彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、kuzuchiさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


136:彼の者は雷神なり

「誰に物を言っているか、分かっておらんようだな」

 当代の“神”エネルは宙に浮かぶ玉雲に腰かけたまま、辟易顔で一同を見回した。

「お前達はまだ神が何たるかを理解していないようだ。スカイピアの幸福を願う老いぼれに故郷を求め続ける戦士、黄金を狙う青海の盗賊共。まぁ、愚かな子羊達を正しく導くことが神の務めだが」

 

「戯言はもういいっ! 貴様、何を企てておるっ!?」

 先代の“神”ガン・フォールが怒気を込めて詰問する。

「還幸だよ、ガン・フォール。神は行幸を終えれば、あるべきところへ還るものだ」

 エネルはにたりと口端を歪め、おもむろに玉雲の上で立ち上がった。

 

「私の生まれた空島では、神はそこに存在するものとされていた」

 一同に背を向けて遺跡都市を見回しながら、

「限りなき大地(フェアリーヴァース)。見渡す限りの果てしない大地が広がる世界。私にこそ相応しい場所だ。アッパーヤードなど、こんな小さな土くれを奪い合うなど……くだらん。実にくだらん」

 侮蔑を吐き捨てて一同に向き直り、黄金の長棍で一人一人を示していく。

 

「お前達の争いの根はもっと深いところにあるのだ」

 争いの根? エネルの言葉にガン・フォールとワイパーが少しばかりの困惑を覚えた。

 

 エネルは蒙を啓くように空の民とシャンディアの民へ告げる。

「よく考えてみろ。雲でもないのに空に生まれ、鳥でもないのに空に生きる。空に根付くこの国そのものが土台、不自然かつ非自然的なのだ。土には土の、人には人の、神には神のあるべき場所というものがある」

 

「面白い」空気を読まずベアトリーゼが好奇心を浮かべ「空島とはなんだ? お前達、空の民とは? お前は何を知っている?」

 

「神に問うなど不敬の極みだぞ、青海人の女」

 質問をエネルに鼻で笑い飛ばされ、ベアトリーゼはイラッとするも、隣のロビンから目線で『今は黙って見てなさい』と叱られ、艶やかな唇を尖らせた。

 

 ふん、と鼻を鳴らし、エネルはガン・フォールへ向き直り、

「ガン・フォール。元“神”である貴様を尊重し、先ほどの問いに答えよう。私は神として自然の摂理に則り、正そうとしているだけだ」

 黄金の長棍をくるりくるりと振るい、先端で玉雲を勢いよく突く。瞬間、雷光が生じて玉雲が弾け消える。緩やかに降り立ったエネルは狂気的な冷笑と共に告げる。

「この国の全てをあるべき場所へ叩き落す。全ての人間、全ての(ヴァース)を青海にな」

 

 エネルの宣言は妄言と切って捨てるにはあまりにも生々しく、あまりにも確固たる意志が込められていた。何より、大量殺戮と大量破壊の実行を軽々に語るエネルの在り様に、一同は息を飲む。まあ、一人だけ平然としていたが。

 

 ガン・フォールは怖気と怒気を抱きながら、怒号を発した。

「思い上がるな、エネルっ! 神などと称しても、所詮はこの国の長の称号に過ぎんっ! この人の世に神などおらんのだっ!」

 

「今まではな」

 小言に辟易するように不遜な態度で老騎士の罵倒を聞き流し、エネルは悪意を浮かべる。

「ああ。そうだ。そういえば、かつての部下のことも気にしていたな。6年前、私の手勢に敗れ、服属させていたお前の部下約650名。今朝方、与えていた仕事を完了した。……さて、私は先ほど言ったよな、ガン・フォール。今、この島に立っている者はこの場の7人だけだと」

 

「まさか」

 老人が抱いた最悪の予想を肯定するように、雷神は嗤う。悪意を込めて高々と哄笑する。

「私の目的を聞かせてやったら、奴らは血相を変えて挑んできたのだよ。武器も持たぬというのに。いや、実に健気なものだ」

 

 650名。助け出そうとしていた部下達が一人残らず殺されたという事実がもたらした衝撃。それほど大勢の人間を戮殺した事実を冗談のように嗤うエネルの邪悪さ。老騎士は震撼し、思わず後ずさる。

