幽霊となって再びリリス達の前に現れたザッハが仕掛ける卑劣な罠。
歴代のプリキュアシリーズの悪訳も登場します。
それと、誤解を招かぬようにサブタイトルを若干変更しましたのでご容赦下さい。
それではどうぞ。
幽霊船内部 亜空間
「「「「「「「「うわああああああああああああ」」」」」」」」
怨霊と姿を現したザッハの罠に嵌ったリリスたちは、髑髏のレリーフの中に存在する亜空間へと引きずり込まれてしまった。
地面に叩きつけられた際、リリスたちは視界に映った光景に度肝を抜く。
辿り着いた所は、幽霊船の中とは思えない広大な空間。具体的には、少林寺拳法の武術鍛錬が行われていそうな海抜何千メートル級の山の上に立つ修行寺だった。
全く訳が分からない。
何の因果でこんな場所に辿り着いてしまったのか。幽霊船の中にこのような空間がある事さえ知らないリリスたちは、ただただ辺りを見渡し困惑する。
「なんなんですかここは? どこに来てしまったんですか我々は?」
「知らないわよ」
「いや。飽く迄船の中の筈だ」
「と言う事は……現実ではない、イメージ空間と言う事ですか?」
「ちょっと……あれ!」
動揺するラプラスが空を指さした。
彼女が示す方角には黒いガス状の髑髏が浮かんでおり、リリスたちは開かれた髑髏の口を通じてこの空間へ飛ばされてきた。元の場所とを繋ぐ唯一無二の出入口が今、ゆっくりとだが確実に閉ざされようとしている。
「ドクロの口が……どんどん閉じてってる!!」
「僕たちを閉じ込めるつもりなのか?」
「ザッハの奴……!!」
生前と何ら変わらない、ザッハの考えつきそうな卑怯卑劣な策略にリリスたちが苛立ちを募らせていると――
『チョイー!』
『『チョイチョイー!』』
奇妙な声が背後より聞こえてきた。
振り返るとそこには――黒タイツ姿で、赤色のサングラスを装着した戦闘員らしき有象無象が集まってきた。
「なんですか?」
「雑魚っぽいのが出て来たわね」
「いわゆるスーパー戦隊シリーズお馴染みの名無しの戦闘員って奴だね」
『チョイアーク!!』
春人から名無しの戦闘員呼ばわりされた事が気に障ったらしく、戦闘員こと――【チョイアーク】の代表が自らの名を叫ぶ。
「なんかチョイアークって言ってるわよ」
「名前があったのか、それは失礼したね。でも所詮戦闘員キャラの本質はただひとつ――ヒーローに倒される雑魚キャラだって事だよ」
「どうでもいいけど。とっとと片付けて帰りましょう」
こんな所で油を売っている暇などない。
一刻も早くこの亜空間から抜け出して、バリアシステムが解除される前にザッハに捕われたはるかと街の人々の魂を取り戻さなければならないのだ。
チョイアークが立ち塞がるというのなら、完膚無きまでに叩き潰すまでである。
「ダークネスパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」
「シャイニングパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」
「バスター・チェンジ」
「実装!」
「独善滅ぼす暗黒の力! キュアベリアル!」
「不浄を焼き払う聖なる光! キュアケルビム!」
「影に向かいて影を斬り、光に向かいて光を斬る。暗黒騎士バスターナイト」
「非道な悪事に正義の鉄槌下す者。その名はセキュリティキーパー」
「偽りの善幸を根絶やし!」
「邪な悪行を断罪する黒き力!」
「我ら、悪魔と天使、暗黒騎士と探偵のコラボレーション!!」
「「「「『ディアブロスプリキュア』!!」」」」
はるかを除く正規メンバーと、神林春人を加えた新たなパターンでの口上を済ませた、のだが――
「って……勝手に僕もいれないでくれるかい?」
「細かい事は気にしないの」
セキュリティキーパーは本意ではないらしく、プリキュアメンバーに含まれる事を好ましく思わなかったが、ひとまずスルー。ベリアルたちは変身すると、現れたチョイアークとの戦闘を開始した。
「はああああああああああああ」
ベリアルは彼女本来が持つ悪魔の力を主体とした肉弾戦で、人海戦術を最も得意とするチョイアークに対抗する。
数こそ多いものの、その実一人一人の戦闘力は決して高くない彼らを相手にする事は、ベリアルにとってさほど面倒ではなかった。
「ベリアルスラッシャー!」
『『『チョイアーク!!』』』
ベリアルスラッシャーを一発食らっただけでもチョイアークは一塊となって吹き飛ぶ。日頃手強い敵と戦い慣れている彼女からすれば、全く歯応えの無い相手だった。
「ストリクト・タイフーン」
バスターナイトに変身した朔夜は、バスターソードの剣先から暗黒の竜巻を発生させる。
『『『チョチョー!!』』』
間合いに入り込んだチョイアークたち、その悉くが黒い竜巻に飲み込まれ呆気なく彼方へと飛んで行く。
「プリキュア・ポーラルリヒト!!」
『『『チョイチョイ~~~♪』』』
ケルビムが放つ邪悪なるものを浄化する聖なる光のシャワー。
浴びればたちまちチョイアークもいい気分となって、真っ黒だった全身が真っ白へと変わり、気持ちよさそうに両手をパタパタとはばたかせ天へと上っていく。
「さぁーどっからでも来なさいヘナチョコ戦闘員!! レイとクラレンスが相手になるわよ――!!」
「ちょ、ご婦人今なんと!?」
「私たちだけであれを相手にしろと!?」
いつもながらラプラスの突拍子もない無茶振りには度胆を抜かされる。
驚天動地のレイとクラレンスを余所に、ラプラスは淡白に「じゃ、あと頼んだわよー」と一声だけ掛けて横にずれる。その隙にチョイアークの大群が一気にレイたちへと押し寄せてくる。
『『『チョイー!!』』』
「うわあああああ!! く、来るなー!!」
「来るなって言われて遠ざかる人はいません!! ここは覚悟を決めて……!!」
戦う決心を据えると、クラレンスは向かって来たチョイアークを蹴るや殴るなどして退けながら、レイに攻撃を促す。
「レイさん!! 雷を落としてください!!」
「承知したー!!」
クラレンスの合図を受け、ドラゴンに変身したレイが上空高くから襲撃を仕掛ける。
――ドドン!! ドドーン!!
