彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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嵐の前の閑話回。

佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


106:悪い魔女の悪企み。

「ベアトリーゼさん、貴方の予想を聞かせて」

 ビビに諮問され、ベアトリーゼはアンニュイ顔で予想というカタチの原作知識を披露する。

「反乱軍に最後のテコ入れをするでしょう。変身野郎にコブラ王を偽らせ、何かデカい悪さをさせる。合わせて連中に得物を供給するはず。怒り狂ったところへ武器を手に入れた反乱軍は、間違いなく激発しますから」

 

 どいつもこいつもクロコダイルの思い通りに踊らされてるし。と心の中で容赦なくこき下ろしつつ、ベアトリーゼは続けた。

「問題はこのテコ入れがいつ行われるか。既に行動へ移っていた場合、止めることは距離と移動時間の関係から困難です。よって、殿下の御意を叶えるとしたら、私は反乱軍の激発に備えてサンドラ大河上に待機。反乱軍が首都アルバーナへ行軍中のところを邀撃し、威嚇攻撃で足止めを図ることになるかと」

 

「その場合、クロコダイル討伐は私達の手で、ということね」

 ベアトリーゼはほっそりした顎先に右手を添えて思案顔を作るビビから目線をルフィへ移し、

「私がクロコダイルを討っても構いませんが」

「ダメだ! クロコダイルは俺がぶっ飛ばす!」とルフィが口をへの字に曲げる。

「――ということなので」と微苦笑した。

 

「あんたには化物の追手が来るんでしょう? それはどうするの?」

「大河で待機中に襲ってくるなら、カトレア-アルバーナ間の砂漠に引き込んで始末する。上手くいけば、行軍中の反乱軍とかち合わせて総攻撃そのものをめちゃくちゃに出来るかもしれない」

 ナミの指摘に応じるベアトリーゼの面差しは、実に楽しげで。

 

「あんたってホントに悪企みが得意よね」

 ナミが顔をしかめてツッコミを入れるも、ベアトリーゼは相手にせず話を進める。

「レインベースに着いたら、クロコダイルへ仕掛ける前にまず電伝虫を確保して。私の子電伝虫の番号を預けるから確保次第、連絡をよこしてちょうだい」

 

「電伝虫なんて簡単に手に入るもんじゃねえぞ?」

 ゾロの指摘に、

「そんなのバロックワークスの連中を何人か拷問すれば――」

 とても嫌そうに渋面を浮かべたり、ドン引き顔を作る少年少女に嘆息を吐きつつ、ベアトリーゼは言った。

「適当に締め上げれば、電伝虫の在処を吐くでしょ。とにかく電伝虫を調達すること。良いわね?」

 

 若き海賊達の首肯を確認し、ベアトリーゼは話を進める。

「クロコダイル討伐と並行して陰謀の証拠を確保して」

 

 どういうこったい? と言いたげな若造達へ、荒事のベテランが説明する。

「アラバスタ国民のクロコダイルに対する信用や信頼は低くない。何の証拠もなくクロコダイルを元凶と言っても、国王がクロコダイルに自身の悪事の罪をなすりつけたと見られかねない。それに確たる証拠があれば、反乱軍の説得も易い」

 

 なるほど、と頷く若人達。ビビが一歩踏み込む。

「具体的にはどういうものが?」

 

「クロコダイルとバロックワークスの明確なつながり。ダンスパウダーを調達した記録や帳簿。王国軍と反乱軍に潜伏している工作員のリスト。その他諸々の悪事絡みの記録。クロコダイル本人か、ナンバー2のロビンが持っているでしょう。どうにかしてそれらを手に入れてください」

 ベアトリーゼは言葉を編み続ける。

「証拠を入手したら、あるいは、クロコダイルを討伐したら。私が反乱軍を止めた際、ビビ様が直接お越しになるか、電伝虫を用いて彼らに真相を説明してください。アラバスタ王女である貴女が証拠を公開し説明すれば、彼らも耳を貸します。説得に成功すれば、彼らを止められるでしょう」

 

 100万人の軍事衝突を防げる。その希望にビビの表情が明るくなる。も、

 

