペットの上をゆっくりと歩きながら、ふてぶてしい面構えをした男――コヘレトが、見えざる神の手の幹部たちに接見する。

「お初にお目にかかるかな? 洗礼教会本部から参ったコヘレトっつーもんだ。以後お見知りおきを」

「貴様……何のつもりだ?」

「下衆めが。ここがどういう場所なのか分かっておるのか!?」

「この狼藉者が! 神の裁きの名の下に天誅を下す!」

 呼んだ覚えも無いのに勝手に現れたコヘレトに対する幹部たちの反応は、当然ながら良くない。明らかなる嫌悪感を顔に出し、鋭い瞳で七つの柱の中心点に立つ彼を睨み付ける。

「おいおい、初対面の相手にそんなに敵意をぶつける事はないだろう! つーか、まさかとは思うがアンタら俺を疑ってるんじゃねぇだろうな。言っとくが俺は何もしてねぇ。やってるのは別の奴……――クリーチャーだよ!!」

「莫迦め。クリーチャー如きが我らの実験に干渉するなど!?」

「そういう風に足下を見ようとしねぇから、アンタらは連中の思う壺なんだよ。知ってるだろ……この世界には大昔から〝イフリート〟っつう異形の者がいて、奴らが秘かに新世界を創造しようとしていた事を。誰にも気づかれぬまま、クリーチャーに成りすまして長い間身を潜め機が熟するのをじっと待った。そして、アンタらが仕掛けた天使作戦をちゃっかり利用する事を思いついたのさ!!」

「イフリート……忌々しい限りだ」

「天に鎮座し、今は亡き神の代行を司る我らがあろう事か下等な存在でしかないクリーチャー擬きに利用されていたとは……!!」

 芳しくない実情に辟易する見えざる神の手を仰ぎ見ながら、コヘレトは彼らを憐れむように口にする。

「やれやれ。ホント醜いまでにプライドの高さは一丁前だな。ある種病気じゃないかってぐらいだ」

「黙れっ!! 貴様の事だ……我らにその事を伝えに来ただけでは無かろうに」

「考え過ぎだって。俺にはアンタらみたいな野心は無いものでね」

 その言葉を百パーセント信じられるかと問われれば、コヘレトは絶対に「ノー」と答えるに違いない。

 用件を終えると、幹部たちに背を向け城の外へ歩き出す。

「あ、そうだ」

 帰る直前になって、報告すべき事をもうひとつだけ思い出したコヘレトは、くるっと回れ右をした。

「ついでに警告しておこうか。あんまり足下見過ぎないでいると、近いうちに手酷いしっぺ返しを受けると思うぜ」

 等と言う意味深長な発言を残すと、コヘレトは城を立ち去った。

 何のつもりであのような言葉を述べたのかは不明だが、何故だか幹部たちは言い知れぬ畏怖の念を抱き、額には汗を滲ませた。

 

           *

 

東京都 中心部

 

 その頃、地上では預言者による新たな動きが見られていた。

『最後の審判の時が来たのです。聖なる炎がこの世の汚れを焼き尽くし、人類は滅びるのです!!』

 二度に渡る予告爆破を体験した人類は、すっかり預言者の言葉を信じ、激しく狼狽えている。公共の電波をジャックしてテレビ画面から人々の恐怖感情を助長する預言者の姿は、さながら恐怖の大魔王の出現を預言する現代のノストラダムスのようだ。

 為す術もない人類が恐怖に駆られ冷静な判断力を失っているこの瞬間を、預言者は心待ちにしていた。

 今こそ、大衆心理に働きかけるとき――預言者は口角をつり上げる。

『しかし、イフリートは偉大なる存在です。人類救済のチャンスを与えましょう……人類が生き残るためには、悪魔を滅ぼさなければなりません。悪魔を倒さなければ、人類は滅びてしまうのです!!』

 センセーショナルにプロパガンダを植え付ける。

 天使の人形や羽根を付けた人々は預言者にマインドコントロールされ、彼の言葉をあたかも信じ込む。

『門を、開けるのです! そして……イフリートの審判を受け入れるのです!!』

 

           *

 

同時刻――

黒薔薇町 悪原家

 

