彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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ちょっと文字量多め。
マキシタさん、ミタさんさん、佐藤東沙さん、誤字報告ありがとうございます。


138:神と天敵。それと破廉恥

 驚愕し、動揺し、狼狽え、当惑し、混乱し、恐慌したがゆえに、雷神は良い一撃をまともに食らった。

 

 床に這いつくばらされた屈辱より、久しく忘れていた肉体の痛みがエネルに冷静さを取り戻させる。

 体躯の伸縮や膨脹などがあのパラミシアの能力のようだが……なぜ、私の雷が通じない?

「なんだ……? 貴様いったい、なんだというのだ?」

 

 詰問されたルフィはしれっと応じる。

「俺はルフィ。ゴム人間だ……っ!」

 

「……ゴム?」

 怪訝顔を作るエネル。まったく聞き覚えがない。どんな物なのか想像もできない。

 

「白々海にゴムは存在しないんだ。だから……」

 ナミがエネルの驚愕と動揺に納得している最中、ルフィが動く。 

「雷は俺に効かねェぞっ!!」

 

 エネルは心網(マントラ)で先読みしながら回避を重ね、ルフィをじっと観察する。

 

 戦い方に戦略性も戦術性も無し。反射神経と敏捷性に富み、勘の働きが異様に鋭く、臨機応変に長ける。が、武を修めた人間特有の“型”も見られない。おそらく、場数を積んで築いた我流の喧嘩殺法。

 

 勢いよく伸縮する拳打足蹴は雷電化で防げないにしても、雷光速度を捉えられるほどではなく、避けることは難しくない。威力はそれなりだが、一撃必殺の危険性はないだろう。

 あの青海の女戦士ほどの手練れではない。無手無腰という点を考慮すれば、ワイパーや青海の剣士よりも脅威度は低い。

 

 ならば。

 エネルが動く。黄金の長棍を振るってルフィの伸びる拳をいなし、雷光速度で拳が縮み戻るより早く眼前へ肉薄。

 

「いっ?!」

 吃驚を上げるルフィが反射的に繰り出した拳を容易く払い、流れるように突き三連。水月、秘中、廉泉。

 胸元から喉まで鋭く突かれたルフィが怯んだところへ、踏み込みながら石突で関元を強撃し、ふっ飛ばした。

 エネルの顔が訝しげに歪む。なんだ、この手応えは――

 

「こんにゃろっ!!」

 ルフィはあまり効いた様子も見せず、すぐさま立ち上がる。

 

 エネルは雷光速度で再び急迫。顔面の人中へ疾風の打突。続けて長棍を旋回させ、右肩口へ打ち下ろしから顎先の下昆を狙った回し蹴り。

 先読みしていたにもかかわらず、野生動物染みた反応速度で全て防がれ、避けられた。

 ――速い。まるで猿だな。

 

「このぉっ!!」

 ルフィが横薙ぎに左蹴りを放つも、エネルは雷光速度でルフィの頭上に遷移。棍頭で脳戸と亜門を鋭く突き、そのまま背後へ。後頭部を打突されたルフィが反応しきれぬうちに、脊髄に沿って早打、活殺、命門へ三連打から、フィニッシュに背面肝臓へ強烈な前突き。

 

 吹き飛ばされたルフィが巨大船楼の壁面に叩きつけられ、頭から甲板床に落ちる。

 残心を行いながら息を吐くエネル。

 

「つ、つよい」

 物陰から見守っていたナミが口元を覆うように呻く。電撃が完全無効化されたから、ルフィが圧倒的有利になったと思った。王下七武海のクロコダイルに勝ったルフィなら、エネルにも勝てると疑わなかった。だが、現実にはルフィが床を舐めさせられている。

 

 え? ナミは困惑する。ほぼ一方的にルフィを打ちのめしていたエネルが眉間に皺を刻み、顔を険しくしていた。なんであいつの方が苦い顔してんの?

