彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、神無月 刹羅さん、NoSTRa!さん、烏瑠さん、掟破りさん、誤字報告ありがとうございます。



116:アルバーナ決戦~蛮姫の攻撃~

 首都アルバーナの各地で死闘が繰り広げられていた。

 国王軍は化物相手に時間を稼ぎつつ、王宮前広場から退避を急ぐ。

 カルーと合流したビビは、コーザが率いる反乱軍と話し合っていた。

 

 

 ゾロは斬撃の通じない全身刃物男に苦戦しながらも、幼き日の師の教えを思い出していた。鋼鉄を斬る、その術を。

「先生は何年も前に教えてくれてたってのに……不出来な弟子だな、俺は」

 そう苦笑する顔は、新たにした戦意に満ち溢れている。

 

 

 サンジはオカマの完全模倣能力に翻弄されながらも、打開策と反撃の機を探っている。

「面だけじゃなく体までナミさんに変わってるなら、あの威力の攻撃を出せるはずがねえ。何かカラクリがあるはず……そいつを突き止めれば……!」

 戦うコックは調理の方法を検討するような目つきで、“(素材)”を観察していた。

 

 

 ナミは全身棘女に圧倒されながらも、パーティグッズ染みた新武器に秘められた“真価”に気付きつつあった。

「そうか……熱気泡、冷気泡、電気泡……そういうことなのね。ウソップのやつ、凄いわ」

 天性の気象読み(フォーキャスター)であるナミにとって、クリマタクトはまさにうってつけの武器だった。

 たとえ、制作者が宴会芸用に仕込んだギミックだとしても。

 ここから逆襲(ペイバック・タイム)だ。

 

 

 ウソップとチョッパーの戦いはもう何が何やら。

 勇敢と怯懦が複雑怪奇に入り混じった長っ鼻小僧がボロッボロに傷つきながら、場を引っ掻き回し、モグラおばさんとウスノロバッターだけでなくチョッパーまで振り回している。

 

 実際、モグラおばさんとウスノロバッターは戦いを優勢に進めているのに消耗が激しい。長っ鼻小僧のギャグ補正染みた行動に意識を引っ張られ、そこを健気に頑張るチョッパーに突かれてダメージを負ってしまっている。もう何が何だか分からない。なぜ命のやり取りをしているのに、こんな悪質な理不尽と不条理に襲われるのか。

 

 モグラおばさんは激怒した。

「このクソガキャアッ!! ちっとは真剣に殺し合え、このバッ!!」

 

 ウソップは激怒した。

「ざっけんな、モグラババアッ! これ以上ないほど真剣にやっとるわっ!!」

 

 ウスノロバッターとチョッパーは内心で思う。

 本当かなぁ。

 

 

 そして王宮では―――

 ルフィがクロコダイルに鉄拳をぶち込み、頭突きを思いきり叩き込んでいた。

 

「レインベースで気づいた。水に触れると、お前は砂になれなくなる」

 背中に担いだ樽から水を被り、ルフィはクロコダイルへ啖呵を切った。

「今度こそぶっ飛ばしてやるっ!」

 

 クロコダイルは右手で鼻血を拭い、

「なるほどな。バカではあるが、頭の回転は悪くねェらしい。だがな、麦わら。テメェの“浅知恵”如きで俺に敵うと思ってるなら」

 ぎろりと双眸を吊り上げた。

「俺を舐め過ぎだ。クソガキが」

 

 ゴムの超人と、砂の魔人が激突する。

 常識の及ばない異様な戦いは依然、砂の魔人に分がある。しかし、レインベースの砂漠での戦いとは決定的に異なる点があった。

 水を用いたルフィの攻撃が、クロコダイルに通じる。

 

 クロコダイルも認めざるを得ない。

 水の樽という荷物を抱えてなお、キレのある体術と動き。自在に伸縮する身体から繰り出される読み難い攻撃。

 そして何より、どこまで本気なのか分からない麦わら小僧の思考だ。

 

「クソッ! これじゃだめだっ!」

 水樽のせいで思い通り動けないことに苛立ったルフィは、樽の水を一気飲みしていく。常人ならとても胃袋に収まらない水量も、伸縮するゴムの肉体は風船のように膨らむことで樽いっぱいの水を収めきった。

「ゲプ……これで、いいッ! 水ルフィだっ!!」

 

 水で何倍にも膨れ上がった胴体をぶよんぶよんと揺らし、レインベースでクロコダイルが貫いた創傷部から“水漏れ”する始末。

 死闘の最中にユーモラスな姿へ化けたルフィに、コブラが絶句し、ロビンが思わず失笑をこぼす。

 

「――正気か、テメェ」

 クロコダイルは久方振りに自身へ手傷を負わせた相手が、水風船野郎という現実に理解が追いつかない。こいつは本気なのか? 俺をオチョくってるのか? 