「ただし、この作戦は反乱軍と王国軍が衝突する前までしか通用しない。衝突後に証拠が手に入っても流血を止められません。誰も耳を貸しませんから」

 ベアトリーゼは釘を刺すように告げ、瞬間、ビビと麦わらの一味が反射的に身を強張らせるほどの冷酷さを漂わせた。

「良いか、ガキ共。念を押しておくぞ」

 

 肝の太いルフィやゾロ、サンジすら冷汗を滲ませて身構えるほどの圧力。ビビとナミは息を呑んで身を強張らせ、ウソップとチョッパーは震えあがった。

 

 ベアトリーゼはビビと麦わらの一味へ冷厳に語り掛けた。

「お前らが失敗したら人が死ぬ。王国軍も反乱軍も大勢死ぬ。首都周辺に展開している難民だって無事では済まない。百単位、千単位、なんなら万単位の人間が死んだり手足や耳目を失くしたりする。お前らが下手を打ったら、大惨劇が起きる。そのことを忘れるな」

 

 ふ、と艶めかしく息を吐いて威容を解くと、ベアトリーゼは別人のように気だるい微笑を湛える。

「まぁ、レインベースに着くまでにしっかり話し合うといいよ。じゃ、私は行くから頑張ってちょーだいな」

 

 

 美女2人が馬に乗って去っていく。

“簡単な話し合い”が終わり、ビビと麦わらの一味は揃って大きく深呼吸。

 

「あの女、怖すぎだろっ!」

「俺、チビるとこだった……」

 ウソップとチョッパーが泣き言をこぼし、

 

「俺達が失敗したら大惨劇が起きる、か。責任重大だな」

 サンジは煙草に火を点け、大きく紫煙を吐いた。

 

「なに、上手くやりゃあ良いだけだ。問題ねェ。なあ、ルフィ」

 不敵に笑うゾロがルフィに水を向ければ、ルフィは拳を打ち合わせて鼻息を荒く吠えた。

「おぅっ! クロコダイルをぶっ飛ばせばいいんだろ? 俺がやるぞっ!」

 

 そんな武闘派二人組を見て、眉間を押さえるナミ。

「この脳筋共を織り込んで作戦を立てろ、ってことね……」

 

「皆。レインベースに向かって出発しましょう」

 ビビは麦わらの一味を促し、砂漠へ向かって踏み出す。その歩みに迷いはない。

 

       〇

 

 ビビ達がレインベースに向かって砂漠を進んでいる頃。

 反乱軍本隊が駐留するオアシス都市カトレアでは……

 

「70万か。兵力は国王軍を優越したが、実態はお寒い限りだな」

 サングラスをかけた向こう傷の青年――反乱軍の首魁コーザはどこか倦み疲れた顔で呟く。

「刀剣類はともかく、銃は絶対数が足りず。砲は数えるほどしかない。弾薬は1丁当たり10発もねェ。おまけにどいつもこいつも渇きと飢えでぶっ倒れる寸前ときた。近頃じゃ王国軍との小競り合いより、強盗働きするバカ共の処罰や粛清で頭数が減る始末だ」

 

 反乱軍と威勢よく名乗っても、つまりは渇き餓えた暴徒の集団だ。今はまだ各地の顔役達や派閥の頭目達が協力してくれているが……もはや限界だ。早晩、反乱軍は瓦解し、それぞれが軍閥として限られた水資源の奪い合いを始めかねない。

「これで首都に攻め込んだらどうなる?」

 

 傍らに控えていた軍隊上がりの男が頭を振る。

「賭けてもいいが、首都に辿り着く前に三分の一が砂漠の酷暑でぶっ倒れるだろうな。で、そこから半分が首都の防御砲火で死ぬか逃げ出すだろうよ。なんせ大半が素人に過ぎないからな。この段階で残りはだいたい20万ちょい。30万の王国軍とやり合ったら負ける」

 

 冷徹な軍事的現実。今、動いても負ける。しかし……

「だが、動かなければどの道終わりだ。これ以上は俺達ももたない」

 コーザは溜息を吐き、幹部達へ命じる。

「どこからでも良い。なんなら手作りだって構わない。とにかく、武器を搔き集めろ」

 

「……やるのか?」

 幹部達の顔に緊張が走る。誰の顔にも決戦へ臨む歓びなど無い。

 

