彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、金木犀さん、ちくわぶさん、七號さん、誤字報告ありがとうございます。

一部表現を変更。本編内容に変更なし(04/24)


107:麦わらの一味のレインベース襲撃作戦

 砂漠に朝焼けはない。

 地平線から太陽が顔を覗かせると、瞬く間に夜が駆逐され、鮮やかな蒼穹が広がっていく。

 アラバスタ標準時間・午前6時。

 ユートピア作戦開始まであと1時間と迫る中、麦わらの一味がレインベース市郊外に到達した。

 

 麦わらの一味が王国最大の観光都市を見つめているところへ、

「作戦を確認するぞ」

 ゾロがルフィの隣に立って、話を切り出す。

「まずルフィとウソップが街に乗り込み、バロックワークスの兵隊共の注意を集める。で、釣り上げた兵隊共を俺達で仕留める。仕留めた連中が電伝虫を持ってりゃそれで良し。持ってなくても、電伝虫を持っている奴や保管されている場所を聞き出して確保する」

 

「そして、アジトに討ち入りだな」とチョッパーが緊張気味に言う。

「ビビ。クロコダイルのアジトは分かってるのか?」

 ウソップが水を向けると、ビビは首肯を返す。2人とも顔が強張っている。

「町の中心にある大賭博場レインディナーズよ。クロコダイルが経営者(オーナー)で、ニコ・ロビンが総支配人を担ってるわ。ただ、建物内の情報までは無くて……」

 

「常識的に考えりゃあ、証拠になるような重要書類は経営者か総支配人の執務室にありそうだが……犯罪組織のアジトとなると、隠し部屋の一つや二つあってもおかしくないんじゃないか?」

 海上レストランの副料理長として経営面も齧っていたサンジが意見を述べ、ナミが思案顔で頷く。

「やっぱり、クロコダイルと戦うチームと建物内を調べて証拠を確保するチームに分かれた方が良さそうね。面子の振り分けが重要になるわ」

 

 皆の真剣なやり取りを聞いていたルフィが、しかめ面で言った。

「焦れってェなあ……さっさとクロコダイルをぶっ飛ばしに行こうぜっ!!」

 

『……』

 麦わらの面々は難渋顔で瞑目、あるいは黒々とした蒼穹を見上げる。

 

 コックが狙撃手の肩に手を置いた。

「ハンドラー・ウソップ。しっかりやれよ」

 ウソップは長鼻を天に向け、慨嘆した。

「荷が重てェ……俺には荷が重てェよ……」

 

 皆の反応に『あれ? 俺、おかしなこと言ったか?』とルフィが訝しんだ、刹那。

 

 ビビがずいっとルフィへ迫り、

「……ルフィさん。いえ、麦わらの一味船長モンキー・D・ルフィ殿。この作戦にはアラバスタ王国民1000万人の命と未来が懸かっております。重ねてお願いします。どうか、どうか、作戦通りに」

 端正な美貌に鬼気を(ほとばし)らせ、恐ろしく他人行儀かつ礼節に則った嘆願を突きつける。

 

 その静かな怒気と威圧感は怖いもの知らずのルフィをして、本能的に危機感を刺激されるほど強烈かつ熾烈で。

「お、おう。分かったっ! 分かったからっ! 落ち着けっ! 落ち着いてくれっ! な? な? な?」

 ルフィは冷汗をだらだら流しながら、必死にビビを宥めた。

 

 

 

 そして――。

 

 

 

 麦わらの一味は防砂マントのフードを深く被り、顔を隠してレインベース市の外周部に潜り込んでいく。

 一方、ルフィとウソップだけ堂々と顔を晒し、市内へ入っていった。

 

 ナミは屋台で飲み物を買い込み、渇きを癒しながら船長と狙撃手を見送り、呟く。

「上手くやれるかしら」

「……トラブルに備えておくか」

 これまでの旅を振り返ったゾロの提案に、誰も異論を口にしなかった。

 

「早速だが、不測の事態だ」朝飯の軽食を調達してきたサンジが凶報を届ける。「海兵の一団が居やがった」

 全員が目を覆う。トラブルの発生を確信した瞬間だった。

 

「俺、ナノハナみたいなことになりそうな気がしてきた」

「……言わないで、トニー君」

 チョッパーの不吉な予言に、ビビはちょっぴり泣きたくなった。

 

 

 