「イフリート……?」

「アラビア圏に伝わる魔人の一種だが、同時に異形の存在として扱われている。オレたちは以前にもそういった輩と戦っている」

「もしかして、イドラと同じクリーチャーって事……!」

 自宅のテレビ画面を通じて預言者の発言を聞いていたリリスたちは、この事件の黒幕がイフリートと呼ばれるクリーチャーの一種であると断定した。

 画面を注視していると、預言者が呪詛のように唱え始める。

『聞きなさい。この世に災いをもたらす悪魔の名は――――プリキュア!!』

「な!?」

「「「「「「「え(何)(なんですって)!!」」」」」」」

 預言者は言う。プリキュアこそ、悪魔であり災いの元凶であると。

 テレビを通じ聞いていたリリスたちは揃って愕然とする一方、マインドコントロールを受けた人々は預言者の言葉を疑いも無く信じ込む。

『唱えるのです! プリキュアこそ、人類の敵――悪魔なのです!』

「プリキュアは、悪魔!!」

「「「「「「悪魔! 悪魔! 悪魔! 悪魔! 悪魔! 悪魔!」」」」」」

 この瞬間、プリキュアは人類の敵として認識された。

 イフリートはこの世界を掌握する為に、人類の平和の為に戦うプリキュアを世界から孤立させる作戦に打って出た。

 大衆心理に働きかけ、人間を洗脳し、誰からの応援も受けられなくする――イフリートの戦略に抜かりは無かった。

 

 地上世界の終末が確実に始まろうとしている頃、春人は武者小路が運転する車で、とあるマンションへとやって来た。

 預言者と名乗る男が春人の部屋に現れた際、預言者は部屋に在った写真立てに手を触れていた。つまり、預言者は不覚にも指紋を残したのである。

 それに気づいた春人は警視庁のデータバンクに指紋を照合し、預言者の身元を特定する事に成功した。彼が自宅とするマンションの前までやって来ると、タブレット端末に表示された預言者に関する個人情報を確認する。

「『板橋満生』……か」

「その男の名なら聞いた事があります。十年前の地下鉄テロで解散したカルト教団の片割れのひとつ、『ひかりの使徒』の代表を務める男です」

「表向きは仏教哲学サークルの代表と名乗っているけど……所詮カルト教団の教えから何ひとつ脱していなかったという訳だ」

 今回の事件は、十年前のテロ事件と何らかの関わりを持つ人物が裏で糸を引いている事は間違いない。

 愛する母を死地へと追いやったテロリスト集団の元から脱して、新たな教団を組織し、異形の者『イフリート』を崇拝する事を全人類に強要する預言者――板橋満生の息の根を必ず止める為、春人は車から降り彼の部屋へと向かう事にした。

「春人様。本当におひとりで宜しいのでしょうか?」

 武者小路から向けられる懸念に、春人は柔らかい笑みを浮かべる。

「僕の事なら心配いらないよ。あんなテロリストなんかに、もう屈したりはしない。必ず奴のお縄を頂戴してみせるさ」

 固い決意が籠った言葉。

 それを聞いた武者小路は、春人を最後まで信じる事に徹しようと思った。

「――御武運を祈っております」

「行ってくるよ、爺や」

 正義を胸に、春人はいざ――敵陣へと向かって歩き出した。

 

 板橋満生が住むマンションの自室前。

 部屋の表札を見ると、ローマ字で『ITAHASHI』と書かれている。

 この中に板橋がいるのか……春人は緊張の面持ちでインターフォンを押した。

 ピンポーン……。

 春人は高校生探偵であって決して警察官ではない。よって彼には板橋を逮捕する権限は無い。だが板橋が異形の者であるイフリートと深く関わっているのなら、プリキュア対策課の仕事として彼を任意同行する必要がある。