 当然だ。誰一人として、戦いたくて戦っているわけではない。戦うしかないから、戦っているのだ。

 王国軍を倒し、国王を討ち、ダンスパウダーを使ってでも、雨を取り戻して砂に呑まれた各地を再建する。干からびていくアラバスタを救うには、もう他に手はない。

 それが対症療法でしかなくとも。

 

 コーザだって、幹部達だって分かっている。いや、反乱軍という寄せ集めの首魁や幹部となって理解してしまった。

 たとえ水を得ても国王を倒してしまったら、アラバスタ王国はもう元には戻れないということを。

 

 過酷な環境にあるこの国が平和と安寧を享受できていた理由は、ひとえに民衆が王家の下に結集し、手を携えてきたからだ。

 アラバスタ国民にとって、王家は指導者であり、国の象徴であり、結束と連帯の要なのだ。

 その王家が倒れたら……この国は各地の派閥や部族が軍閥化し、同胞同士が相争う猖獗の地になってしまうかもしれない。

 

 それでも、もはや他に選択肢はない。

 前へ進まなければ、渇き餓えて死ぬしかないから。

 

 コーザは()の重さと暗澹たる未来に苛まれながら、決意を告げた。

「武器が揃い次第、首都へ総攻撃だ」

 

 

 コーザが幹部達へ決意を告げていた頃。

 ナノハナで別れたカルーは単独で砂漠を踏破し、首都アルバーナに帰還。ビビに預けられていた書簡を国王コブラへ届けることに成功。

 ビビの書簡から、内偵捜査によってバロックワークスの暗躍と全ての黒幕がクロコダイルであることが判明、また捜査の最中にイガラムが殉職したと知らされ、コブラは思わず顔を覆った。

「私の手落ちだ。クロコダイルがこの国の乗っ取りを図っていたとは……政府に飼われようと、いやそれすらも奴は偽装にしていたのか。完全に油断させられた」

 

 イガラム不在のため護衛隊隊長代理を務めるチャカは、忸怩たる思いを込めて唸る。

「まさか、ここまでしてやられていたとは……っ!」

「イガラムさんが……っ」

 護衛隊副長にしてアラバスタ最強の戦士ペルが、敬慕しているイガラムの訃報に膝をつき、拳を握りしめて激しく憤る。

「おのれ、よくも……っ!」

 

 アラバスタ王国軍の両翼たる2人の様子を一瞥し、コブラは大きく深呼吸し決断する。

「チャカ。全軍に出撃命令だ。レインベースに向かい、クロコダイルを討つっ!」

 

 王の命令に護衛隊の2人は驚愕し、チャカは王の判断を尊重しつつも、意見を上申した。

「それは……危険です。反乱軍70万が機を窺っている今、首都を空けては――」

 

「構わん」

 チャカの言葉を遮り、コブラは明確に言い放つ。

「首都や王宮が反乱軍に押さえられたからなんだ。たとえ我ら全てが斃れようとも、クロコダイルを討ち果たし、奴の悪事を日の下に晒したならば、国民は再び手を取り合ってこの国を立て直せよう。だが、我らと反乱軍と相討つことになれば、クロコダイルを笑わせるだけだ。それだけは絶対にさせんっ!」

 

 コブラは険しい顔つきで、壮烈な決意を言葉にしていく。

「スナスナの実の能力者であるクロコダイルは、この砂漠の国では強大無比。我が軍の精兵30万をもってしても、多大な犠牲を出すだろう……だが、やり遂げねばならん。我らことごとく砂塵に屍を晒そうとも、この邪悪を討ち果たさねば、アラバスタに未来はないっ!」

 

 仁君と名高いコブラ王が、これほど冷徹な覚悟と冷厳な威容を見せたことはない。チャカもペルも王の気迫に呑まれ、圧倒されていた。

 

「軍議を開く。チャカ。今すぐ士官を集めよ。ペル。先行してレインベースを偵察せよ。出陣は明朝。それまでに全てを整えよ。私自ら率いレインベースへ親征する……ッ!!」

 コブラ王の治世始まって以来、初となる親征軍発足の勅命に、チャカとペルは自然と片膝をつき、応と叫んだ。

 

 

 反乱軍と国王軍が決戦の準備を始める中、麦わらの一味は砂漠を進む。

「しっかり話し合えっつってたけどよ。具体的にはどーすりゃ良いんだ?」

 ルフィの言葉を端緒に、ビビと麦わらの面々がうんうんと唸り始める。

 