「このクソガキ、ふざけやがってっ!」

 

 額に青筋を浮かべ、クロコダイルが怒りに任せてルフィへ強襲を仕掛ける。

「ふざけてねェよっ!!」

 ルフィは怒鳴り返し、腹に溜め込んだ水を砲弾のように吐き出した。

 

「なっ!?」

 水風船化に続いて想像の斜め上を行かれ、クロコダイルは水弾の直撃を浴び、スナスナの実の力が封じられた。魔人の顔が無意識にひきつる。

 ――しまっ

 

「ゴムゴムのぉバズーカッ!!」

 

 思考が遮られるほど強力な双掌打。衝撃が骨まで届き、吹き飛ばされたクロコダイルは王宮の外壁に叩きつけられた。

 歯で口腔内を切ったらしく、魔人の口から勢いよく血が溢れる。

 

 全身の痛みと吐血に屈辱を覚えながらも、クロコダイルは理解した。

 このガキは言動と振舞いこそ人を舐め腐っているが、その発想と判断はゾッとするほど理に適っている。水風船と化しても動きに衰えはなく、自在に水を吐き出せるなら……なるほど。水樽を抱えたままより合理的だ。

 だが、戦いの真っ最中に、最適解を導き出し、迷うことなく実行できるか? 

 イカレたクソガキめ。

 

 立ち上がって血反吐を吐き捨て、クロコダイルはロビンへ告げた。

「ミス・オールサンデー。コブラを連れて先にポーネグリフの許へ向かえ。俺はこのガキを始末してから後を追う」

 

「了解」

 ロビンはハナハナの実の力でコブラを拘束しつつ、裏門へ向かって強引に歩かせていく。

 

 2人が離れたことを確認し、クロコダイルは乱れた髪を撫でつけ直し、ルフィへ向き直る。

「砂とは……地表に存在する全てのものが行きつく果てだ。どんな岩石も金属も風化の果てに“砂”を構成する一成分へ成り果てる」

 

「?」怪訝顔を作ったルフィに、クロコダイルは狂猛に口端を歪めた。

「喜べ、麦わら。スナスナの実の真髄を味わわせてやる」

 

      〇

 

「盛り上がってるねえ」

 見聞色の覇気で大きな物語の主演達が活躍している様を覗き見し、ベアトリーゼは満足げに頷きつつ、王宮前広場に面する大時計を蹴り落とす。

 

 吹き込んできた埃っぽい風を受けつつ、砂色の薄闇の先を見た。

 化物が慟哭のような、喊声のような叫喚をあげながら身を捩るようにして、こちらへ向かってくる。建物を破壊しながら。国王軍の銃砲を浴びながら。バリケードを破壊しながら。

 

 王宮前広場の避難はまだ完了していない。動ける者だけならとっくに終わっていただろうに、国王軍は負傷者はもちろん、死者達一人残らず連れていくつもりらしい。

 好きにさせよう。時間が掛かって苦労するのは足止めしてる連中だ。

 

 ベアトリーゼは葬祭殿へ向かうロビンとコブラ王を見つける。

 隠密行動に長けたロビンは王宮前の避難で混乱する国王軍部隊の目を盗み、順調に進んでいく。まあ、発見されたところで国王軍の兵士達などロビンの相手にもならないが。

 

「運の悪い連中がいるな」

 王宮を目指していた海兵部隊が、ロビンと遭遇しそうだった。

「いや、運が良いというべきか」

 ロビンは優しい。あの連中は死なずに済むだろう。

 まあ、五体無事には済むまいが。

 

       〇

 

「アラバスタ国王を今すぐ解放し、投降しなさいっ!」

 刀を構える歳若い眼鏡娘と、銃や刀剣類を構える海兵約一個中隊弱。

 

