ディアブロスプリキュア!   作:重要大事

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ひと月近く放置してしまい申し訳ありません!!
ようやく落ち着きましたので、最新話を投稿いたします。長く待たせてしまった読者の方々、本当に申し訳ありません。


第6話:約束を果たすため!フィルストゲシュタルト!!

黒薔薇町郊外 古びた洋館前

 

「あ、あの……リリス様。本当にここなんでしょうか?」

「ええ、そうよ」

 ある日、リリスは使い魔のレイを連れて郊外にある、とある洋館にやってきた。

 洋館の前で立ち尽くすリリスと、彼女の肩付近で浮遊するレイ。

 外から見た限り、人が住んでいる気配は感じられない。もう何十年と放置された洋館はすっかりカラスの住処として定着している。

「今どき見ませんよ、こんな不気味な洋館。化け物でも住んでいそうですね」

 ドラゴンの姿をした使い魔が震える姿を見て、溜息混じりにリリスは言った。

「使い魔が何怯えてるのよ。自分だって人間からすれば化け物の類じゃない」

「そんな! ハッキリ言われると私、ショックで死んでしまいます!!」

 レイが羽をバタつかせて反論すると、リリスは握りこぶしを見せながら睨みつける。

「じゃあ、一度死んでみる?」

「い、いえ……遠慮しておきます……」

 肝を冷やすリリスの冗談もさることながら、気が進まないがレイは主とともに洋館の中へと入って行った。

 外見のオンボロさに増して、中は予想以上に荒れ放題となっていた。全体的にひどい湿気で蜘蛛の巣やネズミの姿が見受けられる。

  踏み込むたびにギシギシと音を立てる階段をリリスは一歩ずつ上っていく。リリスのそばを浮遊するレイは、自分が使い魔であることを忘れたかのごとく、人間のように怯えている。

 そんなレイとは違って、リリスがさながら本格ホラー にでも出てきそうな洋館の中を見渡して、溜息とともに言葉を吐き出した。

「PTAから子どもが泣き出しちゃってたんだけどどうしてくれるの!? なんて苦情の電話が来たらどうしましょう……」

「一体何の話ですか?!」

 時折リリスは的外れというか、意味深長なことを言ってくる。だがしかし、生憎と今のレイには彼女のメタ発言を理解できるほどの余裕はなかった。

 洋館の二階へとやってきたリリスは、廊下をしばらく歩くと、ある部屋の前で立ち止まった。

「ここ、ですか?」

「ええ。この部屋に彼はがいるの」

「彼?」

 どうやらリリスは尋ね人があってこの館に来たらしいのだが、一体どんな人物がこんなオンボロ屋敷の奥にいるというのだろうか。

 不安に駆られるレイが見守る中、おもむろにドアノブを握りしめ、リリスは建付けの悪い扉を開けた。

「おじゃまし……」

 開けた瞬間、リリスの顔に蜘蛛の巣が引っ掛かった。

「わぁっ!! なによもー!?」

「リリス様、大丈夫ですか!?」

 怯えているレイであったが、さすがは使い魔というべきか、主の叫び声を聞いて咄嗟に救おうと近寄る。

「ただの蜘蛛の巣だから。私は何ともない――」

 と、言った直後――部屋の奥から紅色に輝く無数の小さな光が見えた。何事かと目を凝らして見れば、何十匹というコウモリが一斉にリリスらを目がけて飛び出した。

「「うわあああああああ!!」」

 滅多なことでは驚かないリリスだが、今の状況には度肝を抜かれてしまった。

「こ、コウモリがいる!? ここはお化け屋敷ですか!!」

「だから使い魔が何をビビってるのよ!」

 一人と一匹がぎゃあぎゃあ騒いでいると奥からしわがれ声が聞こえてきた。

「なんじゃい騒々しい。ワシはまだ寝足りないんじゃ……」

 部屋の中からガサゴソと音を立てて登場したのは、

「ん? おお……これはこれは、リリス嬢じゃったか」

 リリスの存在に気付いた声の主は、闇の中から姿を現す。洗濯など碌にしていないボロ雑巾のような白衣を纏い、逆立った髪の毛と蛇のようなほっそりとした手足を持つ長身痩躯の男の姿は明らかに異様だった。