「電伝虫を調達して、証拠を手に入れろ、か。前者はともかく、後者はどーしろと」

「クロコダイルを討ち取って、奴のアジトをガサ入れして証拠を見つけ出す。そんなところじゃねーか?」

 ウソップのぼやきにゾロが見解を披露する。

 

「あるいは、あんたらがクロコダイル達と戦っている間に、アジトに潜り込んで証拠を盗み出すとかね」

 エロラクダ(ナミ命名:マツゲ)の背からナミが言った。

「時間の余裕がないことを考えれば、二手に分かれる方が良いと思う」

「たしかに……相手は総仕上げに動いてる可能性があるもの。少しでも早く証拠を掴んでおきたいわ」とビビ。

 

「ともかく、現地に着いたらまず、電伝虫を確保だな。連絡がつかねェとベアトリーゼさんと連携が取れねェ」

 サンジの意見に全員が頷く。

 

「そういえば、あいつ俺達が自分の親友と戦うかもしれないのに、全然気にしてなかった」チョッパーが感じた違和感を口にする。「海軍から逃がすために一人で戦ったくらい大事な友達なのに、なんかおかしくないか?」

 

「何かしら思惑があるんだろうよ」ゾロは厳しい顔つきで「ありゃ存外に女狐だ。ナミより腹黒だ」

「誰が腹黒よっ!」とナミが眉目を吊り上げ。

「ナミは腹黒じゃねえよ。悪賢いだけだ」「抜け目ねェよな」「聡明で素敵だ」「頼もしいぞ」

 野郎共がフォローにならないフォローを入れる。

 

「電伝虫を手に入れる必要があるのは分かったけどよォ、下手に暴れると向こうに警戒されねェか?」

 狙撃手が不安顔で言えば、今度は副船長が不敵に口端を歪めた。

「そこは織り込んでやるしかねぇよ。幸い、絶好の“餌”がある」

 

「餌だぁ? そりゃビビちゃんをあぶねェ目に遭わせる気じゃねェだろうなぁっ!?」

「バーカ。もっと良い餌があるだろうが」

 サンジがグル眉を吊り上げて噛みつくも、ゾロは軽くいなして目線をルフィへ向けた。

「ん? なんだ?」とルフィは無邪気に目を瞬かせた。

 

 ウソップは合点がいったように大きく頷く。

「あー……たしかに絶好の餌だな。放っておいても騒ぎを起こすだろうし、止めても滅茶苦茶やるだろうし」

 全員がウソップの発言に同意し、しみじみとルフィを見つめた。

 

「なんだなんだ? なんで皆、そんな生暖かい目で俺を見るんだ?」

 居心地の悪さを覚えて顔をしかめるルフィを余所に、ゾロは顎先に手を当てて思案顔を作る。

「問題はこいつを餌にすると、一人でクロコダイルのとこに行っちまいかねねェことだ。少なくとも、電伝虫を確保するまでは、“お預け”させねェと」

 

「手綱取りがいるな……」コックが副船長の懸念を汲み取り「よし。ウソップ。お前、ルフィ係な。今からキャプテン・ウソップ改めハンドラー・ウソップだ」

「俺かよっ!?」

 突如、重大かつ困難な役割を押しつけられ、目を剥いて驚愕する長っ鼻。

 

「任せたわ、ウソップ。しっかり手綱を握りなさいよ」

「しっかりやれよ。ハンドラー・ウソップ」

「頑張って、ウソップさん」

 航海士とコックと王女に退路を塞がれ、狙撃手はヤケクソ気味に熱砂へ雄々しく叫ぶ。

「く……っ! 分かったよ! 引き受けてやるよっ! だけどなあ、言っておくぞっ! こいつをクロコダイルへ突っ込ませない以上のことは期待するなっ!」

 

「ウソップ、かっけぇっ!」

「チョッパー。勢いに騙されてるぞ。ウソップの言ってることは全然格好よくねェ」

 男らしく宣言するウソップの雄姿にチョッパーが喝采を挙げるが、ゾロがツッコミを入れる。

 

