彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
暗闇の巨雲から大小様々な雷が雨のように降り注ぐ終末的光景。
ジャイアント・ジャックの麓。ロビンはチョッパーをぬいぐるみのように抱えながら呟く。
「始まったわね」
ロビンの七分丈パンツを掴みながら、アイサが泣きそうな顔でジャイアント・ジャックを見上げる。ロビンが生やした手でアイサの小豆色の髪を優しく撫でた。
大きな雷が近くに落ち、強力な衝撃波と音圧波にウソップがひっくり返った。ロビンが咄嗟にチョッパーとアイサを庇う。
「ぅ……」「ぐ……っ」「むぅ」
衝撃が誘い水となったのか、気を失っていたワイパーとゾロとガン・フォールが意識を取り戻した。それぞれが体中の痛みにしかめ面を浮かべながら、状況を把握しようと周囲を見回す。
「ワイパーッ!」
「アイサ? 無事だったのか」
トテトテと駆け寄ってきた同胞の少女を認め、ワイパーは無意識に強面を和らぎかけるも、周囲の様相――落雷の荒れ狂う異常な光景に眉目を吊り上げた。
「何がどうなってやがる」
ワイパーの発言を先取りするように、ゾロが身を起こしながら問う。
「エネルがこの空島全てを破壊しようとしている真っ最中よ」
ロビンの説明を聞き、ガン・フォールが島雲を掻くように掴み、苦悶した。
「エネル……ッ! 本当に始めおったか……ッ!!」
「今、ルフィとナミがエネルとベアトリーゼを止めに行ってるっ! 俺達はメリーまで避難しようっ!」
ウソップが喚くと、ゾロが怪訝そうに眉根を寄せた。
「……待て。なんで止める対象にベアトリーゼまで入ってんだ?」
「トビウオライダーを壊されてたことが分かって。ビーゼが本気で怒っちゃったのよ。ああなると、ビーゼは間違いなくやり過ぎるわ。後でお説教ね」
ロビンはチョッパーを抱えたまま微笑む。
呆れ顔をこさえるゾロに代わり、ガン・フォールがロビンに問う。
「青海の娘。この在り様を見てもなお、お主はエネルを止められると思っておるのか?」
「いえ。確信してるの」
ロビンは花のように美しい微笑を湛え、告げた。
「ビーゼ達は、必ずエネルを倒すと」
ロビンは心の中で密やかに接ぎ穂を呟く。
事態が悪化する可能性も高いけど。
○
「ヤッハハハハハッ!! 人も木も土もあるべきところへ還るが良いっ! 全て青海へ降る雨となれっ!」
エネルの残酷な狂笑に応えるが如く、黒雲は増々荒れ狂い、落雷が暴れ狂う。
雷鳴と地響きが絶え間なく響き続け、住民の退去避難が続くエンジェル島はさながら絨毯爆撃を浴びているような有様だった。
豪雨のように注ぐ落雷が島雲を吹き飛ばし、建物を砕き、逃げる住民達を薙ぎ払う。
落雷は島雲やアッパーヤードだけでなく海にも次々と注がれており、巨大な水柱を何本も昇らせ、時に水蒸気爆発さえ起こしていた。命を落とした空魚達が水面に骸を浮かべていく。
海へ脱出した空の民も、次々と命を落としていた。
雷の直撃を浴び、満載した避難民ごと炎上轟沈したり、爆散したりする船は一隻や二隻ではなかった。落雷の至近着弾の衝撃で船が転覆し、白い水中へ没していく者が後を絶たない。海へ投げ出された者達を救おうにも、周囲の船は既に満員で猫の子一匹入れる余裕もなく、助けを求める同胞が溺れ死んでいく様を見守るしかなかった。
空の民に出来ることは、船上から故郷エンジェル島が雷に焼かれていく様を眺めながら、恐怖と絶望と無力感に打ちのめされることだけだ。
雲隠れの村を脱出したシャンディアの民もまた、自分達の村が稲妻に焼き払われていく様を見せつけられていた。
シャンディアの民にとって、400年に渡って隠れ住んできた村は屈辱と困窮の牢獄。然れども、今を生きる彼らにとっては生まれ育ち、先祖が眠る、紛れも無き故郷だ。