『『『『チョイ――!?』』』』
チョイアークの頭上から、スプライト・ドラゴン自慢の青い稲妻が降り注ぐ。電圧はおよそ数百億ボルト。あっという間に黒焦げとなって戦闘不能となった。
『チョイー!!』
『『『チョチョイー!!』』』
結論から言えば、チョイアークは数が多いだけが取り柄の烏合の衆。
手強くもなければ、特別生産性が良いわけでもない。本当に鬱陶しい度合で、そこに居るだけで癇に障るような相手――ベリアルたちはそう思いながら彼らと戦っている。
一方のチョイアークは、ベリアルたちの力に恐れをなし戦う事に怖気づいた様子でゆっくりと後退し始めた。
「何よ何よ、もう終わりかしら?」
呆れと退屈そうな態度を見せるベリアル。これに対しチョイアークは……
『チョイチョイ!! チョチョーイ!!』
「あの、何言ってるのか全然わからないですけど……」
「まぁおそらくはこう言っているんだろう……『おのれ! こうなったら我らの本当の力を見せてやる!!』ってね」
「あんた、なんであいつらの言葉が分かるのよ?」
不思議な事に、セキュリティキーパーにはチョイアークの言葉が理解できたようだ。ベリアルは時々冗談のような真面目な話をする彼に不気味さを抱く。
『チョイチョイチョイチョイ!!』
有象無象のチョイアークたちが一カ所に集まり始めた。
巨大な力を形成するべく、彼らは互いの体を合わせる事で意識と力を共有する。
挙句、チョイアークたちは機械のような手足と、チョイアーク時と同じ赤色のサングラス、首元にマフラーを装着した巨大な怪物となった。
『サイアーク!!』
「あ、合体しましたね!」
「でもどっかで見た事あるわね……」
チョイアークがひとつにまとまった事で誕生した【サイアーク】。先ほどまでの屈辱を晴らすべく、サイアークはベリアルたちへと拳を振るう。
『サイアーク!!』
拳が振るわれると、ベリアルたちは直ちに散開。
そして、バスターナイトとセキュリティキーパーの二人がサイアークの懐へと潜り込んで、強烈な一太刀を浴びせる。
――バシュン! バシュン!
『サイア~~~ク!!』
愚鈍なる体が呆気なくひっくり返る。
力を合わせたとは言え、元を正せばチョイアーク。戦士として比類なき強さを誇るバスターナイトとセキュリティキーパーにかかれば、サイアークとて赤子の手を捻るくらい倒すのは容易だった。
「合体しても雑魚は雑魚だな」
「時間の無駄だよ」
言うと、セキュリティキーパーは多機能ハンドガン・SKバリアブルバレット表面に刻まれたナンバーを【1】から【3】に合わせ、サイアークへと狙いを定める。
「ファイア」
〈Photon Blast〉
――ドン! ドン!
『サイア~~~ク!!』
トリガーを引いた瞬間、銃身から放たれるオレンジ色の光弾。的が大きなサイアークの体を非情にも傷つける。
「次でケリをつけてあげるよ――蹴りだけにね」
今日のセキュリティキーパーは随所で洒落を言うのを好んだ。
再びSKバリアブルバレット表面に刻まれたナンバーに目をやると、【3】から【5】へと数字を調整し、手前にあるレバーを引く。
〈Are you ready?〉
「チェック」
その言葉を起動音として、銃身部分から三つあるシリンダーが伸長。同時にセキュリティキーパーはトリガーを引いて、標的を拘束・ロックオンする円錐状のポイントマーカー光を発射した。
『サイアーク!?』
白色に輝くポイントマーカーによって、サイアークは身動きが取れなくなった。攻撃したくても足を一歩も前に進める事すら出来ない。
その間にセキュリティキーパーはかがんで腰を落とし左脚に重心を乗せる事を意識した状態から、タイミングに合わせて勢いよく走り出す。
〈Vanishing Hammer〉
「はああああ……」
SKバリアブルバレットの電子音が鳴り響く中、セキュリティキーパーは地面を蹴って中空へと舞い上がり、体を一回転させてから目標であるサイアークへ、キックを叩き込む。
「はああああああああああ!!」
――ドカン!!