 ピンポーン……。ピンポーン……。

 何度インターフォンを押しても、板橋からの応答はない。

 試しにドアノブを手に回してみると……ガタッっ、と扉が開いた。

 施錠がされていない事を不審に思いつつ、春人は不法侵入を覚悟で部屋の中へと入っていく。

 中は驚くほど生活感の感じられない殺風景な部屋だった。まるで最初から人が住んでいなかったと思うほどに、中は必要最低限の家財道具しか置いていない。

 奇妙とは思いつつ部屋を探っていると、リビングに置いてあるデスクトップパソコンに目が入った。

 春人はパソコンを起動させると、コンソールを素早く操作し、この部屋のセキュリティ・システムにアクセスする。

〈セキュリティ・システムへのアクセスを行います。音声入力をお願いします〉

「アクセス。警視庁公安部特別分室、コード0026CGG、神林春人」

 ピピピピッ……。

〈ようこそ、セキュリティ・システムへ〉

「ここの住人の行方を知りたい」

 端的に板橋の居場所についてを問い質すと、コンピューターから返ってきた答えは意外な事実だった。

〈この部屋の住人『板橋満生』のデータは、三カ月間更新されていません〉

「……更新されていない? それどういう事だい……?」

〈『板橋満生』は、三カ月前に生命活動を停止しています〉

「な……っ!!」

 一瞬、冗談を言っているかと思った。

 コンピューター曰く部屋の住人兼イフリートの預言者である板橋満生は、既に死亡していると言うのだ。

 だとしたら、公共の電波を通じてセンセーショナルに呼びかけていたあの男はどこの誰で、春人の前に現れたあの男は何者なのか。

 思考がまるで追いつかず、軽いパニック状態になりかけたそのとき。

 気配を感じた春人がバリアブルバレット片手に後ろへ振り返ると、モワワワワとした人の形を体する赤い炎の揺らめきがあった。

「君が……イフリートとか言うふざけた輩かい?」

 異形の存在を前に、春人は銃を突き付けた状態から警戒心を露わに尋ねる。

 直後、イフリートは春人の右手目掛けて衝撃波を飛ばしてきた。衝撃波が直撃すると、春人の手の中の銃が床に落ちた。

 イフリートは何かを語る事はせず、態度として春人に衝撃波を連発する。

「ぐあああああ」

 そして、春人を壁に張り付けると超能力によってその場に封じ込める。

「どうして僕なんだ……!?」

 捕まった春人の口から出た問い掛けに、イフリートは答える事なく姿を消した。

 代わりにイフリートの預言者――板橋満生が何の前触れも無く春人の前に現れ、真顔のままおもむろに述べる。

「――貴方が『アイツら』を認めようとするからですよ」

「『アイツら』だって?」

 壁に張り付けになった春人をまじまじと見つめ、板橋は語り続ける。

「イフリートは『アイツら』よりずっと前にこの地球(ほし)に来ていたのです。そして『アイツら』よりも前にこの世界を救おうとしていたのです」

 声こそ荒立てぬものの、板橋の『アイツら』に対する評価は否定的で、声色からは明確な怒りの感情が現れている。

「後から来た分際で好き勝手なマネをされてはたまらない。分かりますよね?」

 板橋は春人への理解を求める。

 張り付けにされ動きが制約される中、春人は眉に皺を寄せながら口にする。

「もしかして、君が言っているのは悪原リリスたちの事なのかい? 彼女は確かにプリキュアだが、悪魔でもある。彼女やその仲間たちは自らの信念に従って戦い、結果的にこの地上を守っている事に寄与しているだけだよ。例えプリキュアがこの世から姿を消しても、人間は君らみたいな侵略者に蹂躙されるほど弱い生き物じゃない。人類の敵は人類自らの手で排除する。僕はその為に今ここにいる。傲慢で卑劣で、人の命を毛ほどにも感じない君たち侵略者をこの手で必ず断罪する!!」

 春人が強い語気で板橋の姿を借りたクリーチャーに言い放った、次の瞬間。

 床に落ちていたSKバリアブルバレットの自動防衛システムが作動し、銃口部から多量の催涙ガスが放射された。

 部屋一帯に充満する催涙ガス。板橋は咄嗟に部屋の中から姿を消した。それと同時に春人を縛り付けていた超能力が解かれ、力なく床に落ちる。

「春人様っ!!」

 ちょうどそこへ、頃合いを見計らって武者小路が駆けつけた。

「大丈夫ですか!?」

「爺や……ありがとう……まったく酷い目に遭ったよ」

 二人がそんなやり取りをしていたその時、

『最後の預言を語ろう………!』

 何処からともなく、板橋の声が空気に溶け込み、二人の耳に入り込んでくる。

「『最後』だって? どういう意味だい?」

『〝貴方たちが生きて聞くことのできる最後の〟と言う意味だよ。間もなくこの地にイフリートの神が降り立つ。門が開かれたそのとき、地上に新たな秩序が生まれるのだっ!!』

「寝ぼけるのも大概にしなよ。この国に警察以外の秩序なんていらない」

「春人様、急ぎましょう」

 板橋が何かを始める前に食い止めなければ――春人と武者小路はマンションを出ると、直ちに車を発進させ行動を開始した。

 

           *

 

同時刻――

東京都 中心部

 

『イフリートを迎え入れなさい! 門を開きなさい!!』

 テレビ電波に乗せて、以前春人を襲撃したイフリートの巫女がマインドコントロールされた人々を鼓吹する。

 扇動された人々は、巫女の言葉に従い虚ろな顔を浮かべながら両の手を挙げ、「おおっ」という声を発する。多くの人々から得られるパワーを用いる事で、巫女はその力を有用に使う。