 

 慄き震えるガン・フォールの様子に、エネルは期待通りと言いたげに笑みを大きくした。

「そう悲嘆することもあるまい。直ぐにエンジェル島の者達も後を追うのだから。むろん、せせこましく隠れ暮らすシャンディアの民もな」

 

 嘲り笑い続けるエネルに、ガン・フォールは騎士槍を強く強く握りしめる。

「……もう黙れ……エネルっ!」

 

 ガン・フォールは憤怒に染まった双眸を限界まで吊り上げ、

「このアッパーヤードは、この国は、この空に生きる者達は、貴様如き増上慢が嘲笑ってよいものではないのだっ!! 身の程をしれ、小僧っ!!」

 神を自称する暴虐の権化へ吶喊した。

 

「身の程を弁えるべきはお前だ。ガン・フォール。無知な老いぼれよ」

 ヤハハハと笑い、エネルは老騎士の刺突を身に受ける。切っ先がエネルの肌に触れた刹那。エネルの体が雷電と化して消え、瞬時に老騎士の側面へ遷移。そして――

放電(ヴァーリー)ッ!!」

 

 青白い雷光と大地を揺さぶるほどの雷鳴が辺りを舐め尽くし、電撃に体の内外を焼かれた老騎士が無念の呻きと共に崩れ落ちた。

 

「ジジイ……ッ!」息を飲むワイパー。

「おい」ゾロは顔を険しくして「野郎は何の能力者だ?」

 

「ロギア系のゴロゴロの実よ」

「電を自在に操り、雷光の速さで動き、体そのものも雷電と化す。つまりまあ、雷神みてーなもんだよ」

 ロビンとベアトリーゼが語り、航海士として気象学を修めているナミは雷の恐ろしさを誰よりも理解しているため、エネルの強大さに怯え竦む。

 

「そうだ。私こそ神だ」

 ヤハハハと傲慢に嗤う神。

 

「我らにとって神は保持神カルガラのみっ!! 貴様など絶対に認めんっ!」

 ワイパーも燃焼砲の砲口をエネルに向ける。

 

「お前ならあいつを倒せんのか?」ゾロはベアトリーゼに問う。

「相性的にかなりキツいけど、やりよう次第かな」

「なら、俺が先に挑ませてもらおう。神を斬る機会なんてそうねェからな」

 ベアトリーゼの回答を聞き、ゾロは獰猛に口端を歪めてから和道一文字をくわえ、両手の二刀を構えた。

 

「男の子だねぇ」

 くすくすと喉を鳴らし、ベアトリーゼは隣のロビンへ物憂げ顔を向けた。

「ロビンも相性的にきついでしょ。下がってても――」

 

「いいえ」ロビンは能力発動の構えを取り「彼、ここを消し去ると言ったのよ。人類の遺産に対してそんな暴挙、見逃せないわ」

「りょーかい。一緒に神殺しといきますか」

 キャップを脱ぎ捨てて装具ベルトを外し、ベアトリーゼはダマスカスブレードとナイフを背後のナミの下へ放った。

「預かってて。カミナリ相手にヤッパは邪魔だ」

 

 ナミは装具ベルトを拾い抱えて、橙色の瞳に強い憂慮を浮かべる。ゾロの強さ、ロビンの強さ、ベアトリーゼの強さは信用しているし、信頼もしている。しかし、相手は最強の自然現象。不安を抑えきれない。

 

 一同のやり取りを眺めていた雷神は口端を歪め、白い歯を覗かせる。

「あくまで神に抗うか。実に不敬だが……よかろう。私自らが選別してやる」

 

      ○

 

 雷神討伐戦は、ワイパーの燃焼砲(バーンバズーカ)で始まった。

 しかし、エネルは自らを雷電と化すだけで、バズーカの業火を容易く掻き消す。

「そんな玩具が神に通じると思うな」

「クソがッ!」得物が役に立たないと分かり、ワイパーが毒づく。

 

 代わってゾロが雷神へ向かって挑む。

「三刀流っ! 鬼斬りっ!!」

 東の海で数々の海賊達をぶった切った大技。されど、エネルは薄笑いと共に黄金の長棍で容易く受け止めた。驚愕に目を見開くゾロを嗤う。

「いい太刀筋だ。オームを斬っただけのことはある」

 

「コノヤロ……ッ!」

 青筋を浮かべたゾロは馬鹿力でエネルを押し退け、嵐のように三刀の剣閃を重ねる。

 今や鉄すら斬る剛剣に対し、エネルは柔軟な体術でひらりひらりとかわし、避ける。今や斬撃を飛ばしさえする豪剣に対し、雷神は黄金の長棍を巧みに操っていなし、流し、払う。

 

 絶え間なく響く剣戟の衝撃音と咲き乱れる火花。

 こいつ、能力頼りじゃねえっ! きっちり武を修めてやがる……っ!