『ゴクラ~ク』
先程の攻撃のどこに極楽させるような要素があったのだろうか。セキュリティキーパーの放った必殺技【バニシングハンマー】によって止めを刺されたサイアークは、倒された瞬間そう言い残し、跡形もなく消え去った。
「やったわ!!」
敵を倒し安堵するベリアルたち。
だがサイアークが消えた途端、辺りの景色が歪み始め、強烈な引力の奔流が前方より渦となって押し寄せて来た。
「ちょっと……ま、またなの!?」
「「「「「「「「うわああああああああああああ」」」」」」」」
*
幽霊船内部 中枢空間
『ふふふ……キュアベリアル。無限の如く繰り返される苦痛と言う名の地獄を味わうがよい。貴様や仲間たちが苦しみあえぐ事で私の骨の髄は戦慄き騒ぎ立つのだ!!』
リリスたちを奈落の底へと誘った髑髏を前にして、ザッハは勝ち誇った顔を浮かべた。
『いい加減にしてください!! あなた、どうして幽霊になってもそんな最低な事しか思いつかないんですか!?』
『最低だと? フハハハハハハ、お生憎。私は堕天使の誇りを捨て去るほど下等な存在に成り下がったつもりはない。これは正当なる復讐なのだよ。私の様にかつてプリキュアたちによって屠られた者たちの積年の恨み――それを果たせと言う神の啓示を受けたのだ』
『神様がそんなことあなたに言うはずがありません!! そもそもプリキュアは悪を倒す正義の味方なんです! あなたといい、他の人たちも悪い事をして倒された後に逆恨みをするなんてお門違いも甚だしいです!』
はるかはザッハを見据えてはっきり言い渡す。
『下等な人間の分際でこの私に説教を垂れるか……貴様、プリキュアになれたからと思い上がっているのではないか?』
『違いますっ! はるかはただ、恨みや憎しみじゃ何も生まれないと言ってるんです! そんな悲しい感情は世界を不幸にするだけなんです!』
『青いな。ならば自分の周りをよく見てみろ。私以上の憎しみを持ち、私以上に恨みを抱える者がいながら、何故貴様はその者を咎めようとしない?』
『……!!』
ザッハの言葉の意図が伝わり、はるかは思わず言葉を詰まらせる。
かつて自身の愛する者たちを奪われ、復讐に身を捧げる少女――
『そう、キュアベリアル。あれもまた我らと同じ恨みと憎しみの塊よ。貴様と同じプリキュアでありながら、その精神と心意気はおよそプリキュアとは思えぬほど乖離している。そんな異端者を抱えながらなぜ貴様は私たちだけを爪弾きにする?』
『リリスちゃんは……リリスちゃんはあなたたちとは違うんです!! リリスちゃんは私の、はるかの大切な友達なんです!!』
『愚かな。結局、貴様の正義の尺度など所詮はこの世で最も曖昧で理解し難い〝愛〟などという感情に他ならぬのだ。フハハハハハハ』
*
幽霊船内部 亜空間
「「「「「「「「うわああああああああああああ」」」」」」」」
引力の奔流によって吸い込まれたベリアルたち。
気が付くと、先ほどとは全く異なる場所へ辿り着いていた。
「ここは……」
修行寺から一変。野球グラウンドのど真ん中に立ち尽くしていた。何の因果でこんな場所に来てしまったのかと疑問に思っていたその時――
ウウウウ~~~~~~。
『大変長らくお待たせしました。ただいまより、試合開始です』
サイレンの音とともにアナウンスが入る。
「なんだ? なんだ?」
試合開始と言っても、周りには対戦相手の姿は何処にも見当たらないし、観客だっていやしない。訳が分からず困惑していると――
『バッターは、一番。指名打者――――――アカオーニ!!』
電光掲示板に表示された『DHアカオーニ』という表記。
すると、ダッグアウトから一際異彩を放つ指名打者がベリアルたちの前に姿を現した。
「ぐはははははははは!!」
豪快な笑いを上げながら、おとぎ話に登場しそうなトラ模様の衣服を身にまとった赤鬼姿の巨漢が金棒を担いでバッターボックスへ。彼がアカオーニである事はその外見からも、容易に想像がついた。
「オレさまから見事三振を奪えれば、この世界から出してやるオニッ!」
「な、なんなのよあんた!?」
「泣く子も黙るアカオーニ!! とでも言っておくオニ! このオレさまと、野球で勝負オニ!」
「野球で勝負って……さっきまで普通に戦ってたじゃない?」
「だが勝負しないとこの世界から出られないと言うなら、やるしかないな」
かつてディアブロスプリキュアが経験した事がない敵との戦いだ。
これまで、それこそ命のやりとりが多かったベリアルたちにとって、スポーツによって勝敗が決着するなどと言う穏やかな事態は想定し得なかった。だから場違いなのではないかと言う思いが内心渦巻いていた。
しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。奪われたはるかと町の人々の魂を救い出す為なら、どんな勝負も受けて立つし歯向かう敵は殲滅する――相手が野球で勝敗を着けたがっているのなら、望み通り野球で葬り去るまで。