 そんな仲間達の不安と危機感を知らぬまま、ルフィとウソップは大通りを進んでいく。王国随一の観光都市は朝から活気に溢れている。賑やかな往来に混じり……

 

「なーんか嫌な目で見てくる奴がそこら中に居るな。ありゃクロコダイルの手下か」

 ルフィは胡乱な連中を横目に捉えつつ、ウソップに問う。

「で? 俺はどーすりゃ良いんだ?」

 

「そーだな……」

 ウソップは腕を組んで思案した。

 俺達は囮だ。ルフィをクロコダイルんとこに突っ込ませなきゃあ、ある程度好きに動いても問題ねェ、はず。

「てきとーに目立って、バロックワークスの奴らを仕留め易い場所へおびき出せばいい、と思うぜ」

 

 ウソップの説明にルフィは眉根を寄せ、提案する。

「俺達で潰しちゃダメなのか?」

 

「え? ……電伝虫を手に入れられるなら、それもアリ、なのか? いやいや迂闊な真似は……」

 悲観主義的なウソップがあれこれと考え込み始めた矢先、ルフィは酒場を見つけ、パァッと表情を明るくした。

「ウソップッ! とりあえず水飲もうぜ、水っ! こまけぇことは水飲みながら考えよーぜっ! それと飯っ! 朝飯食おうっ!」

 

 砂漠越えしてきたばかりのウソップに、その提案はあまりにも魅力的過ぎた。

「……そーだな。うん、注目を集めりゃいいんだから、良いよな! よし、行こうぜ、ルフィッ! 水だっ! 朝飯だっ!」

「おう、水だーっ!」

(ミド)ゥ――ッ!!」

 ルフィとウソップは酒場に向かって突撃していく。

 

 観光都市であるレインベースには酒場がたくさんあるのに、よりによって海軍大佐“白猟”スモーカーが朝食を摂っている酒場へ突入してしまうのは、なぜなのだろうか。

 

 当然ながら、こうなる。

 

「「ああああああああああああああああっ!!」」

「今度こそ捕まえろ――――――――っ!!」

 悲鳴を上げながら逃げるルフィとウソップを、海兵達が追い回す。

 

 

 

「……“予想通り”だな」「じゃ、“予定通り”にやるか」

 朝の市内から届く船長達の悲鳴を聞き、一味の武闘派が顔を見合わせ、

「行くわよ、ビビ、チョッパー」「ええ!」「俺、頑張る!」

 美少女2人とトナカイが頷き合う。

 超トラブルメーカーの船長に抜群の信頼を寄せていた面々は、迷わず動き出した。

 

 

 

 実に頼もしい仲間達の動向を知らぬルフィとウソップは、殺気立った海兵達に追われながら目を剥く。

「あれっ!? ゾロ達が居ねェっ!?」

 

「マジかよっ!? どうすんだ!?」

 蒼褪めるウソップに、ルフィは即断して吠えた。

「仕方ねえっ! ケムリンは俺が引き受けっから、ウソップはゾロ達を見つけて合流しろっ!」

 

「それしかねェか……っ! 分かったッ! でもルフィ、絶対捕まんなよっ!? 一人でクロコダイルんとこに突っ込むなよっ!! それから」

「長ェよっ!? じゃあ、後でなっ!!」

 ルフィはニカッと笑い、勢いよく飛び上がった。

 

 周囲の建物を高々と飛び越えるルフィに、モクモクの実の能力者スモーカーは挑戦と受け取った。

「いい度胸だッ!!」

 スモーカーは自身の身体を即座に白煙へ変え、宙を飛ぶルフィを追って空を飛ぶ。

 

 当然、部下達は置き去りにされるも、そこは慣れたもので、戸惑うことなく上官の後を追う。

 が。

 

「ルフィの奴、分かってやがるぜ。あのケムリ野郎さえいなきゃ何も問題ねェ」

 物陰から煙草を吹かす金髪グル眉青年が現れ、海兵達の前に立ち塞がる。

「御愁傷。お前らはここで行き止まりだ」

 

 

 

「止まりなさいっ!!」

「海兵に止まれと言われて、止まる海賊が居るかっ!」

 スモーカー大佐の副官、眼鏡っ娘たしぎの部隊に追われ、ウソップは町中をひた走る。屋台や露天商の商品を投げつけ、路肩の荷物を蹴倒し、猫も通れないような細道を器用に駆け抜け、海兵達を翻弄し続ける。

 