「だ、誰だ貴様!?」

「お元気そうね、ベルーダ博士」

 強い警戒心を抱くレイとは裏腹に、リリスは目の前の男の素性を知っている口ぶりだった。

「どうしたリリス嬢? 顔に蜘蛛の巣なんか張りおって。今流行りのメイクか?」

 ほっほっほ、と笑うベルーダに対して、レイは怒りを露わにして訴える。

「そんなわけないだろう! 大体こうなったのは、貴様がきちんとこの部屋を掃除していないからであろうが!」

「レイ、ひとまず抑えて」

「しかしリリス様!!」

 レイをなだめるリリスは、本来の用件を果たすべく博士と話を進める。

「用件は分かってるでしょ、ベルーダ博士。例のものは?」

 今か今かと待ちわびていたベルーダはにんまりと歯を見せて笑い、親指を立てる。

「ウシシ! バッチグ――じゃな!!」

「それ、古すぎて今の子にはわからないのでは?」

「だから何の話をしているんですか!?」

 相変わらずメタな発言の意味はわかりかねたが、ただ一つレイがわかっていること――それはリリスがこの洋館に住む怪しげな男に何らかの用事があるということだ。

 どこか胡散臭い雰囲気を漂わせるベルーダという男を訝しげに見つめるレイは、リリスがベルーダの手から頼んでいた物を受け取るところを見た。

「これがそう?」

 リリスは渡されたアタッシェケース に入れられた物を見つめる。レイはケースの中に厳重に仕舞われていた、ベリアルリングと同じくらいの大きさをした翡翠 色の指輪があるのを見つけた。

「あの……これは?」

 レイが尋ねるとベルーダは待ってましたとばかりに説明する。

「新しく開発した強化変身リング――ワシ渾身の力作じゃ。まぁ使う分には構わないが、ひとつだけ注意しておくれよ、リリス嬢」

 ベルーダの言葉にリリスは首をかしげる。

「何かしら、ベルーダ博士?」

 ベルーダは、うむ、とうなずくと言葉を続けた。

「近頃は警察の動きも活発じゃ。あまり派手に動き回って奴らに捕まるようなヘマはしないでほしい」

 すでに何度も警察との対決を経験してきたリリスは余裕を見せてベルーダに言った。

「わざわざそんなこと? 大丈夫よ、私はそういう場面に出くわしても持ち前の知恵と勇気でどうにでも切り抜けるから」

「さすがはリリス様! 何とも頼もしいお言葉!!」

 レイがリリスの頭上をくるくると飛び回る。

「本当に大丈夫なのかのう……何か不安なんじゃが」

 忠告を聞き入れないリリスにベルーダは心配そうに呟くが、却ってリリスの機嫌を損ねた。

「ちょっと。女の子一人こんな不気味なところに連れてきて約束守らないっていうの? だったら、私だって警察の力を使ってあなたを拉致監禁の容疑で逮捕してもらうわよ」

「わ、わかったわかった! 持って行くがよい、悪魔め!」

 シャレにならないリリスの発言に、ジト目になってベルーダは言った。

「ありがとう博士。悪魔はね、自分の欲のためなら手段を選ばないから」

 ベルーダは目の前の少女を見て疑問に思う。悪原リリスとは、世にも恐ろしい少女である。元来が悪魔である上に彼女は徹底した現実主義者で利己主義者。十四歳という若さでここまで肝の据わった子はそういないだろう。そして何より、そんな彼女がどうして〝プリキュア〟という柄にもない非現実的な力に頼っているのか。

「リリス嬢」

 用件を済ませて帰ろうとした際、ベルーダが低い声で彼女を呼び止めた。立ち止まった彼女に対し、ベルーダは深刻そうな顔を浮かべ呟く。

「人の身でプリキュアになるのはともかく、悪魔であるお主がプリキュアになるということは想像以上の代償を払わねばならぬぞ」

「……わかってるわ。だけど私は、考えて立ち止まってる暇なんてないの」

 彼女が選べる選択肢は何も一つだったわけじゃない。だが、彼女は敢えて選択肢をたった一つに絞り、最も過酷な運命とリスクを背負った。

 一体何が、彼女をそのような運命に立ち向かう覚悟を持たせたのか――それを知るのはもっと先の話である。

 

           *

 

黒薔薇町 くろばら河川敷

 

 時刻は午後三時を過ぎていた。天城はるかは夕飯の買い出しを終えると、家路を歩きながら得意げに鼻歌を歌っていた。

「今日のお夕飯は~~~♪ ブタとタマゴの他人丼ですよ~~~♪」

 リリスが隣にいれば、中学生にもなって何恥ずかしいことしてるの、と諌められたに違いないが、その彼女は今ここにはいない。諌める相手がいない分、伸び伸びと心のままに歌を歌うことができた。