 

 ゾロが馬手の逆薙ぎから弓手の突きへ移る、そのつなぎのわずかな間隙。

「どうした? 動きが雑になっているぞ」

 エネルは長棍の棍頭でゾロの右肩を鋭く突き、体幹を大きく崩す。

 

「しま――っ!?」

 不覚を取ったゾロが呻く中、稲妻と化したエネルの左足が未来の大剣豪の胸板を捉え、閃光が爆ぜる。電の足刀を受けたゾロが吹き飛ぶ。

「ぐああああっ!?」

 

「ゾロッ!?」

 ナミの悲鳴を聞きながら、「セイスフルールッ!」ロビンがハナハナの実の力を展開。

 しかし、相手の体に生やしても感電してしまうため、得意の関節技は出来ない。拾い上げたガン・フォールの騎士槍を投擲するのが精いっぱい。

 

「パラミシアか。鬱陶しい」

 雷神が不快そうに眉をひそめて騎士槍を避けるや、ロビンへ向けて放電。

 

 が、ベアトリーゼがプルプルの実の力で大気中の電子を操作。局地的電位差を作り出して稲妻を捻じ曲げる。

「む……っ?」意表を突かれたエネルが小さく驚く中、

「死ね」

 ベアトリーゼがプラズマジェットで跳躍してエネルへ急迫。瞬時に漆黒へ染めあげた右拳を振るう。

 

 見たこともない術。エネルは心網ではなく直感的に危険を察知し、雷と化して回避。も、黒い拳がかすめた左肩口に擦傷痕が生じ、腫れあがった。

 エネルは眉根を寄せつつ、肩に出来た一条の擦過傷を窺う。貼りついていた笑みが消えた。

「……雷電と化した私に打撃を当てた……? それに先ほどの跳躍は……貴様、何者だ」

 

「ロギア殺しの技なんざいくらでもあるんだよ」

 飄々と応じながらも、ベアトリーゼは内心、臍を噛んでいた。

 

 しくじった。この耳たぶヤロー、想定以上に出来やがる。おっかーしな。原作のこいつ、こんなに戦えたっけ?

 いや、今は原作なんかどーでも良いわ……雷電状態だと向こうのエネルギー放出量が高すぎて武装色を乗せた振動波すら呑まれちまう。こりゃ催眠音波系は無駄だな。プラズマ系は要らん面倒が起きそうだし……クソ、鶏ジジイより面倒くせェな。

 

 ――“邪魔臭い奴”。

 殺意がめらりと濃度を増した。

 

「なるほど、世界は広いというわけか。ヤハハハ、愉快」

 冷笑しながらもエネルのベアトリーゼへ注ぐ眼差しに油断はない。どうやら手強いと認識したらしい。

「是非とも手駒に加えたいところだが……従順ならざる女は好かん」

 

「こっちもお前なんか好みじゃねーよっ!!」

 ベアトリーゼは再びプラズマジェットで一気に肉薄し、エネルに近接高機動戦闘を強要する。

 

 エネルは心網で相手の動きを先読みできる。ベアトリーゼも見聞色の覇気の練熟者で先読みに不足はない。

 一撃で常人を感電死させられる雷神と、一撃で常人を破壊できる蛮姫は、互いの派手な動きの根っこで高度な思考戦を繰り広げる。

 

 双方が相手の手を先読みできるがゆえに、単発の手は通じない。数手先まで思考したうえで手を指していかねばならない。もちろん、相手の読みを外したり、狂わせたりするために無数の欺瞞と偽装と誘導と罠が混ぜ込まれる。

 