 もちろん、ウソップは意図していない。ただがむしゃらに逃げ回っているだけだ。しかしてその様は、さながら香港アクション映画の逃走劇の如し。今にも中国語の歌が聞こえてきそうだ。

 

 アクロバティックかつコミカルなウソップの走りに、たしぎ達はどうにも追いつけない。

「くっ! なんて逃げ足っ!」

「しつこすぎるぞっ!! たーすけてくれーっ!」

 ウソップはベソを掻きながら逃げ回る。

 頼りになる仲間達とはまだ出会えない。

 

 

 

 市内のとある建物の屋上。

「な、なあ? ウソップが助けを求めて絶叫してるけど……」

「やっぱり助けにいった方が……」

 心優しいチョッパーとビビがウソップを心配してそわそわしていたが、

 

「あいつはやる時はやる男だ。ほっとけ」

「叫んでるうちは大丈夫。余裕がある証拠よ」

 東の海から付き合いがあるゾロとナミは、ばっさりと切り捨てた。容赦なし。

 

「それより、見ろよ」

 ゾロは眼下を窺い、獰猛に笑う。

「釣れたぞ」

 

 手配書と得物を持ったならず者(バロックワークス)共が海兵達の目を盗み、ウソップを追っていた。

「見て! あいつ、あの趣味の悪いコート来てる奴! 子電伝虫を持ってるわ!」

 ナミがウソップを追うバロックワークスの社員の一人を指差す。

 

「よし、行くぞっ!」

 腰から三本の得物を抜いたゾロが屋上の縁から飛び降り、眼下で駆けていたバロックワークスの社員達へ襲い掛かった。

 ナミはウソップ謹製の新型長棍クリマタクトを握りしめ、ビビは刃鞭を抜き、チョッパーは大男に変化して、ゾロに続いて悪党共を強襲する。

 

「なんじゃああああああああっ!?」

 三下悪党の断末魔が路地に響くも、町中に響き渡っている喧噪に飲まれ、誰にも届かない。

 

 

 

 市内のあちこちで大騒ぎが起きている頃、大賭博場レインディナーズのオーナー室で、

「報告が次々に届いてるわ」

 ロビンはクロコダイルへ報告していた。

「御姫様と海賊達が来ていて、海兵達を巻き込んで大きな騒ぎを起こしてるそうよ。ミリオンズ達では手に負えないみたい。多少腕が立つビリオンズ達は作戦の方に回してしまっているし……どうします? ミスター・ゼロ」

 

 クロコダイルは紫煙を燻らせ、見事な悪人笑いと共にロビンへ命じる。

「ミス・オールサンデー。マヌケな鼠共を迎えてやれ」

 

 

 

「ちっくしょー、振り切れねェっ!!」

「逃がしゃしねェぞ、麦わらッ!!」

 ルフィは食らいついて離れないスモーカーに難儀し、どうにかして振り切れないかと辺りを見回し、町の中央にそびえるドデカい建物を見つめた。

「! あの城みてェなのの中ならっ!」

 

 未来の海賊王が双眸に捉えた建物は大賭博場レインディナーズ。仲間達が口を酸っぱくして『一人で突っ込むな』と言っていた大海賊クロコダイルの“居城”だが……スモーカーとの熾烈な追いかけっこで頭から抜け落ちてしまったらしい。

 レインディナーズを目指し、ルフィは一直線にかっ飛んでいく。

 

 

 

「ふざけやがって、長っ鼻ぁっ!」「撃て撃てっ!」「頭ぁ狙え、頭っ!」

「殺意高すぎっだろっ!?」

 ウソップのアクション映画染みた逃走に付き合った結果、散々な目に遭った海兵達は完全にブチギレており、既に発砲を始めていた。もはや捕縛する気は皆無。殺害一択だ。

 

 なんでこんな目にっ!? 遁走しながらウソップが涙のちょちょぎれる顔を上げれば。

 

 我らの船長がバッタの如く建物の屋上を飛び回っており、能力者の海軍大佐が白煙を曳きながら追いかけていく。

 2人の行き先は湖に浮かぶ巨大な建物レインディナーズ。

 秘密結社バロックワークスの大首領クロコダイルのアジトではないか。

 

「おいおいおいおいおい……ルフィ、そこは不味い。そこは不味いってェっ!?」

 ウソップは顔を青くし、大慌てでルフィの後を追い、レインディナーズへ向かって駆けていく。

 

