彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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しゅうこつさん、nullpointさん、末蔵 薄荷さん、烏瑠さん、佐藤東沙さん、誤字報告ありがとうございます。

※最新刊収録範囲のネタバレがあります。まだ買ってない人は気を付けてゾ。


147:翼よ! あれがメルヴィユの灯だ。

 夜の闇と雲がベアトリーゼの視界を覆う。

 しかも雲は氷晶で形成される絹雲ときた。グライダーの翼、ヘルメットや潜水服、その他にうっすらと氷が張りつき始める。ヘルメットと潜水服はともかく、グライダーの翼が凍ると不味い。時折、プラズマジェットを放射して氷を融かすが、それはそれでグライダーの翼が水分を吸ってしまってよろしくない。

 

「――クソッ」

 くったくたに疲れ切り、ガンギマリの目つきになったベアトリーゼは小さく毒づく。

 

 休憩無しで同じ姿勢を半日以上取り続け、しかも悪魔の実の能力と見聞色の覇気も使い続けている。エネルの電撃を食らってから、身体や能力、覇気のキレが良いとはいえ、疲労は確実に蓄積していた。何より急造グライダーでの高高度超長距離移動のもたらす神経的な疲弊は、想像以上にキツい。

 

 ベアトリーゼは血走った眼で周囲を見回しながら、自身と同じく疲れきって元気がない電伝虫の通話具へ告げた。

「B1。高度75。42ノット。降下角6度。雲量8。視界不良」

 

『こちらオルカ・グループ。B1。間もなく目標が有視界内に入る』

「夜闇と雲で視界不良だ。見えない」

『既に目標が視認可能な空域内に入っている』と通信士が機械的に繰り返す。

 

 見えねェって言ってんだろクソッタレ。激しく苛立つも、ベアトリーゼはプロらしく感情を抑え、温度のない声で通話具へ吹き込んだ。

「繰り返す。夜闇と雲で視界不良。何も視認できない。目標の位置予測は本当に精確なのか?」

 

『ママ・オルカよりB1』

 通信士に代わり、ステューシーが通話口に出た。ベアトリーゼの苛立ちと不満を宥めようと気遣いを込めて告げる。

『疲れていることは分かるけれど、目標が現空域に居ることは極めて確度が高いの。周辺捜索をしてみて』

 

「――了解。目標高度は?」

『30から50。複数の島嶼からなる群島よ。本島は背の高い巨峰を有しているから、一目で分かるはず』

「了解。高度60まで下げてみる」

 

 ベアトリーゼは通信を切って大きく息を吐き、機首を下げながらプラズマジェットを逆放射。速度を抑えながら高度を落としていく。心身の疲労と苛立ちを感じさせない丁寧な操縦と能力制御。なぜこの自己制御がスカイピアの戦いで出来なかったのか。

 

「腹減ったし、熱い風呂に入りたいし、清潔なシーツで眠りたいし、ああああああ」

 ぼやきながら雲の下を目指すも、小賢しい氷晶雲は思ったより厚みがあるらしい。高度6000まで降りても雲の下に出られない。

 

 次から次へとッ! と多眼式ヘルメット内で悪態を吐き、ベアトリーゼは周囲を見回す。

 肉眼は暗闇と雲と氷晶に妨げられ、見聞色の覇気には何も掛からない。舌打ちが漏れる。ベアトリーゼは姿勢を崩さないよう注意深く周囲を見回し続ける。完全な闇の中で目を大きく動かしていると空間失調(バーディゴ)を引き起こす恐れもあるが、仕方ない。

 

「どこにも見えねェぞ。チレンの奴、テキトーな予測位置出しやがって」

 メルヴィユの航行ルートと予測位置を計算した女科学者を脳裏に浮かべ、ベアトリーゼは幾度目かとなる悪態をこぼした。

 

『B1、間もなく目標の予測位置と交差する。目視したか』

「見えない。上下左右のどこにも目標を捕捉できない」

 ベアトリーゼは多眼式ヘルメット内で暗紫色の目を猛禽のように鋭くし、周囲を見回し続けたけれど、まったく見つからない。

 

 が、プルプルの実による大気観測が変化を捉えた。

「――待て。不審な上昇気流がある。方位210。後方だ」

 