 しばらくすると、大空に厚い暗雲が出現する。

 瞬く間に東京の空を覆い尽くすほどにまで拡散、膨張した雲の隙間から巨大な扉が姿を現した。

 不気味な紫色の蒸気を噴き出すそれは、イフリートがこの作戦の要としているある重要な物で、固く閉ざされた門がギギギ……と、少しだけ開かれる。

 事態の変容を察知したリリスたちが現場に駆けつけると、巨大な門が都心のど真ん中に堂々と浮かび上がっていた。

「ハヒ!? あの不気味なものは何ですか!?」

「信じられないけど……あれは『冥界の門』よ!! あれが開けば、冥界の魔物が人間界に溢れ出すわ!」

「それだけじゃない。冥界には瘴気が満ちている。瘴気はこの世のあらゆる生物にとって猛毒だ。それが蔓延したら……この世は破滅する!!」

「未だ嘗て経験した事のない事態……現世と冥界の逆転現象……!!」

 ぞっとする背筋が凍る話だった。

 イフリートが都心に出現させたものこそ、悪の魂を持つ者が堕ちる場所とされる世界――『冥界』とを繋ぐ扉であり、それが開かれた時、人間界には冥界の瘴気とともに邪悪な魔物や凶悪なクリーチャーが一遍に溢れ出すのだ。

 余りにも恐ろしい話に、全員は息を飲み頭上の門を仰ぎ見る。

 やがて、眉間に皺を寄せ額から汗を噴き出すリリスは全員へ呼びかける。

「……連中の好き勝手にはさせない。みんな、イフリートの侵攻を全力で阻止するわよ。あの門を絶対に開けさせたりなんてしない!!」

「「「「「「「はい(ええ)(ああ)!!」」」」」」」

 

「ダークネスパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」

「ウィッチクラフトパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」

「シャイニングパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」

「バスター・チェンジ」

「独善滅ぼす暗黒の力! キュアベリアル!」

「紅に染まる明星の魔女! キュアウィッチ!」

「不浄を焼き払う聖なる光! キュアケルビム!」

「影に向かいて影を斬り、光に向かいて光を斬る。暗黒騎士バスターナイト」

「偽りの善幸を根絶やし!」

「邪な悪行を断罪する黒き力!」

「我ら、悪魔と魔女、暗黒騎士と天使のコラボレーション!!」

「「「「『ディアブロスプリキュア』!!」」」」

 

 かくして、ディアブロスプリキュアはチーム一丸となってイフリートによる侵略作戦の阻止に乗り出した。

 ドラゴン形態のレイの背中に乗って、都心の空に浮く巨大な冥界の門までひとっ飛び。門の足場へ降り立つ。

 一〇メートルを超えるそれは両開きの門で、左右から一体ずつ、冥界に生息する様々なクリーチャーや魔物が描かれている。

 ベリアルたちが門の中央を見据えると、扉の中央にある文字が彫られていた。

 〝この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ〟――イタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』地獄篇第三歌に登場する地獄の門と酷似していた。

 一刻の猶予もない。僅かに開いている扉を全員で閉めようとする。

「せーのっ!!」

「「「「「「おーえす!! おーえす!! おーえす!!」」」」」」

 掛け声により互いを鼓舞し合い、力いっぱい扉を閉めようとする。そんな彼らを地上から眺めるイフリートの預言者・板橋と巫女は……。

「イフリートに刃向う者は、報いを受けるがいい!!」

 板橋が言うと、フードを目深にかぶった巫女の手から衝撃波が放たれる。

「「「「ぐああああああ!!」」」」

「「「「だああああああ!!」」」」

 作業に集中していて外部からの攻撃に対する防御が疎かになっていたベリアルたちは、攻撃を受けると地上へ落とされた。

「君たちを待っていたのだよ、ディアブロスプリキュア!!」

 落下してきたベリアルたちへ板橋と巫女が複数の炎の揺らめき、イフリートの精神体を伴い近付いて来た。

「あいつは……!」

「預言者ですわ!!」

「君たちはこの世界(ほし)の守護神になるつもりかね!? おこがましいとは思わないか?」

 預言者は彼女たちを否定する様な言葉を浴びせる。それこそ、彼女たち『プリキュア』そのものに怒りを露わにするように……。

「君たちが聖なる光の使徒として、この地に現れるずっと前から……この世界(ほし)の愚かな生物達はイフリートの導きを待っていたのだよ!」

 言うと、預言者の男はベリアルたちを指差し語気強くして言う。

「君たちは招かれざる者なのだ!!」

「ふざけないでっ!! そっちこそ自分たちが『神』にでもなったつもりなの!?」

「あなた達に人間を裁く権利も、導く権利もありません!!」

 身勝手なのはどっちだと、ベリアルとウィッチは激昂し不遜で傲慢極まりないイフリートを厳しく非難する。

「ふふふ……愚かなる人間達の前で、無残な死に様を晒すがいいわ!!」

「見せてやろう、イフリートの力を! イフリートの怒りの姿をッ!!」

 