「待てーっ!! ルフィーッ! そこはダメェだああああっ!!」

 ハンドラー・ウソップが悲鳴染みた声を張り上げる。

 しかし、海兵達の銃声と罵声と住民達の悲鳴と怒号に搔き消され、船長の耳に届かない。

 

 

 

 ぶちのめしたバロックワークスの社員達から身ぐるみを剥ぎ、子電伝虫の奪取に成功。

「子電伝虫は2つ。丁度良いわ。チョッパー、サンジ君のところへ1つ届けてきて」

 ナミが番号を確認してから子電伝虫をチョッパーに預け、

「分かったっ! 皆、気をつけろよっ!」

 チョッパーは四足獣形態で勢いよく駆けていく。

 

 サンジの許へ向かうチョッパーの背中を見送り、ゾロがフッと息を吐く。

「こっからが本番だな」

「そうね」ナミは頷き「とりあえず連絡手段を手に入れたことをベアトリーゼに伝えましょ」

 

「まさか、そんな」

 ナミが連絡を取ろうとした矢先。ビビが顔を青くして呻いた。

「どうした?」「どうしたの、ビビ?」

 訝るゾロとナミへ、ビビが宙を飛んでいく人影を指差し、悲鳴を上げる。

「不味いわっ! ルフィさん、レインディナーズに向かってるっ!」

 

「「なに――――――っ!?」」

 ゾロとナミの叫び声は街の喧騒に飲まれて消えていく。

 

     〇

 

 雄大なサンドラ大河の水面をぷかぷかと佇むツギハギ・トビウオライダー。

 ベアトリーゼは巨大トビウオの背に座り、黒電伝虫を使ってレインベース市方面の念波通信を盗聴していた。

 

 数時間分の距離があるためか、雑音や途切れも目立つものの、バロックワークスの下っ端達や王国当局が交わす通信内容から、何が起きているか把握できた。

 

「随分と派手に暴れているみたいね」とチレンが眉をひそめた。

「こーなるような気がしてたよ」ベアトリーゼはアンニュイ顔を和らげる。

 

 ベアトリーゼなら原作知識を活かし、レインディナーズの地下に隠れ潜むクロコダイルを建物ごと湖に沈めただろう。そのまま溺死してくれれば良し。しくじっても、湖の水を使って仕留められる。従業員や客から相当数の犠牲を出すだろうが、強力な能力者を確実に仕留める必要コストだ。

 

 蛮姫は腕時計を確認する。午前7時までもう少し。

 バロックワークスの最終工作が始まる頃か。ナノハナ方面の通信量が激増するはず。

 原作通りなら、麦わらの一味がそろそろワニ公に捕まった頃だろうか。

 

 ベアトリーゼがあれこれと考えを巡らせているところへ、子電伝虫が鳴いた。

「もしもし?」

 

『ベアトリーゼ!? ナミよ! 子電伝虫を入手したわ。それと、サンジ君にも別途に子電伝虫を渡してある。番号を伝えるわね』

 何やらえらく切羽詰まった声色と調子だ。ベアトリーゼが面白味を覚えつつ、問う。

「こっちはまだ動きはないけど、そっちは計画通りに行ってない感じ?」

 

『ルフィが海軍に追われたまま、クロコダイルのアジトに突入しちゃったの! 私達もすぐに続くつもり! 証拠はまだ確保してないけど、こうなったらクロコダイルを倒してから探すしかないわ!』

 

 流れは多少違うけれど、結果として原作と同じになりそうな感じか。苦笑いしながら、ベアトリーゼはナミに助言する。

「いや、ルフィ君と海軍がクロコダイルと三つ巴になるなら、好都合だ。ナミちゃん達は証拠確保に向かった方が良い。ロビンは総支配人を務めていたから、証拠は総支配人室にあるはずだ」

 

『でも、確実に証拠があるとは限らないでしょう? クロコダイル一人が全てを掌握しているかもしれないじゃない』

「ロビンなら必ず持っている」ベアトリーゼは断言した。「私の親友は聡明だ。ああいう手合いを絶対に信用しない。身を守るために必ず決定的な証拠を握ってる」

『……分かった。信じるわよ、ベアトリーゼ』

「ありがとう、ナミ。健闘を祈るよ」

 

 通信を終え、ベアトリーゼは微笑む。

「向こうも頑張ってるし、こっちも化物退治と反乱軍の邀撃に頑張ろうか」

「あの化物の動きがこの争乱と重なるとは限らないんじゃない?」

 