順応性の高いベリアルたちは、アカオーニが所望する野球で戦う事を決意した。
という訳で……たった一人のバッター相手に、ディアブロスプリキュアの八人は守備位置に着く。ピッチャーは交替制で行うこととなった。
最初の投手はケルビムが務める。
「テミス様!! がんばってください!!」
「ぐははははは!! どんな球でも必ず打つオニ!」
「よし、アンダースローよ。いくわよピット!」
左脚を振り上げると、ケルビムはアンダーからの剛速球をキャッチャー役のピットのグローブミット目掛けて放った。
「いただきオニ!!」
何の変化も無い真っ直ぐなストレート。これをチャンスと見たアカオーニは、タイミングを見計らって大きく金棒を振るう。
――ブンッ。
「オニ!?」
見事に空ぶった。
タイミングなどまるで合っていないし、無駄に金棒を大きく振るっただけの徒労と化した。
「ワンストライク!」
「か、空振りとはどうした事オニ!! 今のは絶対ホームランだったオニ!?」
「見苦しいですよ。朔夜さん、次はあなたです!」
周章狼狽(しゅうしょうろうばい)するアカオーニに一声かけてから、ピットはケルビムと順番を交代したピッチャーマウンドのバスターナイトにボールを渡した。
「オーライ」
ボールを受け取ったバスターナイトは、テンパりまくって当初の余裕を失いつつあるアカオーニを見ながら、おもむろに振りかぶる。
「スローボール! 打てるもんなら打ってみろ!」
手から放たれたボールは凄まじく遅い速度でホームベースへと向かっていく。
アカオーニはあまりに遅すぎるゆえにタイミングを合わせる前に、早く打ちたいという衝動に駆られてしまう。
「でええいい!! じれったいオニ!!」
――ブンッ。
我慢できなくなってつい金棒を振ってしまった。
バスターナイトの読み通り、アカオーニは見事に仕掛けた罠に嵌ってこのボールを打つ事が出来なかった。
「ツーストライクです!!」
「悔しいオニ!! オレさまとしたことが!!」
「あとは頼んだよ、リリス!」
そう言って、バスターナイトは残りの一球をベリアルへと託しマウンドから退いた。
バスターナイトからボールを受け取ったベリアルは、もう後がないアカオーニを悪魔的な笑みで見ながらボールを握りしめる。
「ふふふふふ……これで三振スリーアウト。いくわよ!!」
「二度ある事は三度はないオニ!! 最後に勝つのはオレさまオニ!!」
「いいえ。最後に勝のは……私たちよ!!」
ベリアルは左足を高く上げる独特のフォームを見せると、右腕から目にも止まらぬ剛速球をアカオーニ目掛けて投げつける。
「はっ!!」
放たれた剛速球は炎を帯び、さらには複数個へと分裂。あまつさえ不規則な動きまで加わり、まるで生きているかのようだった。
「でえええええええ!!」
アカオーニも度胆を抜いた。
今までの球も確かに凄かったが、ベリアルのは明らかに常軌を逸している。どれが本物の球でそうでないのか、全く分からない。
「めんどうオニ!! 全部まとめて打ってやるオニ!!」
まどろっこしい事が嫌いなアカオーニは、飛んでくる球のすべてを打とうと思い、バッド代わりの金棒を構え打つタイミングを見計らう。
ベリアルの手から放たれた魔球は、ピットのミットに収まることなくそのままアカオーニの元へと飛んで行き、あろう事か打者そのものに攻撃を加え始めた。
「いたたたたたたたた!! 痛いイタイいたい、いたいオニ!!」
最後の最後でアカオーニを待ち受けていた結末は、何とも残酷だった。
まさか三振というものの中にこんなバリエーションが有ったのだろうかと、気絶する間際思った。
魔球による襲撃を受けた末、全身に痛々しい傷を作ったアカオーニはバッターボックスの傍らで倒れ、再起不能となった。
「勝負ありね!」
「確かに勝ったは勝ちましたがリリス様……最後の方にいたっては野球本来のルール無視してましたけどね!?」
「悪魔が勝負にルールを持ちこむ訳ないでしょ」
どうやらベリアルに真面に野球をしようと言う気持ちは無かったようだ。
最後の最後でルールを無視した理不尽な暴力でアカオーニを退けた姿は、正しく我々が思い描く悪魔らしいやり方だった。
ウウウウ~~~~~~。
とにかくこの勝負、ディアブロスプリキュアの勝利に終わった。サイレンが野球場全体から響き渡る。
だがその直後、ベリアルの魔球の前に敗れ去ったはずのアカオーニがゆっくりと体を起こし、消滅の間際言い残す。
「オレさまを倒していい気にならない方がいいオニ……お前たちは一生ここから出る事なんてできないオニッ――!!」
声高に叫ぶアカオーニ。
そんな彼の頭上に野球ボールが降ってきて……ゴン!と当たる。
「さ……さらばオニ!!」
この言葉を最後にアカオーニは消滅した。
彼の消滅に伴い発生した爆風は、ピッチャーマウンドに集まったベリアルたちの元まで広がり、彼女たちを炎の中へと飲み込んだ。
「「「「「「「「うわあああああああああああ」」」」」」」」