 ロビンは疎ましげに鼻息をつき、道を譲れともそこを退けとも言わなかった。代わりに、

百花繚乱(シエンフルール)、クラッチッ!」

 即座にハナハナの実の力を発動させ、

「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!?」

 海兵達の手足の関節や背骨や腰椎をへし折り、一瞬で一個中隊を無力化した。

 

「ぅああああああっ!」

 眼鏡娘も利き腕をへし折られ、刀を落として苦悶しながら地に伏せる。

 

「邪魔よ」

 冷厳な目つきで眼鏡娘へ告げ、コブラを伴って無力化された海兵達の間を進んでいく。

 

「待ち、なさいッ! 行かせませんっ!」

 眼鏡娘がロビンの背に向かって吠えた。利き腕を折られた激痛と敗北感に涙をこぼしながらも立ち上がり、左手で刀を構える。幾人かの海兵達が眼鏡娘に倣って痛みを堪えて立ち上がり、武器を取った。

 

 ロビンは相手にせず進み続ける。が、

「止まりなさいッ! 正義を背負う者として、貴女のような悪は断じて逃しませんっ!!」

 その発言にぴたりと足を止め、肩越しに眼鏡娘へ双眸を向ける。

 美しい碧眼は、眼鏡娘や海兵達が思わずゾッとするほど、冷たい怒りに染まっていた。

 

「貴女達のような正義に与するくらいなら、私は喜んで悪を選ぶ」

「何を言って」

 強い怒りと侮蔑が込められた言葉を投げられ、眼鏡娘が戸惑ったその一瞬。

 

「百花繚乱。トランプル」

 ロビンは容赦も慈悲もなく、全ての海兵達の骨折部位を強く捩じり上げ、大きくへし曲げた。

 筆舌に尽くしがたい激痛に阿鼻叫喚が生じ、次いで、静寂が訪れる。

 

 海兵達を蹂躙したロビンは、コブラを連れて葬祭殿へ向けて歩みを再開した。

 立ち塞がる者はもういない。

 

      〇

 

 砂の魔人が地面に右手を押し付けた直後、王宮正面玄関前の庭が激変した。

 綺麗に整えられていた芝も。正門から玄関扉まで通じる石畳も。玄関脇に建てられていた精緻な石像も。庭全体の土すらも。全てが風化したかのように砂となっている。

 同時に、魔人が起こした塵旋風(ダストデビル)によって視界が利かない。

 

「ヤベェな、あいつの右手……」

 本能的に王宮正面玄関前のエントランス屋根に飛び退き、ルフィは魔人の恐るべき攻撃を避けていた。ルフィはきょろきょろと周囲を見回すが、塵旋風が邪魔でよく見えない。

「クソ。見失っちまった。ワニの奴どこに――」

 

「手間取らせやがって……」

「っ!?」

 眼前から発せられた声に反応するより早く、砂塵から伸びる右手がルフィを捉えた。

 ルフィが咄嗟に吐き出した特大の水弾も外れて虚しく真上に飛んでいく。

 

「この――」

 ルフィの言葉は最後まで続けられない。言い終わるより早く、砂の魔人に全身の水分を奪われて意識が飛ぶ。

 

「またお前の敗けだな。麦わら」

 クロコダイルは脱水しきったボロ雑巾みたくなったルフィをしげしげと窺い、

「普通の人間なら体が崩れるほど搾り取ったはずだが……ゴム人間はこうなるのか?」

 どうでも良いか、と小さな砂漠と化した庭へ落とし捨てる。

 

「ここから西の葬祭殿と言ったか……」

 ルフィを始末し終え、クロコダイルは自らの塵旋風に変えて葬祭殿を目指し、王宮を去った。

 

 魔人が去った直後。

 目標を外して高々と打ち上げられていた特大の水弾が、自由落下運動によって落ちてくる。さながら因果に導かれるように、砂上へ棄てられたルフィ目掛けて真っ直ぐに。

 

 水弾はルフィに落着し、

 ごくん!