400年前に故郷を追われ、今再び故郷を捨てて逃げ去らねばならない。
シャンディアの民は老いも若きも女も子供も、涙を流していた。
悲憤の涙を。
空島に住まう全ての者が恐怖と怯懦と、絶望と無力感と、悲憤と悲嘆に膝を折っている中、
「エネル……ッ!!」
終末的光景を睨み据えながら、シャンディア戦士ワイパーが荒々しく怨嗟を吐く。
意識を失っていた間、ワイパーは幼き日、酋長や大人達から聞かされた“歴史”を見ていた。
誇り高きシャンドラを守護するシャンディアの民。シャンディアに啓蒙と恵みをもたらした英雄ノーランド。大戦士カルガラと英雄ノーランドの友情と果たされぬ約束。空の民に故郷を奪われて始まった屈辱と困窮。帰郷のために戦い散っていった英霊達。望郷の念を抱きながら死んでいった先祖達。
全ては故郷を取り戻し、今一度シャンドラの火を燈すため。
だが、今、エネルは全てを消し去ろうとしている。
シャンディアの民が求め続けた故郷も、民族の誇りたる黄金都市も、民族の使命や願いさえも。
「貴様にこんなことをする権利があるとでもいうのかっ! 俺達から全てを奪う権利があるとでも言うのかっ!!」
ワイパーが怒りにわななきながら、神を自称する男を糾弾する。
誰も掛ける言葉を見つけられない。ロビンはチョッパーを抱きかかえながら漆黒の空を見上げた。
「……船の上昇が進んでる。もうじき、この巨大樹の頂上に届くわね」
「そこに……何がある。エネルは何を目指しておるのだ?」
スカイピアを襲う大惨劇に憔悴したガン・フォールが問う。
「黄金の鐘よ」
ロビンの言葉に、ワイパーが反応する。
「――黄金の鐘、だと? 青海人の貴様がなぜシャンドラの黄金の鐘を知っているんだ。いや、なぜ在処を知っている」
「……この巨大樹はここの下層にあるシャンドラの遺跡、その中心部から伸びているわ。遺跡で発見した地図や記述が確かなら、そこが黄金の大鐘楼があった位置なの」
ウソップが何か喚いていたが、ロビンは美しいほど完璧に無視して説明を続ける。
「考えられる推論は二つ。このアッパーヤードが空へ打ち上げられた際、元々生えていたこの超巨大樹の上に落下し、鐘は巨大樹に突き上げられてさらに上空へ飛ばされた。あるいは、アッパーヤードが空島に落着後、この巨大樹が成長して鐘を上空へ押し上げていった」
「どっちにしろ、鐘はこのバカでけェ樹の天辺より上にあるのか」
「なんと……神の社の頭上に“島の歌声”が……」
ジャイアント・ジャックをまじまじと見上げるウソップとガン・フォール。
その時。突如として神の社の辺りから、スカイピア全土を覆う暗闇を切り裂くように峻烈な白光が生じた。
あまりにも禍々しい輝きに、誰もが、蛮姫の無茶をよく知るロビンすら、息を飲む。
「な、なんだ、ありゃあ……」ウソップが唖然と呟き、
「太陽……?」咄嗟にワイパーの足を掴みながらアイサが慄く。
「ビーゼね」ロビンが難しい顔で「プルプルの実の力で超高熱プラズマ塊を作り出す技よ」
ゾロはふと思い出し、顔から血の気を引かせた。
「それ、あいつがアラワサゴでやった技かっ!?」
「し、知ってるのか、ゾロ? ありゃいったいなんだっ!?」
聞きたくないけど、聞かずにいられないウソップが問い質せば。
「かなりヤベェぞ。アラワサゴって島じゃ海岸線を変えちまった」
「なにをいってるんだいぞろくん?」
あまりにも途方もないゾロの回答に、ウソップの知能が低下した。
「可哀想な子を見るような目をやめろ!!」ゾロは怒鳴ってから嘆息を吐き「海岸の一部が完全に消滅しちまって、砂浜は溶けてガラスになってた。本当だぞ」
「私が知っている頃より強力になっているわね」ロビンはしみじみと「もしもこの島に落ちたら、かなり大規模な被害を生むでしょうね」
