彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


146:目指すはメルヴィユ

 愉快なフォクシー海賊団と楽しいレクリエーションで盛り上がった後、麦わらの一味は俳優松田優作似のだらけたおじさんと出くわした。

 この松田優作似のだらけたおじさんは海軍本部大将“青雉”クザン。海軍の誇る最強戦力の一角である。

 

 麦わらの一味はのらりくらりと接する“青雉”に翻弄された後、最終的に戦闘へ発展し……見事惨敗。ロビンとルフィは全身カチンコチンに凍結されて仮死状態に。ゾロとサンジはそれぞれ手足に凍傷を負った。

 ここまで快進撃を続けてきた一味にとって、初めてというべき完敗だった。

 

 幸い、スーパードクター・Cもとい小さな名医トニートニー・チョッパーのおかげで、ロビンとルフィは一命をとりとめ、ゾロもサンジも後遺症を負うことなく回復したものの、“格の違い”を思い知らされていた。

 

「流石に……くたびれたわね」

 ナミは甲板にオンナノコ座りし、疲れ切って寝落ちしたチョッパーに膝枕している。

「早朝から大騒ぎしながら空島を後にして、グランドラインの気象の相手をしながら、ロングリングロングランドへ辿り着いてみれば、色物集団(フォクシー海賊団)交流会(デービーバックファイト)。ようやく落ち着いたと思ったら、海軍本部大将と出くわしてこの有様」

 指を折りながら今日一日を振り返り、ナミが疲労の濃い溜息を吐けば。

 

「……俺ぁもうバタバタ騒ぎすぎて何がなんだか……」

 後船楼の壁に背中を預け、へたり込んでいたウソップもぼやく。

 

「ナミさん、どうぞ。ほら、お前ら飲め」

 サンジが出来立ての熱々ホットラムを配っていく。

 

 シナモンの香りと蜂蜜の優しい甘みが加えられたホットラムを口に運び、ゾロはゆっくりと深呼吸。

「あの2人……海軍本部の大将が警戒するほどの人間だったんだな」

 

 ゾロは戦闘を起こす前、“青雉”が語ったことを思い返す。

 自分がこの場にやってきたのは、アラバスタの事件後に姿を消したロビンが、“血浴”とコンビを再結成したという情報を掴んだから、だと。

 

 ――ニコ・ロビンとベアトリーゼはまだ小娘の年頃で、海軍と5大マフィアが築いていた西の海(ウェスト)の秩序をグッチャグッチャに掻き乱した。分かるか、イーストの若造共。その女と血浴が再び組むってのはな、十分な“脅威”なんだよ。

 

「ルフィが賞金1億になった、ゾロが賞金6000万になった、てはしゃいだけど、考えてみりゃあ、ロビンはたった8歳でゾロより高ェ賞金懸けられてたんだよな……いったい何をやらかしたんだ?」

 ホットラムで気力を取り戻したウソップが首を傾げる。

 

 フォクシー海賊団に絡まれた際、ルフィの賞金が跳ね上がり、ゾロにも高額賞金が懸けられたことが判明した。なお、ベアトリーゼの賞金は変動してない。政府はベアトリーゼがアラバスタに居なかったことにしたからだ。あれは正体不明の魔女(サーヘラ)。ベアトリーゼと別人。そういうことになっている。

 

「レディの過去を詮索するもんじゃねェ。ロビンちゃんはもう俺達の仲間だ。それで十分だろうが」

 サンジが苦い顔つきでウソップに釘刺しし、

「そりゃあまあ」ウソップが眉を大きく下げながら言い淀んだ矢先。

 

「あいつはまだ居候だ」

 ゾロがぴしゃりと言い放つ。

 

 場の空気がピリッと張り詰めた。

「ああ? 空島で一緒に冒険したし、一緒にデービーバックファイトやっただろうが。何が不満なんだテメェ」

「筋の問題だ。今回みてェに俺ら全員の生死に関わるってなら、なあなあに済ませて良いことじゃねェだろ」

 麦わらの一味の両翼が一触即発の睨み合いを始めた、刹那。

 

「やめて」ナミが額を押さえながら「今はやめて。お願いだから……」

 