 さて、犯罪学の初歩にして原則。それはロカールの交換原理と呼ばれるもので『あらゆる接触は必ず痕跡を残す』という。

 しかし、この法則が当てはまることは何も犯罪に限らない。

 この世のあらゆる現象が接触とその結果で創造されるのだから。風がタンポポの種を遠くに飛ばすように。山がそこにあるだけで気流を変えるように。

 空中に異物が浮いていて、そこに空気の流れがぶつかれば、当然ながら変化が生じる。

 

「B1、方位210へ旋回する」

 ベアトリーゼは強張った全身の筋肉を注意深く動かし、グライダーを傾げて緩やかに旋回させていく。強い負荷のかかる急旋回など怖くてできない。

 

 じっくりと旋回を終え、ベアトリーゼは不審な上昇気流の発生源へ向かう。

 気流に煽られてかたかたと震え始めるグライダー。雲中を満たす氷晶も水分子も動きが活発になり始める。発生源へ近づくにつれ、雲が気流に裂かれたのか、暗闇に幾筋も亀裂が生じて月光が注がれ始めた。光を浴びた無数の氷晶がきらきらと輝く様はゾッとするほどに幻想的で、急激に現実味が薄れていく。

 

 美しくも不安を誘う景色の中を進み、暗紫色の瞳が眼下に光を捉えた。

 氷晶の反射光? いや、光の色味が違う。あれは……人工灯だ。

 

 腹の底から生じる昂奮を宥めつつ、ベアトリーゼは光へ向けて機首を修正。瞬きを忘れて発見した光源を注視し、グライダーを進める。

 そして――

 

 見つけた。

 空中に浮かぶ群島の影を。

 背の高い巨峰を生やした島を中心として、幾つかの島々が密集している様を。

 

 本島や幾つかの島には川や湖さえ存在し、島端から滝のように落水させている。それだけではない。島ごとにいくつか環境が異なるようだ。密林の島。荒野の島。草原の島。

 こんな局所的範囲でこれほど環境が異なるなど、環境学的に説明がつかない。まあ、そもそも島が浮いている時点で何をかいわんや。

 

 ベアトリーゼの双眸が本島の巨峰の麓に人工灯の塊を捉えた。和風建築物群からなる巨大施設だ。おそらく、あそこが金獅子のシキの本拠だろう。施設に接する湖にはなんと多数の帆船が停泊し、こちらもマストや船首に照明を提げている。別の小島にも小さな灯が見えたが、別施設か何かか。

 

「見つけたぞ、鶏ジジイ……っ!」

 多眼式ヘルメットの中で獰猛に犬歯を剥き、ベアトリーゼはヘロヘロの電伝虫を起こす。

「オルカ・グループへ。目標発見。繰り返す目標発見。高度45から50。方位210。12ノット」

 

『こちらママ・オルカ。B1。気づかれずに潜入できそう?』

 電伝虫から届くステューシーの声が弾んでいる。ベアトリーゼは笑みを大きくした。

「目標から如何なる探索波長も見聞色の覇気も発せられてない。歩哨がいる程度だろう。本島ではなく付随島嶼ならまず発見されないはずだ」

 

『では、付随島嶼へ向かって。こちらの本隊が到着するまで潜伏していてちょうだい』

「了解。着陸後に連絡する」

 ベアトリーゼは電伝虫の通信を切り、グライダーをメルヴィユへ向けて降下させた。歩哨に見つからぬようプラズマジェットのブレーキを使わないため、位置エネルギーが速度エネルギーに転換され、グライダーの勢いがぐんぐん上がっていく。

 

 メルヴィユから生じる気流と相まって、グライダーの全体から不吉な音色が奏でられる。ミシミシと鳴き始めるフレーム。ギチギチと軋み始めるワイヤー。バタバタと騒ぎ出すセール。

 しかし、ベアトリーゼは不安など一切抱かず、グライダーをメルヴィユへ向けて疾駆させる。

 

 早く降りたい。一分一秒でも早く降りたい。今すぐにでも着陸したい。もう空はうんざりだ。

 地上。地上。地上。ああ、今なら空の民が問答無用でシャンディアの民を襲った気持ちも分かる。大地のなんと愛おしいことか。

 

 スカイピアの住人が聞いたら『それは違う』と拒絶されそうな感慨を抱きつつ、ベアトリーゼは未明のメルヴィユへ向かっていった。

 