 ピキッ……ピキピキッ……ピキピキピキッ……。

 板橋と巫女の足元に突如亀裂が走った。

 刹那、地下を走るレイラインから強大なるレイエネルギーが沸き上がる。やがて生じた亀裂から炎の如く放出される。

 ベリアルたちが敵の攻撃に備え身構えると、灼熱の炎から姿を現したのは……。

《イフッ……!!》

 上半身が炎に包まれた、どこか悪魔を彷彿とさせる人の体を為す存在。これこそ、クリーチャーと化したイフリートの真の姿である。

「こいつが……イフリートの正体……!?」

「まさに炎の魔人ね……」

「オレたちに挑戦するつもりか……」

 プリキュアとイフリート、両者は市街地で距離を取って構え、出るタイミングを窺い牽制し合う。

 そして、ベリアルを筆頭にディアブロスプリキュアが攻撃を仕掛ける為に前に出た。

「「「はあああああああ!!」」」」

《イフッ! イフッイフッ!!》

 格闘スキルの高いベリアルとケルビムでイフリートに回し蹴りや正拳突きを繰り出すと、イフリートは二人の技を炎に包まれた体で防御する。

 直後、ベリアルの足首とケルビムの腕首をガシっと掴む。

《イフッッッ!!》

「「うわあああああ!!」」

 イフリートは両者を力いっぱい空高くへと投げ飛ばすが、投擲された二人は、なんとか体勢を整え着地に成功する。

「サンダーボルト!!」

「シュヴァルツ・エントリオール!!」

 接近戦では分が悪いと判断したウィッチとバスターナイトは、遠距離からの攻撃を仕掛ける。

 イフリートは飛来する攻撃を機敏な動きで回避。それと同時に掌(てのひら)に全身の炎を圧縮させたエネルギー光弾を形成、二人へと発射する。

「「うわああああ!!」」

 光弾の直撃を受けたウィッチとバスターナイトは忽ち体勢を崩した。

 イフリートは更にベリアルたちを追い込もうと考え、側転をしながら彼女たちへと接近――空手チョップや回し蹴りなどと言った技を喰らわせる。

「「「「ぐああああああああああ!!」」」」

 敵の激しい攻撃を受け流し切れず、ベリアルたちは近くにあるビルの壁面に激しく叩きつけられる。

《イフッ! イフフフ……ッッッ》

 イフ、イフ……そんな鳴き方をするイフリートは、ベリアルたちを嘲笑う。

 四人ながらイフリートを倒すどころか、弄ばれ窮地に立たされる。ディアブロスプリキュアは、何とかこの状況を打開しようと必死だった。

「やってくれるじゃない……そっちがその気ならこっちだって本気になってあげるわよ!!」

 言うと、ベリアルはビルの壁から離れグラーフリングを装備し、グラーフゲシュタルトへと変身する。

「レイエクスカリバー!!」

 使い魔が変身した剣を装備したベリアル。

 それを見たイフリートは、意外な行動を取った。おもむろに両腕をクロスさせたと思えば、全身に漲るレイエネルギーを滾らせ、力を解き放つ。

《イフ! イフっっ! イフっッ!!》

 グチャ……グチャ……、と言う音を立てながらイフリートの肉体が硬質化し始め、同時に体から噴き出る炎の勢いも一段と強くなり、両腕には鋭利なカッター状の武器が追加された。

「ハヒ!!」

「何ですって!?」

「体の構造が変化した……!!」

「こいつ、リリスちゃんに対抗して!!」

 イフリートはゲシュタルトチェンジしたベリアルに合わせて、体の能力を変化させた。瞬時にグラーフゲシュタルトがパワーに特化した力である事を見抜くと、同じ土俵に立つ為に自らの能力をパワータイプに対応させた。

 適応力のあるイフリートに困惑しながらも、ベリアルは平静を乱さぬ様落ち着きを保ちながら、剣を握りしめ――敵との距離を計算する。

 そしてタイミングを計ると、地面を強く蹴って飛び出した。

「ブレイズバーン!!」

 灼熱の炎を渦状にした超圧縮エネルギーが剣先から放たれた。

 これに対し、イフリートは両腕に装備されたカッターで炎ごと攻撃を切り裂き、まっすぐ向かって来るベリアルを圧倒的なパワーで弾き飛ばした。

「きゃあああああああ!!」

「「「リリス(ちゃん)!!」」」

 ゲシュタルトチェンジしたベリアルの力を容易に打ち破ったイフリートの力は、想像を絶するものだった。

 一人で立ち向かう事は自殺行為である事を否が応でも分からされた残りの三人はそれぞれが持つ最強の力を一気にぶつける事で、イフリートに対抗する作戦を即座に決め、実行に移す。