 嚥下する音色が王宮正面玄関前に響き渡る。

 

「あぶねえっ!? 死ぬとこだったぁっ!!」

 一瞬で体いっぱいに水分を巡らせるというデタラメ振りを発揮し、ルフィは復活する。悪魔の実の能力者という点を考慮しても、破格の生命力。ナミの言う通り、本当に人外かもしれない。

 

「ちきしょー……っ! ワニめ~~~~~っ!」

 ルフィは肩で息をしながら、西を睨みつけた。

「逃がさねェぞ、ワニッ!!」

 

      〇

 

 葬祭殿の中庭。

「隠し階段……」

 石像の下に隠されていた階段を見下ろし、ロビンはどこか無邪気な好奇心を浮かべる。

 隠し階段は陽光が最奥まで届くよう角度まで精確に計算されており、照明を必要としないほどだった。

 

「ポーネグリフはこの地下深くに秘匿してある」

 コブラ王は淡々と語り、ロビンへ言った。

「……オハラの生き残りなら、古代文字が読めるか」

 

「ビーゼから私のことを聞いていたそうね」

 階段を降りながら応じるロビンに、

「君の素性は聞いていない。護送船から逃亡した血浴のベアトリーゼを保護し、その素性を調べた際、彼女と共に活動していた君の情報も目にしただけだ。政府が禁じた研究に手を出したオハラの悪魔。その生き残り、悪魔の子ニコ・ロビン」

 コブラは前を歩く美女から殺気に近い感情が発せられたことを感じ取りつつ、言葉を続ける。

 

「血浴のベアトリーゼが君について語ったことは別だ。親友は好奇心旺盛な考古学者だから、4000年の歴史を持つアラバスタを気に入るだろう、いつかこっそり2人で訪ねたい。そう言っていた」

「……そう」ロビンは微苦笑をこぼす。「ビーゼらしいわ」

 

 ロビンの雰囲気が和らいだことを察しつつ、コブラは小さく溜息を吐いた。

「不思議な娘だ。本当の人柄を掴みきれん。ビビは随分と懐いていたが……」

 

「ビーゼは人間の複雑性を示す好例よ」

 くすりと控えめに笑い、ロビンは話を本題に戻す。

「この国にあるポーネグリフは、おそらくプルトンの在処を記している。違うかしら?」

 

「分からん……アラバスタ王家は代々このポーネグリフを守ることが義務付けられてきた。我々にはそれだけのものだ」

「守る……ね」

 コブラの発言に含みのある反応を返しつつ、ロビンは階段を降りていく。

 

 長い階段を降りきれば、荘厳な地下廟が広がっていた。

 おそらく葬祭殿から鏡か何かで光を巡らせているのだろう。隠し階段同様に照明が不要なほど明るい。

 地下廟は天井が高く、緻密に配置された大理石の柱で支えられている。柱や壁、天井や床に至るまで宗教的な意匠の彫刻が施されており、奥の扉へ通じる廊下には神聖獣の海猫の石像が置かれていた。

 

 なるほど。ここは不可侵の“聖域”だ。アラバスタ王家が営々と守り続けてきたという話は間違いないらしい。

 ロビンがコブラの説明に従い、奥の扉を押し開けたならば。

 アラバスタのポーネグリフが、そこに鎮座していた。

 

       〇

 

 大きな隼が先導するように、醜悪な無貌の怪物を王宮前広場へ誘っていく。

「来たな」

 ベアトリーゼは唇を三日月に歪め、疲労しきった頭で怪物の未来位置を予測した後。

 

 巨砲の砲口に手を突っ込み、漆黒に染まった指を埋めるようにして特大の砲弾を引っ掴んだ。

 

 常識で考えれば、とても人の力で動かせそうにないサイズであるが、原作においてペルが掴み上げて天高くへ持ち去ったのだ。覇気使いのベアトリーゼに出来ぬ道理はない(強弁)。

 とはいえ、体力気力の限界を絞り出している状態だ。大重量物を掴んで持ち上げようとするベアトリーゼの顔は、見目麗しい女性がしちゃダメな表情の一線を越えていた。

 

「ふんぬらばっ!!」

 信管も起爆装置も外され、巨大な鈍器と化した砲弾を巨砲の砲口から引っこ抜き、ベアトリーゼは真っ赤に染めた顔をいっそう酷く歪め、砲弾を担ぎ上げ――

「おんどりゃあああああああああああああああっ!!」

 王宮前広場へと進入してきた醜悪な無貌の怪物目掛け、思いっきりぶん投げた。

 