 秒に満たないほどの時間の中で、膨大かつ莫大な情報から正誤と正否を瞬間的に判断し、相手を制する一手を瞬時に思考して選択し、その一手から生じる無数の展開を予測し、戦略を組み上げる。

 

 虚実入り交じった熾烈な攻防。あまりの激しさに誰も手出しできない。

 ゾロは感電の痛みと痺れに苦悶しながら身を起こし、蛮姫と雷神の戦いを目の当たりにして、思わず痛みを忘れるほどの悔しさを覚えた。

 

 歯噛みして唸る未来の大剣豪を余所に、蛮姫は雷神相手に桁外れの集中力と人外染みた思考力を発揮していた。

 

 激しい高負荷運動に体が燃える。呼吸器官の酸素供給が肉体の需要に追っつかない。カロリーの燃焼で発熱する体を冷やそうと全身の汗腺から汗が溢れ流れる。暗紫色の瞳は瞬きを忘れていた。たっぷり効いてるアドレナリンのおかげで痛みは鈍いが、避けきれない電撃を浴びて末梢神経が痺れ、微細血管が損傷している。電熱に炙られて長袖シャツのあちこちに焦げ穴が生じ、剥き身の生足に電撃傷のシダ紋様がうっすらと生じ始めていた。

 

 体力的消耗と身体的被害に加え、悪魔の実の力を繊細かつ緻密に、大胆かつ豪快に操り、雷神の凶悪な電撃を電子や原子や分子のレベルから防ぎ、逸らし、避ける。

 白兵戦と頭脳戦と能力操作で、脳内データログは土石流みたいな有様。エンドルフィンを始めとする脳内麻薬をドバドバ大量分泌している脳ミソが、多並列思考の熱で今にも茹で上がりそう。

 

 クソが。ベアトリーゼは瞬きも許されない激烈な攻防の最中、密やかに毒づく。

 

 あと一投足を詰め切れない。こちらの間合い外に徹する点はシキと同じだが、プラズマ攻撃で牽制できたシキと違い、カミナリ人間エネルにはプラズマが通じない。そのせいで、踏み込み距離がどうしても詰められない。初手にプラズマジェットを見せたのは失策だった。

「面倒臭ェ奴ッ!!」

 

 悪態を吐くベアトリーゼに対するエネルの顔にも、余裕はない。

 エネルは肥大化したエゴの持ち主で、凶悪極まるゴロゴロの実の能力に驕り、自身を神と称して憚らない増上慢だ。が、ベラミーのような中身の薄いイキリ坊主とは違う。クロスレンジを避けているとはいえ、白兵戦の達人たるベアトリーゼと渡り合えるほどに体術と長棍術、武の戦術と戦略を備え、鍛え、練っている。

 

 だからこそ、エネルは分かる。

 この夜色髪の女の間合いへ踏み込んではならないと。銃砲刀剣の一切が通じぬはずなのに、女の漆黒の拳打足蹴はエネルの肌を裂いたり、腫れあがらせている。かすめただけで、この威力。直撃は危険すぎる。

 

 ゆえに、対処可能な距離的余裕を保つ必要がある。ただし、その距離的余裕はこの小麦肌女が電撃に対処する時間を与えてしまっていた。

 もちろん、電撃の速さは光と大差ない。本来は人間の知覚と反射で対応できるはずが無い。が、眼前の女は可能としている。

 

「不遜なり」

 エネルは苛立つ。頭では大きく距離を取り、大火力の面攻撃で圧殺すべきと分かっている。が、肥大化したエゴがその実行を許さない。

 戦略的に正解でも、大きく距離を取る――退くなど、神としてのプライドが許さない。

 

 明晰な頭脳を持つエネルは白兵戦を繰り広げながらも、着実にベアトリーゼの能力を観察して情報を集め、分析し、解析する。

 ――そうか。この女郎(めろう)は如何なる手か、大気を操っている。私の電が曲げられ、逸らされ、散らされていることも、人知を超えた高速高機動もその応用だろう。しかし、その異能を私への攻撃に使わないところを見ると、雷の化身たる私に通じない類の能力。

 

 ならば。

 

 雷神は放電を伴いながら全身を雷電化。音速を超えた放電が雷鳴――爆発的大音波を生む。

 至近距離からの大音圧衝撃に対し、ベアトリーゼは相殺音波を放って迎撃。

 