ウソップは半狂乱になって大騒ぎ。
「何やっとんだあいつはぁっ!! エネルを止めに行って、なんでこの島を吹き飛ばそうとしてるんだよっ!!!?? 勘弁してくれぇ! 滅茶苦茶をやるのはルフィとゾロとサンジだけで十分過ぎるんだよぉっ!!」
「ビーゼらしいわ」朗らかに微笑むロビンさん。
「笑っとる場合かぁっ!!」
雷鳴が轟く中、ウソップの叱声が響き渡った。
ジャイアント・ジャックの天辺を目指し、”大金玉”を牽引しながら激走する小型ウェイバー。
”小さな太陽”を見上げ、アラワサゴ島の一件の当事者だったナミは顔を大きく強張らせていた。
「あのバカッ! なんてことをっ!」
「ナ、ナミ?」余りの剣幕にルフィが驚く。
「あの船に使われた大量の黄金が融解して蒸散爆発したら、あの莫大な熱エネルギーが拡散して空島を形成する雲なんて蒸発しちゃうわっ!」
「……怪奇現象が起きるのか」
きょとんと小首を傾げるルフィに、ナミは苛立たしげに吠え散らかす。
「このままだと私達もエネルも空島も黄金の鐘も、全て消し飛ぶって言ってんのっ!!」
ルフィは驚愕顔を作り、ナミの耳元で喚き散らす。
「えぇええええ―――――っ!? やべえじゃねえかっ!!」
ナミは頭上の太陽を睨み据え、憤懣をぶちまけた。
「あいつ、絶対にとっちめてやるっ!!」
○
エネルの立つ巨大飛行船マクシムと、ベアトリーゼの立つ神の社の間に、超高熱プラズマ塊が浮かび、煌々と鮮烈な閃光を発していた。
この事態の始まりは、エネルがベアトリーゼごと神の社を焼き払おうと落雷を打ち込んだ際、ベアトリーゼがプルプルの実の力を用い、落雷のエネルギーを用いて『プラズマ溶解炉』を発動したことによる。
サイクロトロン運動を与えられて爆発的に温度を上昇させていくプラズマ塊を前にし、エネルの顔から余裕が失われていた。
「大気を操る能力者だと思っていたが……ここまでとはっ!」
両腕をマクシムに向けて伸ばし、ベアトリーゼは悪魔の実の力を駆使してプラズマ塊をデカくしながら、眉をひそめていた。
んー? っかしいなあ。っかしいなあ。耳たぶヤローの落雷を利用してプラズマ技を使うまでは良かったのに……なーんか能力と覇気の制御が利かねーぞ。
ま、いっか。耳たぶヤローをぶっ殺せれば、細かいことはどうでもヨシッ!
「原子の欠片も残さず燃え尽きろっ!!」
ベアトリーゼは肥大化した超高熱プラズマ塊へ強い振動波を叩き込み、エネルへ向かって浴びせる。
「
「ほざけっ! 我、雷電を自在に操る神なりっ!! 貴様の炎雷とて同じことっ!!」
ロギア系最強格ゴロゴロの実を食したカミナリ人間だからこその直感か。
迫る超高熱プラズマ衝撃波に対し、雷神は直感的に落雷ではなく、自らの放電を選ぶ。
超高熱プラズマの大津波は大出力の電撃と相食むように干渉し合い、エネルとベアトリーゼの間で渦動を始め、超高熱プラズマの竜巻に姿を変えていった。
ベアトリーゼは武装色の覇気で、エネルは自身を雷電化して暴力的な輻射熱に耐えているものの、島雲が徐々に蒸発していき、巨船マクシムの金属部品が歪んでいく。
「邪魔臭い奴っ!」
ベアトリーゼがプラズマ竜巻の渦を広げ、エネルと巨船マクシムを呑み込ませようと荷電粒子や波動に強い振動を加えるべく、能力操作を行う。
が、エネルを“焼”滅させることに執着していたベアトリーゼは失念していた。自分が今、身体も能力も覇気も精確に制御できていないことを。
精密な超高度演算と緻密な多並行制御が不可欠な状況で、そのささやかな“やらかし”は極大に比例して発現する。
「あっ」
拮抗状態にあった超高熱プラズマ渦巻が大きく大きくたわみ、大きく大きく歪み、大きく大きく乱れ、
「!