 そんな折、不意に丘下の河川敷に目をやると、はるかの目に川辺を覗きこむ小さな子どもの姿が映り込んだ。

 鼻歌をやめた彼女は、じーっと川辺を見つめたままピクリとも動こうとしない奇妙な子どものことがやけに気になった。

「あれは……はっ!! まさか!!」

 はるかは安易な想像を働かせた。彼女の脳裏に、子どもが川に身を投げるという悲惨な光景が思い浮かんだ。矢も楯もたまらず彼女は慌てて子どもの下へと急ぐ。

「待ってください!! いけません、そんな風に命を粗末にするようなことは絶対にダメですよ――!!」

 早く助けなくては、とはるかは勢いよく丘を駆け降りる。だが直後、坂の上で足を滑らせてそのままの勢いで転がり始める。

「うひゃあああ~~~~~~!! 誰かヘルプミーです――!!」

「え?」

 はるかの悲鳴を聞いた子どもが思わず振り返った。転がり落ちて来た彼女は子どもの横を通り過ぎ、一人勝手に川の中へと転げ落ちた。

「た、助けてください!! 私、泳げないんです!!」

 川に落ちた彼女はひどく狼狽し、一人で水の中で手足をばたつかせる。

 子どもははるかの狼狽ぶりに言葉を失っていたが、このまま放置しておくのもかわいそうだと思い、苦笑いの末に言ってやった。

「あ、あの……その川、浅いと思うよ」

「ハヒ?」

 指摘を受けると、浸かっていた水辺がひどく浅かったという事実にはるかは気付いた。

直後、自分がいかに恥ずかしい真似をしていたのかを考え、顔を真っ赤に染め上げ、頭から湯気を出した。穴があったら入りたいと本気で考えるほどの羞恥心をはるかは味わった。

 子どもは、少しドジな彼女の姿を見て思わず破顔一笑する。

「お姉ちゃんったらおもしろいね! もしかして、お笑い芸人さんでも目指してたりするの?」

「ち、違いますよ!! はるかはそんなつもりは……私は君がてっきり川に身を投げてしまうのではないかと思って……」

 子どもは突拍子もないことを言われてさらに笑う。

「そんなことするわけないよ。珍しい魚がいたからうわぁーすごいなー! って顔を覗きこんでたんだ」

「はあ……そうだったんですか……骨折り損のくたびれもうけですね……は、は、はっくちょん!!」

 岸部に上がらず川の水に浸かったままだったはるかは、安堵したせいか急に寒さを全身に感じて身震いする。

「大丈夫? 待ってて、すぐに温めてあげるから」

 そう言うと、子どもははるかに近づき、おもむろに目を瞑る。

 瞬間、子どもの足元に青色に輝く魔法陣が展開され、さらには背中にリリスと同じコウモリを模した悪魔の翼が生えてきた。

「ハ、ハヒ!?」

 予想外の出来事だった。驚き戸惑うはるかを余所に、その子どもは魔力を使ってはるかの服を瞬時に乾かし、冷えた彼女の体温を上昇させた。

「はい♪ 終わったよ」

 満面の笑みで答えた子どもに言われると、確かにずぶ濡れになったはずの衣服が乾き、先ほどまで感じていた寒さを全く感じなくなったことを実感する。

「あの……もしかしてあなた、悪魔なんですか?!」

「そうだよ。本当は無暗に人間に正体をバラしちゃいけないんだけど、お姉ちゃんからは何だか同じ匂い を感じたから、大丈夫かなーって。というか、どうしてお姉ちゃんはこの世に悪魔がいるって知ってるの?」

「へ!? そ、それは……えーとですね……」

「無理してウソつかなくていいよ。それにお姉ちゃん、ウソつくのあまり得意そうじゃないかな、ぼくが見たところ」

 何と言って誤魔化せばいいのだろうと、はるかは考えていたが、目の前の子ども悪魔はそうした彼女の不器用な性格を瞬時に見抜いた。

 リリス然り、悪魔というものはどうしてこうも達観しているのだろうか。はるかは目の前の子どもが子どもらしくないと思いつつ、本当のことを正直に答えることにした。

 

「そっか。お姉ちゃんの友達が悪魔なんだね」

「はい、まぁ……」

 はるかから話を聞いた子ども悪魔は、取り立てて騒ぐわけでもなければ悲嘆するわけでもなく、ありのままに事実のみを受け止めた。

 不意に隣に座る子ども悪魔を見つめると、それに気付いた彼ははるかに笑顔を見せた。精神はとても子どもらしくなかったが、その邪気の感じられない笑顔には子どもらしさを感じ、はるかは内心ほっとした。

「ぼくギャレット。年は十歳、小学四年生」

「天城はるかです。私立シュヴァルツ学園の二年生で、風紀委員です!」

 二人は自然に握手を交わし、親睦を深めあう。

「はるかお姉ちゃん。お姉ちゃんの友達のリリスっていう悪魔……ぼくにも紹介してくれないかな?」

「はい! そんなことならノープロブレムですよ!!」

 

 一方、その頃。ベルーダ邸を後にしたリリスのスマートフォンにはるかからのメールが届いた。

「はるかから? 何かしらね……」

 送られてきたメールの内容を確かめた瞬間、リリスは思わず目を見開き言葉を失いかけた。

「これは!!」

「どうかしましたか?」

 普段このような大きな声をあげないリリスにレイが疑問を投げかける。

 すると、リリスは静かに言葉をつないだ。

「レイ。私たち悪魔の生き残りが見つかったわ」

「なんですと!?」

 リリスの報告にレイも大声をあげる。

「はるかが偶然見つけたんですって。今すぐ河川敷に行くわよ!」

 リリスはアタッシェケース片手に、全力疾走ではるかとギャレットが待つ河川敷へと向かい走り出した。

「リ、リリス様!! お待ちくださーい!」

 レイは慌てて翼を羽ばたかせる。レイにとって足の速い主を追いかけることも一苦労な話であった。

 