 その一手の間に、雷光と化したエネルが蛮姫に肉薄。先の先を取られたものの、ベアトリーゼはついに自身の間合いへ入ってきたことを機と捉える。

 

 後の先を取って黒い閃光の如き中段の左拳。これは誘い。

 下段から上段へ斬り上げるような右蹴り。これは崩し。

 蹴撃の慣性と身の捻じれを活かしてそのまま跳躍。エネルのすぐ頭上で後方宙返りし、上下逆転した姿勢から本命の右拳。

 雷を断ち切らんばかりの黒い拳閃が、頭蓋を打ち砕かんと雷神に迫り。

 

 雷神の頬をかすめ、空を切る。

 

 読み違えた。ベアトリーゼが内心で毒づく。コイツ、狙いは――

 頬を裂かれながら必殺の拳打を避けたエネルは、打撃直後のベアトリーゼへ全身を一条の稲妻として叩きつけた。

 

電光(カリ)ッ!!」

 

 その場から影を払拭するほどの雷光と強烈無比な雷鳴。大気の大炸裂と大音圧衝撃波にベアトリーゼのしなやかな身体が激しく吹っ飛び、島雲の上を跳ね転がった。

 密着接触した状態から高電圧高電流を直接体の内外へ流し込まれ、長袖Tシャツが焼尽してしまい、Xバックスポーツブラが剥き出しになっていた。電熱に蒸発した汗や唾液が白い蒸気を漂わせており、ベアトリーゼは白目を剥いたまま痙攣している。

 

「ビーゼッ!?」「ベアトリーゼッ!?」

 雷鳴の残響にロビンとナミの悲鳴が混じる。特にベアトリーゼの力に絶対的な信用を抱いていたナミが覚えた衝撃は大きい。

「ウソでしょ……ベアトリーゼが倒されるなんて――」

 

「神たる私に手傷を負わせたことは認めてやろう。だが、如何に鍛え上げようと所詮は人間。神には勝てぬのだ。ヤハハハハッ!」

 煽り文句とは裏腹に強敵を下した興奮と達成感にエネルが野武士のように高笑いを上げる中、愕然としているナミの耳朶が絶対零度の殺意を捉えた。

 

「よくもビーゼを――」

 ナミが動揺したまま顔を向けた先で、碧眼を殺気に染め抜いたロビンが雷神を圧殺しようと巨腕を生み出していた。感電覚悟の直接攻撃に出る気だ。

「ダメよ、ロビンッ!」

 

「貴様の友が多少健闘したから誤解したようだな」

 隕石のように振り下ろされる巨腕の拳骨に白い地面が大きく揺れ、不安定な瓦礫が崩れる。吹き飛んだ島雲が水飛沫のように飛散する中、

「お前達如きがどう足掻こうが、太刀打ちできない圧倒的な力。それが生み出す絶対的な絶望と恐怖」

 エネルは雷光の速度で易々と巨腕の打撃を掻い潜ってロビンの背後に立ち、ロビンが振り返るより速く、その背中に手を触れた。

 

「抗えぬ絶望と恐怖を前にした人は、ただ地に顔を埋め、慈悲を乞う」

 凄まじい閃光と激しい雷音がロビンの悲鳴を掻き消した。

「それが人の、生物の、神に対する正しき在り方なのだ」

 意識を失い、へたり込むように崩れ落ちるロビンを、エネルが嘲り笑う。

 

 その傲慢が生む、一瞬の間隙。

 400年、神に故郷を奪われた者達の末裔が、神殺しの一撃を狙う。

「切り札があるのは、貴様だけじゃない」




Tips

エネル。
 ゾロやルフィと格闘戦を演じていた辺りを拡大解釈して書いてみたら、なんか原作より強キャラ感が出てしまった。

ガン・フォール
 空の民とシャンディアの民の和解と共存、その先にある幸福な未来を実現すべく尽力してきた人。そりゃエネルにブチギレる。

ゾロ
 せめて覇気なり対抗手段なりが使えないと、ロギア相手はキツい。

ロビン。
 原作だと為す術なくエネルに倒されちゃう。相性が悪いやね。

ベアトリーゼ。
 ゼロ距離電撃は完全に裏を掻かれた。互いに一撃必殺の威力でやり合ってるから、ワンミスが命取り。
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