 懇願する航海士を一瞥し、副船長とコックはバツが悪そうに揃って顔を背けた。衝突が回避されたことに狙撃手がそろそろと安堵の溜息を吐く。

「これからどうする? 正確にゃあルフィとロビンが目覚めるまで、だけど」

 

「ログは溜まってるわ」と航海士。

「食料はまあ、なんとかなる」とコック。

 

「なら、少なくてもルフィが……船長が回復するまで待つ。それまではここで待機だ」

 副船長は全員を見回して、不意に唇の端を悪戯っぽく吊り上げた。

「勝手に船を進めたら、あいつ絶対にすねるからな」

 

 航海士と狙撃手とコックの顔も和らぎ、

「頬っぺた膨らませてブーブー言うわね」「ああ。間違いねェ。大騒ぎだ」「やけ食い始めて冷蔵庫を空にしちまうだろうな」

 くつくつと小さく、だけど、楽しそうに笑う4人はそのまま、冗談めかして船長の短所を並べていく。

 

「んぁ……あ、俺寝ちゃってた……」

 ナミの膝枕で眠っていたチョッパーが身を起こし、目元を擦りながら皆を見回して小首を傾げた。

「? 皆、なんか楽しそう……どうしたんだ?」

 

「おう。聞け、チョッパー」

 ウソップはにやりと口元を曲げて笑いかける。

「俺達の船長は……バカだ!」

 

「……? 知ってるぞ?」

 何を今更と言いたげなチョッパーの反応に、四人は大笑いした。

 

      ○

 

 麦わらの一味が青海に帰った翌日の朝。

 空島スカイピアの終端――クラウドエンド。

 高層雲が見えない好天の下、ベアトリーゼはシャンディアの小型船で燃料――炭水化物と脂質系の朝飯をたっぷり摂っている。

 

 なんせ一度離陸したらメルヴィユまで一切着陸できない。睡眠無し、休息無し。飲食も最低限のみ。トイレ? 知らないの? 美女美少女はトイレに行かないんだよ?

 

 妄言はともかく、燃料供給を終えたら、下着姿になって念入りに暖機運転――柔軟体操(ストレッチ)を始めた。

 180を半ばも過ぎた長身はしなやかで柔軟で、練られた筋肉を適切な脂肪が覆う肢体はネコ科の猛獣のように艶と力を兼ね備えている。

 

 エネルの電撃を浴びてから、なーんか体が軽いんだよなぁ。能力と覇気も今までよりキレるし……どーにもなぁ。”慣らし”が欲しいなぁ。

 

 小麦肌が微かに汗ばむ程度に体を温めた後、手早く肌を拭い、赤黒のタイトな潜水服を着こんでいく。

 肌の露出は皆無なれど体の線を隠さないため、前述の肉体美と合わさってなんとも艶めかしい――はずなのだが、色気より健康美の主張が強いのは本人の気質のせいか。

 

 潜水服を着こんだ後、癖の強い夜色のショートヘアをインナーキャップで包む。腰に装具ベルトを巻き、防水処理した私物を雑嚢へ詰め、ブレードとナイフの鞘をしっかりロック。電伝虫は別途のポーチバッグを胸元に巻き、通話具部分を多眼式フルフェイスヘルメットに接続。なお、水筒は落下防止に紐でバッグにつないである。

 

 燃料供給と暖気運転と装備の取り付けを完了し、ベアトリーゼは甲板の中心に鎮座するハンググライダーへ向き直った。

 骨格(フレーム)は堅木の削り出し。接続部は鋼材の鍛造品。(セール)は帆布に植物性樹脂を塗りこんだもので、ロープ類も植物繊維の編み込み品。

 ずっしりと重たいけれど、軽量な金属資材も化学系素材もないからね。仕方ないね。

 

 トップとボトムのワイヤーのテンションをチェック(ここが不味いとフライト中に翼が折れる)。

 コントロールバーとグライダーをつなぐスイングラインをチェック(ここが不味いとフライト中に搭乗者だけ落ちる)。

 骨格と翼の接続や機体を安定させるためのラフラインなどを確認。

 