 リリスにメールを送ってから十数分 が経過した。河川敷ではるかとギャレットが談笑をしていると、リリスとレイが到着した。

「はるかー!」

「あ、リリスちゃーん! レイさんもこっちですよー!」

 上がった息を整えると、リリスははるかの隣に座るギャレットをまじまじと見つめる。

「この子がそう?」

「はい。ギャレットちゃん、さっき話していた親友のリリスちゃんです!」

 すると、ギャレットは立ち上がるなりリリスに対し仰々しく膝をつく。加えてそこから子どもとは思えない丁寧な言葉遣いで挨拶をする。

「お初にお目にかかります。魔王ヴァンデイン・ベリアルの 御令嬢。下級悪魔族の嫡子・ギャレットと申します。どうぞお見知りおきを」

「ハヒ!? 急にどうしたんですか、そのしゃべり方!? さっきまで年相応に話してませんでしたか!?」

「大人の階段どころか大人のエスカレーターですな」

 レイがつまらないギャグを言うのを聞き流し、リリスも応対する。

「ご丁寧にありがとう。いかにも私はヴァンデイン・ベリアルの娘、ディアブロス・ブラッドリリス・オブ・ザ・ベリアル……こっちの世界では悪原リリスと名乗っているわ」

 リリスに続いて、レイが胸を張って名乗りを上げる。

「私はリリス様に仕える使い魔、レイだ。気軽にダーリンと呼んでくれ!」

「何でですか!? どうしたいんですかレイさんは?!」

 つい最近読んだライトノベルから拝借したギャグらしいが、真面目なはるかやギャレットへの受けは良くなかった。

 その後、リリスとレイも交え彼女たちはギャレットと親睦を深めた。話をする内に、ギャレットはリリスの許可を受け、はるかと話をしていたときと同じ子ども口調になっていた。

「でも変な話ね。この近辺からは私以外の悪魔の気配を感じなかったのに……」

 リリスが疑問を口に出すと、ギャレットはすぐさま答えた。

「最近家族と一緒にこの町に越してきたんだ。だからまだこの辺の地理に詳しくなくて……適当に時間をつぶしていたら、このお姉ちゃんがいきなり転がってきて川に飛び込んじゃって」

 そのときの光景を思い出しクスクスと笑うギャレットに反して、リリスはジト目になってはるかを見つめる。

「何やってるのよあんたは?」

「あはは……これもすべてはるかの早とちりが招いたことでして……」

 案の定リリスからは冷たい目で見られた。ある程度予測はしていたはるかだが、実際に言われると相当に恥ずかしいものである。

「まぁいいわ。洗礼教会の粛清でほとんどの悪魔が根絶やしにされて、生き残った悪魔も散り散りになった今、こうして同じ悪魔と出会えたんだから」

「ぼくもびっくりだよ。同じ力を持った人がいるとなんだか安心するな」

 そう言ったときのギャレットの瞳を、リリスは 見逃さなかった。

「ギャレット。何だか悲しそうな目をしてるわね?」

「学校で何かあったのか?」

 ギャレットの悲しげな姿にレイも気にかける。

「あったっていうか……ほぼ日常茶飯事なんだけどね。お父さんもお母さんも、ぼくもそうだけど……みんなぼくらのことを気味悪がって近づこうとしないんだ」

 ギャレットの言葉にはるかは首をかしげる。

「どういうことですか?」

 これにはリリスが答えた。

「人間と違って悪魔は体や脳の構造が違うのよ。例えば同じ十歳の子どもでも、人間と悪魔とじゃ身体能力に極端な違いがあったり、学力が並み外れていたりとか……すべてにおいて人間を上回ることが多いわ」

 ギャレットはこくりとうなずく。

「だからなのかな……学校ではいつもイジメられるし、友達も全然できなかった。お父さんもお母さんも、仕事でもご近所づきあいでも上手くいかずに病んでるみたいでさ……自分のこともそうだけど、ぼくらは毎日生きづらさを感じてたんだ」

 切実に実体験を語りながら、ギャレットは近くの小石を川に投げる。

「引っ越した回数はどれくらいだったかな。とにかく、周りとうまくいかなければその都度引っ越すってのが当たり前になったよ。教会の影にも怯えながら、そうやって、逃げ続けることしかできなかったんだ」

「――理解者がいないってことは、確かに窮屈な話よね」

「リリス様……」

 悪魔という人ならざるものが、人間が支配する世界で「人」として生きることがどれだけ大変なことなのかを、リリスは身に染みるほど理解していた。ギャレットが味わってきた苦しみも悲しみも同じ悪魔だからこそ共感し合える。