 

「なぜ……死なない?」

 エネルは身を起こしているルフィへ質す。

 打擲した部位は全てが急所であり、いずれも撲殺できるだけの威力で打ち込んだ。常人なら頭蓋が砕け、咽頭が潰れ、胸骨が割れ、背骨が折れ、横隔膜が裂け、肝臓が破裂しているはずだ。死んでおくべきだろう、人として。

 

「俺に“その程度”の打撃は効かねェぞ。ゴムだからな」立ち上がりながら嘯くルフィ。

 

 エネルの目尻がピキッと引きつる。それでも、冷静さを保ちつつ自問する。

 ――雷は通じず、打撃は効き難い……ゴムとはいったい……? いや、待て。所詮はパラミシア。大概は原形をとどめる能力のはず。

「グローム・パドリングッ!!」

 電熱を発生させ、黄金の長棍を黄金の三叉槍へ錬成し直した。

 

「棒が、槍になった……っ!?」

 驚くナミを余所に、エネルはルフィへ襲い掛かり、鋭い刺突を放つ。

 

「やべっ!!」

 ルフィは先ほどまでと打って変わって大きく飛び退く。穂先がかすめた肌が裂け、血が垂れる。

 

 出血を目の当たりにし、エネルの口端が吊り上がった。

「ヤッハハハハッ!! やはり、弱点は斬撃かっ!!」

 

「ああ」素直に認めるルフィ。

「何で教えるのよっ!!」思わず怒声を発するナミ。

 

 ヤッハハハッ!! とエネルは高笑いしながら三叉槍を構え、ルフィへ襲い掛かる。

「くそぉっ!」

 繰り出される疾風怒濤の攻撃。雷光速度の超機動力。心網による先読み。ルフィの野生染みた反射速度と直感を活かしてもなお、紙一重の危機一髪。回避に精いっぱいで反撃の機を掴むことさえ出来ない。

 

「あっちぃっ!?」

 咄嗟に掴んだ棍の穂先を、ルフィは慌てて手放す。両手が酷い火傷を負っていた。

「なんだぁっ!?」

「そうか、電熱……っ!」ナミが気づいて叫ぶ「ルフィ、気を付けてっ! その槍は電熱、えと、めちゃくちゃ熱いからっ!!」

 

「斬撃に加え、熱も苦手か。弱点が多いな、小僧ッ!!」嘲り笑う雷神。

“武”に優るエネルの攻撃が波に乗った。ルフィは必死に回避を重ねるも、ざくりざくりと穂先が身体をかすめ、肌を裂かれ、肉を焦がされる。ボロ雑巾染みた赤チョッキがさらに酷くなっていく。

 

「あああっ!? 俺の一張羅っ!!」

「そんなの気にしてる場合っ!? 新しいの買ってあげるから真剣にやりなさいよっ!!」

「お、おおっ! 任せろっ!!」

 金に獰猛で財布の口が滅茶苦茶硬いナミがこの言いよう。ヤバい。

 

 ナミに活を入れられ、とっくに真剣だったルフィは気合を入れ直す。

「いっくぞぉおっ!!」

 脚部を伸縮動作させ、ロケットのように跳躍。一息でエネルに迫った。

 

「愚かな。格闘で私が圧倒していることを忘れたかっ!」

「ゴムゴムのぉ~~たこぉっ!!」

 瞬間、ルフィの全身から骨が消失したようにぐにゃりと軟化。そのくせ四肢や体の筋肉は平然と稼働するため、本当に蛸みたく動き続ける。

 

「真面目にやらんかあっ!!」思わずナミがツッコミを叫び、

「くだらん真似をっ!」

 エネルは心網でルフィの思考を先読みし、横避けする先へ穂先を突き出す。人体ならば胴を捉えたはずの刺突は、蛸のようにぐにゃりと波打つ体を外して空を切る。

 あまりにも型破りな動きによって齟齬が生じたことに、舌打ちが漏れる。

 

 エネルが咄嗟に返す刀で穂先を横薙ぎにする。も、ルフィの身体がにゅるりと孤を描いて斬撃を潜り抜けて――

 