 ベアトリーゼは各部を指差し確認した後、うんと頷く。

「飛行準備完了、ヨシ!」

 

「そんなもので本当に青海へ降りるなんて……正気の沙汰とは思えないね」

 ベアトリーゼ送還の責任者である女戦士ラキがしみじみと呟き、この船へ勝手に忍び込んでいたアイサも心配そうに尋ねる。

「本当に大丈夫なの? 練習だって昨日の夕方に何度かしただけだろ?」

 

「なぁに。大丈夫さ。それにね」

 ベアトリーゼはアンニュイ顔で嘯く。

「青海には『狂気の沙汰ほど面白い』って言葉もあるんだよ」

 

「イカレてる」

 ラキはぼやいた後、目尻を柔らかく下げた。

「種と育成法のこと、心から感謝するよ。いつかあんたとあの一味が再びこの地を訪ねてきたら、多くの実りで迎えよう。あんたの旅に幸があらんことを」

 

「こちらこそ世話になりました。いろいろありがとう。貴方達の歩みにも幸があらんことを」

 ベアトリーゼが別人のように上品な礼を返すと、ラキとアイサと船員達は虚を突かれたように目を瞬かせる。

 

 控えめに驚くラキ達を余所に、ベアトリーゼはヘルメットを被り、ハーネスを体に装着してハンググライダーに接続。コントロールバーを掴み、ズシリと重たい急造ハンググライダーを軽々と持ち上げて船首に立った。

 

 積帝雲の端から見渡す光景はまさに絶景。眼下をまばらな雲が泳ぎ、その下にはグランドラインの海が広がっており、ぽつぽつと島々が散らばっている。

 プルプルの実を発動して風向と風速、湿度と温度その他を観測。条件その他、確認完了。オールグリーン。

 

 ベアトリーゼは肩越しに背後を窺ってラキ達へ別れの言葉を送り、

「いつかまたっ!」

「幸運をっ!」「また来てねっ!!」

 ラキとアイサの声を背に受けながら一切躊躇せず足元からプラズマジェットを放射。真っ直ぐに蒼穹へ飛び込んだ。

 

      ○

 

『オルカ・グループ。こちらB1。予定通り進発した。現在高度95。降下角5。41ノットで方位045へ進行中』

 電伝虫から届く通信内容を聞き、ステューシーは小さく感嘆する。

 本当に空を飛んでる……ベアトリーゼ、恐ろしい子。

 

「こちらママ・オルカ、了解。これからそちらの念波を“釣る”わ。10秒間隔で発信をお願い」

『了解。一度通信を切る』

 

 通信が切られた後、10秒間隔で三度の念波発信が行われた。

 電伝虫と念波通信機材相手に睨めっこ中だったサイファー・ポールの通信士達が操作盤を扱い、ステューシーへ報告する。

「B1の念波を“釣り”ました。現在地を出します」

 

 サイボーグと帆船とバズーカ砲とマスケットが混在するワンピ世界だが、ステューシーが宿の一室に設けた通信室には流石に電子モニターの類は無い。卓上に広げた政府謹製グランドライン海図(第一級機密)にベアトリーゼの位置を示す駒が置かれるだけだ。

 

 ステューシーは海図を見下ろし、仮面で覆われていない柔らかな唇に人差し指を添えた。

 目標メルヴィユの位置とベアトリーゼの位置は、一般的な帆船の速度で二日の距離。“麦わら”のゴーイングメリー号や“赤髪”のレッド・フォース号みたいなデタラメな速度の船なら、半日かからないかもしれないが。

 

「チレン女史の計算と予測が正しければ、到着は明日の未明頃、か」

 ステューシーが独りごちると、航法計算盤と計算尺を手にした海軍航法士がおずおずと指摘する。

「お言葉ですが……グランドライン特有の突発的な気象変化を考慮しますと、到達できる公算はあまり高くないかと……」

 

「そこは心配してないわ」

 仮面の奥から碧眼が航法士を睥睨した。

「貴方達はB1をメルヴィユまで誘導し続ければ、それで良い」

 余計な口を出すな。と指摘され、海軍航法士は顔を蒼くしながら答礼し、慌てて作業に戻る。

 