      ○

 

 グランドライン前半“楽園”の某島。

 朝日が注ぐ港の傍。宿の食堂に異様な装いの海兵達が集結していた。

 

 海軍特殊科学班隷下の評価戦隊の兵士達60名。

 彼らは全員が海軍刑務所からの“志願出向者”だった。敵前逃亡や抗命、脱走、略奪に婦女暴行……罪を犯して正義を背負うことも顔を晒すことも許されず、素性不明(アンノウン)として戦死し、ようやく名と階級を返される惨めな咎人達。評価戦隊とはつまるところ懲罰部隊そのものだ。

 

 兵士達へ向け、純白の装いと顔の上半分を覆い隠す仮面をまとった貴婦人が美声を発した。

「これより作戦説明を始める」

 

 全兵士の表情が引き締められる中、ステューシーは語る。

「本作戦は金獅子海賊団首領“金獅子”のシキ討伐及び同海賊団の壊滅。そして、同海賊団が所有する機密資料の奪取が目的よ」

 かつて単身で海軍本部マリンフォードを襲撃し、歴史上唯一人インペルダウンから脱獄に成功した大海賊が標的と聞かされても、兵士達は微塵も動揺しない。胆が据わっている、というより達観しているかのように。

 

 ステューシーは指揮棒で掲示板に貼られたメルヴィユの全島地図を示して、

「敵拠点メルヴィユは複数の島嶼からなり、シキの能力によって浮遊しているわ。目標本拠はここ本島にあり、本拠施設は巨大で湖に港も建設されている」

 小島の一つを指した。

「我々はこの島に上陸。本島へ向かい、本拠施設を制圧する。同地域は金獅子海賊団によって大型化、凶暴化された野生動物が跋扈しているけれど、本拠施設付近はダフトグリーンと呼ばれる毒性植物の花粉により、野生動物は出没しないわ。諸君らの装備は同花粉の感染を防ぐことができるから問題ない。ただし、装備を破損した場合はその限りではないわ」

 

「では、装備が損傷した場合はどういう対処を?」と兵士の一人が手を挙げて問う。

「必要ない。どうせ助からないもの」

 ステューシーは子猫を蹴り飛ばすように応じ、全島地図の隣に貼られた金獅子本部施設の地図を示す。

「本拠施設に突入後は三個小隊各自の作戦目標へ向かいなさい。

 

“アントン”は同施設本殿にある中央管制室の制圧。ここを落とすことで敵の組織的抵抗を崩すことが出来るはずよ。

 

“ベルタ”は同施設の南区画にある実験施設の制圧。同施設には開発中の超長距離砲と新型弾頭があるわ。確保が望ましいけれど、困難な場合は確実に破壊しなさい。

 

“カエサル”は研究棟の制圧よ。同施設には多くの機密情報と重要情報源足りえる科学者、技術者がいると予想される。可能な限り生け捕りにすること。ただし、困難な場合は確実に殺害するように。また、同施設においては資料損壊を防ぐため、爆発物の使用は厳禁よ。

 

 目標攻略に関しては全て指揮官に一任する。

 また、本作戦には特別協力者として“血浴”のベアトリーゼ、王下七武海バーソロミュー・くまが参加するわ」

 各小隊の指揮官と下士官達が熱心にメモを取る。

 

「同島の敵戦力は金獅子海賊団、隷下海賊団を合わせて最大約3000人。これに、隷従させられているメルヴィユ先住民が加わるけれど、彼らは非戦闘員だから気にしなくて良い」

 兵士達を見回し、部屋の隅に立つ巨漢――王下七武海“暴君”バーソロミュー・くまを一瞥して、ステューシーは冷厳に告げた。

「本作戦の討伐対象は首領シキから末端まで生死問わずよ。また、同島先住民は非加盟国人だから保護対象とならない。よって、本作戦における交戦規定において、人的目標に対する攻撃制限は先に述べた科学者と技術者のみ。他は一切制限なし。付帯損害は考慮しないわ」

 

 つまり、海賊共の奴隷にされ、強制労働や性的搾取を受けている先住民を救出せず、それどころか巻き添えにして殺しても構わない、ということだ。せいぜい、現場で先住民達を殺さないよう努めるしかできない。

 