 リリスはギャレットの手を優しく包み込んだ。そして柔らかい笑みで語りかける。

「安心してギャレット。あなたたち家族の味方はここにいる。もう、これ以上苦しむ必要なんてないわ」

 聞いた瞬間、ギャレットはハッとした顔を浮かべる。

 そんなリリスの厚意に触発され、はるかも、そしてレイも、その手をリリスの手の甲 に重ね合わせることでギャレットの小さな手を包み込んだ。

「ちょっと人より運動神経が良かったり、勉強ができたぐらいで虐げるようなことははるかも絶対にしません!! さみしいときはこの胸にどーんとぶつかって来ても大丈夫ですよ、ギャレットちゃん!」

「まぁなんだ。つらかったら泣いてもいいんだぞ。ハンカチくらいは貸してやるから」

 みんなの優しさを一身に受けてギャレットは笑みをこぼす。

「リリスお姉ちゃん……はるかお姉ちゃん……ありがとう!!」

 一人呼ばれなかったレイはその場でずっこけた。

「おい、待ってくれ! 私を忘れていないか!?」

「あ、うん……じゃあ、ついでに」

「ついで!? 私はついでなのか!?」

 無下に扱われるレイと、そんな彼を笑うリリスとはるか。この光景を見て、ギャレットは久々に心の底から笑うことができたと感じたのであった。

 

 それからというもの、ギャレットはほぼ毎日のようにリリスたちと会い、交流を深めていった。そして、みんなで同じ時間を過ごす中で、自然に笑顔を取り戻していった。

 ある時は川で遊んだ。

 小石の水切りでどこまで届かせられるかを競い合った。

 ――といっても運動神経抜群の悪魔二人はすぐにコツをつかんで対岸まで届くほどになってしまい、ほとんどはるかのスパルタレッスンの時間になってしまったが。

 それでも、最初はまったくと言っていいほどできなかったはるかだったが、三回、四回と上達していったときには、ギャレットに「すごいよ、はるかお姉ちゃん! よくできたね!」と満面の笑みで褒められ、顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべた。

 それを見たリリスが、

「これじゃどっちが年上かわかったものじゃないわ」

 と呆れて言うと、自然にみんなで笑っていた。

 ある時は森で遊んだ。

 木登りをすれば、やはり運動の苦手なはるかがリリスのスパルタに付き合わされる形となってしまったが、ようやく登り切ったときにギャレットが、

「がんばったはるかお姉ちゃんへのご褒美だよ」

 と辺りの木を削って作ったブローチをプレゼントしてくれた。

 その瞬間は、ギャレットが潰れてしまうのではないかという勢いではるかが彼をぎゅっと抱きしめ、みんなで笑いあった。

 みんなで商店街に行き買い物をした日もあった。

 食料品を買い込んだ帰り、ふと通りかかったたい焼き屋を前にギャレットが立ち止まり、財布を覗いて少し悲しそうな目をしたのをレイが見ると、咳ばらいを一つして店主に声をかけ、自分の財布からたい焼きを買ってあげた。

「ほれ、買い食いはあまりマナーがよくないが、たまになら神、いや、魔王様も許してくれるだろう」

「え、いいの? ……ありがとう! 一度でいいから友達とこういうこと、してみたかったんだ」

 ギャレットがにこりと笑い、それを見ていたリリスに、

「私にもいつもこれくらい甲斐甲斐しくいてほしいものだわ。でも、今日のところは褒めてあげる」

 と主のお褒めの言葉もいただき、レイは鼻の頭をこすって照れを隠した。

 ギャレットが家に招待してくれたこともあった。

 ギャレットの家族は人里離れた森の奥に居を構え、そこでひっそりと暮らしていた。

 両親がリリスに会った最初の頃は、あの悪魔界を統べる魔王の娘と聞いて平伏していたが、数少ない悪魔族の同胞ということや、リリス自身が同胞に壁を作られることを拒み、ギャレット同様、普通の態度で接することを許した。彼らも最初は恐れ多いことと硬い態度で接していたが、何度も遊びにいく内に徐々に慣れていき、すっかり打ち解けてお菓子や料理を振舞ってくれた。

 気付けば、家族を失ったリリスにとっては、ギャレットの家がはるかの家に続く貴重な家族との絆を思い出す場所になっていた。

 ギャレットから聞いていたとおり、出会った頃の両親はとてもやつれた顔をしていたが、他の悪魔に出会えたことに安心したのか、リリスたちと交流を重ねるごとに顔色はよくなっていった。そんな同胞たちの姿にリリスもほっとしたし、彼らとの生活を守っていきたいと強く願った。