 密やかに鼻息をつき、ステューシーは思う。メルヴィユはシキが浮かせているだけだから荒天に弱い。絶えず安定海域へ向けて移動せざるを得ないのだから、畢竟、メルヴィユへつながる進路にも嵐が起きる可能性も低くなる。それにまあ。

 あの子なら、嵐に遭遇しても何とかするでしょ。

 

 航法士がメルヴィユとベアトリーゼの駒を動かして「B1、進路を方位030へ修正」と告げる。

「了解」通信士は電伝虫を起こして「こちらオルカ・グループ。B1、進路を030へ修正」

 

『B1、進路030へ修正する』

 やり取りを聞きながら、ステューシーはソファに座って仮面の下で眉を下げる。

 ベアトリーゼがメルヴィユに到着するまでこの調子か……焦れるわね。

 

      ○

 

 ハンググライダーはその名の通り、操縦者が翼に吊り下がった状態で飛行する。

 両手でコントロールバーを握りしめているが、主要な操作はハーネスに繋がれた体全体の動きで行う。よって、ちょっと体を傾けたりしただけで、グライダーが大きく動いてしまう。

 

 安定した飛行を行うためには、大波に乗っている最中のサーファーのように常に最適な姿勢を保たねばならず、一方で射撃姿勢を保ち続ける狙撃手みたく無用な動きを一切してはならない。

 

 短時間なら『激しいスポーツ』で済むが、長距離となると……

「ああああああ……」

 昼飯時を迎えた辺りで、ベアトリーゼは多眼式ヘルメット内でぼやく。

 

 平均時速40ノットで約6時間。延べ飛行距離は400キロをはるかに超える。目標の“空島”メルヴィユはまだ見えてこない。

 

 体中汗だくで気持ち悪いし、腕がだるいし、首と背筋と腰が痛いっ! かといって小休止も取れねェッ! 腹減ったし、喉が渇いたっ! 景色も代わり映えしなくて見飽きたっ! どこを見ても空と雲と海しかねェ! ニュース・クーにすら出会わねェッ!! 誰だよ、空飛んでいこうとか考えた奴ッ! 私だよっ! クソがッ!

 

 疲労と退屈と飽きに襲われても、集中力を欠かせず気が抜けないという苦行。おまけにプルプルの実の能力と見聞色の覇気を絶え間なく使って、風向や風速や気流に気象状態を観測し続け、トドメに、絶え間なく通信が飛んでくる。電伝虫も疲れ気味だ。

 

『こちらオルカグループ。B1。方位075へ修正せよ』

「了解了解。方位075へ修正する。現在高度83。降下角4、38ノット」

 ベアトリーゼは辟易しながら体重移動で機体をわずかに旋回させ、報告する。

 

 辛い。もうね。首や背中や腰だけじゃない。ケツや裏腿まで疲れてる。辛い。

「クソクソクソクソクソクソ……全部あの鶏ジジイのせいだ。殺す。絶対殺すぶち殺す」

 鬱憤と不満の矛先を金獅子シキに向けて殺意に昇華する。シキにしてみれば、とばっちりであろう。

 

「ん?」

 ベアトリーゼは進路先にモコモコと入道雲が育っていく様を目の当たりにし、

「クソが」

 気流の乱れを知覚して思わず毒づく。グライダーの翼がカタカタと振動を始めていた。

 

「こちら、B1。前方に気象変動。入道雲が発生中」

『B1、突破可能か?』

「空中分解するかどうか博奕しろって? 万馬券買う方がマシだ」

『オルカグループ、了解。迂回せよ。迂回後、修正進路を指示する』

「B1、了解」

 

 ベアトリーゼは吐き捨てるように応じ、膝辺りと足裏でプラズマジェットの断続放射。ミシミシと不吉な鳴き声をこぼすフレーム。バタバタと暴れる翼の端。ブンブンと共振するワイヤー。空中分解の不安を押し殺しながらパルスジェットエンジンの要領で推力を確保し、グライダーを大きく旋回させて入道雲を迂回していく。

 

「くっそっ! これでまた到着が伸びるっ! ああああああああああっ!!!!!」

 苛立つベアトリーゼを無視し、入道雲はもこもこと綿飴のように大きくなっていった。

 