「出撃は一時間後。くまの能力を用いてメルヴィユへ向かう。現地到着は日没後になるわ。夜間強襲戦で、混乱が予想される。各指揮官と下士官は統制に努めなさい」

 

 ステューシーは兵士達を見回して質問が無いことを確認し、

「ブリーフィングは以上。出撃の準備を進めなさい」

 食堂を出ていった。

 

 イージス・ゼロの女諜報員が退室し、兵士達は息を吐く。そして、30絡みの兵士が王下七武海“暴君”バーソロミュー・くまへ尋ねた。

「あんた、いつも聖書を持ち歩いてるけれど、祈祷は出来るのか?」

 

 くまは内心で戸惑いつつも、無情動に装いながら淡白に応じた。

「……出来る」

 

 くまはかつて故郷で牧師をしていた。止むを得ず残酷な闘争に身を投じ、過酷な宿命を生きることになってしまったが……本当は愛する者達と穏やかで幸せな暮らしがしたかった。それだけだった。

 

「なら、祈祷をしてくれないか?」

 兵士がどこか縋るように言った。他の兵士達も少なからず期待を込めた眼差しをくまへ注ぐ。

 

 くまは久しく遠のいていた牧師の務めを思い返し、頷く。

「俺でよければ……やろう」

 

「! そうか、ありがとう」

 くまの了承を聞くや、兵士達の過半数がくまの周りに集まり、そうでない者達も遠巻きに様子を窺うだけで、祈祷の邪魔をする素振りをまったく見せない。

 

 消耗品として扱われる兵士達のため、くまは聖書を開いて言葉を紡ぎ始めた。

「兄弟姉妹達よ。これより貴方達は大いなる試練に臨み、勇気と献身を体現することになろう――」

 

 言葉を紡ぎながら、くまは在りし日を思い出す。

 父が遺した小さな教会。採光窓から注ぐ優しい日差し。祭壇に立つ自分。席に並ぶ信徒達はミサの後の治療が目的の老人達とジニー目当ての男達ばかりだったが、皆いつも和やかにくまの説教を聞き、聖歌を楽しそうに合唱した。そして、ジニー。

 彼女はミサを行うくまを優しく見守ってくれた。

 

 ジニーとの出会いは、奪われ続けてきたくまの人生に訪れた福音そのものだった。くまが知る大勢の愛すべき人々の中でも、言葉を尽くせぬほど素晴らしい女性だった。

 

 在りし日の幸福な光景を瞼の裏に描き出しながら、くまはミサを続けた。静かに淡々と。しかし、誠意を込めて。

 

 そして、彼らは出撃する。

 バーソロミュー・くまのニキュニキュの実の力で弾き飛ばされ、兵士達を乗せたカーゴシップは砲弾のように宙を飛翔していく。

 

 大海賊の本拠点へ向かって。

 

      ○

 

 昼時近くを迎えたグランドライン某海域。天気晴朗なれど波高し。

 そんな水面に佇む黄色い潜水艦ポーラータング号では、揃いの白つなぎを着た船員達が船体のあちこちを修理していた。もちろん、船内でも同様の作業が行われている。

 

 ハート海賊団船長トラファルガー・ローは古参幹部のシャチとペンギンと共に、艦橋から周囲を警戒監視していた。

「周囲に船影無し」「天候も今んとこは安定」

 双眼鏡を覗くシャチとペンギンの報告に、ローは首肯しつつ大きく息を吐く。

「策自体は上手くいったんだがな」

 

 海軍の艦隊が活動する海域を脱するため、ローは夜闇に紛れて浮上航行を試みた。

 策は見事に当たり、無事に海域を抜けることは出来た――のだが、グランドライン名物の気象変化に出くわしてしまった。荒れ狂う海面。暴力的な波浪。絨毯爆撃のように降り注ぐドデカい雹。

 

 なまじ船足を速めようと帆を広げていたため(ポーラータング号には二本のマストがあり、帆走可能なのだ!)、緊急潜航が出来なかった。おかげで少なからず雹と波浪で損傷を被ってしまった。

 

「ごめんよ、キャプテン……おれが気象変化を読めてれば……」

 艦橋へ上がってきた、オレンジつなぎの白熊ベポがしょんぼり顔で詫びる。

 

