彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、かにしゅりんぷさん、N2さん、マキシタさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


108:あるいは王国の終わりの始まり

 レインディナーズの秘密地下室の扉が開かれた。

 黒髪碧眼の神秘的な美貌を持つ秘密犯罪会社副社長ミス・オールサンデーことニコ・ロビンは、艶然と微笑む。

 

「遅くなったわね。主賓をお連れしたわ」

 ロビンは傍らの青髪碧眼の美少女を示す。

 

「ビビッ!」

 麦わらの一味がビビの無事に安堵しつつも、捕まったことを案じる。

 

 クロコダイルがくつくつと嗤い、ビビを歓迎した。

「ようこそ。アラバスタ王女ビビ。いや、ミス・ウェンズデー。二年に渡る潜入の末、ようやく俺の前に来られたな。おめでとう」

 

「そうやって笑っていればいい……っ! 最後に倒れるのはあなたよ、クロコダイルッ!」

 気丈に吠えるビビへ、クロコダイルは嘲りの笑みを崩さない。

「くたばるのは、この下らねぇ国さ。ミス・ウェンズデー」

 

「――お前がッ! この国にさえ来なければっ!」

 激情に駆られ、ビビは階段から跳躍。左右両腰のパウチから刃鞭を抜き放ちながらクロコダイルへ襲い掛かる。しかし、ロビンは何もせず静観し、クロコダイルも動かない。

 刃鞭が駆け、クロコダイルの頭を消し飛ばす。

 

 否。クロコダイルの肉体全てが砂塵となって消え去り、砂塵はビビの背後で再びクロコダイルを形作る。

 容易くビビを押さえ込んだクロコダイルが、鼻で嗤う。

「気が済んだか?」

 

「なんじゃありゃあ!?」ウソップが目ん玉をひん剥いて驚愕し。

「砂の能力者か」ゾロは砂に化ける男をどうぶった切るか思案し。

 大事な仲間の危機に、ナミとルフィが青筋を浮かべて激昂する。

「あんた、ビビを放しなさいよっ! ぶん殴るわよっ! ルフィがっ!」

「コラァお前ェッ!! ビビから離れろっ!! ぶっ飛ばすぞッ!!」

 

「そう騒ぐな。丁度良い頃合いだ」

 クロコダイルは檻の中で喚き騒ぐ麦わらの一味を嘲笑い、

「ええ。七時を回ったわ」

 ロビンは腕時計を確認し、淡々と告げた。

 

「パーティーの始まる時間ね」

 

       〇

 

 午前7時。

 クロコダイルが描いた国盗り計画の総仕上げユートピア作戦開始。

 

 作戦に先駆け、ミスター・4とミス・クリスマスが密やかに国王コブラを誘拐し、王の不在で首都と国王軍が機能不全に陥る。

 

 その間、マネマネの実の力で完璧にコブラ王へ化けたミスター・2が、国王軍に扮した部下達共にナノハナへ。駆けつけた革命軍の首魁コーザの眼前で、ナノハナを焼き討ちした。

 

 焼き討ちの大混乱に紛れ、ミスター・2が撤退した直後。

 ミスター・1とミス・ダブルフィンガーの工作により、巨大貨物船が市街地へ乗り上げるように座礁、横転。積んでいた大量の武器弾薬を反乱軍の鼻先へぶちまけた。

 

 期せずして武器の調達に成功した反乱軍は、偽コブラ王の暴虐に対する憤怒と相まって済し崩し的に首都総攻撃を開始。これに怒り狂っていたナノハナの住民や難民が同道。

 200万にまで膨れ上がった叛徒が、首都へ向かって一心不乱に駆けていく。

 

     〇

 

「各ペア、任務成功。反乱軍はナノハナを始めとする近隣市民や難民を取り込んで、200万まで急増。アルバーナに向かって進撃を開始したわ」

 ロビンが懐から子電伝虫を取り出し、情報を確認。クロコダイルへ告げた。

「砂漠越えで脱落者が生じることを考えても、100万人以上が首都に襲い掛かるわね」

 

 100万人以上。把握していた反乱軍70万を大きく超える事態に、ビビは顔から血の気を引かせた。

 