 チレンがどこか期待を込めて指摘するも、ベアトリーゼは確信を持って語った。

「私達の小さな物語は大きな物語に組み込まれた。であれば、あのバケモノは今や舞台装置だ。今日、必ず現れる。確実に。間違いなく」 

 

 チレンは辟易して頭を振る。

 小さな物語。大きな物語。ベアトリーゼは時々こういう理解不能な言上を並べる。何かの隠喩か寓意のようだけれど、一方でそのままの意味でもあるように感じる。説明を求めてもはぐらかされるだけ。

 

 となれば、チレンとしては溜息をこぼすしかできない。

「この国の人々はクロコダイルの手に踊らされて、あの子達は貴女の手に踊らされているわけね」

 

「それは酷い誤解だな。彼らは私如きに踊らされるタマじゃないよ」

 ベアトリーゼは物憂げ顔を控えめに和らげ、吐き気を催すほど黒々とした蒼穹を見上げる。

「これは彼らの物語だからね」

 

      〇

 

「……俺は悪くねえ。しつこく追ってきたケムリンが悪い」

 ルフィが不貞腐れた顔で言えば、スモーカーが仏頂面で紫煙を燻らせる。

「俺は海兵だぞ。海賊を追って何が悪い」

 

「やべえよ、やべえよ……」

 ウソップは掛かる状況の重大さに頭を抱え、ゾロは腕を組んでしかめ面を返す。

「うだうだ言うな。捕まっちまったもんは仕方ねェだろ」

 

「仕方ないじゃ済まないわよっ! どーすんのよっ!」

 ナミが苛立ちを込めてゾロの頭をスパーンと引っぱたく。

 

 麦わらの一味四人とスモーカー大佐は今、レインディナーズ地下の大きな部屋で牢に閉じ込められていた。

 

 まず、レインディナーズへ飛び込んだルフィとスモーカーが仲良く落とし穴に引っ掛かり。

 

 ウソップは海軍を振り切って同施設に進入するも、警備員(バロックワークスの社員)に取っ捕まって落とし穴に投げ込まれ。

 

 船長と狙撃手に続き、ナミ達がレインディナーズに突入。ベアトリーゼの提案通りに証拠を押さえようと支配人室へ向かったところ、道中にゾロが方向音痴の発作。見当違いな方向へ駆けだしたゾロをナミが止めようとするも、落とし穴が起動。“2人”揃って地下牢へようこそ。

 

 で。現在に至る。

 

「クソ、こんな檻いぃぃ……」

 漆黒の格子を掴んだ瞬間、ルフィがへなへなと脱力していく。その様にナミが吃驚を上げる。

「ルフィ!? どうしたのっ!?」

 

「海楼石だ」スモーカーが溜息交じりに「海そのものが固形化したような鉱物だ。コイツに触れた能力者は力を出せなくなる」

 

「それでルフィは弱っちまうし、煙になれるあんたが出られねェ訳か」

 ゾロの指摘にスモーカーは鋭く舌打ちし、檻の外へ目を向ける。

「随分と悪趣味なもん作ってるじゃねェか。クロコダイル」

 

「!?」

 麦わらの一味は弾かれたように牢の外へ顔を向け、見た。

 瀟洒な長卓でシャンパンと葉巻を嗜んでいる男を。

 

 冷酷さの滲む精悍な顔立ちに、鼻頭を横断するように向こう傷が走っている。オールバックに撫でつけられた黒髪。二メートルを超える体躯を上等な着衣で包み、黒毛皮のコートをマントのように羽織っていた。そして、左腕に装着されたフック状の厳めしい義手が目を惹く。

 

 王下七武海の一角。秘密犯罪結社バロックワークスの社長。アラバスタ王国をここまで荒廃させ、争乱に駆り立てた元凶。

“サー”・クロコダイル。

 

 ルフィと麦わらの一味はついに倒すべき”敵”と対面を果たした。




Tips

麦わらの一味。
 ルフィ:ある意味で原作通りに捕まる。
 ウソップ:ジャッキー・チ〇ンばりの逃亡劇を披露するも、最終的に捕まる。
 ゾロ&ナミ:途中までは順調だった。土壇場でゾロが迷子病の発作が。捕まる。
 サンジ:顔が割れてないため、遊撃に回った。
 チョッパー:サンジの許へ急行中。

スモーカー。
 この段階ではアラバスタで起きている事態をなーんも知らない。

ベアトリーゼ。
 アラバスタの物語は彼女の物語ではない。が、引っ掻き回す用意は整っている。
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