 砂色の闇の中で放物線を描く特大砲弾。

 広場の外側に展開していた国王軍将兵と広場上空を旋回待機中のペルが唖然となった。カルーの背に乗って駆けつけてきたビビが、弧を描いて飛来する特大砲弾に目をひん剥く。

「ええええっ!?」

 

 砲弾をぶん投げた女蛮族を除く全ての人々が大爆発を想像し、大慌てで反射的に物陰に向かって飛びこんでいく。

 

 そして――

 特大の質量が醜悪な無貌の怪物を“撥ねる”激突音と、特大の砲弾が広場の石畳を砕き半ば地面に埋まる轟音がつんざき、地面が揺られた。

 

 女蛮族を除く全ての人々の想像した爆発は起きず、代わりに、砲弾に撥ねられた怪物の阿鼻叫喚と、

「はっはーっ! じゃっすとみーとぉおおっ!!」

 蛮姫の高らかな喝采が広場に響き渡る。

 

 誰も彼もが絶句し、唖然茫然とする中、ベアトリーゼはプラズマジェットを用いて大時計塔から王宮前広場にひとっ跳び。

 前方四回転捻りで着地、するもがくんと崩れ落ちる。点滴効果が切れ始めたらしい。

 

 ひいこら言いつつ立ち上がり、地面に半ば埋まった砲弾と撥ねられて血塗れになった怪物を交互に窺い、一言。

「第一段階かんりょー」

 

 赤黒く染まったシュマグの奥で薄く笑い、暗紫色の双眸を歪め。

「続いて第二段階かいしー」

 

 アンニュイな呟きとは裏腹に、放たれた矢の如く駆け、苦痛と混乱に叫喚する醜い化物へ襲い掛かる。

「っ!?」

 砂色の薄闇を切り裂くように突撃してくる影に気付き、怪物が咄嗟に触手を躍らせる、も。

 

 ずんばらりん。

 

 一筋の剣閃が走り、全ての触手が切り払われた。

 怪物が驚愕に慄いた刹那。影は肉薄を済ませ、跳躍しながら再び肘剣を走らせる。

 

 巨体に無貌を据える太い首が裂かれ、動脈が斬られ、頑強な頸椎が断たれ、皮で辛うじてつながっている頭部が、ずるりと垂れ下がった。

 首の刃傷から大量の鮮血が噴出する一方。着地に失敗したベアトリーゼが転げる。

 

「くっそ。体が思うよーに動かない。とってもビューティフルでとってもストロングな私でも流石に疲れすぎてるわ」

 ふらふらしながら立ち上がり、ベアトリーゼは国王軍の誰かさんが落としていった長柄を器用に蹴り上げて、拾い。

 首を斬られた化物へ思いきり投げつける。

 

 ぐさり、と長柄が化物の体に突き刺さった。直後。

 化物の身体の中で何かが蠢き、皮膚がぐにぐにと波打った。さながら羽化直前の蛹みたいに。

 

「やっぱりなぁ」

 ベアトリーゼが冷笑を浮かべ、

「二度目にぶっ殺した後、再生した体はちっさくなってたもんなぁ。外部からリソースを取り込めない以上、手持ちのリソースでやり繰りするしかないよなぁ」

 べりべりと背中が裂けていく化物の体躯を眺めながら、

「跡形もなく消し飛ばせるサイズになるまで」

 宣言した。

 

「殺し続けてやる」

 




Tips
麦わらの一味の皆さん。
 勝利の兆しが見えてきました。

ルフィ。
 戦闘中でもギャグっぽい言動と行動が多いけれど、実は合理的な最適解だったりする。
 戦いの申し子かな?

ロビン
 原作より海兵達に対して容赦がない。野蛮人の悪影響。

たしぎ。
 無茶振りする上司と覚悟ガンギマリの部下の板挟みに遭い、強敵に挑んでボコられた。

ベアトリーゼ。
 化物が放電能力を持つことを失念し、爆弾を投げつけるという大失態。
 放電で迎撃されたら爆発してた。やらかしである。

ザパン。
 再生する度に小型化していく、というギミックは銃夢:LOに出てくるマシン細胞を持つ巨大ロボット『サチュモド』のオマージュ。
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