「何が起きるか分からねェ海なんだ。こういうこともある」

 ローはベポを労わり、問う。

「現在地がどの辺りか分かったか?」

 

「計画してたルートから随分と流されちゃったみたいだ」

 ベポがログポースと些か精確性に欠く海図を挟んだクリップボードを見せ、説明する。

「もしかすると隣のラインの方が近いかも」

 

 リヴァースマウンテンから始まる七本の航路。選んだ航路を進み続けることも、別の航路へ移ることも自由だ。もちろん、多くの困難を伴うが。

 

「そうか」

 ローは少し考え込んでから、甲板上で作業している船員のクリオネに声を掛けた。

「クリオネ。進捗状況は?」

「この波で海中作業が遅れてるから、もう2、3時間は掛かりそうだよ」

 

 潜水して外殻を修理するという荒業は大変な危険を伴う。なんたって100トンをはるかに超える大質量が波で動いている。これに激突しようものなら、人間の骨なんて枯れ木のように折れてしまう。

 

 修理に掛かる時間を念頭に置き、ローは海図を見つめて思案する。

 予定ルートに復帰するか、いっそ隣のラインへ移ってしまうか。グランドラインの航海はログポース頼りだが、ログポースに必ずしも従う必要はない。ログポース通りに進めば確実に次の島へ辿り着けるというだけだ。

 

 いくつかの有名な島は座標が知られているし、六分儀などで自船の位置を把握することも出来るのだから。問題は――

「あの海軍の部隊がどこから来たか……だな」

 

 予定ルートか隣のラインか。何か大掛かりな作戦中だとしたら、向かった先で別の艦隊に出くわすかもしれない。

 潜水艦のポーラータング号なら潜航で大抵の面倒をやり過ごせるし、オペオペの実の能力者であるローは下手な海軍将官よりよほど強い。が、それでも油断ならぬ相手なのだ。

 海軍の艦隊という奴は。

 

 特に海戦、艦隊砲撃戦に長けた部隊は怖い。独航の海賊など移乗白兵戦をする機会も与えられず、一方的にボコられて水底まで一直線だ。

 

 ローが難しい顔つきで思案していると、

「キャプテン、なんかデカいもんが飛んどるぞっ!」

 双眼鏡を覗いていたペンギンが空を指差して叫ぶ。

 

 ローはすかさずペンギンが指す空へ双眼鏡を構え、見た。

 何かの莢みたいな形状のカーゴシップが二隻、並んで蒼穹を駆けていく様を。

 

「なんだ、あれは……っ!?」

「何あれっ!? 船っ!? 船が空飛んでるよ、キャプテンッ!」

「スゲェ……どうなってんだ、ありゃあっ!?」

 ローを始め、ベポやシャチもびっくり仰天。船外作業をしていた船員達も思わず手を止め、愕然と高空を飛んでいく船を凝視していた。

 

 と、ローの聡明な頭脳がこれまでの情報を基に素早く推論を組み上げた。

 ――昨日の艦隊はアレ絡みか。つまり、アレの向かう先で何か起きる。

 

 その”何か”は自分にとって、単なる危機か、それとも、予期せぬ好機か。

 

 新進気鋭のハート海賊団船長トラファルガー・ローは選択肢を前にし、眉間に深い深い皺を刻んだ。




Tips

翼よ~
 大西洋横断に成功したリンドバーグが発した言葉。実は後世の、しかも邦訳で生まれた創作らしい。同タイトルの伝記と映画もある。

評価戦隊
 オリ要素。
 外見のモデルは『砂ぼうず』第二部の西軍部隊。
 海のものとも山のものとも分からぬ新兵器の実戦評価試験を行うための部隊。
 実態は『データが取れたら死んでもいいゾ』という扱いを受けている懲罰部隊。

 現実の懲罰部隊は戦時下にのみ編成され、階級を剥奪されて敵の捕虜と共に戦場掃除や死体埋葬、重労働など名誉なき作業に従事する。
 ……のだが、ロシアでは消耗品扱いで最前線へぶっ込まれているようだ。コワイ。

ベアトリーゼ
 メルヴィユ発見に成功したゾ。

トラファルガー・ロー
 【緊急イベント発生!!】政府の秘密作戦を目撃しました。
   ・面白そうだ……行ってみるぞ!
   ・無用なリスクは避けるぞ。無視だ。
 ~という状態。
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