「ヴァルキリアフォーム!!」

「オファニムモード!!」

 ウィッチとケルビムの二人は強化変身リングの力を用いて、それぞれの強化形態『ヴァルキリアフォーム』と『オファニムモード』へと変身。二人のパートナーであるクラレンスとピットは主人の武器となる。

「ラプラス!!」

「あいよ、分かってるって!!」

 バスターナイトは強化変身能力こそ持たないが、ラプラスと合体する事で飛翔能力を高め、攻撃力をアップさせる。

 準備は整った。三人はイフリートの正面に回り込み、三地点同時攻撃を仕掛ける。

「デュナミス・ヴァルキリア!!」

「ホーリーアロー・乱れ撃ち!!」

「デモンズディザスター!!」

 聖なる光を帯びた斬撃に、同じく聖なる光を宿した複数の矢、そして邪悪な闇を駆逐する闇の力が魔剣の切っ先と魔盾の眼より放出される。

 光と闇、二つの力は絶妙の加減で混ざり合って巨大なエネルギーの塊となった。イフリートの全身が巨大に膨れ上がったエネルギーにすっぽりと呑みこまれる。

〈やったのでしょうか?〉

 レイがそう問いかけた直後、ベリアルは目を見開き驚愕する。

「ウソ……あり得ない!!」

 あれだけの高エネルギーを真面に受けながら、イフリートはその姿形を保っている。パワータイプに変身したという事もあり、変身前と比べて攻撃に対する能力も飛躍的に向上していたのだ。

《イフッ! ……イフフフッ!!》

 攻撃が無効化された事に終始呆気にとられるウィッチたちを例の如く嘲笑し、イフリートは怯む彼らの懐へ潜り込み、そして。

 ――バシュ! バシュ! バシュ!

「「「ぐああああああ!!」」」

 両腕のカッターで三人の急所へ一撃を叩きこんだ。この攻撃が決まると、三人は力を失い昏倒する。

「はるか!! サっ君!! テミス!!」

〈クラレンス!! ご婦人!! ピット!!〉

 いつも戦いを共にしてきた仲間が呆気なく倒されるという承服しがたい事実を前に、ベリアルとレイは驚愕しながら、彼らを手に掛けたイフリートへのどうしようもない怒りが湧き上がった。

 

 

 ――ドンッ!! ドンドン!!

《イフッッッッッッッッ……!》

 そのとき、イフリートの背中から突如火花が散った。

 誰かがイフリートを撃ったのだ。その誰かとは言うまでもない――セキュリティキーパーに変身した神林春人で、SKバリアブルバレットの銃口を向けていた。

「なるほど。君の方がよっぽど悪魔らしい姿をしているじゃないか」

「神林春人……!!」

「君たちもまだまだ詰めが甘いようだね。こんなテロリズムを促すバケモノを僕が見逃す筈ないだろう。君らもプリキュアの名を冠するなら、世界を守る戦士らしくもう少し粘ってくれないと」

 ――ドンッ!! ドンドン!!

 憎まれ口に近い事を語りながらセキュリティキーパーは銃弾をイフリートへと撃ち続け徐々に距離を詰め、空いている手にSKメタルシャフトを携え肉弾戦に持ちこんだ。

《イフッ!! イフイフッ!!》

 セキュリティキーパーから繰り出される殺気籠った攻撃にイフリートの方が若干押され気味になる。ベリアルたち以上に、セキュリティキーパーは自らを地上の正義だと称して人々の生活を脅かす目の前のクリーチャーを許せなかった。