 クロコダイルは嗜虐的な冷笑を湛え、

「ミス・ウェンズデー。君も中程に参加していた作戦が今、花開いた……どうだ? 耳を澄ませば聞こえてきそうじゃねえか。どいつもこいつも繰り言を重ねているぞ」

 ビビを嬲るように演技がかった台詞を編んでいく。

「俺達がアラバスタを守るんだ。アラバスタを守るんだ! アラバスタを守るんだっ!!」

 

「やめてっ!」

 堪えきれずビビが悲鳴を上げれば、クロコダイルは追い打ちを加えるように悪意を浮かべる。

「泣かせるじゃねェか。国を想う奴らが共食いして国を亡ぼすんだ」

 

「あの、野郎ォッ!!」

 憤慨した者はルフィだけではない。麦わらの一味は皆基本的に善良であり、若者らしい純粋な正義感と義侠心に通じる心意気の持ち主だ。ナミもウソップもゾロも仇敵のようにクロコダイルを睨み据えている。

 

 と、椅子に拘束されていたビビが椅子ごと体を倒し、もがき足掻く。

「おいおい。どうした。何をする気だ? ミス・ウェンズデー」

 

「止めるのよっ! まだ間に合うっ!」

 ビビが必死に叫ぶ。

「ベアトリーゼさんと合流すれば、まだ……っ!」

 

「? ベアトリーゼ? ……ああ。お前の旧友だったか、ミス・オールサンデー」

 クロコダイルが爬虫類のような冷たい眼差しをロビンへ向ける。そこには信用や信頼といったものが欠片も存在しない。

「友人は首を突っ込まないと聞いていたが?」

 

「ええ。ビーゼはそう明言していたわ。請負仕事をしている最中だから、余計なことには首を突っ込まないとはっきりね。でも」

 ロビンはどこかからかうように言葉を紡ぐ。

「これも言っておいたはずよ、ミスター・ゼロ。ビーゼの行動は予測がつかないと。そのうえで放置することを決めたのは、他ならぬ貴方自身よ」

 

「ふん。別に責めやしねェさ」

 ロビンの揚げ足取りに鼻を鳴らし、クロコダイルは自信たっぷりに嘯く。

「野良犬が一匹首を突っ込んで来ようが、100万人の大津波は止められやしねェ」

 

「あいつを甘く見ないことねっ!」

 ナミが懐から子電伝虫を取り出す。ゾロの刀やスモーカーの大型十手を取り上げていないように、一味を収監する際、身体検査なんてしていない。

 クロコダイルが舌打ちする中、ナミは子電伝虫に素早く番号を打ち込み「さっさと出なさいよ!」と毒づけば。

 

『もしもし』と物憂げな声が返ってきた。

 

「ベアトリーゼッ!」「ベアトリーゼさん!」

 ナミの切迫した呼びかけとビビの縋るような悲鳴が重なる。

『あー……作戦は失敗な感じ?』

 

「俺達、クロコダイルに捕まっちまったんだっ!」「俺らもヤベーけど、アルバーナとナノハナがもっとヤベーことになっちまってるっ!! 」「クロコダイル達の作戦で反乱軍が動き出しちゃったのっ!」「ベアトリーゼさん、お願いっ! 反乱軍を止めてっ!」

 ルフィとウソップとナミとビビが怒鳴るように叫び、通信器の向こうで沈黙が生じた。

 

「この件に首を突っ込む気か、血浴。テメェの親友を敵に回すことになるぞ」

 クロコダイルが煩わしげに告げた。

 

『今の誰? や。まぁ誰でもいいや……よく聞け、マヌケ。私とロビンの絆は敵味方に別れたくらいで壊れたりしねーよ』

 子電伝虫の向こうから気だるげな調子で罵られ、クロコダイルがピキッと苛立ち、ロビンが微苦笑をこぼす。

 

 ベアトリーゼはアンニュイな調子で話を戻す。

『ナノハナを発った反乱軍の主力が首都アルバーナに到着するまで、約8時間くらいか。流石の私もだだっ広い砂漠で100万人を抑え続けることは難しい。せいぜい1時間かそこらだろう。レインディナーズからアルバーナまでの距離を考えると……ギリギリだな。である以上、私はビビ様に問わねばなりません』