 いつものようにギャレットと遊んでいたある日、おもむろにギャレットは口にした。

「いつの日か……本当にいつの日かでいいから、人間と悪魔が仲良く暮らせるようになったらいいのにな」

 それまでにこやかに笑っていたはるかやレイは、ギャレットの言葉を聞いて一瞬深刻な顔をしたが、やがて静かに微笑みうなずいた。

「大丈夫ですよ、ギャレットちゃん。必ず仲良くなれる日が来ます。何せはるかとリリスちゃん、そしてギャレットちゃんの関係がそうなのですから!」

「うむ。人間と悪魔は手を取り合い暮らしていける。我々がそれを示していけばよいのだ」

 二人の言葉にギャレットは力強くうなずくが、もう一人、この言葉に心打たれた者がいた。

「……そうね。人間と悪魔、時間をかければいつかはわかり合える日がくるかもしれない。――約束するわ。必ず私たちがその証人となることを」

 リリスははるかやレイ、ギャレットたちと過ごした日々の中で、そう信じてみたくなった。

 その後もリリスたちはギャレットとたくさんの時間を一緒に過ごし、いつしかギャレットを本当の弟のように思うほどになった。

 このまま平穏な時間がずっと続く……リリスたちはそんな淡い幻想を抱いていたが、すぐにその幻想は儚く散りゆくものだと気付かされた。

 

 ――そう、あの日までは。

 

           *

 

異世界 洗礼教会本部

 

「なんだと? キュアベリアル以外の悪魔族の生き残りがいたと?」

 洗礼教会大司祭ホセアの元に届けられた凶報。驚愕する彼にこの情報をもたらしたのは三大幹部がひとり、モーセだった。

「私の調査によれば、十年前に我々が行った【デーモンパージ】から逃れた悪魔が少なくとも日本中に散らばったと思われます」

 ホセアはそれを聞いて苦虫を噛みつぶしたような顔をした。

「忌々しい悪魔どもめ……数はどれくらいいるか?」

「少なく見積もっても二十は……」

「ふむ、直ちに対策を考えねばならぬな。このまま悪魔どもが力を蓄え、万が一キュアベリアルと結託すれば間違いなく我々に総攻撃を仕掛けてくる。そうなる前に早いうちから芽は潰さなければ」

 ホセアが対策を思案していると、大聖堂の門が開かれた。

「ホセア様!!」

 門からはモーセと同じ三大幹部のひとりであるエレミアが大聖堂へと現れ、ホセアの下に駆け寄った。

「ご報告致します!! 下級悪魔の一体がキュアベリアルと接触した模様!」

「なんだと?」

 報告を聞いたホセアの眉間の皺がさらに深く刻まれる。モーセもまさかの事態に言葉を漏らす。

「恐れていた事態になりましたね」

 洗礼教会にとって悪魔は最大の障害にして、殲滅の対象である。いかに卑劣な手段に及ぼうとも、彼らは悪魔の殲滅に一切の躊躇も容赦もしない。

「エレミアよ、わざわざ言わずとも分かっておろうな?」

「御意! このエレミアにすべてお任せください。必ずや汚れた血を根絶してみせましょう」

 即座に答えたエレミアは闇の中に姿を消した。

 

           ◇

 

私立シュヴァルツ学園 校内

 

「よしとっ! 本日の見回り異常ありませんでした!!」

 ギャレットと知り合ってから三週間が経った。

 放課後、はるかは風紀委員の仕事である校内の見回りを一通り終え、帰宅の準備のために教室へと向かう。

 その道中、図書室の前を通りかかると扉が開かれ、偶然にもリリスと出くわした。

「あら、はるか。見回りは終わったの?」

「はい。今日も校内はノープロブレムでした! ところでリリスちゃんは今日も図書館に籠っていたんですか?」

「ええ。マルティン・ハイデガーの『存在と時間』を熟読していたわ」

「また難しそうなタイトルですね・・・リリスちゃんってほんとうに本の虫ですね」

「知はこの世の何ものにも勝る力よ。それに最近は警察の動きが気になってね。情報収集の傍ら、なるべく外に出ないようにしてるのよ」

 リリスの敵は今や洗礼教会だけではない。最近は警察が積極的にプリキュアの逮捕に乗り出しており、リリスに味方をしようとする者は極端に少ない。

「ですが、まだリリスちゃん本人の姿を見られた訳ではありませんし、そこまで心配になる必要があります?」

「甘いわね。科学捜査研究所なら人相だけで正体が掴めるわ。プリキュアに変身したところで骨格が大きく変わるわけではないもの。そうやって特定されて動き出される前にこっちはこっちで対策を打たないと」

 リリスが考える仕草を見せるとはるかは質問を投げかけた。

「具体的にどうするつもりですか?」

「そうね。せいぜいやれることと言えば家の周りの結界を強くして身を隠すくらいかしらね……」

 ブブブブ……ブブブブ……

 そのとき、リリスの懐に収まっていたスマートフォン――校則では所持を禁止されているが、レイやギャレットとの連絡のために隠し持っていた ――がバイブを鳴らす。

 電話の相手は、ギャレットだった。

『お姉ちゃん助けて!! 早く助け……ああああああああああ!!』

「ギャレット!? ギャレット!!」

 切羽詰った様子かと思えば、突然の悲鳴。ギャレットはその悲鳴を最後に通信が途絶し、そこからはツーツーと言う機械音だけが虚しく耳に残った。

「今の悲鳴は!? ギャレットちゃんに何があったんでしょう!?」

「はるか、急ぐわよ!」

 どうか無事でいて、と心に念じてリリスは廊下を駆け出した。

 