「ゴムゴムのぉ~たこ槍ッ!!」

 弧を描きながら動く体に追随してきた足が鞭のようにしなり、エネルの意識外から横っ面へ蹴り抜く。跳ね上がる雷神の頭。仰け反る雷神の体躯。両手から落ちる黄金の三叉槍。

「ゴムゴムのぉ~ガトリングッ!!」

 ルフィが畳みかけるように連打を繰り出す。雨霰と放たれる拳の弾幕。

 

 しかし、エネルはあっさりとルフィの両拳を掴み取り、

「手が増えた訳でもあるまい」

 ルフィを甲板に思いっきり叩きつけた。

 

 砕け割れた甲板に埋まった不届き者を一瞥し、エネルは口元の血を拭った。黄金の三叉槍を拾い上げ、大きな船楼入口に据えられた玉座の許へ向かう。トドメを刺すべきだが、先にやらねばならないことがある。

 

「貴様の始末は後だ。このままでは青海へ落とすべき虫けら共が逃散してしまうからな」

 仰々しいほど豪奢に造られた玉座、その両脇にある黄金の突起物へ手を置き、雷神はその力を惜しまず注いだ。

「2億ボルト、放電(ヴァーリー)ッ!!」

 

 超大電圧と超大電流が船体の端から端まで駆け巡り、巨大飛行船を目覚めさせた。

 船楼内に組み上げられた巨大動力機関が稼働して船体各部のプロペラを回転させ、豪快な風切り音が秘密造船所内に響き渡る。

 

「さあ、征けっ! 私を限りなき大地(フェアリーヴァース)へ導く方舟、マクシムよッ!!」

 雷神の喝采に応えるように巨船が浮かび始め、プロペラで側壁や天井をガリゴリガリゴリと切削しながら空を目指していく。

 ベアトリーゼが見たら『ありえねぇ!!』と発狂しかねない圧倒的光景にアイサとピエールが驚愕の絶叫を上げ、状況の悪化にナミが頭を抱える。

「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……どうしよう、ルフィッ!! このままじゃ私達――」

 

 いつもの勝気さが鳴りを潜め、年相応のオンナノコになってしまったナミへ、甲板から這い出たルフィは麦わら帽子を預ける。

「未来の海賊王の仲間がよぉ……そう情けねェツラすんじゃねえ」

 

 ぶっきらぼうな物言いだったが、声音は優しく頼もしい。ナミは故郷の危機を救ってくれた時と同じ背中を見つめ、船長の“宝”を大事そうに抱きしめる。

 

 箱舟マクシムがついに天井を掘り崩し終え、頭上に青空が広がり、陽光に照らされる。ふんだんに用いられた黄金の部品や装飾物が豪奢に煌めく。

 さながら大地を引き裂くようにして姿を現した飛行船の威容と、動力機関とプロペラ群が奏でる豪壮な響きに、アッパーヤード中の鳥や動物達がパニックを起こして逃げ惑う。

 

 傲然と高度を上げていく巨船マクシム。その甲板上で雷神は満足げに口端を吊り上げていた。

「ヤッハハハハッ!! 見事なものだろうっ! 世界広しと言えど、このマクシムのような船は二つとあるまいっ!!」

 

 高慢なる神は青海の海賊2人に冷笑を向けた。

「せっかくだ。お前達にマクシムが持つ究極の機能を見せてやろう」

「究極の、機能……?」

 不安げに訝るナミと眉間に深い皺を刻むルフィ。

 

 エネルは再び突起物に触れ、大出力の雷電を注ぐ。

「機能の名はデスピア。絶望という名の、この世の救済だ」

 

 注がれた電流がマクシムに搭載された大型装置を稼働させ、船楼の屋根の一部が開く。日の目に晒されたそこには、黄金製の巨大な排気管がそびえ立っており、その基部には複数の液体貯蔵タンクと加熱装置が接続されていた。