 

 冷血。そう評するしかない声色で、”血浴”は王女へ告げる。

『最悪の場合、如何いたしますか?』

 ビビにとって絶望の口頭試問を。

 

『王家と国王軍将兵30万人を救えというなら、アルバーナ前面の砂漠に反乱軍の屍山血河を築きましょう。叛徒100万余を守れというならば、首都アルバーナを国王軍の血で彩り、骸で飾りましょう。手を出すなとおっしゃるなら、両軍が激突するに任せます。ビビ様。御決断ください』

 

 ビビは戦慄し、麦わらの一味が凍りつき、スモーカーも息を呑む。

 この問いの答え如何で、100万人以上の生死が左右されるのだ。

 

 クロコダイルがクハハハと大笑いし、慄然としているビビへ加虐的な目線を注ぐ。

「おもしれェ。どちらを選ぶんだ? ミス・ウェンズデー」

 

 王国の首都と国を守らんとする忠勇な30万将兵。彼らを犠牲にして4000年の歴史を持つ王国に終焉をもたらすのか。王宮と王家はビビの自我と自己同一性を育んだもので、軍にも宮殿にも家族のように親しんだ者達がたくさんいる。

 

 王を倒してでも国を救わんとする勇敢な反乱軍100万余。本来なら被害者である彼ら民衆を戮殺し、国体を守るのか。民と慣れ親しむ王女は敬愛され、市井に大勢の知己と“友”がいる。

 

 父。イガラム。チャカ。ペル。テラコッタ。トト。コーザ……脳裏に浮かぶ無数の顔。

 大切な彼らのどちらか一方を選んでビビが救い、大事な彼らのどちらか一方を選んでビビが殺す。

 

 無慈悲な選択の恐怖と絶望、決断の重圧と重責に圧倒され、ビビは視界が真っ暗になった。恐怖が全身の汗腺から冷たい汗となって流れ、鼓動が急かされ早くなり、呼吸も酸素を取り込めないほど浅く早くなっている。

 

 選べない。

 ビビは選べない。

 

 善良で心優しい王女は王国と民衆のためなら自ら犯罪結社に潜り込み、凄惨な戦場にさえ赴く勇気がある。一方で、王族――統治者として求められる冷徹で合理的な判断力を大きく欠いている。

 その証拠に、ビビは王家唯一の正統後継者にも関わらず、自ら犯罪組織に潜入した。自分の身に何かあれば、王家が断絶するというのに。

 

 ビビが採るべき選択肢は信頼できる臣下に死んで来いと命じることだった。優秀な将兵を必要な犠牲として救国の供物にすることだった。

 しかし、ビビには出来ない。国を救うために命の優先順位を付けられない。非情な、されど必要な決断を下せない。ビビの優しさは人として正しいが、次代の王としては惰弱でしかない。

 

 されど……そんなビビだからこそ。

 ”彼ら”は共に命を懸けている。

 

「反乱軍を抑えてくれっ!!」

 

 怖気に呑まれたビビが涙すら流せず真っ青な顔で震える中、ルフィがナミの手にある子電伝虫へ必死の形相で怒鳴り叫ぶ。

「俺達が行くまで反乱軍を抑えててくれっ!! 必ず間に合わせっからっ!!」

 

『私は間に合わなかったらと聞いてるんだけど』

 冷淡な応答を、ルフィは無視した。

「間に合わせるっ! ワニも悪い奴らもぶっ飛ばして絶対に間に合わせるっ! 約束する! だから、この国の奴を殺すなっ!」

 

 ルフィの雄叫びに一味も続く。

「俺達がビビを送り届けてみせるっ!」「ああ。必ず間に合わせるっ!」「ベアトリーゼ、私達を信じてっ! お願いっ!」

 

 わずかな航海の間に無二の絆を育んだ仲間達の言葉と気迫に、ビビの心は奮い立ち、熱い涙が溢れる。様々な感情がこもった涙を拭い、ビビはナミの手にある子電伝虫へ向かって告げた。王女として。