           *

 

黒薔薇町 森林地帯

 

 電話でのやり取りの後、リリスとはるか、途中で合流したレイはギャレットの家へと向かった。そして現場に到着するとあまりに悲惨な光景が広がっていた。

「な……」

「そんな!!」

 森の中に建てられたギャレットの家は見る影も無く崩壊していた。木の焦げた臭いと白い煙が立ち込め、壊れた家財道具が散乱している。

 リリスとはるか、レイはこの現実離れした光景に言葉を失い呆然とする。

「一体なにがどうなっているんでしょうか……ギャレットちゃんはどこに?」

「リリス様! ここから悪魔の臭いが!!」

 レイが壊れた建築材の下から悪魔の臭いを感じ取った。直ちにリリスたちは瓦礫をどかし始めた。

 しばらく掘り続けると、悲惨な姿となったギャレットと彼の両親が埋まっていた。触れてみればすっかり体が冷たくなって、力なく倒れている。

「「ギャレット(ちゃん)!!」」

「何ということでしょう……誰がこんなひどいことを……」

 レイは悔しさで体を震わせる。

 ついこの間まで一緒に笑い合っていたはずのギャレットの変わり振りを見て、はるかはその場に泣き崩れそうになった。

 リリスは生気を失ったギャレットの手のひらを握りしめると、顔を伏せたまま口を開く。

「こんな血も涙も無いことができるのは……あいつらだけよ」

 刹那、気配を察知して思い切り後ろへと振り返った。森の奥から出て来たのは不敵な笑みのエレミアだった。

「フフフフ。血も涙も無い……それは我々のことを指しているのか?」

「洗礼教会……!!」

 リリスは強い悪意をもってエレミアを睨みつける。その隣でレイが問いかける。

「貴様か……ギャレット諸共、我々の同胞を手に掛けたのは!?」

 見たかった光景が見られたエレミアは満足そうにうなずき言葉を紡ぐ。

「ふん。言っただろう、我々は人々の平和と繁栄の障害となり得る悪魔は徹底的に排除すると。私は忠実にその使命を全うしたまでだ」

「だからって……こんな小さな子を手に掛ける必要があるんですか!? ギャレットちゃんがあなた方に何をしたって言うんですか!!」

 怒気を孕んだ声ではるかが訴えかけたところ、エレミアは下顎に手を添え考える。

「確かに、その子どもは取り立てて我々に逆らったという訳ではない。私としても子どもを手に掛けることは多少なりとも心が痛んだものだ。だが、子どもといえども実体は悪魔だ。それさえわかれば……私はその心を闇に売り渡す覚悟で敵を殲滅できる」

「心を闇に売り渡す覚悟ですって?」

 あまりに身勝手なことを言うエレミアに、我慢の限界を感じた。

 リリスはエレミアの前に出ると、ベリアルリングを指に嵌め、同胞を殺されたことに対する悲しみを必死にこらえ、その目に涙を溜める。

「言うに事欠いて今更何を言うのかと思えば……あんたたちは誰の目から見たって心を闇に売り渡した最低な連中よ!!」

 刹那、ベリアルリングの力を解放し――リリスは独善悪に打ち勝つ力を発現した。

「ダークネスパワー!! プリキュア、ブラッドチャージ!!」

 数十秒の変身を終え、悪原リリスは闇の力によって歪んだ正義を打ち砕く力の姿・キュアベリアルとなって宣言する。

「独善滅ぼす暗黒の力! キュアベリアル!」

 

「今日こそは貴様の息の根を止めてみせる――平和の騎士よ、生まれよ!! ピースフル!!」

 十字架を掲げたエレミアが今回の素体として選んだのは、跡形も無く崩壊したギャレット邸に使われた建築材である。神々しい光が放たれると、建築材は姿を平和の騎士《家屋ピースフル》 へと変貌させた。