エネルが改めて身を削るように繰り出した最大放電を超高熱プラズマ竜巻へ叩き込み、エネルギーを上方へ導く。
超高熱プラズマ大竜巻が怒れる巨龍の如く暴れ躍り、ジャイアント・ジャックの天辺付近を一瞬で焼尽。そのまま空を覆い尽くす巨大雷雲へ飛び込み、巨大雷雲が内包する暴力的な高速乱気流と激甚な静電気と激突。
下手をすればその瞬間、膨大なエネルギー同士の衝突による大暴発が生じ、この空島に存在する全てを消し飛ばしていたかもしれない。だがしかし。
「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
エネルは気力と体力の全てを振り絞り、自らが広げた巨大雷雲に超高熱プラズマ大竜巻を呑み込ませていく。
それは雷を支配し、意のまま恣に操り扱うカミナリのロギア能力者の精髄。
終末の雷を用いて災厄の火へ挑むエネルの姿は、まさに雷神そのもの。
そして――
雷鳴。
スカイピアを成す積帝雲そのものを震わせる大雷鳴が轟き響き渡り、スカイピア全土を覆う巨大黒雲に無数の稲妻が放射状に駆け抜けていく。さながら蜘蛛の巣紋様が描かれていくように。
凄まじく体力気力を消耗したエネルは膝から崩れ落ち、滝のような勢い流れる汗を甲板に広げていく。
「ヤ……ヤハハハ……ッ! ヤッハハハハハハハハハハッ!!!!」
自らの成し遂げた偉業に歓喜の大喝采を上げる雷神。
達成感と充足感と自己肯定感に満たされながら、雷神は神の社へ叫ぶ。
「どうだっ!! 私は神だっ! 私こそがこの世界の絶対なる神なのだっ!! 思い知ったかっ!!」
が、反応が返ってこない。
訝るエネルが目を凝らしてみれば、大蛮行をやらかした女は体力枯渇で白目を剥いて倒れていた。
さしものエネルも絶句。
「……なんと迷惑な女だ」
大きく深呼吸し、エネルは桁違いにエネルギーを増した雷雲を見上げ、
「貴様のおかげで、より見事な終焉を描けそうだ」
凶悪な微笑と共に左手を大きく振るった。
「雷迎」
○
雷雲の一部が巨大球体に姿を変え、ぽっかりと開いた真円状の雲間から青空が覗き、陽光が注ぐ。そして、雷雲の巨大球は日の光が降り注ぐ中をゆっくりと落ちていき――その莫大なエネルギーを解き放つ。
エンジェル島が一瞬で蒸発し、その下に広がる白海が貫かれ、積帝雲の底まで達していた。憐れにもその効力圏内に捉えられた空の民は、一分子もこの世に残らず焼き消された。
絶望も諦念も許さないほどの絶対的な破壊を目の当たりにし、空の民もシャンディアの民も、もはや唖然茫然と現実を見つめるだけだ。
「なんという非道を……」
大量破壊と大量殺戮を目撃したガン・フォールは頭を抱え、その場にうずくまる。たった今起きた大惨劇はこの老人の許容限界を超え、心を完全にへし折っていた。
勇猛果敢な戦士ワイパーも、もはや現実を受け止めきれなかった。傍らのアイサはとっくに理解を放棄していた。
「この世の光景とは思えねェ……」
小心者のウソップは一周して恐怖も怯懦も戦慄も忘れていた。
「アラバスタでクロコダイルも似たようなことやってたじゃねーか」
ゾロがさらりと言ってのける。極太の肝っ玉を持つこの男は、平然と現実と対峙していた。
同時に、ごく自然に思う。
“この件が終わったら”、あの女に覇気とやらを習おう。これからは能力者と戦うための力が要る。
「良かった。あれなら鐘楼は無事ね」
不意にチョッパーを抱きかかえたロビンが呟く。
思わず全員がロビンへ狂人を見るような目を向けた。この状況で何を言っているのだ、と。
しかし、ロビンの神秘的な美貌にも麗しい碧眼にも、狂気など微塵も内在しない。
「言ったでしょう。私は確信しているの」
ロビンは面々へ美しい微笑を向け、
「ビーゼはしくじったみたいだけれど、時間は充分稼いだ。間に合ったわよ」
再びジャイアント・ジャックを見上げた。
「雷神の天敵が」
○
「エーネールゥ―――――――――――――――――ッ!!」
黄金の鐘の許へ向かおうとしたエネルの背に、眼下から怒号が届く。
心底うんざりした顔で、エネルは振り返った。