「ベアトリーゼさん、私が行くまで反乱軍を抑えてっ! 絶対に行くから!」

 

 数秒の沈黙。ビビと麦わらの一味が固唾を呑んで回答を待つ。スモーカーやクロコダイルすら、ベアトリーゼの返答を待った。ロビンだけは面白そうに微笑みをこぼしていた。

 

『……無茶振りをしてくれる』

 苦笑いと共に奏でられる、幼子達のわがままに手を焼くような甘い声色。

『良いよ。君らの要望を叶えてあげようじゃないか。お姉さんに任せなさい』

 

 安堵と歓喜を浮かべる少年少女達とは真逆に、クロコダイルは茶番を見せられたように冷めた面持ちをこさえていた。

「おいおい……“血浴”。こいつらは今、俺の手中にある。テメェの許に行ける訳ねェだろう」

 

『知らねーよ、そんなこと。私はビビ様と麦わらの一味を信じて、やるべきをやるだけだ』

 クロコダイルの表情が一層冷淡になるが、ベアトリーゼは気にもかけない。

『ロビン。そこにいる?』

 打って変わって、親愛のこもった声色でニコ・ロビンに語り掛ける。

 

「ええ。居るわ、ビーゼ。すっかり引っ掻き回してくれたわね。おかげで彼は私のことを睨みっぱなしよ」

 ロビンはくすくすと上品に喉を鳴らしながら応じれば、電伝虫の向こうからバツが悪そうな声が返ってくる。

『ごめんね。こういう訳だからさ。ま、埋め合わせはするよ』

 

「ビーゼ」ロビンは告げる。「私は諦めないわ。決して」

 その決意の言葉を正しく理解できた者は”2人”だけ。 

 

『流石は私のロビン』

 ベアトリーゼは嬉しそうに誇らしそうに小さく笑い、

『ビビ様と麦わらの諸君。信じてるよ』

 通信を切った。

 

      〇

 

 子電伝虫を切り、ベアトリーゼは心底楽しそうに笑う。

「いやぁ、ビビ様も麦わらの一味もロビンも、皆最高だね」

 大きな物語に触れることがこんなに楽しいとは。本気で仲間に入れて欲しくなってきた。

 

「王女様は貴女を慕ってるのに、よくまぁ、あそこまでイジめられるわね」

 チレンが非難の眼差しを注ぐが、面の皮が厚いベアトリーゼは気にも留めない。子電伝虫や黒電伝虫をしまってツギハギトビウオを起動させる。

「出発するよ。アルバーナに最短距離になる辺りまで河を遡る」

 

「化物はまだ来ないけど、良いの?」

 片眉を上げて訝るチレンへ、ベアトリーゼはにんまりと口端を歪める。

「言ったろ。奴はもうこの物語の舞台装置だ。必ず来る。後はクライマックスを盛り上げるデウス・エクス・マキナとしてド派手にぶち殺すだけだよ」

 

 ベアトリーゼはスロットルを開け、トビウオを走らせ始めた。

「楽しくなってきたっ! いっちょ張り切っちゃおっかなあっ!!」

「嫌な予感しかしない」

 チレンは顔を覆って嘆いた。

 

      〇

 

 ベアトリーゼの干渉が終わると、レインディナーズの地下は“予定調和”を迎える。

 

「さて……俺達も忙しい。国王に尋ねることがあるんでな。アルバーナまで出向かなきゃならねェ。ついでに血浴の無駄な努力を見物するかな」

 クロコダイルはビビと麦わらの一味を嬲るように、牢の鍵をバナナワニの檻へ放り込む。

「“血浴”の大言壮語を信じてるようだが、100万人以上の大暴走だ。奴1人がどう足掻いたところで止められやしねェよ。それでも、あの女の許へ駆けつけるなら、そいつらを見捨てて“今すぐ”ここを発つことだ。むろん、こいつらを助けるのも構わねェ。牢の鍵は“うっかり”落としちまったがな」

 