ザッハが仕掛ける悪夢は、容赦なくベリアルたちを追い詰める。
アカオーニとの野球勝負を終えたと思えば、またしても見知らぬ場所……倉庫街のような場所に飛ばされた。
地面にうつ伏せになって倒れていた彼女たちは、いつの間にか変身が解除された姿だった。
「いててて……」
「今度はどこなの?」
おもむろに体を起こすと、眼前の空間が歪み出してザッハが送り込んだであろう幽霊軍団が姿を現した。
棒付きキャンディを口に咥え、サングラスをかけたヒゲを蓄えた初老の男が『ジコチュ~!』という独特な鳴き声を発する有象無象の怪物たちを率いて、リリスたちの元へ歩み寄ってくる。
「またなの……しつこいわね!」
「いつまででも続くさ。この船にはお前たち以外のプリキュアによって倒され浄化されてきた悪役たちの無念と後悔、そしてプリキュアを倒し己の欲望を成就させたかったという願いが具現化した邪悪なる魂がざっと千は呼び寄せられているからな」
初老の男こと、【ベール】は棒付きキャンディを口に咥えたまま話し、何の前触れも無く暗黒の波動を放ち攻撃を仕掛ける。
上手く避けたリリスたちだが、ベールから語られた衝撃の事実に絶句。ラプラスは思わず「なにそれ!? やってもやってもキリないじゃん!」とぼやく始末。
「それが嫌なら、ここでこのオレ、ベールと【ジコチュー軍団】に倒されるがいい!!」
『『『『ジコチュ~!!』』』』
最初からザッハはこの亜空間、もとい幽霊船からディアブロスプリキュアを解放する気は無かったようだ。
ベール曰く「リリスたち以外のプリキュアの手により倒された敵」が一挙に集まったこの空間に誘い込み、彼らとの戦いで体力を消耗させジワリジワリと弱らせた上で彼女たちからも魂を奪い去る算段だった。
ひとまずベールたちの攻撃を避ける為、コンテナの影へと身を隠すリリスたち。厳しい状況に直面し、眉間に皺を寄せる。
「このままじゃマズイですぞ!」
「マズイと言えば、ベルーダ博士から渡されたバリアシステムのタイムリミットも迫ってるわ」
「リリス、クラレンス! ここはキミたちだけでも戻るんだ!」
「サっ君!?」
「何言って……!」
突然の朔夜からの提案に二人は大いに戸惑う中、皆もこの意見に対して肯定的な態度を示す。
「朔夜さんのおっしゃる通りです。敵はわたくしたちが引きつけておきます! お二人はその隙に」
「でも、あなたたちはどうするのよ!?」
「心配ないわよリリスちゃん! あいつら倒したらすぐに追いかけるって!」
「だからひと足先に行って、堕天使に捕われたはるか様や人々の魂を解放してください!!」
「言っとくけどこれは懇願じゃないよ、命令だよ」
「だけど……」
確かにそれが最も賢明な判断かも知れない。
だが幽霊船の中でも特に勝手の違う亜空間に大切な仲間たちを置いて、元いた場所へ戻るのはどうにも忍びないという気持ちがリリスにはあった。当然クラレンスも同じであり、決断を躊躇する。
「……っ!!」
そんな様子を見て、朔夜がリリスの肩に手を置き穏やかな顔で見てくる。
「迷うなんてキミらしくないよ。今リリスたちが行かなくて、誰がはるかを助け出せるんだ!?」
強い語気で言い放つ朔夜。リリスとクラレンスは目を大きく見開く。
「オレたちの思いを……託したよ」
仲間たちが何の為に思いを託してくれたのか。何の為に敵の囮を買って出たのか。それを理解できないほど二人は愚かではなかった。
思いを託されたのなら、何が何でもその思いに答えるのが筋。一度交わした約束を必ず守って、再び彼らとともに地上へ出る。無論、その中には今はザッハの手に捕われたはるかも含まれている。
朔夜からの激励が、二人の迷いを完全に吹っ飛ばした。
「――――――わかった」
「確かに受け取りましたよ、皆さんの思いを!」
「リリス様!! クラレンス!!」
リリスの元へ集まる仲間たち。
彼女は一人一人の顔を見ながら、固い決意が籠もった表情で答える。
「絶対にはるかたちを救ってみせる。その後、必ず迎えにくるから!」
「頼んだわよ、リリス」
「僕らの心配をするより、まずは自分の心配をするべきだよ」
「さぁ……大人しく出てくるんだ」
ベールからの呼びかけが向けられると、コンテナの影から白旗が上がり、ベールたちに投降の意志を示す。
「あきらめたか……」
隠れていたディアブロスプリキュアの面々がベールたちの前に姿を現す。所持している武器から変身リングに至るまでの一切を放棄し、素の姿のまま両手を上げて降参とアピール。
「解ればいいんだ……ん?」
ベールはそのとき、ディアブロスプリキュアのメンバーが二人欠けている事に気がつき、動揺する。
「貴様ら、あの悪魔の小娘ともう一匹の使い魔はどうした!?」
「知らないな」
言うと春人は、足下に落としたSKバリアブルバレットを器用に足で持ち上げ右手の中へおさめる。
銃を手に一回転し、前方のベールたちへ銃口を向けると、トリガーを引いて反撃を開始する。
――ドンドン! ドンドン!