 そんな周囲のやり取りに、ルフィは唇を尖らせて遺憾の意を表明する。

「……お前ら、俺は船長だぞ? なんか扱いがおかしくねえか?」

 ……が、誰も船長の抗議を相手にしない。クルー達の不遜さに船長は拗ねた。

 

 ゾロは水筒を傾けて喉を湿らせ、話を進める。

「ルフィとウソップを追いかけるバロックワークスの兵隊共を、俺達が潰して電伝虫を手に入れる。それからクロコダイルのアジトに突入。クロコダイル潰しと証拠集めに分かれるかってとこか?」

 

「俺はクロコダイルをぶっ飛ばす方だぞ!」

「お前はそっち以外にあり得ねーよ」

 意気軒高なルフィへ苦笑を送るサンジ。

 

「大勢の命が俺達に懸かってるもんな」

 チョッパーはぶるりと大きく身を震わせ、尊敬の念を込めてビビを見る。

「ビビはずっとこんな重圧を抱えて頑張ってきたんだろ? すげーなっ!」

 

「これまではイガラムが、今は皆が支えてくれているから」

 ビビは控えめにはにかむ。可愛い。

 レインベースへ向かう一行の足取りは力強かった。

 

       〇

 

 トビウオライダーを預けていたサンドラ大河沿岸の集落に戻り、

「子供達を焚きつけた当人は魚釣り?」

 チレンは煙草を吹かしながら、釣り糸を垂らすベアトリーゼに冷ややかな目線を注ぐ。

 

「あの子達が成し遂げないことには、何もやること無いしね」

 ベアトリーゼはアンニュイ顔で欠伸をこぼし、ぷかぷかと水面で揺れるウキを見つめる。

 

「バケモノが来るかもしれないわ。ここに居たら、この集落の人達を巻き込むかも」

 真っ当な懸念。チレンは復讐と報復を果たすため、自身の生存を第一に考えているけれど、そのために無辜の人々を犠牲にしたいわけではない。

 

 大丈夫だよ、とベアトリーゼは安請け合いするように応じ、説明する。

「見聞色の覇気を広げてる。網に掛かり次第、動くさ。ここの人らは巻き込まないよ。あのバケモノにしても、私に食いつけば、チレンのことは無視するだろうから。チレンはそのままトビウオライダーで退避すれば良い」

 

「全部織り込み済みで、想定済みなのね」チレンは短くなった煙草を足元に棄てて「だけど、貴女の場合はちっとも安心出来ないのよね」

 

「酷いな」

 くすくすと笑い、ベアトリーゼは沈み込むウキに合わせて釣り竿を引いた。小ぶりな魚がぴちぴちと暴れている。

「出直してこい」

 針を外した小魚を河へ投げ込み、ベアトリーゼは釣り針に餌を付け直しながら、思案する。

 

 異物の私が干渉したことで、この“物語”にどんな影響が出るかな。ま、麦わらの一味ならどんな困難もドタバタしながら乗り越えるでしょ。運命力ハンパ無いし。

 

 ベアトリーゼは釣り竿を振るい、渋い顔つきのチレンへニヤリ。

「果報は寝て待てっていうじゃない? 今は彼らの活躍をのんびり待とうよ」

「悪い女ね」

 チレンは溜息を吐き、新しい煙草を取り出した。

 

 ユートピア作戦開始まで、あと少し。




Tips
ベアトリーゼ
 オリ主
 麦わらの一味ならダイジョーブでしょ、と無責任に引っ掻き回している悪い大人。

チレン
 オリキャラ。元ネタはOVA銃夢のキャラ。
 上記の様子を間近で窺い、『こいつ、悪い奴だなぁ』と呆れている。

麦わらの一味。
 原作主人公の皆さん。
 女蛮族の助言がなまじ正解っぽいから、振り回されてしまう。
 無知な少年少女は悪い大人に付け込まれるんだなぁ。

反乱軍。
 作者の独自解釈。
 仮に王国軍と国王を倒して水を獲得しても、空白化した権力を巡って内ゲバが始まり、各勢力の軍閥化による戦国時代が到来するのではなかろうか。

国王軍。
 物語上仕方ないことかもしれないが、当局の防諜体制と捜査能力がザルすぎる。王宮内にダンスパウダーを大量持ち込まれた挙句、犯人が分からないとかいかんでしょ。
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