       ○

 

 少しメタい話をしよう。

 海賊王RTAとも評されるほど、麦わらの一味の航海は爆速で進められており、考察勢によれば、ルフィのフーシャ村出航から海賊休業までたった三か月のことである。

 

 一味の船が古臭い沿岸遊覧船であることを考えれば、異常過ぎて怖いほどだ。

 航海士ナミが如何に桁外れな存在か分かろう。下手な能力者よりよほど恐ろしい女。それがナミである。

 

 さて。少し先の未来。『最悪の世代』と称されるルーキー海賊達が奇しくもシャボンディ諸島に集合するわけだが、先述したようにナミを擁する麦わら一味は異常な航行速度を発揮する。ゆえに、他の『最悪の世代』達は麦わらの一味よりも先行しており、シャボンディ諸島でルフィ達に追いつかれた、と考えるべきだろう。

 

 そして、『最悪の世代』で予期せぬ事態に最も巻き込まれそうな奴は誰かと問えば、大体の人はこちらの方を思い浮かべるのではないか。

 

 

 

「何でこんな何もねェところに、艦隊が居やがるんだ」

 海中に潜むポーラータング号の発令所で、ハート海賊団船長トラファルガー・ローは渋面を浮かべて毒づく。

 入り込んだ海域には海軍一個戦隊が輪形陣を組んで留まっており、潜望鏡も上げられないほど強い哨戒態勢を取っていた。もしも発見されたら、袋叩きに遭うことは間違いない。

 

「キャプテン、パドル音が接近中」

 大きなヘッドホンをつけた船員が声を潜めて告げた。

「全員、音を出すな」

 ローの静かで強い口調に、幾人かの船員がわざわざ手で口を塞いだ。

 

 水を伝播して頭上から届く外輪の航行音につられ、全員が天井を仰ぎ見る。

 ポーラータング号に限らず、この世界には非常に稀有ながら、潜水艦や潜水艇が存在する。当然ながら海軍も対潜装備を有している。というか、潜水艦を攻撃し得るデタラメなクソッタレ共がいる。

 覇気と六式を修め、高度に練り上げた精鋭共だ。勇気に不足のないローでも、そんな連中相手に水中白兵戦など御免被る。

 

「パドル音が遠ざかっていく。バレなかった」

 安堵の息をこぼす面々。ローは航海士の白熊(ミンク族・20歳)に問う。

「ベポ。このまま潜航してこの海域を抜けるのに、どれくらいかかる?」

 

 オレンジのつなぎを着たベポは眉を下げつつ、考えを言った。

「海軍の連中に気付かれないよう慎重に進むとなると……かなり時間が掛かるよ、キャプテン」

 

「空気循環器の余裕は?」

「しばらくは大丈夫」ローに問われた船員は難しい顔で「でも、出来れば明日の昼までには一度浮上して、蓄積した二酸化炭素を排出した方がいい」

 

 ローは口元に手を当てて考え込んだ後、

「日が暮れるまで潜航、夜を迎えたら潜望鏡深度まで浮上。状況次第では海上航行で一気にここから離脱する」

 静かに了承する全員を見回してから、モコモコした帽子を被り直す。

「この辺りで何が起きてるんだ?」

 

 ローもハートの海賊団の面々も知らなかった。

 自分達が金獅子狩りの作戦海域へ入り込んでいたことを。




Tips

海軍本部大将”青雉”クザン
 原作キャラ。
 だらけた正義を背負う松田優作似の氷怪人。

ベアトリーゼ
 オリ主。
 急造ハンググライダーで本当に飛んだイカレ女。
 プランクや腕立て伏せの姿勢を一時間くらい続ければ、今話ベアトリーゼの心境が分かるかもしれない。

方位
 東西南北を円で示したもの。細かいことを言えば、真方位と磁方位の違いはあるが……雰囲気が伝われば十分なので、そこまで踏み込まない。

トラファルガー・ロー
 原作キャラ。
 パンクハザード~ドレスローザ編の間、ずっと麦わらの一味と行動していたことから、ファンに『名誉麦わらの一味』とか言われてしまっている人。
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