 デスピアと名付けられたシステムが動き出し、液体が加熱装置で気化させられ、黒い気体となって排気管から勢いよく排出されていく。

 

 黒い気体は瞬く間に広がっていき、その姿はまるで――

「煙……いえ、雲っ!?」ナミの端正な顔立ちを蒼白に染め「まさか」

 

「察しの通り、あれは雷雲だ」

 エネルは得意顔で言葉を編んでいく。

「私のエネルギーによって稼働したデスピアは、極めて強力な乱気流を内包した雷雲を排出する。排出された雲はエネルギーを増幅させながら広がり、やがてこのスカイピア全てを闇と共に覆い尽くす」

 

 嗜虐的な冷笑を浮かべながら、エネルは冷酷な目つきでエンジェル島のある方角を見据え、

「それらは私の能力に呼応して無数の雷を放ち、この国の全てを破壊する。このようにな……っ!」

 真っ黒な雷雲へ向けて指先から細い一条の雷を放つ。

 直後、真っ黒な雷雲から峻烈な雷閃が走り、エンジェル島に着弾した。轟く雷鳴。響き渡る破壊の音色。立ち昇る噴煙。

「ヤッハハハッ! どうだ? 一緒に見物するか? この国が果てゆく姿を」

 

 轟音が空島いっぱいに響き渡る中、ルフィが拳を硬く握りしめて怒鳴った。

「……やめろ、お前ェっ!! なにやってんだっ!!」

「私は神だぞ。何事も意のままにする。私の思う世界を作るのだ」

 

 何の衒いもなく言い放つエネルに、ルフィが眉目を吊り上げる。

「神なら……なんでも奪って良いってのかっ!!」

 

「そうだ。命も、大地もな」

 怒れる海賊を嘲り笑い、雷神は表情を引き締め、

「青海からひょっこりやってきた訳も分からん賊徒に邪魔されてなるものか」

 黄金の三叉槍を構えた。

「さぁ……ケリをつけよう。この空でなッ!」

 

 ルフィも応じて構えを取る。

 軟体化の技は先読みを狂わせることが出来たが、あの状態だと腰の入った打撃ができない。単なる手数攻めだと先読みで見切られてしまう。速さも必要だ。今までの拳速度ではエネルの武術に対応されてしまう。

 つまり、先読みが対応できないやり方で、エネルの武術で対応不可能な速さの攻撃を繰り出す必要がある。

 どうすれば――

 

 最適解を模索している間に、エネルが先んじた。

 高電熱を宿した三叉槍が嵐のように振るわれる。先読みと合わせた槍術の攻撃は詰将棋のように、一手一手着実にルフィを追い詰めていく。

「こんにゃろっ!」

 

 肩口を焼かれながら苦し紛れにはなった伸長パンチは、エネルにあっさりとかわされた。が、慣性の法則に従う拳は止まることなく突き進み、船首部にある黄金製プロペラ基部に当たって跳ね返り、

「ぐっ!」

 エネルの背中にあっさりと当たる。

 

 瞬間、ルフィは霊感的に最適解を見出した。船楼へ向かって跳躍し、

「ゴムゴムのぉ~たこ花火っ!!」

 顔面を模した黄金壁面へ向けて乱打を開始する。

 速く! 強く! もっと速くっ! もっと強くっ! もっと力を込めろっ! ギアを上げてぶん回せっ!!

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 放たれた乱打は黄金壁面に跳ね返され、四方八方不規則に跳ね踊る。それはまるで跳弾のようで――

「また手数勝負か? 無駄だっ! そんなもの当たるかっ!!」

 エネルは自らを一条の雷電に変えて拳の弾幕を易々と掻い潜り、ルフィの背に迫る。そして、間合いに入るや再び人の姿に戻って三叉槍を振り上げた、刹那。

 

 ゴッ。

 

 先読みに掛からぬ跳弾の拳がエネルのこめかみを捉えた。

「――ッ」

 三半規管を強く揺さぶられ、エネルの動きが一瞬、止まる。拳の弾幕の真っ只中、その一瞬の停滞は即座に無数の被弾を招いた。

「ぐぁああああああっ!!!」

 