『ピースフル!!』

 現れた家屋ピースフルを正面に見据えて怒りの丈をぶつける。

「許さない。あんたたちの独りよがりな正義のために、同胞を奪われたこの悔しさ……雪辱……どうしようもない怒り……その身体で払って もらうわよ!!」

 瞬間、地面を強く蹴ったベリアルが家屋ピースフルへと突進する。

「うおおおおお!!」

 渾身のストレートパンチが家屋ピースフルに炸裂した。重い強烈な一撃に体をのけぞる家屋ピースフルだが、すぐさま反撃へと移る。

『ピースフル!!』

 あらゆる建築材を一緒くた に打ちこむという大胆な技を披露する。周辺に立ち並ぶ木々をなぎ倒す強力な一撃を、ベリアルは軽快に避ける。

 そうしてすべての攻撃を避け終えたところで、レイが彼女の側に飛んできた。

「リリス様! もはや情けをかける必要はありません!!」

「そうね。こんな奴らを生かしておけば、不器用なりに人間との共存を図ろうとしている奇特な悪魔を失いかねないわ」

 ベリアルは一秒でも早く決着をつけてやろうと思った。ベリアルはベルーダから渡された例の指輪を腰元のリングホルダーから取り出す。

 翡翠 色に輝く指輪をベリアルリングの上から重ねあわせる様に嵌め、力強く右腕を天に掲げ宣言する。

「フィルストゲシュタルト!!」

 声高に宣言した瞬間、フィルストリングが目映い光を帯びてベリアルの体を翡翠のオーラで包み始める。

 高圧縮された魔力がベリアルの全身を包み込むと、緑風が彼女の体へと吸収されていく。さらに衣装も緑を基調としたものとなる。

 胴体は防弾服、下半身は弓道衣を彷彿とさせるデザインで、左肩には突き出たショルダーアーマーを装備。さらには、聴覚を強化する耳飾りが付与。ところどころに風の意匠があしらってある。現われたのは機動性を重視した第二の強化変身――その名を。

 

「キュアベリアル・フィルストゲシュタルト」

 

「その姿……新たなるエレメントチェンジか!?」

「ギャレットの無念はきっちりと晴らさせてもらうわ。フィルストゲシュタルトの力、とくと味わいなさい!!」

 変身を終えるや否や、レイが高らかに声を上げる。

「ボウガンチェイーンジ!!」

 叫んだレイの体が光り輝く。レイはドラゴンの姿からボウガンの姿へと変わり、ベリアルの手に落ち着いた。

「新しい力がなんだ! ピースフル、ゆけ!!」

『ピースフル!!』

 どんな姿になろうとエレミアは攻撃の手を止めることはなく、家屋ピースフルを使って襲撃を行う。

 家屋ピースフルが先ほど同様に建築材をベリアル目掛けて打ちこんできた。対してベリアルは【魔銃レイボウガン】となったレイを構え、前方から飛んでくる障害を片っ端から撃ち落とす。

 

【挿絵表示】

 

「はっ!」

 緑風がそのままボウガンの矢となり、鋭さを持ったそれが家屋ピースフルの攻撃をことごとく防ぐ。

 さらにそこから、ベリアルは隙を見せた家屋ピースフルの胸部目掛けて強烈な一撃をお見舞いした。衝撃に家屋ピースフルは仰け反り、巨体をひっくり返らせた。

「バカな……この力はどこから?!」

「ギャレットの切なる想いをこの弾丸に込めて――最後の一撃を撃ちこむから、覚悟なさい」

 自らを善だと嘯き、悪魔だからという理由で未来ある子どもの命を奪った目の前の邪悪を絶対に許すことはできない。

 ベリアルはレイボウガンに漲る魔力を集約させ、家屋ピースフルに撃ちこんだ。

 

「プリキュア・スーパーウインドラグーン!!」

 

 放たれた巨大な魔力と緑風はオオワシのように天を翔ける。そして標的である家屋ピースフルへと衝突、一瞬にしてその力を無力化する。

『へいわしゅぎ……』

 新たな力を手に入れたベリアルによって家屋ピースフルは消滅した。

「ぬおおおおおお!! 認めん、認めんぞ!! 悪魔如きが我々に刃向うなどと――!!」

 いつものような捨て台詞を残し、エレミアは去って行った。当然、ギャレットを手に掛けたことへの謝罪の言葉は無かった。

 

 戦いの後、リリスたちはエレミアによって殺害されたギャレットとその家族の墓を作ってあげた。

 三人の悪魔の魂が来世で報われることを祈りたいところだが、悪魔であるリリスとレイにはそれができない。だからはるかが二人の分も含めて強く祈った。

「結局、守れなかったわ。ギャレットも、約束も……」

 

 

『いつの日か……本当にいつの日かでいいから、人間と悪魔が仲良く暮らせるようになったらいいのにな』

 

 

 ギャレットと出会ってから交わされた約束――それはひとえに、ひた向きにこの世界で生きようと努力し続けた、ギャレットの切なる想いであった。

 墓前でリリスはその約束を果たせなかったことを何よりも後悔していた。意気消沈とする彼女に、レイとはるかが声をかける。

「リリス様。約束はまだ守れます」

「ギャレットちゃんの想いを引き継ぎましょう。いつか必ず、実現してみせましょう」

 二人から勇気づけられ、リリスも心なしか先ほどまでのしかかっていた重い荷が幾ばくか軽くなった気がした。

 志半ばで命を落とした三人の悪魔たちに花を添え、リリスは踵を返し帰り際に呟いた。

「――できることなら、私もそんな幻想を信じてみたいわね」

 

 

 

 

 

 




次回予告

リ「洗礼教会に警察。周りは敵だらけだけど、誰か味方してくれる人はいないかしら?」
は「こんなとき、はるかにもプリキュアに変身できる力があればいいのですけどね…ハヒ!? 何だかわかりませんけど、はるかはとってもデンジャラスな目に遭っています!!」
リ「あんたたちは……! まさか、この町にあいつらまでやってくるなんて!!」
「ディアブロスプリキュア! 『第三の勢力!?堕天使の魔の手!』」
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