「ぬああああああ!?」
『『『『ジコチュー!!』』』』
「今よ!!」
春人の攻撃で隙が生じた。その間にテミスたちは放棄した武器を拾って、ベールたちの元へ突進しながら変身をする。
「こ、小癪な!!」
「「「「「「はああああああああああ」」」」」」
反旗の狼煙を上げるディアブロスプリキュア。
ベール率いるジコチュー軍団との戦いが切って落とされる中、リリスとクラレンスはコンテナの陰に隠れ脱出のタイミングを見計らう。
「行ってください、リリス様!! クラレンス!!」
「あとは頼んだわよ!!」
この言葉を合図に、キュアベリアルに変身したリリスはクラレンスを抱きかかえ空へと舞い上がる。
「何だと!?」
ベールたちを欺く事に成功したベリアルとクラレンスは、元いた場所とを繋ぐ髑髏の口の中へと入って行った。
「絶対に掴むんだ、リリス!!」
*
幽霊船内部 中枢空間
『ん!?』
亜空間でベリアルたちがくたばるのを待っていたザッハ。
だがそのとき、亜空間の出入口となっている髑髏の口の中から紅色に輝く光が飛び出してきた。
ザッハと魂を檻の中に捕われたはるかは目を見開いた。ベリアルと、彼女とともに亜空間を脱出したクラレンスの二人が、目の前に現れたのだ。
『リリスちゃん!! クラレンスさん!!』
『貴様ら……なぜだ!?』
「決まってるじゃない。地獄の底から戻って来ただけよ」
「はるかさんの魂を返してもらうぞ、ザッハ!!」
『ふん……。たったひとりの小娘の命を救うために他の仲間を捨てる判断を取ったか』
「ふざけないで!」
『だが残念だな。この口は二度と開かない。貴様の仲間たちは絶対にこの世界に戻れないのだ!』
髑髏の口が堅く閉ざされる。
これで、ザッハの意志で再び口を開けようとしない限りバスターナイトたちが戻って来れる可能性は無くなった。
『諦めてお前たちも私の為に命を捧げろっ!!』
「我々はそう簡単に諦めるわけにはいかない!」
「私はみんなと約束したのよ。それに私は悪魔……欲しいものは全部この手で掴み取ってみせる!!」
『ふん。ならばこの私を倒してみせよ!!』
「クラレンス!! あなたをはるかを!!」
「はい!!」
はるかの事をクラレンスへと託し、ベリアルはザッハとの戦いを開始した。
大剣を手に斬りかかって来るザッハ。一太刀を躱したベリアルは、自らの魔力を練って作り出した紅色の剣を武器に激しい剣戟を繰り広げる。
その間に、クラレンスは捕われたはるかの魂を救出しようと檻へと近づく。
『クラレンスさん!!』
「もう大丈夫ですよはるかさん!! 今すぐあなたを……!!」
急いで檻から出してやろうと柵に手を触れた瞬間。
「ぐあああああああああ!!」
凄まじい電流がクラレンスの全身を駆け巡った。
『クラレンスさん!!』
反動で後ろへ退いたクラレンスと、彼の身を案じるはるか。しかしクラレンスは気丈にも立ち上がり、再度パートナーを助け出そうと自らを奮い立たせる。
「これしきの事で……うおおおおおおお!!」
懸命にはるかを助け出そうとするクラレンスと、傍らのベリアルもまた仲間との約束を果たそうと懸命になって戦っている。
激しい剣戟戦を繰り広げていると、ザッハは口から青い怪光線を放った。それは幽霊船が街の人々へと放っていた例の人体からプラズマエネルギーを分離させる恐るべき力。
だがベリアルは、ベルーダの作ったバリア発生装置のお陰で攻撃が当たっても人体から魂が分離する事無く敵の糧として吸い取られずに済んだ。
ピコン……。ピコン……。
しかし直後。
バリア装置のバッテリー残量が無くなりかけている事を示すライトが、黄色から赤へと変わり、点滅を始めた事に気付いた。
ピコン。ピコン。ピコン。
「はあああああ!!」
バッテリーが切れるまであと僅か。その間にザッハを倒す事が出来なければ、次の攻撃を浴びた瞬間にベリアルは魂を奪い去られてしまう。そうなってしまえば一巻の終わりだ。
仲間たちにも同様の危機が差し迫っている状況で、必死で焦りを隠しながらベリアルはザッハと一対一の攻防を展開する。
『ひとりで勝てると思っているのか? 愚か者め!』
「アンタには一人に見えるかもしれないけど、私はずっとみんなで戦ってるのよ!」
『ほざけ!』
左手から放たれる波動弾。
手持ちの剣で弾き逸らしたベリアルは、ザッハへと肉薄し振り上げた剣で斬りつける。
しかしザッハは口元を僅かに上げた。
刹那。自身の肉体を粒子状に変えてザッハはベリアルの攻撃を躱すとともに彼女の背後へと回り込む。
「このっ!!」
幽霊となって生前時よりも厄介な能力を身に付けたザッハは、攻撃が向けられる度に同様の能力でベリアルを翻弄する。その上、分身能力で数を増やし彼女の焦りを助長する。