 何としてでもこの怪物を断罪してやる。確固たる思いを胸に三天の怪物は銃と剣を巧みに操りイフリートを追い詰める。

《イフッ……!! イフッ!!》

 このままでは埒が明かない。イフリートはセキュリティキーパーの攻撃から逃れると、再び両腕をクロスさせ身体に吸収したレイエネルギーを滾らせる。

 すると、背中から炎から出来た二枚の翼が生えた。イフリートはその翼を用いて、空高く舞い上がる。

「悪原リリス、奴を逃がしてはダメだ!」

「言われなくても分かってるわよ!!」

 ベリアルは空を飛ぶことが出来ないセキュリティキーパーに代わって、イフリートを追いかける。

 悪魔の翼をめいっぱい広げ空中へと舞い上がるベリアルだが、イフリートの飛行速度の方が数段に早くとても距離を縮められない。

「これじゃ追いつけない!!」

 難しい顔を浮かべた直後。不意にイフリートが方向転換をして、ベリアルの方へと向かって来た。

「なっ……!!」

《イフッ!!》

 ズド――ン、と言う爆音が空中で鳴り響く。

 頭上を見上げるセキュリティキーパーの目に飛び込んできたのは、満身創痍となったベリアルが気を失った状態で撃墜されるという光景。

 ベリアルは地上数百メートルの高さから激しく地面に叩きつけられる。落ちた場所には巨大なクレーターが出来、その真ん中でベリアルはうつ伏せのまま倒れ動こうとしない。

 ディアブロスプリキュアのメンバー全員を蹴散らしたイフリートは、そのまま冥界の門へと向かい、扉を無理矢理こじ開けようと隙間に手を突っ込む。

 ギギギギ……。

 イフリートが門をこじ開けようとした結果、開きかけていた扉の間から冥界の瘴気と漆黒の闇が噴き出し、世界を闇一色で塗り潰そうとする。

 奮闘虚しくイフリートの前に敗れたベリアルたちは地に伏せたまま、闇の中へと消えていく。

「プリキュア……このままでは世界が闇に!!」

 そう呟いた時、セキュリティキーパーの頭が冴え渡った。

「……〝光〟!! そうだ、〝光〟だ!! プリキュアに光を与える事が出来れば!!」

 プリキュアとは、本来聖なる光の象徴である。敵が闇の力を司るならば、プリキュアであるベリアルたちに光を与える事が出来れば、彼女たちは再び立ち上がる事が出来ると、セキュリティキーパーは考えた。

 だが、そんな事が果たして可能なのだろうか。否――セキュリティキーパーには賭けに極めて近いが、ただひとつの妙案があった。

 早速その妙案を実行に移すべく、セキュリティキーパーはプリキュア対策課の責任者である父の元に通信を繋いだ。

「もしもし父さん!? 大至急この回線を全テレビ局に流して欲しいんだ!!」

『分かった! 全放送局の回線に割り込ませる!!』

 父の尽力もあって、東京の全テレビ局に緊急回線が割り込まれた。

 マインドコントロールされた多くの人々は、セキュリティキーパーこと、神林春人の顔を画面越しに見ながら話を聞く。

『突然の出来事に戸惑っていると思いますが、僕は高校生探偵で警視庁公安部特別分室、通称プリキュア対策課の特別捜査員をしています、神林春人です。みなさん、目を覚ましてください。自らを神や天使と自称している彼らこそが、真の悪魔なのです。ディアブロスプリキュアは、僕たちを守って来てくれました。今度は僕たちが力を上げる番です。お願いです、プリキュアに光を……光を与えてください!!』

 それまでプリキュアを人々の生活を脅かす『悪』だと考えていたセキュリティキーパーの心境の変化に、対策課の捜査官を始め、父も驚いていた。

 セキュリティキーパーはプリキュアを、ベリアルたちを人類を守る者たちであるとハッキリと認めたのだ――警察の力だけではどうする事も出来ない事態を解決する人類最後の『希望』であると。