 ゴロゴロの実を食して以来、エネルは初めてのタコ殴りを浴び、体験したことのない痛みに体が大きくヨレる。

 当然、ルフィはその間隙を逃さない。野生そのままに雷神へ襲い掛かり、

「ゴムゴムのぉ~バズーカァアアアアアッ!!」

 改造された魚人海賊を打ち倒し、大海賊の砂魔人を悶絶させた双掌打を雷神のどてっぱらへぶち込んだ。

 

「―――っ!?」

 体の深奥まで貫徹した大衝撃に意識が飛びかける。エネルは苦悶すらこぼせず崩れ落ちた。そこへ、ルフィが容赦なく追撃に躍り出る。

 

 朦朧とする意識の中、エネルは迫るルフィの姿を認識して顔から血の気を引かせた。回避を試みるが、身体は双掌打の衝撃に痺れており、能力による雷電化すら叶わない。

 恐怖。自身を恐怖の権化と語り、他者を侮り続けた男が、今、恐怖に顔を引きつらせる。

 

「ゴムゴムのぉ~」

 ルフィはありったけ力を込めた拳で、エネルの無防備な横っ面をぶん殴る。

「ライフルッ!!」

 全力のコークスクリュー・エクステンドパンチはエネルを見事に吹き飛ばし、船楼の黄金壁面へ叩きつけた。

 

 血反吐に塗れながら倒れ伏した雷神の姿に、ナミが勝利を確信するも、ルフィの顔は依然、険しいままだ。

 現に、能力者当人が倒れたにもかかわらず、巨船は飛翔し続け、雷雲を広げ続けている。

 

「……あの女戦士よりも数段劣る貴様に、こうもやられるとはな」

 そして、エネルは血反吐を垂らしながら身を起こす。驚愕するナミ。動じぬルフィ。

 

「認めよう。貴様は私の天敵だ」

 エネルは船楼の悪趣味な黄金壁面に背を預け、

「マクシムが発ち、スカイピアが滅ぶこの日に、天敵と巡り合うとは……世の不条理は神とて例外ではない、ということか」

 息を整えながら傲慢な冷笑を湛え、

「しかし、神たる私が定めた運命は変わらん。この島は絶望と共に終わりを迎え、天使達は死に絶える。貴様には止められん。決してな」

 右手に雷電を踊らせた。

 

「! やめろぉーッ!!」

 また雷を落とされると判断したルフィが右の伸長パンチを放つ。

 刹那、エネルが口元を悪意に歪めた。背後の黄金壁を電熱で瞬時に溶かし、飴細工のように操ってルフィの伸びた右腕を絡めとる。

 

「ギャ――――ッ!! あっちいぃいいいっ!!」

 雷神は右腕を巨大な真球状金塊に囚われたルフィが、腕を焼く電熱でもがき苦しむ様に愉悦を浮かべ、

「青海の天敵よ。貴様に関わるとろくなことにならんのはよく分かった。だから、貴様はただ消えろ」

 ルフィの許へ歩み寄り、巨大な真球状金塊をサッカーボールのように船外へ蹴り飛ばした。

「この金塊は貴様の健闘を称え、褒美にくれてやるっ!」

 

「うわぁああああああああああああっ!?」

 球状金塊の重量に引きずられ、ルフィは船外へ一直線に引きずられていく。咄嗟に舷側胸壁にしがみ付いて堪えるも、金塊が重すぎて身動きが取れない。

 

「天敵たる貴様さえ封じてしまえば、もはやこの世に私の敵はいない」

「なに言ってんだバーカッ! 下の海にはなぁ、お前なんかより強ェ奴がいくらでもいるんだっ!! お前なんか――」

「さっさと落ちろ……っ!」

 エネルは黄金の三叉槍でルフィの手元を砕き、船外へ突き落す。

 