小生意気な青海の小娘が運転する小型ウェイバーが高層島雲に辿り着いており、ウェイバーから降り立った“天敵”が大きな球形金塊を引きずりながら、こちらを睥睨していた。
「お前に、黄金の鐘は、絶対に、渡さねぇぞぉ――――――――――――ッ!!」
「勝手に喚いていろ」
高度差は充分にある。もはや空でも飛べぬ限り、天敵が自身の許へ辿り着くことなど出来ない。
エネルは鼻を鳴らし、興味を失ったように視線を切って巨船マクシムを上昇させていく。
黄金の鐘の位置は既に把握していた。電波を用いた捜索をしたところ反射反応があったし、何より女戦士が放った災厄の火を雷雲へ飲み込ませた際、雷光を反射する物体が見えた。
そう遠くはない。焼き消されたジャイアント・ジャックの天辺部分から数十メートルほど西上方に浮かぶ島雲。そこに黄金の鐘が、400年前にスカイピア全土へ響き渡った“歌声”がある。
「待て、エネルーっ!!」
ルフィが吠えながらジャイアント・ジャックを登っていく。しかし、天辺部分は既に焼尽しており、今辿り着ける先端からではゴムの収縮運動を最大限に使っても、もはやマクシムの佇む高度まで届きそうにない。
それでも、諦めることなくルフィは幾度も跳躍し、落下し、登り、跳躍し、落下し、また登る。
ルフィがしつこく足掻き続ける中、ナミはウェイバーを放りだして大の字に倒れているベアトリーゼの下に駆け寄り、
「この野蛮人っ! 好き勝手暴れて事態を悪化させておいて、暢気に寝てんじゃないわよっ!」
スポブラの胸元を引っ掴んでガックンガックン揺さぶる。が、起きない。低血糖で目を回してるからね。仕方ないね。
と、騒ぎながら挑み続けるルフィが鬱陶しくなったのか、エネルが落雷を落としてきた。
誰かさんの所為で一層強力になった落雷は、ルフィを高層島雲に叩き落すだけでなく、ナミにまで衝撃波を浴びせてくる。
「きゃあっ!!」
鮮烈な衝撃波に薙ぎ払われたナミがベアトリーゼを掴んだまま高層島雲から落ちかけ、ルフィが咄嗟に左手を伸長させて引き戻す。
「大丈夫かッ!?」
「ええ……でも」ナミはベアトリーゼを、次いで、上空の巨船を窺う。「どうしよう……ベアトリーゼがこれじゃ、エネルの船まで行く手がないわ」
「なんとかするっ! エネルに黄金の鐘は絶対に渡さねえっ!!」
顔を険しく歪めて吠えるルフィに違和感を抱き、ナミが怪訝そうに尋ねた。
「黄金の鐘って……さっきからずっと言ってるけど、なんなの? どうしてそんなにこだわってるのよ」
「ウソじゃなかった……っ!」
ルフィの言葉にナミは戸惑う。何のことか分からない。
「ウソじゃなかったんだ。ナミも見ただろ。黄金郷はあったんだ。ここにっ! ひし形のおっさんの先祖はウソなんかついてなかったんだっ! だから、おっさん達に教えてやるんだっ! 黄金の鐘を鳴らしてっ! 黄金郷は空にあったって、教えてやるんだっ!」
クリケットのことを言われ、ナミは唖然とした。同時に自身を強く恥じる。空島へ行くためにあれほど援助してもらったのに、今の今まですっかり失念していたなんて。
「エネルなんかに渡せねェっ! でっけぇ鐘の音はきっとどこまでも届くはずだからっ!」
ルフィはマクシムを睨みながら、決意を猛々しく宣言する。
「俺は、絶対に、黄金の鐘を、鳴らすんだっ!!!!」
「その浪漫、乗った」
ナミの腕に抱えられていたベアトリーゼが目を覚まし、いつも以上にアンニュイな面持ちで、にたり。
Tips
ワイパーが見た夢。
空島編の過去ストーリーのこと。本作ではカット。気になる方は原作を読もう。
ロビン。
ベアトリーゼに対する好感と信用と信頼がマックスのため、ベアトリーゼが絡むとズレちゃう。
プラズマ・ソリトン。
銃夢:LOで主人公ガリィが使うプラズマ技。
本作では作者の描写がプラズマ物理学と全然違うので、ツッコミどころが多いと思う。
演出ということでご容赦頂きたい(切願)。
エネル
ゴロゴロの実の能力を全力全開で行使し、ベアトリーゼのプラズマ技を破った。
そりゃ勝ち煽りの一つもする。
ベアトリーゼ。
本調子じゃないのに大技を使って大失敗。事態を悪化させた。
いつも通りってこと。