 テレビ画面を通じて真摯に訴えを起こしたセキュリティキーパーの気持ちは、イフリートに洗脳された人々の心を解放するとともに、ある行動を起こさせた。

 プリキュアに光を届ける為に皆が一斉に動き始めたのだ。そんな彼らの行動を見越したように、あの男が現れた。

「さぁ皆の衆!! プリキュアに力を与えるのならば、これを使うのじゃ!!」

 ディアブロスプリキュアの協力者である科学者・ベルーダは唐突に彼らの前に現れ、ベリアルたちの元へ向かう彼らにアイテムを配り始めた。

 人々が受け取ったのは、掌に納まるくらいの小さな、だけどどこか温かみを帯びた先端に羽根型の蛍光部が付いたライトだった。

「そのミラクルライトを振って、プリキュアを応援するのじゃ!!」

「プリキュア!! がんばれー!!」

「「プリキュア!! がんばれー!!」」

「「「「がんばれー!!」」」」

 人々はベルーダから渡されたミラクルライトを力強く降り、プリキュアがんばれー、と言って応援を始めた。

 あちこちから同じような声が聞こえてくる。セキュリティキーパーの耳にもハッキリと聞こえる応援の声はやがて光を伴ってベリアルたちへと注がれる。

《イフッ!?》

 扉をこじ開けようと躍起になっていたイフリートも、この光景には目を奪われる。

 人々から与えられた応援の声と光をその身に受けたベリアルたちの体に力が戻り始めた。さっきまで立ち上がる事さえままならなかったのに、嘘のように体が軽くなっていた。

「光が……」

「力が、漲って来てきます……!!」

「光……これが人々の光なのね」

「悪魔にはあまり嬉しくないけど、今はこの光にすべてを賭けるわ!!」

 街の人たちから与えられた光によって、ディアブロスプリキュアは復活を遂げた。この結果にセキュリティキーパーも非常に満足していた。

《イフッ!!》

 復活したベリアルたちの息の根を止めるため、イフリートが空中から降りて来た。

「二度と負けは許されないからね」

「分かってるわよ」

 等と言い合い、セキュリティキーパーとベリアルは互いを認め合い共に戦う事を許諾する。

 今ここに、いがみ合っていた警察組織とプリキュアが一致団結して目の前の巨悪に立ち向かう。

「行くわよ!!」

「「「「はい(ええ)(ああ)!!」」」」

 合図と共に五人は動き始めた。

 最初に、ダントツに戦闘能力の高いバスターナイトとセキュリティキーパーの二人がイフリートへ接近し、剣と警棒で畳み掛ける。

「はあああああ!!」

「ふん!!」

 両者の武器が全く同じタイミングで交差し、鋭い剣閃となる。

《イフッ!! イフイフイフッ!!》

 それまでベリアルたちの攻撃をものともしなかったイフリートの硬い身体に十字状の傷が出来上がった。

 二人の攻撃でイフリートの体が一瞬たじろいだ直後、今度はウィッチとケルビムが強化変身した姿で一気に攻めてくる。

「はああああああああああ!!」

「やああああああああああ!!」

 空中からの飛び蹴りに加えて、地上からのアッパーパンチはさすがに堪える。

 イフリートの体が宙に浮かび上がったのを見計らい、ベリアルは圧縮した紅い魔力を波導にして飛ばす。

「はっ!!」

《イフッ……!!》

 波動によって、イフリートは頭上に浮かぶ冥界の門まで飛ばされ、扉の前に叩きつけられた。叩きつけられた衝撃が扉に加わった事で、開きかけた扉が一気に閉まる。

「今ですよ、リリスちゃん!!」

「奴に引導を渡すんだ、リリス!!」

「合点承知の助ってね!!」

 周りから促され、ベリアルはイフリートに止めを刺す為、先日手に入れたばかりのグロスヘルツォークリングを取り出した。

「グロスヘルツォークゲシュタルト!!」

 声高に名を叫び、ベリアルは大地のエレメントが強化された現状における最強の姿へと変身する。

「キュアベリアル・グロスヘルツォークゲシュタルト!!」

 

「いきますよー!! コライダーチェイーンジ!!」

 レイコライダーへと変身した使い魔を装備すると、冥界の門に叩きつけられたイフリートに照準を合わせ、エネルギーをチャージする。

「質力百二十パーセント……百五十パーセント……百八十パーセント……二百パーセント!!」

 砲門状に配置されたレイコライダーにエネルギーがチャージされた。この瞬間、ベリアルは超ド級の花火を打ち上げる。

「プリキュア・メテオールブレイカー!!」

 大威力の砲撃がイフリートへと直撃した。

《イフウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!》

 断末魔の悲鳴を上げるイフリートは、冥界の門と共に蒸発――世界を包み込もうとしていた闇は晴れ、安寧の時が取り戻された。

 ベリアルたちが戦いに勝利した事で、街の人々は感極まって彼女たちへの称賛の声を上げる。

「リリス様、街の人々がようやく認めてくれましたぞ」

「………そうね」

 それまで疎まれる側だったベリアルにとって、こんな経験は初めての事だったから少々困惑はしたが、決して悪くは無いとも思った。

 そして東京はまるで何事も無かったかのように、新しい朝を迎えた。

 

           *

 

異世界 洗礼教会本部

 

「イフリートは斃されたか……」

「ま、こうなる事は分かってたっすけどね」

 人間界での戦いの様子を逐一静観していた洗礼教会の大司祭ホセアと、その助手を務めるコヘレト。人々の繁栄を重んじ、世界に恒久の平和をもたらす事を至上課題とする洗礼教会だが、どうして彼らは動こうとしないのか。

 ギギギ……。

 すると、礼拝堂へと続く扉が開かれると一人の男が現れた。

「来たか……」

「呼ばれたから来てやったんだぜ。俺だってこう見えても忙しいだ。何しろ本分は堕天使の王だからな」

 言いながらホセアたちの方へと歩み寄ってくる堕天使の王ダスク。なぜ堕天使であるダスク、それも最高位の彼がこの場所に居るのか……。

 その答えを知る者は――……今は亡き『神』のみである。

 

 

 

 

 

 




次回予告

朔「幼き頃、孤独なオレの前に現れたひとりの優しい女の子。あのとき、リリスがオレに手を差し伸べてくれなければ、今のオレはここにはいなかった」
「オレはもっと強くなる。どんな敵が来ても必ず彼女を護れる戦士になってやるんだ」
リ「ディアブロスプリキュア! 『朔夜の誓い!紅蓮のバスターナイト!!』」
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