「ルフィ―――――ッ!?」

「チキショーッ!! エネルーッ! 勝負しろぉ―――ッ!!」

 ナミの悲鳴とルフィの罵倒が響き渡る中、水玉天馬ピエールに跨ったアイサが落ちていくルフィを救助しようと駆けつける。その矢先。

 

「鬱陶しい羽虫め。消えろ……神の裁き(エル・トール)ッ!!」

 巨大な雷が落下中のルフィと水玉天馬とシャンディアの少女を呑み込んだ。

「そんな……ルフィ、アイサ、ピエール……」

 ナミが大雷によって穿たれた大穴を慄然と見下ろす中、

 

「ヤッハハハハハハハハハッ!!」

 雷神の哄笑がアッパーヤードの空に轟いた。

 

     ○

 

「ナミさん。可憐すぎる……っ!! ロビンちゃん。美麗すぎる……っ!! ベアトリーゼさん、綺麗すぎる……っ!! こ、ここは楽園なのか……っ!? 俺のオール・ブルーはここなのかっ!?」

 赫足ゼフが聞いたら、情けなくて泣いちゃうかもしれない寝言を垂れ流すサンジ。

 

 どうやら、エロコックは幸せ極まる夢を堪能しているようだ。

 スカイピア全土が神の暴虐で滅びの危機を迎え、コニスやホワイトベレーの面々が一人でも多くを救おうと奔走し、探索チームの面々が傷つき倒れ、ナミが神に攫われているというのに。

 破廉恥。まったく破廉恥である。

 

 寝返りを打つと手を握られた。エロコックは反射的に握り返す。と。

「やめろー……俺には一万人の部下がー……」

 握った手の主から男の声が聞こえ、サンジは即座に目を開き、見た。

 

 寝言を垂れている長っ鼻の横っ面を。

 

「ひぃっ!?」

 驚愕のあまり悲鳴が溢れ、サンジはタオルケットごと飛び退き、頭から被る。

「いやだっ! 戻してくれ……っ! 今すぐ俺をあの楽園に戻してくれ……っ! ナミさんとロビンちゃんとベアトリーゼさんが待つ、あの楽園にっ!」

 

 ガチ懇願だった。まだ寝ぼけているらしい。しかし、目覚めたことで全身に走る電撃症の痛みが、エロコックを妄想から現実世界へ無理やり引きずり起こす。

 

「ぐぉっ!? イテェッ!? くそ……何がどうなって……」

 習慣的に煙草を取り出そうとして、サンジは上着を脱がされて全身に手当てが施されていることに気付き、記憶が蘇ってきた。

 そうだ。突然船に現れた“神”とかいう耳たぶヤローに……

 

「! ナミさんっ! ナミさんは無事なのかっ!」

 サンジは包帯だらけにされているウソップを完全に無視し、部屋から飛び出す。甲板のどこにもナミの姿がない。同乗していた変な爺さんと水玉鳥もだ。

 

「ナミさんッ!!」

 泡食って周囲を見回していると、林冠の先からもうもうと黒煙が立ち昇り、アッパーヤードの上空を覆い始めていた。それに豪壮な風切り音も島の奥から聞こえてくる。

 

 何が起きてやがる?

 警戒心を強めた矢先、サンジは見た。

「なんだ、ありゃあ……っ!?」

 巨木が連なる密林の梢から浮かび上がる巨大な影を。

 




Tips
エネル
 空島編のラスボス。
 思うに、最大の弱点は慢心と油断。

ルフィ
 原作主人公。
 思考を先読みされても、対応させなきゃ良いんじゃね? と軟体化

箱舟マクシム
 エネルはあの巨船を一人で保守整備する気だったのだろうか……

アイサ
 気づけばピエールと仲良しになって『鳥馬ちゃん』呼びしてる。

ピエール
 CVはいったいどこの中○和哉なんだ……?

ナミ
 またしても麦わら帽子を預けられた。やはりルナミが正義なのか。

サンジ
 破廉恥。

ベアトリーゼ。
 再起動のため読み込み中。
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