『『『『『『ははははは!! どれが本物か分かるかな!?』』』』』』
「くっ……!」
苛立ちは彼女の中の焦りをより大きくする。
〝窮時にこそ冷静たれ〟―――かつて父であるヴァンデイン王が教えてくれたこの言葉を思い出し、ベリアルは数で翻弄してくるザッハの本体を見抜くことに全神経を注ぐ。
「そこよっ!!」
本体を見破ると、地面を強く蹴って前に飛び出す。
彼女が動き出すこのときを待っていた。ザッハは分身を解除すると、掌から青白く輝く金縛り光線を放った。
「きゃああ!! し、しまった!!」
まんまとザッハの罠に嵌ってしまった。ベリアルは身動きを封じられ、戦う術を奪われた。
『ははははは!! 年貢の納め時だな、キュアベリアル。大人しく私に命を奪われよ!!』
『リリスちゃん!!』
「リリスさん!! くそ、まだだ……ここで諦めてたまるか!!」
魂となってもはるかはプリキュアだ。檻から救い出す事が出来れば、ベリアルを助け出す事が出来るはず――そう考えたクラレンスは、はるか救出の為に全身全霊を尽くす。
「ぐああああああああ!!」
『クラレンスさん!!』
しかし、檻を破ろうとすると必ず尋常じゃない拒絶反応が返ってくる。パートナーが傷つく姿に胸が引き裂かれそうになるはるかと、我が身を厭わないクラレンス。
「あああああああああああああ!!」
一方で、バリア装置のバッテリー残量が切れかかっているベリアルを金縛りにした状態から、ザッハはじわりじわりと苦しめる。
ピコンピコンピコンピコンピコンピコン……。
『はははははは!! 苦しめ苦しめ!! 貴様への恨みはこんな程度では済まさんぞ!! ははははははは!!』
ピコンピコンピコンピコンピコンピコン……。
ピコココココココ……。
激しく明滅していたバリア装置のランプがとうとう切れた。
ザッハはベリアルに止めを刺す為、口から魂を吸い取る怪光線を放つ。
『さらばだ。我が復活の糧となれ!!』
怪光線が身動き取れないベリアルへと直撃する。
光線を浴びるや、ベリアルの血色のいい肌がたちまち真っ黒にくすんでしまった。
『「リリスちゃん(さん)!!」』
残酷な光景がはるかとクラレンスの目に飛び込んだ。
勝利を確信したザッハ。しかしこのとき彼は気付いてしまった。怪光線の一撃を浴びながらも、ベリアルの意識が辛うじて残っていた事を。
金縛りの術から解かれ床に這いつくばるベリアルは、真っ黒に染まった肌を視界の定まらない瞳で捕える。
(こんなところで終わる……? 冗談じゃないわ……私は……私は……)
直後、ベリアルの脳裏にいつかの夢で見たもうひとりの自分が言っていたあの言葉がふと思い浮かんだ。
――『憎む情熱はいつだって正しい』
――『鉄には鉄を血には血を』
「私は、私の願いが成就するその日まで……………死んでも死に切れないのよっッ――――――!!」
心の底から思いの丈を声に出した、次の瞬間。
声高に叫んだベリアルの思いに答えるかのように、彼女の体が目映い光を帯びた。
『なに!?』
『リリスちゃん!!』
「この光は……!?」
謎の現象に戸惑いを抱く中、幽霊船内部に捕われていた人々の魂が光となって彼女の元へと集まり、肉体へと吸収されていった。
『人間共の魂が……キュアベリアルに!?』
ザッハも想定し得ない事態だった。
プリキュアとしてのベリアルに、人々は最後の希望を託したのだ。
人々の魂を一時的に吸収する事で復活を遂げたベリアルは、全身に漲る力で眼前のザッハを一発殴りつける。
「はああああああ!!」
『ぐあああああああ!!』
強烈な拳打がザッハの顔面を直撃する。
粒子状となって攻撃を回避しようと思ったが、なぜかそれが出来なかった。今のベリアルにはその手の小細工は一切通じないという事を、彼は瞬時に悟った。
「そろそろ決着をつけてやるわ、ザッハ!!」
言うと、ベリアルはヘルツォークリングを取出し強化変身。
ヘルツォークゲシュタルト――かつて黒薔薇町へと侵攻してきたザッハを討ち滅ぼした力である。
「もう一度この力で、アンタに引導を渡してやるわ!!」
『おのれ……くたばるのは貴様の方だ、キュアベリアル!!』
何が何でも復活を遂げようと執念を燃やすザッハは、生前に自らの肉体を滅ぼした眼前の忌まわしい力を解放したベリアルを殺気の籠もった瞳で睨み付ける。
ベリアルは、人々の魂から形作られたレイハルバードを携えエネルギーを蓄える。
同じくザッハは手持ちの大剣を携えると、刀身に霊気を吹きかけエネルギーを充填する。
「『はああああああ……』」
対峙する悪魔と堕天使。
頃合いを見計らうと、両者は手持ちの武器を振り降ろし渾身の一撃を叩きこむ。
「『はあああああああああああああ!!』」
――ドカン!! ドドドん!!