 憔悴している王女を強く嘲り、隻腕の大海賊は出入り口へ向かって歩き出し、

「ああ。そうだ。この部屋はこれから一時間後、レインベースの湖に沈む。国民か仲間か。好きな方を選ぶと良い……」

喉を鳴らして悪意をこぼす。

「まったく、この国はマヌケ揃いだ。どいつもこいつも簡単に手のひらで踊りやがる。国王然り。反乱軍然り。笑わせてもらったぜ。ああ。ユバの穴掘りジジイもな……」

 

「ユバ!? あのおっさんのことかっ!」

 ルフィが聞き咎めて噛みつけば、クロコダイルは足を止めて振り返り、

「なんだ。知ってるのか。度重なる砂嵐にもめげず、毎日穴を穿り続ける気狂いジジイだ。憐れすぎて笑っちまうだろう?」

「なんだとお前ッ!」

「ユバに限った話じゃあねェが……砂嵐が何度も何度も街を直撃する、なんてことがあると思うか?」

 薄笑いと共に右手の掌で砂を踊らせる。渦を巻く砂はまるで小さな砂嵐だ。

 

「お前……お前がやったのかっ!!」

 ルフィは奥歯が割れんばかりに歯噛みし、牢の外にいるビビへ吠えた。

「ビビッ! 何とかしろっ! 俺達をここから出せっ!! あいつとも約束しただろっ! あのヤローをぶっ飛ばして、この国を救うんだっ!!」

 

 諦め悪く喚き散らし、ビビを叱咤激励するルフィ達を嘲笑うように、室内へ浸水が始まり、大型恐竜染みた巨大鰐(バナナワニ)達が地下室に進入し始めた。

 ビビと麦わらの一味を嘲り蔑み、クロコダイルはロビンを伴って部屋を出ていく。

 

 その間際。

 ロビンの子電伝虫が鳴き――

『え~こちら。クソレストラン』

 

        〇

 

 傷つきながらも虎口を脱したビビを見送った今、海楼石の牢に囚われた麦わら一味に出来ることは、ビビがサンジと合流して助けに戻ると信じて待つことだけ。

 

 今や室内は巨大鰐共が闊歩し、浸水の轟音と不気味な軋み音に満ちている。膝下まで満ちてきた湖水にルフィとウソップが慌てふためき、ゾロは腕組みしてどうにかして牢を斬れないか思案している。その隣でナミが不安げに子電伝虫を抱え持ち、ビビの無事を祈っている。

 

「おい、お前ら」

 不意にスモーカーが口を開き、麦わらの一味を見回して問う。

「王女とつるんでいったい何してやがる。クロコダイルの狙いは何だ?」

 

「狙いも何も、あいつが自慢してたじゃない。あいつの狙いはこの国そのものよ」

 ナミが八つ当たりするように応じれば。

 

「“そこ”だ。なぜアラバスタを狙う? クロコダイルなら大抵の国を短期間で乗っ取れる。忌々しいがそれだけの力と知恵がある男だ。なのにグランドラインでも有数の大国を、それも稀有なほど安定した国をわざわざ的にした。時間と金と人手を費やしてまで。なぜだ?」

 誰も答えられない。彼らは『なぜ』を考えもしなかったから。

 

 スモーカーは葉巻を燻らせて続けた。

「クロコダイルの傍らにいた女はニコ・ロビン。世界政府が20年も追い続けてる賞金首だ。あの2人が手を組んでいるだけでも、こいつがただの国盗りじゃねェのは間違いねェ。おまけに“血浴”のベアトリーゼだと? お前らはともかく、なんで王女があんな凶悪犯と親しいんだ?」

 

 スモーカーは再び麦わらの一味を見回し、質す。どこか自問するように。

「いったい何がどうなってやがる?」

 

「うるせーなっ!! あのワニをぶっ飛ばして、この国を救う! 他のことは知らねェよっ!」

 焦燥に駆られていたルフィが煩わしげに怒鳴った。

 

 直後。

 轟音と共にドアが蹴破られ、ビビと共にサンジが現れた。

「よぉ。待たせたな」




Tips

クロコダイル。
 絶賛、慢心中。調子こいて逆転サヨナラ負けを喫したミスター・3とやってることが大差ない。

ビビ。
 ゾロ達と行動を共にしていたのに、なぜ彼女一人だけでロビンに囚われたのか?

ベアトリーゼ。
 楽しくなってきた。
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