『のあああああああああああああああぁあああ』
勝負は、ベリアルの勝ちだった。
悪魔でありながらプリキュアという特異な存在の彼女に、人々がなぜ力を託したのか――ザッハはもっと早くに気がつくべきだった。
『リリスちゃん!!』
「やりましたね!!」
感極まるはるかとクラレンス。
すると、髑髏のレリーフの口が内側から無理矢理開かれたと思えば……亜空間に閉じ込められていたバスターナイトたちが全員脱出してきた。
「リリス!!」
「大丈夫だった!?」
「みなさん!! ご無事でしたか!!」
「僕らを甘く見ないで欲しいね」
「リリス様、ザッハは!?」
「まだ死んじゃいなわね。まったく。幽霊なら幽霊らしく、さっさと成仏しなさい!!」
語気強く叫んだベリアルは、ヘルツォークゲシュタルトを解除した状態の通常モードから、ほとんど虫の息に近いザッハに最後の一撃を加える。
「プリキュア・ルインフェノメノン!!」
自身の魔力を最大限にまで高め、それをプリキュアの能力に付加する事で両手から紅色に輝く滅びの波動を発生させるキュアベリアルの必殺技が、ザッハを飲み込んだ。
『う……うああああああああああああああああああああああ!!』
滅びの波動を避けきれなかったザッハは、霊体である今の体が消滅する間際―――ベリアルたちへ呪詛のように呟いた。
『わたしは……何度でも蘇るのだ……この世で一番迷惑な存在としてな!!』
その言葉を最後に、堕天使ザッハは再度キュアベリアルの手により滅ぼされた。
彼の消滅に伴い、幽霊船内部に蓄えられていたすべての人間の魂が解放された。
はるかの魂も船から解き放たれるとともに、病院のベッドで床に伏せている本来の肉体へと戻った。
そして、主を失くした幽霊船は自らの居場所である黄泉の国へ帰る事無く自然消滅という形で、この世からその姿を抹消した。
◇
黒薔薇町 悪原家
「いやぁ~~~。一時はどうなるかと思いました!! みなさん、この度は本当に何とお礼を言ったらよいのでしょう!!」
無事に魂を取り戻したはるかは、仲間たちへの感謝を上手く言葉に表現する事が出来ぬほどに、こうして生きている事が嬉しかった。
「でも本当に、何もなくてよかったわ」
「ザッハに捕われた他の人々の魂も無事に元の肉体に戻った事だし」
「はい! これで一件落着ですね!!」
「これもすべては、リリス様のご活躍の賜物ですね!!」
レイがリリスへ呼びかけを行った時だった。
彼女からの返事が無かった。ソファーに座ったまま、リリスはピクリとも動かない。
「リリス様?」
近頃悩まされている寝不足で転寝しているのか。
いや、それにしてはどうにも様子がおかしい。おもむろに近づき、リリスの肩にそっと手を当てた……その瞬間。
彼女の体がゆっくりと前に倒れてきた。そして、バタンと床に倒れた。このとき、リリスの意識は完全に消えていた。
「リリスちゃん!!」
「リリス!!」
「リリス様!!」
最大の危機を乗り越えたディアブロスプリキュア。
しかし、悪原リリスに今……戦局を左右する重大な異変が起こり始めていた!!
次回予告
は「突然意識不明に陥ってしまったリリスちゃん!! 何が起こったというのですか!?」
テ「ベルーダ博士の口から語られる衝撃の事実。私たちは知ってしまったの…リリスの秘密を」
朔「時同じくして、洗礼教会が新たな刺客を差し向ける。オレたちを待ち受ける過酷な運命とは…!?」
リ「ディアブロスプリキュア! 『迫りくる危機!リリス、命のカウントダウン!』」